2025/11/23 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に彷徨う獄吏さんが現れました。
■彷徨う獄吏 > 陽が暮れて闇が山脈の麓を包み始める頃、街道を見下ろす木々の影で赤い瞳を爛々と輝かせる魔物の姿があった。
月明かりに照らされる街道の影で、その巨体をまるで木々の一つのように見立て、傷跡も消えた太い腕に握られた棘の生えた杈が恐ろしい枝のように影を伸ばしている。
魔物はその場からピクリとも動かずに反対の腕に携えている鎖束の擦れる音すら立てない徹底した隠密ぶりだった。
そうして身を隠している魔物は街道に注意深く視線を配り、音にも注意を払い、獲物たりえそうな馬車や旅人が通りかかるのを待ち構えていた。
「…………」
魔物が襲う対象の多くは人間であり、それらは夜目が効かず鼻も鋭敏ではない。
日中堂々と襲うよりも確実な手段を取る魔物は、決して人通りの多いとは言えない山賊街道で何時間も待つことを選んだ。
大規模な食糧の調達の必要があれば村をも襲う魔物であるが決してその身は不死身ではない。
討伐を避けるための不気味なほど機械的な所作は、魔物が今まで生き永らえてきた理由の一つだった。