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参加者(0):ROM(1)
Time:22:02:41 更新


ご案内:「王都マグメール 地区不明 コロシアムの場」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。 (12/15-03:01:55)
メイラ・ダンタリオ >  
 地区、不明
 開示、無し
 平民とも富裕とも言い切れない調度品と空間の仕上がり方。
 狭間が近いものの、意図した半歩ではない。
 中央のみには喧騒と悲鳴があり、周囲はダイラスのように騒ぎ立てるのではなく眺めている。

 冬を迎えた冷気が溜まる王都の空気
 メイラも装いこそ、黒い基調 動きやすい形にしてから変えることもしなくなった下半がある。
 だが肩から羽織る厚みのある悪狼の毛皮は整った毛並みをしている。
 見るからに暖かそうな姿ながら、手元にはグラスが一つ。
 透明度よりも彫り込みを意識した細工物には赤というよりも紫に近い
 渋みや酸味よりも甘さを思わせる酒
 満たした姿から今は数口減らしたもの。

 席は遠目 座るよりも立ち見を選んでいるのは寛ぐではなく眺めるを意識しているせい。
 今中央は奴隷ではなく、粗末な朽ちた武器で応戦させられている貴族の成れの果て
 どこかの肥え豚か どこかのなにもしてこなかった浪費するだけの子か
 なるべく痛めつけるように殺せと言われているのか、すぐには終わらない時間が流れている。
 瞳は人材を探すようなダンタリオの性よりも、今はメイラとしてか。
 穏やかな静の顔で、口元にグラスの中身を傾け、気持ちを洗うようにしている。
 見るからに清々しているというのは、片付いた部屋の中で一食一献やるようなものだろうか?
 眉一つすら浮かばせず、死んで当然という人間ほど気兼ねなく見れる悲劇と処刑と残酷さ

 此処で出されるなお特別な酒の色も味も、普段飲み食いするものと比べるばかりの味
 しかし、気持ち穏やかに清々しているように見えるそれは、メイラもまた貴族ということか。


   「―――事が片付いて、こんなにも心を梳いた気分になるのは
    きっと片付かない“アレ”があるせいですわね。」
 
 
 飢えた気持ちも乾く心も
 目の前でいつまでも落ちない熟れようとしない実を見上げるだけでは
 獣は舌も戻すし唾液も乾くというものだ。
(12/15-02:27:31)
ご案内:「王都マグメール 地区不明 コロシアムの場」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。 (12/15-02:11:01)
ご案内:「富裕地区/私邸」からさんが去りました。 (12/14-02:53:15)
ご案内:「富裕地区/私邸」から影時さんが去りました。 (12/14-02:52:45)
> 「……はい、先生。
 ん……、迎撃の為の警護、ですね。守るより討ち取る方が得意ですが……それが仕事なら、まぁ。
 賞金稼ぎは駄目。優先順位が金に置き換わる、ので」

この返答も以前と同じ、娘の中に明確な決まり、線引きがあるようでそこだけは譲らず首を横に振る。
固執と言うべき極まった拘りようはいかんともしがたく、こりゃ駄目だと匙を投げて放り出さても仕方ない。
暗殺者が良いと我儘を散々言った口で、捨てないでと縋って鳴くのだから、つくづく我儘な猫だった。

「そうでしょうか……。真っ当……うーん……。
 暗殺者は私怨や欲で刃を振るいません。命でも狙われない限りは、ですが。
 ……だから、困りどころ。命令(依頼)が必要なのです。

 え……。武人、は……違う。それは困る。名が売れるのは、好ましくない……です」

真っ当な親がそうならば、我が父はどうなのか。考えては見たが、素直には頷けなくなるだけで言葉を濁し。
苦言を告げる言葉には概ね同意を示す。
暗殺者としての掟、矜持を守らんとすれば、師の言うようにせっせと自ら売り込みに行かねば仕事が無い。
飛び込み訪問で営業をかける暗殺者など誰が雇うか。そんな珍妙な話、落語にもなりやしない。
そう言えばば、タナール砦へ出かけたことも報告していなかったと思い出すも、それよりも困惑が勝ち、ふるふると首を横に振り「違う、そうじゃない」と繰り返すのだった。

言いたくないが、と前置きをして続く言葉には、ぴこんっと耳を跳ねさせ食いついて。
此方を見やる目をじーっと見つめ返し。

「なるほど。ギルドの仕事を察して先に片付ける。私を暗殺しようとした者達のように、ですね。
 平和なことは良いことですが、仕事が減るのは困ります……。
 乱世を、とは望みませんが……必要悪を許容するだけの暗がりは、残してもらいたいものです……」

師の故郷、そして祖先が生きた地が今どうなっているか考えたことは無かったが、少し思いを馳せる気にもなる。
表向きには大きな争いのないこの国のように、穏やかな暮らしをしているのだろうか。
敗して逃れた火守が、何故そうなったか知る由も無いが、平和な世で暗殺業が成り立たないが故であったなら、それは虚しさも覚えてしまう。
暗殺者として生きるなら、どのようにして形を変えてこの血を残すかも考えなければならないのか……。そう思うと溜息が零れた。
ああ、悩むことが多すぎる。くらくらとしてしまいそうだ。

心配性な師のこと、元主の動きを疑り用心するのは良いが、気疲れしてしまわないかが少し心配になる。

「言うまでもないとは思いますが、せっかく切れた縁を繋ぎ直すことの無いよう、深入りにはご注意ください。

 ん、其れは確かに……。屋敷で見た時、全然気付かなかった。
 先生がスーツを着ていると、ぼんやり道ですれ違っても気付かないことがありそうです……。
 それも変装術、と言うものですね。物理的な変装も、此処まで来れば術です。

 は、はい。承知しました。封筒に入れてマジックバッグにしまって保管、しますっ」

手紙が没収されずに済んだことにホッと胸をなでおろし、コクコクと三度大きく頷いて素直に返事をした。
魔封じがどのようなものかは、また実際に見た時に知るだろう。
部屋に戻ってこっそり開いてなどと言うつもりも無いのだ、封をされても支障はない。

お茶を淹れ直すと聞けば、

「はい、先生。お任せください」

先に急須を持ち上げてお湯を沸かしにかかる。
茶菓子を貰った分の仕事とでも思っているのだろう、生き生きと尾を揺らしながらせっせと働く。
その後ろ姿は、暗殺者よりも給仕係の方がきっとずっと似合っている――
(12/14-02:36:53)
影時 > 「……ほほう。良い傾向じゃァないか。理想な暗殺者、とやらより大事なものだ。捨て去ってくれるなよ。
 
 実績と云うのは下手な売り文句より雄弁に実力を物語る。
 そうそう、そんな感じにな。シュレーゲル卿の護衛を俺がやった時と同じ要領と云えば、より分かり易いかね?
 暗殺者という句で直ぐに浮かぶ活かし方として、賞金稼ぎの道も存外有りかもしれんか」
 
揶揄りたくもなる。皮肉りたくもなる。噂になれば尾鰭も付く。
かの一族はこんな者ばかりか、という疑念すら湧くのも仕方なかろうとも思う位に。
その真偽、真相を確かめるために、一番弟子の力を借りて故郷に飛んでみた処で――さて、どこまで掴めるやら。
全ての答え、ないし指針を示し得る諸々は鬼籍、彼岸の向こうに渡ってしまっているのだから。
今口にしたものとて、代替、代償行為となるかは、己をして不足と思わざるを得ない。
いっそ諦めて、放流してしまう方が早いのでは、という匙を投げる心理も、過ぎる程に。

「ははは、世間様のまっとうな親も同じ位には思うんじゃあないかねぇきっと。
 ――依頼が無けりゃ動かないのもどうか、とも思うがね。
 タナール砦? 何だお前、あそこに行ったのかね。その手柄は立てられたにしても、暗殺者より武人の方の誉れが勝るぞ恐らく。
 
 あんまり言いたかァないが、な。
 どこそこのギルドの依頼の動きを察知して、先んじて手柄を奪う位の事を重ねなければ、な。
 それすら渋るなら、禍根が残ってでもお前が聞きたくない言葉を云わなきゃならんか。
 世情の動き次第で先細る、取り締まられることもあり得る。
 先行きの疑わしさだけを云えば、存在否定が容易な暗殺技能者の集まりとは、冒険者の将来よりも儚かろう」
 
その考えは実に迷走が過ぎる。良くも悪くも聞き馴染みのある句が出たことで、ぴくと眉を揺らす。
よもや、と顔を歪めつつ猫の目を見つめ、暗殺技能者として注視されよう要件の例を思い浮かべる。
戦乱の世、ならばまだしも。一応の平穏、安定がある情勢では、暗殺者なんてものは珍重以前に使い潰しされかねない。
その実例はもう挙げるまでもないだろう。其れでも未だ、尚も、と願うさまに、如何に言葉を贈るべきか。

「やはりそんな采配、差配を遣りかねん、か。
 ……気が進まんがその方向性も、別途裏取りしなきゃならんかねえ。
 
 如何にもな恰好をしていれば、兵法者を気取るにも丁度よくてなァ。……人を隠すには人の中、だ。
 後はちょちょいのちょい、と付け髭なり化粧なりとかで、風体を変えてしまえば、存外ばれぬものよ。
 
 仮に聖騎士の意向、であるなら、どの面と心境の元にそうしたか、というのが気に掛かる。
 取り敢えずの関係性、それが齎した結果は知れたが、その辺りがどうにも解せんままだ。
 手紙は、後で返してやる。下手に触れねえように大き目の封筒もやるから、入れて鞄の中にしまっとけ」
 
優れた指し手、策士ならやはりそのくらいはやってのけよう、か。
思い当たる節があり過ぎて、尻尾と耳をへたらせる様に苦笑を滲ませ、己の普段着にも意味がある旨を告げよう。
仕入れの経路は確立されているとはいえ、ただ着慣れているだけで選ぶのみではない。
肌色が気になるなら化粧で隠せば、わざわざ術で偽装するよりも易く他者を欺けることを、経験上よく知る。
一先ず、今回の件については、結論は先送りで――問題ない。
覗き込む眼差しに頷きつつ、念のため手製の術符を封筒に擬したうえで魔封じとしよう。

「ははは、気に病んでばっかりもいられねぇからなあ。さて、茶ぁでも入れ直すか――」

盗賊ギルドを介して調べる、ばかりでも芳しくはあるまい。
今暫くの間は、弟子の回りに視点を確保し、見守る/監視を重視した方が良いかもしれない。
そう思いつつ、書き込みを残した黒板を卓上に放り出し、立ち上がろう。
話していれば喉も乾いた。茶でも入れ直して、気を取り直すのも良いだろう――。
(12/14-01:24:35)
> 「それはそれで、売り込み文句としては頭に残る良い宣伝になるかと。
 ……以前に比べ、仕事以外のことも、少しだけ考えるようになりました。
 道具の整備をする時、今日の夕食が何だろうと気が逸れる……こともあります。
 理想的な暗殺者には不要なもの……と、思いますが、こう言うものが先生の言う余裕や遊びなのだと、多少は理解しています。

 う? うー……んー……。さぁ?
 暗殺者を殺す暗殺者なら、常に命を狙われている重要人物……或いは、恨みの渦中で生きる危険人物の護衛となりますね。
 それはそれで、やりがいはありそう……」

また揶揄って茶化す師をフイッと躱して受け流し、また尻尾を振るう。先ほどよりも大きく撓らせる様は、いじける一歩手前の有様である。
ほんの少しの間を空けて問いかけられた言葉には、振り返ってキョトンと目を丸め。
ぼんやりと天井を見上げて考え込み、じっくりと時間を掛けてから、コテンと首を傾げて見せた。
はぐらかすと言うより、本当に知らないのだろう。父親のことを思い出そうにも、記憶にあるのは賭け試合で戦う姿や仕事道具を磨く姿ばかりで、他の火守の事を聞く機会は終ぞなく。
あの彼岸の縁に現れた幽鬼たちはと言えば、皆既にこの世のものでは無く、極まって彼方側へと渡った者ばかりである。必然、暗殺者であろうと拘り極まっている娘と同等かそれ以上だろう。

また新たな暗殺者としての道を示そうとするなら、以外にも肯定的な反応を返す。
問題はそんな人物存在するのかと言う所だが。

「先生を納得させるのは、至極困難……。
 むぅ……。暗殺者として売り込むようなことを働くにしても、依頼が無ければ動きようがありません。
 後ろ暗い仕事……ではありませんが、タナール砦を赤く染める手柄でも立てればよろしいのでしょうか……?
 上手く出来れば、この挑戦権の暗殺が達成できなくても暗殺者ギルドから声は掛かる? それ以外からでも、声が掛かるなら……良い傾向?」

続けて迷走し始め、至った解答はまた師の待ったが入りそうな内容だが、これもまた良い案だと自信ありげに頷いて。

「ん、使い潰す駒……なら、可能性はあります。でも、そうなるように指図をするのはきっと別の人間。
 直接駒を動かさずに、指し手を裏から操る……。結果、関与しても影すら見せない。
 伯爵様はそう言う指し方をします。悟らせず、一つ策が潰れても、予備の策が常にある。堅実な手です。
 私はあまり相手にはしたくない……です」

これまで命じられ働いてきたアレやコレや、シュレーゲル卿邸宅襲撃の件含め、思い返せば気付く点が色々とあるようで。
話す内にゆるゆると耳と尾がヘタレてしなしなと元気をなくしていき、口を閉ざしてしまった顔は何とも言えない、辟易とした憂鬱さが色濃く出ていた。

「目立っている自覚はあったのですね。
 印象が強く残る……と、先生様に名前、人相が冒険者や教師として知れ渡っていれば……うん。

 私としては棚から牡丹餅? またとない幸運、と考えましたが。
 簡単に、鵜呑みにしない。少し、調べてから……結論は出します」

娘の方は一先ず納得はしたようで、今一度言葉にしてから、此れで良い?と問うようにチラリと男の顔を覗き込む。
知人とターゲット(仮)の関係性は未だ不明な点は多く、肩を竦めて「よくわからない」と首を傾げた。

「――……夜に眠れるなら、それはもう十分かと」

黒板に記された内容を見ても、其れ以外は否定することも無い。
喉を鳴らして嗤う師は何処か楽しそうに見えて、このまま暗殺のターゲットを盗られはしないかと、少しひやりとした。
(12/14-00:23:09)
影時 > 「おうおう云いよる云いよる。
 そのうち一日一殺、人を殺さなければ眠れない猫、抜けば殺さなければ収まらぬ刃とか、尾鰭がつきかねんな。
 それ位、今お前さんが口にした在り方は危ういものよ。如何に俺とて、そこまでは定まらなかったぞ。
 
 ……よもや、火守全体がそんな手合いじゃあるまいな。
 
 俺としてはまだ、暗殺者を殺す暗殺者、みてぇな塩梅ならまだ許しようがあったんだがな」
 
不満げな尾の一振りを見遣りつつ、茶化すような声音を返してみつつ、蛇のような眼差しで弟子を見遣る。
常識を己が説くのも全く可笑しい戯言だが、冗談めかさなければいよいよ頭を抱えたくもなる。
かの“火守の徒”は暗殺を義務としている郎党であった、いう与太があれば信じるかもしれない。そんな言い草でもあった。
蛇の道は蛇、という。暗殺者を殺す暗殺者という冗談めいた在り方も、身の立て方としては在ろう。
売り込み方、立ち回り方を気をつけるならまだ、在り方の一例としては得心も得ようが、意に添わぬものであろう。

「どうしても俺を得心させてぇなら、其れ位やってみせないと困る。
 出来ることのひとつになら、それは篝。お前さんの実績、他者に売り込める確かなものにもなろうなァ」
 
そんなに弟子自身が得ている縁を軸にしたいなら、どれほど件のギルドが良いものか等々、明瞭化位はしてもらわねば困る。
同時にこれは、情報収集に関する修行の題材にも出来る。
敵を知り、己を知る。それで百戦危うからずとはいかなくとも、知らぬよりはずっといい。

「そうだろうな。篝が腕っこきとは言え、あれが他に同格かそれ以上の者を取り揃えてない筈がない。
 思考実験として、使い潰すつもりの駒なら、どうだ?
 わざと敵に情報を流し、囮の如くして、本命に信を置ける手駒を遣わす。卿が襲われた時も裏で手勢を出していたからなぁアレは。
 ……とまぁ、考え過ぎの布石も打ってるかも知らんが、はてさて、と」
 
考え過ぎで終わらせたいが、万一の可能性だけは常に頭の片隅に留めておきたい。
教訓の一例として、そもそもの発端であったシュレーゲル卿の暗殺の件がある。
直接の殺害こそ阻めたが、並行して重要書類の奪取と云うことも起こっていたと記憶している。
どうしても排除したいものが居るなら、一の矢、二の矢、とばかりに仕込む可能性を否定し難い。考えを巡らせながら、黒板を覗き込む顔を見遣り。

「確かに? 後まぁ、刀遣いと云う点もこの王都なら引っ掛かりもするか。
 ……それはそれで、先入観を目くらましに装う手もある。珍しい恰好ってのは印象付けるに都合が良くてな。
 
 ――ふむ、確かにそれは聞いてなかったな。
 俺も、好き好んで面倒は抱えんよ。いつぞやの伯爵に話を付けた時点で一区切りで済ませていたつもりだ。
 しかし、こうも篝、お前さんがどうしても希う道に適うように話が出てくると、嫌でも気に掛かる。
 
 ……この前の話もあれば、余計にな。
 で。知人、知人、と。……暗殺ギルドを差配しているか関係者か、私兵でもそう呼ばせてンのか。
 クク、全く。気になって夜しか眠れなさそうじゃあないかね」
 
郷に入っては郷に従え、という。その上でわざわざ羽織袴を普段着とするのは、刀を差し易い上に記号が出来るかだ。
特徴の一つにしてしまえば、いざという時に服装一つ変えるだけで、己を表面的に知らない者への目くらましに出来る。
腰の刀も然り。表道具、とはよく言ったもの。
刀は自分の中で最大の破壊力を出せる得物であり、人を殺すなら無手でも為せる。
だからこそ盗賊ギルド構成員として振る舞う際の変装にも、興交じりながら徹底している。
黒板に先に記した聖騎士の名の近くに、「隻眼の斥候」という文言も書き加える。
調べを進めるなら、その先に出てくるのか、否か。気に掛かる。……隠形を徹底した己を看破するのかどうかも。
(12/13-23:23:23)
> 言いえて妙な呟きに、頷くことは無いが、荒く尾を一振りして答えた。
誰に望まれたわけでは無い、自分の願いを呪いだ何だと言われれば否定もしたくなるのだ。
口にはしない抗議の一振りだった。

「……はい。命令には従いますが、容易く諦めがつくならば……先生の命ずるままに忍になっています、ので。
 展望? 暗殺者になって、火守を名乗る。それが私の展望。
 先生が助言してくれたから、神火が使えるようになった。火守を名乗れるようになった……から、後は暗殺者に戻れば、それが最良。
 後は暗殺を続ける。それで良い……それが良い、です」

暗殺者になることで望みの全てが叶えば、その先も変わらず誰かの命に従い働くのみ。
以前、師は『死ぬまで暗殺してるつもりじゃあるまいし』と言ったが、まさにそれ、其れこそが娘の望む人生、生き様であると、今この場で明確に答えを出す。
食や遊びで楽しみを覚えはしたが、それは仕事の前ではまだ霞む程度の輝きらしく、マタタビでも褒美に出るのかと言う具合に猫は仕事にまっしぐらであった。
無論、その仕事の後に@師:主@から労いや褒め言葉があれば、より喜ぶだろうが。

「う゛……。清廉、とまでは思ってません。仮も殺しを請け負うギルドです。後ろ暗いことはあって当然と考えます。
 やはり、それも踏まえて一度調べた方が良い……ですか?」

知り合いと言えども人の話を鵜呑みにするな。そう言われ、今も念入りに釘を刺されては、やはりと尋ねて窓の外へと視線を遠くへ向ける。
頑張って調べる、そう意気込んだ直後に待ったをかけられて。行き場の無かったやる気を今一度起き上がらせようと言う心持ちだった。
それはそれとして。暗殺者ギルドのことから、話題は手紙の方、主にターゲットとその周辺へと移り変わって行く。

「伯爵様には優秀な専用の駒が両手で収まらない数あると聞きます。
 ギルドに知り合いがいることは……考えられますが、駒として使うならば手持ちの信用できるもの以外は使わないのではないでしょうか……。
 契約関係に無い駒は、いつ裏切るとも知れません……ので」

もしも、元主がギルド絡みのこの件に関わっているにしても、それは尻尾はおろか影さえ見せずに、何かもっと大きな利を得るための下拵え……と、そこまで想像して首を横に振り嘆息する。
直接的に手を下す理由が無い以上、考え過ぎるのもよろしくない。
用心するにも、まずは目の前のことを優先すべきだろう。
コツコツと固い黒板を叩く音に引き寄せられ、すすすと傍に寄り脇から覗き込む。

「顔は見せずとも、私と行動している異国風の男と言う時点で簡単に絞れてしまいます。
 一応、外に出る際は認識阻害の術は使用していますが、鼻が利く者や、魔力の流れまで読み取るような特殊な眼を持つ者に掛かれば、簡単に看破されてしまうので……術も完璧とは言い難い、です。

 ……あ。そう言えば、先生に伝えていなかった……かも?
 聖騎士が使っているらしい宿は知っています。危険人物と判断したので、関わって詳しく知る必要もないと思っていたのですが……。
 直感で申しますと、人情は有りますが、情で傾く相手ではないと感じました。人を殺めることに躊躇は無いと思います。

 う? 手紙を運んでくれたのは私の知人。斥候が得意で、隻眼だけどとても目が良いです。
 ……知人にとって聖騎士は恩人である……と、言っていましたが、良好な関係とも言い難いようでした。
 少なくとも、仲良く肩を組んで酒を飲む間柄ではないです」

書き足されていく文字を眺めながら、ああそう言えば、と言う調子で情報を継ぎ足していく。
(12/13-22:37:10)
影時 > 己が今のこの弟子を拾う前、猫を拾う前、“どう”だったかまでは分からない。こうでないかと、薄々察する程度だ。
ただただ前任者よろしく指示する、命じるのは簡単で。だがそれでは面白くないと思う己をよく自覚出来る。
忍びの里で買い上げ、一から躾けた、仕込んだもので無いのだから当然だ。
反抗心、反撥心さえ時に生じうるのも是非も無い。加えて猫である。ミレー族、もとい、猫とはそういう生き物であろう。

――とはいえ、暗殺者。今もなお拘泥する生き方が何分厄介だ。

この国、この国の情勢で、どこまで求められるかが図り難い。
政争といっても大っぴらに火の手が上がる程のものを、特にこの王都でどれほど起こせるものか。
暗殺者の寄こし合い、迎撃には何度も従事したが、其れとて所詮は事例の一端でしかない。全て、と語るには狭い。
ただ、間違いなく云えることは一つ。暗殺者として遣わせた者は、仕損じた際、直ぐにその存在を否定可能な者とすること。
それが出来なければ、貴族同士の暗闘という枠組みの中には収まらない。
にも拘らず、それでも、なお、それが良い。此れが良いと宣うのは――。

「……呪いのようだよなァ。
 
 当然だろう。俺が拾った命だ。俺の許可なく、ゆえなく、得心もいかぬ所以で損なわせるつもりはない。
 かと言って、止めろといって後ろ髪引かれ続けるのも、好かんだろう?
 
 全く。暗殺者になってどうしたい、という展望もなかろう?ン? 他者の命令を己が生きるよすがにしてどうするんだか」
 
全く、呪いのよう。父の報いが子に来た、というのは言い過ぎでも存外的外れでもないように思える程。
安直に命令を下した処で、はいそれまで、とならないように見えるからこそ難しい。
押し殺せば押し殺す程、再燃再発した場合の反動は、己の想像を飛び越えることだってあり得ないとは言い難い。
大人になったら、ああなりたい、こうなりたい、という子供が。
為ったら何をしたい、というその先を述べることが出来ないさまにも今の弟子の有様はきっと似よう。

「――話を持ってきた相手が、篝にとって信が置ける相手、かもしらンが。
 大っぴらでないものが、清廉であると思うなよ? 
 賞金稼ぎもまぁ、真っ当とは言い難いが、公言出来ないヒトゴロシを請け負うものであるならば、猶更だ。
 ……裏取りはギルド含め、後ろ盾もない身で持ちかけられた話を請け負う時の作法だ。よく覚えとくといい」

正しい情報も誤情報も人を走らせ、惑わせるチカラを持つ。仕様もないことさえ一喜一憂させるのだから。
殺しがしたいと云うなら、賞金首をつけ狙う賞金稼ぎでも不満なのだろうか。
そんな問題ではないかもしれないが、家族のような、アットホームな暗殺者集団というのも、どうにも疑問符が付く。
これが暗殺者ギルドである!という定義が無いのだから当然だが、いずれにしても真っ当ではあるまい。
裏取りを試みても、直ぐに情報の鮮度が落ちるかもしれないが、云われるがままに危ない橋を渡るよりはまだマシだ。

「だと良いが、な。……篝の感覚を信じたい、とは思うが、ふむ。
 今回みてぇなカタチで暗殺者ギルドに迎え入れ、遠回りのように駒を動かす……とするにしては、聊か迂遠か」
 
かの伯爵の盤上に今も居る可能性も考える。皆無ではない。だが、その可能性は薄い、か細いように思う。
あの日の約定、契約を踏まないように穴を衝く位はあり得る、穿ち方はあり得るとしても、過程としては遠回し過ぎる。
一手二手を読むものではない。こつこつと黒板を指で叩きつつ思う。
十手二十手すら読むような、予定表を厳密に組むような工程になる。そんな暇があるならまだ、即効性のあることを選ぶだろう。
 
「伯爵の知己、か。……面識はあるにしても、素顔は晒ささなかったつもりだがね。
 とは言え俺の認識しない、想像だにしない何かを伝える、ということもあるか。
 ただ、ナンタラの領地を治めてる者とかだったら、いよいよ嗤うぞ。……嗤えてくる。
 
 その上で強いなら、刃を交えてみるのも一興、だが――……実力よりも、あり方が気になってくるな。
 篝よ。その、さっきの手紙は手渡しだったろうと思うが、運び主は知り合いか?」
 
弟子の声の動き、変化を聞き止めつつ、かつかつかつ、と。黒板に書き込みを続ける。
━━━━━━━━━━
ヴァン:標的?聖騎士?伯爵の知己、屋敷の者も知っている


━━━━━━━━━━
といった具合に、走り書きながら聞き止めたものを記述する。関係性を可視化することで理解をし易くするように。
(12/13-21:46:40)
> 耳の痛いこと、都合の悪いことは聞きたくないと耳を伏せてしまうのは、実の所、師の下についてから出た悪癖だ。
三つ首の蛇の下にあった頃は、命令を拒むことも意見することもなく、反抗心など生まれる隙もなく、ただ主の望む駒を演じ続けていた。
今は縛りを解かれ、本来の自由気ままで我儘な猫の性分が顔を出し始めたと言ったところか。
だがそれも、もとは良く躾けられていた猫である。師が本気で厳しく叱ればすぐにでも直すだろう。

師が言う通り、元主が言葉通りの後ろ盾であったなら、娘は切り捨てられはしなかった。
しかし現実はこうだ。元主は娘に自決を命じ、それでも生き残ってしまったとわかれば、知らぬ存ぜぬとその存在ごと痕跡を消されて捨てられた。
ただ仕事と寝床を与えてくれる者を後ろ盾と言うのなら、それはこの先、師の下を離れ一人の暗殺者として生きていくことになったとしても、変わりは幾らでも作れそうなものだ。
だが、そうなったとして。暗殺者に戻れたとして、行き着く先は死地か、その先の地獄か。
そんな死に方をしては、拾ってくれた師に申し訳が立たないのもまた事実。
わかっている。理解している。だが……望みは捨てきれず、燻っている。これから先も、この望みはいくら蓋をして沈めようとも息を続けるだろう。ならば。

「――ならば……、どうすれば良いのですか?
 先生のおっしゃるように、人を消すことを望む貴族に取り入れば?
 そんなことをしても、先生は良い顔をしないではないですか。

 ……っ、先生が私に命じてくだされば……――」

口にしかけた言葉を押し込め、瞼を閉ざし緋色は陰る。
ただ一言、諦めろと言えばそれで終い。いかに燻り続けようとも、心を押し殺していれば良い。
逆に誰某を仕留めてこいと言われれば、それで娘は暗殺者に戻れる。
簡単なことだ。だが、難しいことでもある。師はけして、楽になるだけの解決を良しとしないのだから。

娘が誰かと徒党を組んで仕事に励むことは今までに一度も無い。
元主が仲間内での徒党を封じ、また隠密を厳守させていた結果である。
冒険者として真面に働くようになり師と共に狩りに出ても、基本はスタンドプレイで協力し合うような機会はまだ無かっただろう。
そう言う意味であれば、娘が知恵を絞り作り上げた新しい術は今までにない物の表れでもあった。
見せる機会は当分先の事となるだろうが。

――茶化してふざければ、娘もまた淡々とだが軽く流して茶化し返すことも覚えたようで。

小さく息を吐き、心を均して平常心を保つ。

「先生のおっしゃりたいことは、一応理解しました。
 確かに、少し奇妙な感じはする……かもしれません。
 私はそのギルドの在り方を良く知らないが故に、そう感じるのかもしれませんが……」

単なる仕事の付き合いだけではない。
金銭で片付ける盗賊ギルドとはまた違う、もっと……一族、家族のような繋がりであったなら、迎え入れた者には相応の扱い方もあるのかと想像してみるが、やはり未だ部外者である己に対し詫びとは言え、試練の機会を与えると言うのは少々疑問に感じて来る。今更ながら、だが。
つくづく人の言葉をそのまま受け取ってしまう心の鈍さが残念な弟子である。

「うぅ……。あ、悪人、敵意があれば……私だって嘘かどうかくらい、わかります。

 ――いえ、それは無いと思います。伯爵さまはあの時、『どこで何をしようと、私はお前に関与しない。』とおっしゃいました。
 あの方が、口にした約束を違えるのを私は一度も見たことがありません。
 ……騙されやすいらしい私の言葉では……信用ない、かも……ですが」

自信がどんどんと陰って行く中、一つだけ断言できることだけをはっきりと首を横に振り意見する。
数年単位で積み上げられた信頼は果たして今も信じるに値するかは、また自信が無くなって声が尻すぼみになってしまうのだが。

「…………とある貴族の友人であるとその者は語っていました。その貴族が伯爵様……であると考えます。
 どれ程親密な仲かは存じ上げませんが、屋敷の者とも交流がある口ぶりでした。
 伯爵様に関わること自体が危険と言うわけではありませんが……あまり、古巣を戦場にはしたくない……と、言いますか。
 既に私も、先生も、伯爵様とは面識があります。どこで情報が相手に伝わるか、わかりません。
 私のことは既に知られていました。ので、先生も……油断すれば足を掬われることになるのではと。

 ……正直に言います。今の私では、真面にやり合っても相手を殺せる未来が見えません。
 影時先生と聖騎士、どちらが強いか……どちらの本気も見たことがない私では、判断が尽かない……です」

以前、元同僚に手紙を書いてくれと言われた奇妙な男との出会いを思い出しながら、言葉は徐々に重く、やがて途切れて俯いた。
(12/13-20:53:07)
ご案内:「富裕地区/私邸」にさんが現れました。 (12/13-20:25:42)
ご案内:「富裕地区/私邸」に影時さんが現れました。 (12/13-20:23:57)
ご案内:「富裕地区/私邸」から影時さんが去りました。 (12/13-17:39:10)