2025/11/12 のログ
ご案内:「ル・リエーの水遊場」にルーパスさんが現れました。
ルーパス > 下層より、地下に連なるトンネルの前、
流れるプールの分岐から、誤って流れた利用者の回収と、
奥にて行われる饗宴の用心棒も兼ねていた。

白いパーカーのフードを目深にかぶり、大きな尻尾は腿丈のパーカーの中へ納め
流れてしまった助けを求める少女の手を引いてはプールサイドに上げ、
不幸な事にその瞬間を見初められてしまえば、狼には渡す以外の選択肢がない。

流れた少女を守る存在でもありながら、見初められれば逃がさない、そんな役割も。
そんな中、そういった事で生計を立てている女性たちは、男の入りを狼に問う。

「今は、男性の方が多く、稼ぎ時かと。」

低い声がそう、促す。まだ昼を過ぎ明るい内から客を引く娼婦もそう多くはない。
中の嬌声は単調に、数名しか聞こえなければ様子は自ずと知れよう。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」にブールドさんが現れました。
ブールド > 男は今回新種の媚薬や女性への催眠に用いるための薬剤。花の仕入れや実験の品種を卸しにこの場に来ていた。
立場としては決して高いとは言えないが、金と薬は持っている。
新種の花が詰められた布袋や乾燥させたポップの花束分けて瓶詰にして各部屋に届ける事で顔と名前を売っている状況。

悪党や悪人に媚びを売り、利益と売名を目論む悪人以下の存在。
そんな男が流れてきた少女を護衛するかのように佇む赤い狼――娘に目を付けたのは理由は無かった。

「失礼、お嬢さん方。どちらの家の方かな?」

ちらり、と手首に繋いでいるミサンガのような細い手首を飾る紐。
それはこの場に、この場の奥に入場を許されている非貴族の証。
売人でもあり買い付け人でもある証拠の1つ。
それを翳しながら少女ではなく、パーカーに身を包む女性に声を掛けたのだった。
愛層のいい笑顔。見た目は良くない男だが、愛想笑いだけは商売で鍛えた物だった。

ルーパス > 何人目を引き上げた所だろう。濡れた袖を払いまた定位置につく。
普段から直立不動である事には慣れていた。寝床と食事、
幾許かの金銭に釣られ日雇いでしているとはいえ楽に感じられる程。

そんな中、抱き上げた少女をまた逃がす。
そんな折に掛けられた声へフードの中の目が向けられる。

「私はただの、警備員みたいなものだ。置物と思って頂いて構わない。」

そう、低い声が言葉を返す。手首に見えるもの、顧客である事は察しがついた。
どちらの家か、そう問われても今はまだ戻る家の無い身。適当にはぐらかすのだろう。
背中を押して走らせる少女、その手とは逆に、その顧客を中へと案内するよう、
身体を少しずらして邪魔にならぬようその道を譲った。

ブールド > 「警備員。なるほど。」

予想以上に低い声は修羅場を潜り抜けてきたような物。
荒事には不慣れな男からすれば腸が震えるようにも感じられる。
少女はこちらではなく水遊びのための場所へ帰っていく。
未熟な青い果実にも無論興味はあるが、それよりも興味を惹いたのは目の前の警備員と名乗った相手の方だ。
手首に付けた飾りを見せて、敵対的な反応もなく警備員だ、と口に出すなら。
少なくとも中の催し物とは無関係ではないのだろう。
それと同時に、高貴な身分という訳でもなさそうだった。

「あぁ、中の方に用があるのだがいかんせん不慣れでね。
もしよければだが、案内をしてもらえないだろうか?
アーグラッサム家の――。」

警備員が持ち場を離れる事は難しいかもしれない。
それを理由に断る可能性もある。
それでも誘いを向けたのは単純な勘でもあり、アーグラッサム家への薬物の実験台として、警備員一人なら。
媚薬の実験台として使える可能性もあるのだ。
無味無臭の媚薬というのは生憎持ち合わせがない。

乾燥させたエディブルフラワーを瓶詰にして薔薇のオイルで香りをごまかす様にする媚薬。
多種の媚薬を実演等してきたこともあり、ほんの僅かだが男の体全体には数々の媚薬の香が染みついている。
道を譲られたが、礼を失することが無い様に。
頭を下げて道案内を頼む事にする。

――受けるか受けないか。受ければ警備員と名乗った彼女は良くない目に遭う可能性も高いが。

ルーパス > 「申し訳ありませんが、雇い主の許可無く、持ち場を離れるわけにはまいりません。」

そもそもが、水流に乗ってゆけば辿り着く場所なのだ。
案内をするにせよ奥の造りを狼自身も知っているわけではない。
深々と頭を下げながら彼の要望に関しては、応えられないと返事をするのだろう。

どこぞの家名を出した所で同じこと。
そういう意味では堅く慇懃無礼じみた対応になってしまうだろう。
然しながら、所詮は一介の日雇いである。
雇用主と顧客さえ合意していればその身等どうとでもなるという現実もあり……。

申し訳なさそうに伏せた瞼。吐いた息は面倒事を回避出来たと勝手に安堵したもの。
しかし、元は獣であるその身は微かな香りを逃がさなかった。
その香りに、少々熱のこもる吐息が零れ、背筋が震える。
降り注ぐ日差しと、暖かな陽気のせいだと、自身に言い訳をしながら、

やはり彼に対しては進行方向の道を空け、
邪魔にならぬよう後手に手を組んで通り過ぎてゆくのを見守るのだった。

「まだ、男性が多く御座いますのでトラブルの無きよう、ご注意を。」

ブールド > 花の薫り。混ざる南国の果実を思わせる濃密な甘い香り。
誘惑の魔手は仄かな香りをまるで触手のように鼻腔。
肺腑を伝い体の内側をみえない空気の手でゆっくりと撫でるような不可思議な熱を植え付ける。
暫くの間はその香り、媚薬のそれに悩まされることになるだろうが、この場だけならばきっと効果は長続きしないだろう。

そして返された言葉には当然か、という思いもある。
警備の人間も数が多い訳ではない。
慇懃無礼な態度だからと言って気分を害した様子もなく、手を振って見せる。
彼女に非は無いのだ、というように。

「気にする事は無い。警備の仕事あってこその催し物なのだ。
お互いのビジネスは一線を越えなければ問題が無いのだし。
あぁ、そうさせてもら――ん?」

小間使いという訳でもなく、彼女――ルーパスから見れば見覚えがあるかもしれない執事服の男が一人。
彼女の方に向いてハンドサインを送っている。
その執事は彼女の雇用主の存在でもあるが。ハンドサインの内容は男には知らないモノ。

執事はハンドサインを示し、彼女が見逃したか、見たのかを確認する暇もなく陰に消えていく。
男の足はゆっくりと奥へと向かう。
追いかけるも追いかけないも彼女次第というこの場のやり取りだった。

ルーパス > 己の前を男が通り過ぎてゆく。
しかしその先に重なっていた影、その影から送られるサインは──。

「────。」

ギリ、と奥歯を噛みフードの奥では苦虫を噛み潰したような表情が浮かんだことだろう。
フードの裾を握りしめながら

「お待ちください。」

そう、トンネルの奥へと姿が消えてゆく。

ブールド > そしてトンネルの奥へと消える二人。
その奥で何が行われるかは言わずもがな――。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」からブールドさんが去りました。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」からルーパスさんが去りました。