2016/01/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシルヴィ・メディクスさんが現れました。
シルヴィ・メディクス > 薄暗い広場に佇む姿は、ともすれば亡霊と間違われてもおかしくない異様な風体であった。
暗がりに溶け込むようなローブとは対照的に、目立ちすぎる鳥のような不気味なペストマスクで顔を覆う様子に気圧されたせいだろう。
その少女の近くを通る者たちは皆、得体のしれない何かを見たような表情を浮かべて遠巻きに動いている。

(ふっ、ふふふ…きっ、気にしてなどおりませんわ)


その不気味な仮面の裏で、当人はカバンの持つ手を握りしめながら思い切り傷ついていたが。
医者として必要とされることは多々あるが、その患者にすら不気味がられるマスクも、決して好きでつけているわけではない。
目で怪我人や具合の悪そうな様子の人間を目で追うものの、色々と片付いたせいか歩く人々は健康そのものだった。
それは良いことであるが、飯の種がないせいでここのところ体の火照りは収まらなかった。
時々もじもじと体を揺らすのも、亡霊が揺らめくような様子にしか見えない。

シルヴィ・メディクス > 「怪我人がいないことは、よいことなのでしょうけれど……本当によいことなのでしょう?」

つい口から漏れた独白に、自ら疑問符を浮かべ直す。
怪我人や病人がいなければ精気を得る機会が減り、餓えと共に発情する体を背負っているのに、それを良いことと考えた自分が信じられなかった。
近くを通った人間が、亡霊が少女の声で喋っていることに驚いてか、そそくさと離れていくのが視界に入る。

「いっそワタクシが自ら傷を負わせてマッチポンプでも……いえ、それは……何が、いけないのでしょう?」


それを見て憎らしく思った少女は、別の発想に至りそうになるが、なぜか心で踏み止まってしまう。

「ああもぅっ、これもノルマが悪いのですわ」


せめて考え事をすれば体から沸々と起こってくる欲求を紛らわせられると考えたが意味はなく。
魔力を献上するたびに悩まされる体の火照りを紛らわせる方法も思いつかず、ただ気晴らしに空を見上げる。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「────ほむ……確かにアレはかなりあやしいな」

広場に佇むその影を、遠巻きな人混みに紛れて興味深げに眺めている金髪の男が一人。
此処にやってくるまでに、通行人の噂話で『広場に怪しい何かが居る』というのを小耳に挟み、暇つぶしがてらに一目見てみようと足を運んだ次第である。

「……敵意っぽいものは感じないから無害なのかのう。……ンン? 女の子?」

などと首捻って独りごちながらそのアンノウンを眺めていたが、やがてそこから発せられた声は少女のもの。
外見と声のギャップに、男も思わず軽い驚きとともに眉を持ち上げた。
それから顎に手を当て、ふむ、と少し思案。然る後、人混みを抜けておもむろにそちらへと歩み寄って行って。

「……やあやあコンバンハッ。何か困り事でもあるのかね?」

へら、と緩い笑みを浮かべながら、シュビっと片手を上げつつ極々気安く声を掛けた。
少女の独り言の内容はよくわからなかったが、何か苦悩しているらしいのは解ったので困っているのかと問いかけてみたりしつつ。