2025/08/10 のログ
モルガナ > 夏の海辺の警邏。
この時期に出現する亡霊の類、もしくは魔性の類。
近隣の村々へ及ぶ驚異の排除、という名目ではあるが、
騎士団にとっては近年及ぶ酷暑から逃れる為の名目でもある。

故にこそ、お飾りの騎士団長は下策を選ぶこととなる。

騎士団を散開させての警邏。効率化の名の元に警戒を怠り、一人で海辺を哨戒する。

「……なんですの、この音……。」

夜風に石竹色の髪をなびかせ、波音に混じって聞こえる不可解な音に耳を傾け、足音を殺して近づいていく。
だが、それでも感覚が鋭敏な者であれば気づくであろう。特にグリーブを履いた足取りでは尚のこと。

「……! そこの貴女、大丈夫、です、の……?」

音の根本に近づいていく。最初は月明かりに照らされて見えたのは女性の顔と裸身。
それに無警戒に走り寄り、そして全貌を見ることとなる。
異様に大きな乳房。そしてそれ以上に黒翼。
周囲に蠢く何か。

「ひっ……!」

声を小さく漏らし、震える手でサーベルの柄を握ろうとする、その動きは明らかに狼狽と焦燥に満ちていて。

アルファ > 自らの、或いは異形により孕まされた子か。
それでも己の身体より出でる命を喰らうという行為には呻き声のようにごめんね と繰り返し懇願する。
天の遣いとも呼ぶべき化身が、地上の人間と同様に血肉を喰らう罪業を天より仰ぎ見る神に懺悔するとは皮肉なものである。

「……んぅ……」

産み落としたゼリー状の塊のうち、膜を破り体表をはいずり回っていた何かが生まれたてとは思えぬ速度で身体から離れていく。
サンダルのものとは比べ物にならない重い足取り、金属音を鳴らしながらぐしゃ と砂地を踏むグリーブ。

この人型は監禁でもされていたのか、視界は目隠しで封じられ何も見ることが出来ない。
しかし、ヒトならざる何かである彼女の五感は十分すぎる程に鋭敏であり気配の主の方向を正確に捉え、寝返りを打って振り向いた。

「……そこに……いる……だ…れ?」

力なくぐったり横たわっていた有翼の人型が、力強く片手を目の前につき、むくりと立ち上がる。
そして、すんすんと鼻を鳴らせば、はぁ……と艶やかな吐息を零して久々の”人間”の雌の存在を捉えた。

「……”ニンゲン”…………」

れろん と出した舌で自らの唇を舐め回すと、先ほど噛み砕いた自らの子が潰れたものであろう、毒々しい紫の汁が口からどばどばと零れ。
白く小さな下あごが紫黒の汁でびしょ濡れになれば、生物を捕食した獣のような禍々しさを露わにして、二本足で立ちあがり


「アルファ、ニンゲン……すきっっ……!!」

ばさっ と黒翼を広げると、異形に怯み狼狽える貴方へ飛びつき、襲い掛からんとする。
自らが好んでやまない”ニンゲン”。繁殖力に優れた、たくさん子どもを産める素敵な……

モルガナ > 天使。
見た目だけからすればそうだった。
だが周囲に蠢くもの。それを咀嚼したかのような口元の汚れ。
黒い翼。封じられた瞳。異様に大きな乳房。
そして、何より、魔力。

逆に己の五感全てが危険だと己へ警鐘を鳴らす。
これは、いてはいけない。一人で挑んではいけない。

「ぁ、ぁああ……。」

起き上がり、己を捉える。その唇から零れ落ちる、というには大量の”体液”に息を呑む。
殺気とも違う害意。明らかに己を”獲物”と見ているそれへ無意識にサーベルを抜き放ち、

「ぁあああああああああああ!」

組み付かれるのを覚悟で、相手がなんであろうと頭部を潰せば死ぬはずだと、
飛びつかれるのに合わせるように繰り出した突きが、外れる。

「ぁ……!?」

紙一重。顔に掠めるように逸れた切っ先は異形の瞳を覆う目隠しの留め具を破壊してしまう。
まずいことが起きる。言いようのない恐怖。
飛びつかれ、組み敷かれながら逃れようとして、相手の顔を見上げて―

アルファ > 人間の信仰や幻想ではしばしば恵みをもたらす存在……
そう描かれていた天使らしきモノ。

それとはかけ離れた存在と知覚できたかもしれない特徴はいくつもあった。
そう、今もこの人型の下半身から何の抵抗もせず垂れ流されっぱなしの異形の塊こそが明らかに物語っている……

「っう……」

頭部に放たれた突き。直撃は免れたが、その際にぱさぁ と片方のもみあげが切れて砂浜へひらひらとちりばめられながら落下。
そして、特徴的な目隠し。それが潮風に揺られながら後方へと飛んでいくと、”素顔”が露わに

「……き、れ……ぃ」

うっとりとした顔で、眼前の女騎士を直視するモノの瞳は”白眼”がない。

否、人の白眼に相当する部分が漆黒に塗りつぶされており、
中心では不定形に変形を続けるピンクの瞳が禍々しくびっしりと血管を血走らせて別の生き物のように爛々と輝く。
それを見てしまった女騎士は、まるで病に罹ったような激しい高熱と朦朧とし始める意識のなか、本能でこの存在から逃げなくては と感じるだろう。

しかし、規格外の乳房と華奢な身体が武装した女体を押し倒す頃にはもう……これから起こる惨劇は決定づけられていたのかもしれない。

モルガナ > 「な、ぁ、う、ぁ……?」

尋常ならざる乳房、そして下半身から溢れて振り撒かれるように垂れ流れるそれが
己の体勢を崩し、足を取り、そのまま押し倒されて質量に呑み込まれてしまう。

その拍子にサーベルを取り落としてしまい、魔力を増幅するティアラも浜辺に転がっていく。

何よりその瞳に見据えられて、歯の根が打ち震える。
それは恐怖だけでなく、見据えられるだけで体を包み込む熱が、ほつれていく意識が警鐘を鳴らし、
乳房を、とうてい押し返せるものではない質量を掴んで押し返そうとする。

白と黒が反転した瞳。魔族にもいるにはいるが、これはとりわけて異質。
そう、これは異物だ。
桃色の瞳が石竹色の髪の女騎士を見下して賛辞する。それだけの知性はある。

「あ、あなた、おやめなさいな……! は、ぁ……、話が出来るのでしょう……?」

一縷の望みをかけて、この期に及んで、まして刃を向けたのは己が先だと言うのに未練がましく逃れようと、
対話を試みる女騎士にもはや逃げ場はなく―

モルガナ > 【部屋移動します】
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