2025/07/20 のログ
枢樹雨 > 「得て、利となる知識ではないけれど、知って不利益になることもない。」

そんな他愛もない言葉だと、語り乍らに掌に溜まった雨水を地へと注ぐ。
随分と濡れた農道は黒く色付いたふくよかな土。
畑ほどではないが肥えたそれを見下ろしては、水の勢いで少し穿たれた其処を踏み、慣らすようにして。

「そうだね。貴方からは、風の香りばかり。それで戦士と言うのも、不思議なことだね。」

自ら示すように、畑仕事をするには綺麗な手指。
そして貴方の言葉に則りスンと鼻を鳴らしてみせれば、香るは稲穂揺らす柔らかな風。
異形を退治する様も想像できぬとゆっくり瞬きしてみせては、雨受けた右の手を胸元まで引き戻し。

「知らねば不思議。知ればどうと言うこともない。
 私も貴方を知らないから、不思議と思うだけ。
 雨に歓喜するも憂うも、人の子次第だよ。」

どこかのらりくらい、否定も肯定も薄い応え。
しかしそれが在り方なのか、紡ぐ声音に変化はない。
ただ、差し出した傘の意図は明確。
これ以上貴方が雨に濡れること防げば、互いの指先が触れ合う。
雨冷えた指で尚、ひやりと感じる体温の低さ。
妖怪の華奢な指には存外太い竹の持ち手。それを貴方に預けようとするも、絡む指が離れぬならそれも一時留まるか。

「あめ、ちゃん?…そんな風に呼ばれたのは、初めてだよ。
 服が濡れたとて支障はないから、気に病む必要もない。」

思わず呼び方に一瞬目を丸くするが、咎めることはない。
着物も濡れた貴方が触れれば同じく濡れるけれど、それを厭うことなく貴方の方へと番傘を傾け。

「傘はあげるよ。だから早く帰って、母を安心させると良い。」

エリビオ > 「戦士なんて……闘うのは好きだけれど本業は学生。
 たまに生活資金を稼ぐために冒険者をしてるのさ。
 君が雨を降らしてここの人を助けたように……俺も誰かを助けたいから。」

すり寄るその人が鼻を鳴らすならば、照れくさそうに身をよじりつつも、こちらも髪に鼻先をよせて、スンと鼻を鳴らし。

「雨ちゃんからは不思議な匂いがする。雨の匂いとも違う……
 ふふ、雨ちゃんって名前気に入らない?それなら君が名前を作って教えてよ。
 エリビオと名知らず、じゃ格好がつかないから。」

語り合う間も指先は受け取るかどうか迷っていた。やがて預けられればそっと受け取り。

「雨で濡れても平気。綺麗な着物きてるのに、頓着がないんだね。
 それならもっとくっついちゃう……なんてね!」

本音も戯れも半々、腰に腕を寄せてくっつく真似をする。
存外たくましき体を華奢なその人の躰に寄せてゆき。

「俺には両親はいないよ……それに、雨の中で君を置いていくのもゴメンだ。
 一緒に傘に入っていこうよ。どこか体を乾かせる場所まで。」

そして2人天と地が紡ぐ糸の中、身を寄せ合い歩みを重ねることで――

ご案内:「平民地区 農村地帯」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「平民地区 農村地帯」からエリビオさんが去りました。