2016/01/19 のログ
シルヴィ・メディクス > 空に広がる星空の輝きを数えても、心沸き立つものがない。
というよりも体から沸き立つ欲のせいで気分がまるでぶち壊しなのだった。

「綺麗、なのでしょうね……あら」


小さく嘆息して首を下げると、人混みを抜けてくる人影が見えた。
それに人影に注視しようとすると、不気味なマスクの無機質なレンズが向けられる。
その絵面はちょっとしたホラーだろう。

「あらあら、ご親切にワタクシの相談に来てくださったのかしら」


男の姿を爪先から頭の天辺まで眺め回してから、マスクに覆われた顔をかくんと倒す。
軽薄そうな様子は注視せずとも見て取ったが、かといって特段警戒するような相手でもないと踏む。

「ワタクシ、こう見えて医者ですの。シルヴィとお呼び下さい」


一先ず自己紹介をしようと名乗る。
そして、フードの中に手を突っ込んで未だにつけっぱなしになっていたペストマスクを支えるベルトを外した。
そこから覗く顔立ちは、異質な外見には似つかわしくない普通の少女である。
そう繕っているだけなのだが。

エレイ > 周囲の人々の奇異の視線を背にしつつのっしのっしと歩み寄る。
こちらに気付いたらしい相手のマスクがこちらを向けば、どこかちょっとワクワクした感じの笑みと目を合わせることになる。
どうやら此方の姿を確認しているらしき動きを見ながら、自分も相手のその亡霊めいた姿をジロジロと眺め回して。

「まあな思わず潔い親切心が出てしまった結果だった。なんでそんなカッコしてるのかにもちょっと僅かに興味があったしな」

相談に来たのか、という問いにはニッと笑って頷き。
そうして相手の目の前までたどり着けば、その足を止めて向かい合い。

「ほう医者であるか。シルヴィだな俺は謙虚な旅人で冒険者のエレイというが呼ぶときは気軽にさん付けで良い。───あら可愛い」

彼女の自己紹介を受け、自分もドヤ顔でおかしな自己紹介を披露し、ビシっとサムズアップ。
やがて外されたマスクの下から覗いた少女の顔が見えると、ほう、とか声を漏らしながら少し身をかがめて顔を近づけ、改めて無遠慮に眺め始め。

「…で、なんでそんな格好してるのか差し支えなければ理由を教えてほしいんですがねぇ? 重篤な患者も医者がこうも怪しくては声も掛けられない、掛けにくい! あとそのガウンの下も興味があるのだが…」

などと矢継ぎ早に言葉を紡ぎながら、彼女の顔から下を覆うガウンのほうにも視線を移してゆく。

シルヴィ・メディクス > 「自分の興味欲求に忠実なお方なのですわね」


頷きながら、自分の前に立つ男を見つめつつ、その風体を改めて観察するように視線を動かしていく。

「エレイさんですわね、以後お見知りおきを。お褒めの言葉と受け取っておきますわね」


奇妙な名乗りはそれが流行りなのかとずれた認識をしながら名前を反芻する。
露わになった顔を見るや興味の度合いを強めて近づいてくる男にも、嫋やかな笑みを返す。

「ワタクシのある…師匠が、医者の正装であると。それに怪我人病人にはこちらから押し掛けますわ…へえ、医者に診てもらいたいのではなく、医者を見たいだなんて、変わってらっしゃるのですね?」


服装についての問いに、うっかりと主と言いかけたのを呑み込んでとってつけた理由を話す。
近寄りがたい、という最も過ぎる指摘にも一応のツッコミを返した。
施術を必要としている人ならば、だいたい飛びつく話を渡せばよいからである。
そして、矢継ぎ早な言葉に下心のある物が交ざると、笑みを少し控えめにしながら流し目を送り、相手へと向き直った

エレイ > 「興味だけじゃなく全ての欲求には概ね忠実だぞ? ──うむ、ヨロシクだぜ。見事な褒め言葉だと感心するがどこもおかしくはないな」

ドヤ顔で自慢にもならないことを堂々と宣言してみせ。
近づいたこちらの顔に、笑みを浮かべる彼女にはヘッへ、と腕白小僧のような笑みで応えて。

「……どんなセンスなんですかねぇ。医者というか見た目だけで言えばどちかというと死神タイポにも見えるのだが。って、押しかけちゃうのかよ…患者さん恐怖でポックリ逝ったりとかしない?」

正装、と聞けば怪訝な表情を思わず浮かべ、あまつさえ失礼な上に縁起でもないことをのたまって。
医者を見たいのか、という問いにはニヒ、と笑い。

「医者を見たいというよりはシルヴィという女の子を見てみたいというのが正確だろうな。これは俺の勘なのだがその下には中々のボディを隠しているとみた」

流し目を見つめて楽しげな笑みを浮かべつつ、そんな事を言いながらぴ、と立てた人差し指をすいと近づけて彼女の唇を軽くつつこうと。

シルヴィ・メディクス > 「し、死に……知識のない方には、混合されるのでしょうね。こんな外見を一目見て逝かれる方は、端から助からないと思いますわよ」


型通りの返事とはいえ、余りに無礼な一言には鉄壁の笑みがひくと僅かに引きつる。
それでも態度を崩さずに余裕をもって言葉を返すことができたのは、相手が馬鹿にしているというより本気でそう思っているように見えたためだ。

「普通医者は元気な方に関わらないとは思いませんこと?特に、エレイさんのように色々と元気な方には」


返した戯言にさらに率直な欲望をぶつけ返してくる相手に唇を突かれれば、一歩近づきながら体を捻って視線を外してつれなく言う。

「ま、考えてあげなくもないですわよ?……でも、見たいだけ?それだけですの?」

相手に対して横を向いたまま、一拍置いて顔だけ動かして相手を見ると、少女らしからぬ蠱惑的な笑みを浮かべながら問いかけた。
少なくとも元気が有り余っているなら、多少吸い過ぎても問題ないと決めたのだった。

エレイ > 「…確かにな。それもそうだという顔になる。てかまあ、一応本職を相手に言うことでもなかった感。すまにいな」

納得したように頷いた後、眉下げてちょっと申し訳無さそうに笑いながら頭を掻き、今更に非礼を詫びた。
一応とか付いてるあたりまだちょっとアレだが、まあそこはそれ。

「そうだな健康の診断でもしてもらうのでもなければ無縁だろうな。確かに俺は元気だし怪我の治りもかなりはやいので医者にはそうそう世話にはならない。だがシルヴィには興味があります」

重ねて彼女への興味を示すとフフリと笑い。距離を一歩詰めてくる彼女を見下ろし、体ごと横を向く彼女の動きを目で追って。

「──ン? …欲望には忠実と言ったでしょう? そう挑発されると見たいし触ってみたいしそれ以上の事もしたいとストレートに言ってしまうぞ?」

それから投げかけられた問いに、こちらもすっと目を細めるとそんな事をのたまう。
言ってしまうも何も既に言っているが。
それと同時に、片手を伸ばしてガウン越しに彼女の肩に触れ、緩やかに抱き寄せてゆこうと。

シルヴィ・メディクス > 「それは果たして謝られているのでしょうか、ワタクシ」


話している少女がややぽかんとしながら思うのは、とかく男は軽いということである。
扱いというべき、感覚というべきか、悪い人でもないのだとは思うものの、果たして。

「そんなに興味があるなら、ご自分で剥くくらいしそうなものですのに。女に脱がせたがるのかしら?」


男の率直すぎる物言いには、意趣返しのように少しだけ失礼を返した。
そして笑みを零す男を挑発するように、ローブの前を広げて谷間はおろか、露わになる肩や覗く背中に布地がない様を見せつける。

「意外と優しいのですわね……どこか名家か、教会でお育ちに?」


相手に抱き寄せられて、その胸板を指先で弄りながら言う少女の表情が僅かにしかめられ、探るような問いかけを投げた。
相手が触れてきたことで、僅かながら精気が体に流れ込んでくる。
それは相手には吐いた息ぐらいのものであるが、少女が男を見定めるにも十分な量だった。
僅かに眉を顰めたのは軽薄ながら聖職者であったのか、触れる気のようなものが単なる人と異なる魔に抗する性質を感じ取った故だった。

エレイ > 「割と真面目に謝っているのだがこれ以上となると土下座とかするしかなくなってしまうんだが…」

むぅ、とちょっと困ったような顔してるあたり男はこんなんでも本気らしかった。

「確かに剥くのは好きだがこんなところでいきなりすることでもないでしょう? ……ほう。やはり俺の見立ては正しかったようだったな」

彼女の物言いに、唇を3の字に尖らせてぶーたれつつ。
しかしローブの下から露になる肢体に目をやると、わかりやすく表情を緩めてジロジロと眺め。

「んー名家といえば名家だが少なくとも教会系ではないだろうな。そういうシルヴィはどちかというと淫魔タイポだな? 淫魔で医者ってのも珍しい感。…あー、俺はちょっと僅かに天然で特殊なオーラを持ち手なのだがこうして触っててなんか不具合とかあったりするかな?」

抱き寄せれば僅かに顰められた彼女の表情に、少し眉を持ち上げつつさらっと彼女の正体を言い当てて。
さすさすと肩を撫でながら、もう片方の手を上げて人差し指を立てると、その指先にポウ、と僅かに山吹色の光が浮かぶ。
闇や不死の属性が強いほど、触れる対象には痺れのような感覚を与えるが、彼女は如何ほどか、と顔を覗き込みつつ問うて。

シルヴィ・メディクス > 「そんなみっともないことをされても困りますわ」


ふるふると横に振りながら土下座は断っておいた。
ただでさえ黒いローブ姿にマスクと冒険者とで目立っている。
そこに話しかけた男が急に土下座でもし出したらどうなることか。

「そういう趣味なのかと」


唇を尖らせて拗ねたようにする男の様子に僅かに溜飲を下げながら、しれっと言い放つ。


「……はぁ、やっぱりそうでしたのね。すぐ浄化などと言い出さないだけ良いですが、それが出さなくて済むものなら余り近づけないでくださいませ」


淫魔であることを看破していると言われれば、大きくため息を吐く。
後天的で決して力の強い魔族ではないが、だからこそそういう類のものへの抵抗も滅法弱い。
近づいてくるオーラに体が触れると体への痺れが走り、笑みをしかめながらぺちと咎めるように手の甲を叩いた。

「それで、ワタクシが淫魔だとわかってどうなさるおつもりですの?まさか吸い殺されたいわけでもないでしょう」


肩を擦られながらずらしたローブから整った体つきを見られているという状況で、そう問いかけた。

エレイ > 「そしたらまあ勘弁してくれぃ。絵面的にもシュール過ぎてもうだめ」

自分もその光景を想像してぬぅ、と微妙な顔をして。
しれっと言われた台詞には、「失敬な…」とさらにブー垂れるが、まああまり本気で怒ってないのは伝わるだろう。

「おもえが凶悪に暴れでもしない限りそんなことはしないという意見。いいぞこのオーラはほぼ完全に俺の任意にできるので必要ないときは出てこない」

ぺちりと叩かれると笑って、オーラも同時にふっと消えた。
さらなる問いかけには、んん、と唸って。

「…さっき色々したいと伝えた筈なんだが? 確かに吸い殺されるのは困るが…俺は生半可な男には真似できない元気を持ち手なので少々多めに吸ってもらってもなんの問題もにい」

と、笑顔で自信満々にそう答えた。
ついでに、立てていた人差し指を胸元に近づけ、つつ、と豊かな谷間を擽り軽く悪戯を一つ。

「あーでも1度だけで終わるとつまらんからその辺適当に調整してくれると嬉しいかなーって」

ヌケヌケとそんな一言も付け足しながら、どうよ? という風にまた首かしげて顔を覗き込み。

シルヴィ・メディクス > 「先ほどの失礼のお返しですわ」


酷い絵面を想像してしまったのか、顔をしかめて拗ねたような態度をする相手に、少女は鈴の鳴るような笑い声を上げながら言ってのける。
そう言う冗談の類は嫌いではないようだった。

「ワタクシは医者だと申したはずですわ、人を殺めるような手管は不慣れですの」


言い回しは奇妙ながら、敵意がないことは伝わるため、少女も肩を竦めて言う。
オーラの影響がなくなれば、小さく堪えていた吐息を吐き出した。

「一回で吸い殺すようなことはしませんわよ。砂漠の湖を干上がらせたがる人がいないのと同じですわ……あら、狼藉を働くのはこの手かしら?」


自信ありげなのか何も考えてないのか、正体を知ってもおくびも気遅れしてない男には少女も苦笑する。
そして谷間に伸びる指を付いた虫でも取るように摘まみ、笑顔で捻ってみせようとする。

「必要分だけ吸って終わりでもないですし、注ぎたいだけ注いでくださっても構わないですわよ」


要求を増やす相手には、笑みを浮かべたまま頷いてみせる。
精気を溜め込む必要がある以上、量があって困るものではない。
体液から得た純度の低い、しかも魔に抗する者の精気となれば主たちからは大不評であろうかとふと考えて。

エレイ > 「勝ったと思うなよ……」

ころころと笑う彼女に悔しそうな顔して負け惜しみの台詞を吐いたり。
内心では可愛い顔して笑うなー、とか思いながら。

「…ほむ、真面目に医者という職業にプライドを持ち手のようだったな。そういうのには好感が湧いて思わず笑顔が出てしまう」

肩をすくめる彼女にフフ、と目を細めて笑い。

「なるほどな…っておいィ、捻られると痛いんだが?」

悪戯した指を摘まれ捻られると、少し眉を顰めながらもあまり痛くなさそうに文句を言って。
続く言葉と、頷く仕草にはニンマリと笑みを深め。

「ほう……ならお言葉に甘えさせてもらうだろうな。…シルヴィはどっかに定住とかしてるのかね? そーでなければ、適当にどっかそこらの宿にでも入ろうかと思うのだが…」

とりあえず話が成立したと判断すれば、肩を抱いたままその場から彼女とともにゆるりと歩き出そうとしつつ、ふと問いかけて。

シルヴィ・メディクス > 「おほほ、勝負事のつもりはありませんでしたわよ。悪魔は取引を尊びますもの、そこを違えることはありませんわ」


負け惜しみを言う相手に得意げに笑うのは、年相応か少し幼く見えるかもしれない。
医者であることにプライドがあるのか、自身でもよくわからなくても悪魔はそういうものだろうと言葉を並べながら内心で自分を納得させる。

「お預けができない躾けのなってない子にはお仕置きですわ」


じゃれるように摘まんだ指はそのままに、文句を返す男にはそう楽しげに笑って言う。

「あら、行きずりの相手を家に上げたりしませんわよ?……上げる家もありませんから、宿を見つけてくださいな。やめるなら今ですわよ」


男の問いにはつれない言葉を返すが、少しして付け足して宿に行く旨を伝える。
歩き出す相手にそっと寄り添いながら、先ほどつけていたマスクを手渡そうとする。
それからはむせ返るような媚薬の匂いが立ち込めてくるはずで、それを今まで着けていたのだと見上げる笑みで語り掛けた。
無論男が尻込みしようと逃がすつもりもなく、この後を知るのはこの二人において他にないことだろう。

エレイ > 「ハッハッハ、ここまで来て止めるとか無いから。……おいィ、このマスクのクチバシみたいなの何かと不思議顔になっていたがこんなもん入れてたのかよ」

つれない台詞には何故か楽しげに笑い声を上げる。
不意にマスクを差し出され、キョトンとしながらも受け取ると、そこから立ち込める強烈な媚薬の匂いには思わず顰めっ面をして。
しかし特に離れようともせず、寄り添ったまま少女とともに広場を後にする。
その後の二人の出来事は、また別の話───。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシルヴィ・メディクスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリドさんが現れました。
リド > その豊かな胸を誇示するような服装で、薄暗い路地を歩く女が一人。
普段武具として用いるクロスボウは今日は持ち合わせてこそいないが。

「―――おかしな話ねぇ。この辺だって聞いたのに」

そう呟きながら立ち止まるは、何の変哲もない壁の前。
騙されたと気づいた時には肩を落とした。やれやれ、とため息が溶ける。

「……ま、仕方ないわね。出直しましょ……」

暇になっちゃった、等と呟きながら踵を返し今来た道を歩き始める。
辺りは心細い光が灯るだけの路地裏。女はそんなことを気に留めるようでもないが。

リド > 何となく空を見上げ、時間を確認しつつ。
緩やかな足取りで路地を抜け帰路についた。

途中誰とも会わぬことを残念と思うも、そればかりは仕様もなく―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリドさんが去りました。