2015/10/23 のログ
テルヴェ > 眼鏡を注文したあとに食堂で昼食をとり、デザートのオレンジも食べきってしまった。
体質的に(淫紋の効果で)食事を取らなくても生き延びることだけはできるテルヴェだが、栄養を取らなければ身体の調子は悪くなっていく。
なにより、バランスのよい食事は精神衛生上にも重要である。
しかし今日はちょっと普段よりも食べ過ぎてしまった。胃袋が重くなり、つられて脳まで重くなってくる。

「………んー……うー……」

考え事のためにベンチの端に肘をついたまま、テルヴェは舟を漕ぎ始めた。
穏やかな秋の風、商店街から聞こえてくる喧騒が、テルヴェの眠りを急速に深めていく……。

テルヴェ > (ひんやりとして、湿った風が頬にあたる。
 暗い洞穴は魔法の光でぼんやりと照らされ、遠近感を欺く。一見陰はないように見えるが、そこかしこに人が隠れられるほどの隙間がある。
 襲撃に対する物理的・魔法的な対策がほどこされたダンジョンである)

(……テルヴェはその、魔族の棲むダンジョンの奥で檻につながれ、飼われていた。
 許可されないかぎりは身じろぎもできず声も出せず、魔族の命令や愛撫に反応して精液を生産するだけの家畜。
 未熟な精神に快楽と恭順のみを教えこまれ、身の上を訝しむことさえできなかったときの記憶。
 言ってみれば前世の記憶に近いといえるが、それは夢やトラウマという形で事あるごとにテルヴェの前に姿を現す)

「………っ………はぁ………。………っく……」

ベンチで肘をついたまま、うなされるテルヴェ。オレンジの皮が乗ったズボンの股間が、徐々に盛り上がっていく。

テルヴェ > (今日も魔族がやってくる。彼女らは「食事」の際、家畜に対し口を聞くことはない。
 指先から魔力を放つと、テルヴェの淫紋が賦活され、全身の血が強制的に下腹部へと流れ込み、目が眩む。
 めき、と音が鳴る勢いでおちんちんが勃起し、同時に下腹部で前立腺と睾丸が心臓めいて脈動を始める。
 こうなれば、一指も触れずして垂れ流し状態になるのも時間の問題だ)

「………はっ……はひっ……ひ………」

眠るテルヴェの頬に汗が伝う。日はすでに傾き始めている。

「………やめて、やめ……………っあああ!!」

がくっ、とテルヴェの肘が肘掛けから滑り、重い頭が沈み込む。その感覚で、テルヴェは悪夢から意識を引き戻すことに成功した。
あわてて上体を直し、周囲を見回す。平穏に見える、王都の平民街だ。
通行人の何人かが彼の呻きに怪訝な視線を送るものの、忙しさゆえか構ってこようとはしない。

「………はぁ、はぁ……くそ、ちくしょう……」

あの頃の夢は、魔族から解放された後も何度も見させられているが、冒険者になってからはその頻度が上がった気もする。
……あるいは、王都に来たのがきっかけなのだろうか。
楽しい妄想でうとうとしていたところで気分を害され、思わず舌打ちをしてしまう。

テルヴェ > 「………っ! ぅ……」

立ち上がろうとして、股間に衝撃が走り、思わず硬直してしまう。
固い布地のズボンを押し上げていたテルヴェの男の子は、布の中で皮も剥けてしまい、ぱんぱんに張った先端にヒリつくような刺激を与えてくる。
テルヴェはベンチに座り直し、周囲の目を気にしてぎゅっと脚を閉じ、手を太ももの間に挟んで勃起を隠す。
外で、しかも公衆の面前で眠ってしまうとこういうみっともない状態になってしまうのか。テルヴェは今更ながら後悔した。

「……はぁ……ふぅ……」

深呼吸し、気持ちを落ち着ける。そもそも悪い夢は夢にすぎず、今は平静を取り戻しているつもりではいる。
あとは海綿体に注ぎ込まれた血液が引いていくのを待つだけなのだが……人通りの中で勃ててしまうのはひどくみじめである。

「………くそ……強くならなきゃ……強く……」

うわ言のように、そう漏らし続けるテルヴェ。過去の記憶に引きずられず、真に自由に生きられる強さを、テルヴェは求めていた。

テルヴェ > 強くなるには、どうしたらいいだろう。
良い装備を揃えて、剣や弓の腕を磨いて、いくつもの困難な依頼を成功させて、ダンジョンの深層から宝物を持ち帰り、怪物の首級を上げ……。

……それで、テルヴェはこの悪夢から解放されるだろうか? 過去から……。
テルヴェをこんな境遇においた張本人はすでに、別の冒険者によって討伐されている。復讐などというモチベーションはない。
それでも何かしら恨みでもって行動するなら、すべての魔族をやっつけねばならないだろうが、現実的ではない。
……もちろん、今のテルヴェではどんなに弱い魔族にだってかないっこないが。

しかして、魔族に怯えっぱなしでは「自由闊達な冒険者」の像からは程遠い。
それこそ記憶を全部消してしまうかしないかぎりは……。

「はふぅ……まいっちゃうね、まったく……ハハハ……」

ようやく収まりを見せてきた勃起に、テルヴェは再び腰を持ち上げる。
そして宿への帰途についた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からテルヴェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区:魔具・雑貨店「月光の歯車」」にケイシー(少年)さんが現れました。
ケイシー(少年) > 「あーあー、やっべぇなコレ。先々代の王さまン時の硬貨じゃねぇか…
今でも通用すんのかねぇ。むしろコレクション価格とか付いたりしてねえかな」

 ここを開くのは果たして何年ぶりだったか。流石に長年沈殿したホコリが一面を覆っている。

「さっすがに、先に掃除だなコリャ。クソ真面目にやってたら日も暮れるだろうから…」

 指をパチンと打ち鳴らす。もぞもぞと、積もっていた堆積していた塵芥が動きだし、一所に集まって行った。

ケイシー(少年) > もぞり、もぞり。
塵芥の塊はだんだんと小さな人の形をなしていく。
これが小麦粉か何かであれば、クッキーマンにでもなるのだろうけれども。

 見た目の若い魔法使いがもう一度パチンと指を打ち鳴らし、空の桶を指差すと、
クッキーマンならぬ塵芥マンは文句一つ言わずその中へ飛び込んで人の形から開放された。

「さてと…んー、コレだめだな、腐ってる。こっちは…干からびてるけど、まあ行けるな」
棚やら床やらに並ぶ雑多な物を、まだ使えるものと処分すべき物に分けていく。

ケイシー(少年) > 「コレは…ん、魔力注入すりゃ行けるか。この箱の中はなんだっけか…
ああ、精力剤か。分離しちまってるな…」

 少年の背後でゆっくりと大きな本が開き、そこから古びた紙の色をした手がニョロリと這い出てくる。
腕には文字がビッシリと刻まれており、見るからに禍々しい。

ケイシー(少年) > 「うわビックリした!
そうかお前ここに置いてかれてたんだっけ、久しぶりだな。」
 振り向きざま伸ばされた手を見て少々慌てたものの、その手を握って軽く振ってやり、本の中へと押し戻す。

「お前は流石に持って帰った方がいいな、ここじゃ落ち着かなかったろ?」
そう語りかけながら、本を帽子の中へと押し込んだ。こいつは師匠の書架に戻してやるのが良い。

 ひとしきり分別を終え、煙突がつまっていないかを確認すると不用物を暖炉の中に積み上げ火を放り込む。
最初こそじわじわくすぶっていたものの、やがてゴッと音をたて不思議な色に炎が燃え上がった。

 ケイシーは暫く炎を見つめていたが、やがて椅子にトンと腰を落とし、ブックスタンドから適当な本を一冊抜き出してのんびり読書に没頭しはじめた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区:魔具・雑貨店「月光の歯車」」にテルヴェさんが現れました。
テルヴェ > 「………あれ? こんなところにお店、あったっけ……」

『月光の歯車』の戸の前を通り過ぎるテルヴェ。いままでこの戸が開いているところは、見たことがなかった。
戸の中をちらりと覗けば、薄暗い中に雑多に積まれたアイテムの数々。奥には暖炉の灯りのゆらめき。
倉庫とも人家とも違った趣。お店なのだろうか……それにしては素っ気がない。

テルヴェはお金を貯め始めた新米冒険者、遺跡で見つかるアイテムや魔法道具の類に興味津々のお年ごろ。
ここがお店であれば、ぜひとも覗いてみたい気性である。良いアイテムがあっても買うお金はないかもしれないが、目標にはなる。

コンコン、と開いた戸をノックしたのち、テルヴェは静かに店内に踏み入る。

「……おじゃま、しまぁす……えっと、ここって、お店ですか?」

幼い声が響く。

ケイシー(少年) > 「ほーい…」
気のない返事を返し、机上から栞を一枚取って本に挟み込む。

「いらっしゃい。一応は店…」

…ん?こいつどっかで見た事有るな…どこだっけ……
あ、あれだ。壁尻の…テル…テル……まぁいいや。

「店じゃなけりゃぁ、お化け屋敷ってトコかな。なんか、探しもんかい。
 それとも、薬の調合?媚薬・毒薬・笑い薬に下し薬。
 まあ、なんとなく覗いたってんでも構わないけどね。」

 今までにテルヴェも色々な店を見てきたが、ここの店内はややガラクタ度が高いように写るかもしれない。
 色々と不思議な物を扱う骨董品店というよりも、ちょっとした玩具箱と言った方が似合う。

テルヴェ > 「………んっ?」

どんなおじいちゃんおばあちゃんが出迎えてくれるのかと思いきや、店内から響いたのは若い少年の声。
テルヴェは驚くと同時に、どこか不思議な感覚を覚える。いつかどこかで聞いたことのある声だったような……。

店の奥に招かれて、暖炉の火に照らされる少年の姿を見る。
その容姿にも心当たりはない。しかし、似た雰囲気の人を見たことがある気がする。いや、人だっただろうか。

「あ、こ、こんにちわ。特に探してるモノってのはないんですけど、珍しい物がないかなーって。そう、なんとなくです。
 もし今後の冒険者稼業に役立ちそうなアイテムがあれば、買ってみるか、お金が足りなくても頑張って貯めて買おうかなって。
 お薬の調合もやってらっしゃるんですね。……うーん、僕が薬を使うにしても傷薬とかくらいだなぁ。他にどんな薬があるんだろう」

薬の話を振られるが、テルヴェの視線は店の棚のあちこちに移りがち。用途不明のアイテムがいっぱいだ。
テルヴェ程度の練度では、説明書でもなければガラクタと魔法のアイテムはなかなかつかない。
不用意に触れて誤作動させても怖いので、やたらには触らず、眺めて回っている。

「……ねぇ、店主さん……でいいんですよね。それともお留守番?
 僕、冒険者のテルヴェって言うんですけど。変なことを聞くかもしれませんが、僕、あなたに以前お会いしたこと、あったりします?」

少年に向けて、テルヴェはおずおずと縮こまりながら問いかける。

ケイシー(少年) > 「他は滋養強壮剤だったりちょっとした惚れ薬だったり…
そうだな、冒険に出るんだったら虫除けの香や、足のむくみを取る塗り薬なんてのもあるぜ」

 (噛み付く)本。(カン高い声になる)ポーション。(全くなんの変哲もない)バネの玩具。
(自分ごと世界が止まる)懐中時計。(歩くたびにピヨピヨ音がする)サンダル。見慣れない虫の標本。
珍しいといえば珍しいのかもしれないし、本当にただのガラクタかもしれない。

「んにゃ、一応店主。」
そうだ、テルヴェ。前に会った時よりも、少し顔つきが引き締まったようにも思える。

「前に?どうかなあ。会ったかも知れないし、会ってないかもしれないし。
 因みにそのセリフ、ナンパに使うのはやめとけよ。」

 少しばかりニヤニヤ笑いながら、机の上にヒジをつき、手の上に頭。
 椅子に腰かけたままの高さからテルヴェの顔を見上げる、黒の三角帽子ごしの猫のような瞳には、確かに見覚えが有る。

テルヴェ > 「あ、虫除け。それは便利そうかも! ……とはいえこれから寒くなってくるから、夏にまた買おうかな。
 疲れを取る薬はあると便利そう。よかったら、何本か見繕ってくれます?」

これまでは節約のために、ポーションなどといった消耗品には極力手を出さず、最低限の応急処置道具と薬草だけで乗り切ってきたテルヴェ。
しかし冒険で未踏の地に踏み込むようになれば、自分の実力以上の力が求められる局面もあろう。
消費財をうまく活用する術もまた、冒険者の技術だ。

「そんな若さで店主なんて、すごいですねー。なかなか居ないですよ。
 僕なんかじゃこんな量のアイテムのこといちいち覚えてらんないし、商売だってよくわかんないし。
 ……アハハ、別にナンパじゃないですよぉ。なんか、ほんとに会ったことあるよーな気がしただけで……うん、気のせいっぽいです」

ケタケタと明るく笑いながら、バネ玩具を手に取り、ビヨンビヨンと伸ばしてみたり。
しかしそれが冒険の役に立ちそうにないことを悟れば元の場所に置き、武器やバッグといった身の回り品を探り出す。

「……そういや、外はあんまりお店っぽくなかったですけど、ここってなんていうお店なんです?
 あとできれば、店主さんのお名前も。なんか、歳近そうだし、友だちになれたらうれしいなーって……ふふっ」

ケイシー(少年) > 「ん、足の薬な。ちょっとばかし独特の香りがするけど、平気かい?」
 言いながら幾つかの乾燥材料を用意し、液体を加えて手早く混ぜ合わせる。

 「魔法使いのみてくれなんざアテにならねえよ。それにまぁ、俺が開いた訳でもなくて、受け継いだモンだしな。」

 怪しげなブロウパイプ。バネで刃が飛び出すナイフ、刺した際自動的に刃が収納されるすぐれもの。
先端の丸められた飾りけのない剣は、何やら陰鬱な雰囲気。この並びに置かれているのだから何かしらの武器であるだろう、くの字状の何か。

 小さなポケットがやたらついた背負い鞄。何かの図形が記された水袋。丈夫そうだが、やや色の目立つ肩掛け鞄。色々な物が、あるには有る。

「ん、ここかい?『月光の歯車』。俺か?俺はなー…っと、出来た出来た。匂い大丈夫かどうかちょっと、嗅いでみな。」
果たして名前を告げたものかどうか。ケイシーという名前自体は、名乗る為に用意された名前ではあるのだが、この場合は…

テルヴェ > 冒険道具の棚を見れば、妙な紋様の浮かぶ水袋が目を引く。体力的にある程度無理の効くテルヴェであるが、水なしでの旅はやはり辛い。
何かしら特殊な効果のある水袋であれば、効果によっては持っていて損はない。手にとって封を開け、中を覗いたり、匂いを嗅いだり。

「魔法使い……アハハ、そ、そうですよね。じゃあ、店主さんは実は意外と年寄りだったり……?」

頭をぽりぽりと掻きながら、薬の調合を始めた店主の様子を眺めている。
とんがり帽子……は魔法使いの多くが被っているからいいとしても、飄々としたその物腰、やはりどこか既視感がある。
……それに、見てくれがアテにならないといえば、魔法使いもそうだが、魔族にも言えること。それにミレー族も姿変えの術が得意な者が多いらしい。

「『月光の歯車』、へぇ、おしゃれな名前ですね。
 ……あ、クスリもうできたんです? まぁ、変な匂いでもある程度は我慢して飲みますけどー。それとも塗り薬だったりします?」

促されればケイシーさんの隣に身を寄せるように近づいて、薬鉢の匂いを嗅ごうとする。
その折、ケイシーさんの顔もきょろきょろと何度も流し見している。
どうしても既視感が気になっているようだが、まっすぐ見つめては失礼だということも一応は理解しているようだ。

ケイシー(少年) > 「ん、飲むのはお勧めしないな。
 長々と歩いたりなんだりしてると足に疲労素ってのが蓄積されてつかれるんだが、
それを散らす為に脛やら腿に直接塗りこむんだ。」
 確かに、妙な匂い。臭いといえば臭いし、良い匂いにも思えるし。

 見た感じは歳が近く思える、また背丈も近い店主は、練り合わせた塗り薬をパレットナイフでかき集め、大きな貝殻の内側に塗り入れて、蓋をする。

「あの水袋は、水を入れて持ち歩く為のとはちょっと違う。まあ、入れて行ってもいいんだけどな。
出先で水を見つけたのに、汚れていたりして飲めないって時に使うんだ。
あの中に汲み置いて、1時間程寝かせれば綺麗な水になって出てくる。」

 眼と眼が合う。ニマっと笑って見せるその表情は、なんとなしに猫っぽい。

「永久に使えるヤツじゃないけどな、精々5回程。まあ10回ぐらいやっても飲めなくはないけど、保証は出来ねえな。
5回目より後は普通の水袋として使うのが無難だよ。」

テルヴェ > 「あ、やっぱりこれは塗り薬かぁ。遺跡でポーションぽいの見つけても、飲み薬かどうか分かりづらいことってありますよね。
 ……ちょっと、この匂いは飲みたくはないですね。素直に塗って使います。フフッ。」

目が合い、微笑みかけられれば、テルヴェも無垢さの残る笑みで返す。
その姿形や様子への既視感は消えない……いや、こうして近くで眺めるほどに、疑いは強くなっている。核心には至れないが。
それがなんとももどかしいが、魔術師というのは呪術対策に自分の名前を慎重に扱うという話も聞いた気がする。聞き出せなくても仕方ないかもしれない。

説明されれば、手に持ちっぱなしだった水袋を再び眺め、「へぇ~」と気の抜けた嘆息を漏らす。

「水を綺麗にする袋かぁ。水を作るのは初歩の魔法って聞いた気がしますけど、僕じゃ使えないし、まだパーティーも組んでないから、これは便利そうかも。
 価格によっては買っちゃおうかなぁ……。うーん、普通の水袋に見えるのに不思議だなぁ……」

らんらんと好奇心に輝く赤い瞳で、そう高機能とも言えない水袋を何度も何度もひっくり返して観察するテルヴェ。
よほどに魔法のアイテムに馴染みがないようだ。

……しかし、ふと、再び店主のほうへ視線を戻す。

「キミはこの店を受け継いだって言ってましたたけど、前の店主さんは……その、亡くなられたんです?
 やっぱりキミって若く見えるし……いや未熟とかそういう意味じゃないんですけど、やっぱり僕と歳が近そうに思えるっていうか。
 若くしてこんな店をやっていくのって、大変そうだなぁ、って……」

ケイシー(少年) > なんなら小水でも真水に変えれる物ではある。
水が本来持っている浄化作用を利用した、ちょっとした便利グッズだ。
永久に使える物を作るとなると流石に手間だが、これぐらいなら…さて、いくら付けようか。

 前の、店主。

 ケイシーの師匠である、寿命喰らいのエドが消滅してからもう何十年かが経つ。
『君は大切な人を弔う事ができた』
師匠の墓代わりの積み石に酒を供え、そういったワルセイの言葉は、随分とケイシーに救いを与えてくれたものだった。

「ん、まあ…そんなとこ。
 ここ、ずっと開けてるわけじゃねえからな。何年かに一辺位、思い出したみたいに開けてる。
 あとはまあ、ブラブラしてるからさ、オレっちは。
 さてと、塗り薬とその水袋だったら…」

『オレっち』という一人称がまた、テルヴェのケイシーに対する既視感を裏打ちする。

テルヴェ > 「ほえー、何年かに1回。どうりで今まで開いてるところ見たことないわけですね。
 じゃあ今日この店に入れた僕はラッキーですね!」

少年の顔を真っ直ぐ見つめながら、にっこりと微笑むテルヴェ。
ラッキーなわりに、懐具合の寂しさで大した買い物ができないのがもどかしくはあるが。もっと羽振りの良い魔法使いや冒険者の来客を待ってたのかもしれない。

……そして、『オレっち』という一人称。
それを聞けば、さすがのテルヴェも思い出す。いや、未だに100%の確信とは言えないが。

「……ねぇ、キミ。その口調……もしかして、ケイシーくん?
 ほら、この前九頭龍山脈の遺跡で出会った……っていうか、助けられたときの。
 あのときは歩くネコだったけど……でも、やっぱりすごい似てるから、どうしても同じ人としか思えなくて……」

そう確信に近いひらめきを得てしまうと、目鼻の形のネコっぽさもあのときのネコにとてもよく似ている気がする。
彼の表情を眺めるうち、近視なのもあって、無意識のうちに顔がどんどんと近づいていく。