2025/08/02 のログ
■グスタフ > (なんか期待したものと違ったな……)
退屈そうに男は夜会の隅でその様子を見ていた。
暗躍する企みもなければ、酒池肉林の宴もない。
サラリーマンの商談のような無味無臭の匂いさえする、集い。
早速飽きて、帰るのも無駄に手間がかかったので勿体なく。
ワンチャン誰かナンパでもしてみるかと、無謀なことを考え始めて。
「お、なかなか……」
幼そうな少女に目を奪われる。あまりこのような集いには相応しくないような気もするが。
それだけに男の興味を引いた。周りの人目を避けながら近づいて。
「こんばんは。こんな可愛い子もいるんだなー……」
紳士のフリして近づく手もあったが、それさえも煩わしく下心見せる感じで近づいた。
「お嬢ちゃん、暇そうならおじさんの相手どうだい?」
■紅小姫 >
「ん」
近づいてくる男にその紅の瞳が向けられる。
見た目の幼さの割に、その視線から感じられるものに無邪気さはないだろう。
大柄な男の爪先から頭の天辺まで視線を巡らせれば、ふ…と小さく吐息を零し、細い足を椅子の上で組み替える。
「"お嬢ちゃん"、"おじさん"。
こういうところじゃ、まず名乗るのが礼儀じゃないのー?」
くすりと小さな唇を笑みに歪め、向けるのは誂うような言葉。
どこか値踏みをしているような視線に加え、男を弄ぶ様な態度と雰囲気を滲ませている。
とりあえず、周りにいるような堅苦しそうな男ではなさそう、と判断し…もう一粒、葡萄を摘み取り口へと運ぶ。
■グスタフ > おや、と眉が跳ねる。
こんなところに一人でいる子が普通の子であるはずもないか。
面白くなってきて、首を垂れる。
「これは失礼。ご無礼を。グスタフと申します。お見知りおきを」
組み替える脚の合間を目で追ってしまうのは男の性か。
視線を上げて、その可愛い顔に似つかわしくない艶が乗っていて。
心が跳ねる。抱いてみたいと。童のような相手なのに。
「お詫びといってはなんですが、お近づきの印も兼ねて」
テーブルから別のブドウを持ってきて、恭しく掲げて見せる。
パフォーマンス染みているが、判りやすい方がいいだろうという気持ちで。
■紅小姫 >
「グスタフね。私は紅鳳。これでもシェンヤンの后女の一人よ。敬いなさい♡」
紅眼が細められる。
見える見える。下心。
こうして言葉を交わすより前からダダ漏れだったけど、さてはそういう趣味。
「お詫びは別にいらないけどー。
家のお名前は?
こんな場所にいるんだもの。それなりに高い地位の家の人間なんでしょ?」
柔らかな頬に人差し指をあて、問いかける。
確かこの国の人間、貴族達の名前はもっと長ったらしい。
それはそれとして葡萄の追加は歓迎である。
北の帝国で採れるものとはそれなりに味が違っていて楽しめるのだ。
■グスタフ > 心を見透かす瞳を、そらさず見返して。
腹を探られるのも流石に慣れている。
本日の夜会に参加する意義を見出すくらいには、この目の前の相手に染められた。
「爵位は返上しておりましてね。今はただのグスタフ……教会付きですが。
シェンヤンの后女様でしたか、これはお目にかかれて光栄です。流石のお美しさ」
相手の砕けた口調にしっかりとした礼節をもって答えるが。
そっとにじり寄り、触れ合えるほど距離を平気で詰める無遠慮さも見せて。
若い柔肌を失礼と言いつつ、手に取ったブドウを渡すふりして触ろうとする。
■紅小姫 >
「あら、どうしてそんなことを?
この国では貴族、王族にとっての爵位は重要じゃないの?」
無遠慮に近づく男に対し、童女は挑発的な視線を維持したまま、動くことはしない。
しかし、他に動くものがいた。
童女の背後から二人。グスタフには劣るが大柄な壮年の男が二人。
この場に合わせ礼装を着こなしてはいるが、その襟元に道士であることを示す導がつけられていた。
──要するに、童女のお付きの道士であろう。
グスタフが紅鳳へと触れようとすれば更に前に出てそれを阻止する──童女を守る者としては当然だろう。
「(──気があるのはわかるけど、あんまり従順になるタイプには見えないなー……)」
どうぞこちらに、と。
道士が手にした皿へと葡萄を落ち着ける。
この場でその柔肌に触れようという目論見は少なくとも上手くは行かないらしい。
■グスタフ > 「そりゃあ便利ではありますがね……。
爵位で首輪をつけられるのも困るときがあるのですよ」
そのあと指で十字を切って。
「結局、こちらで繋がれてしまっていますが」
触れる前に手をパッと、手品でもするように離して。
「さすがにお一人ではありませんでしたか。
重ね重ね失礼いたしました。ここでは、致しませんよ」
警戒されてしまったなと、頭をかいて。
「では、主催者にでも挨拶しますか。お先に失礼」
ご案内:「王都マグメール 富裕地区・宴の邸宅」からグスタフさんが去りました。
■紅小姫 >
「ふぅん。便利なことのほうが多そうなのにね」
歳を重ねるとしがらみも増えるというものなのかしらね。と一応腑には落ちたような表情を浮かべて。
「ごきげんよう、グスタフおじさま」
去るその背にひらひらと手の平を振って見せていると、お付きの道士がしゃがみ込む。
そしてその耳元に囁くのは……当然、お小言である。
「っ…う、うるさいわね。アンタ達がいるんだから別に無防備だっていいでしょ!」
ふん、と鼻息荒く、皿の上に載せられた葡萄へと手を伸ばせば、スッとその皿をもう一人の道士が下げてしまう。
ちょっと!と息巻く前に 毒見がまだです ともっともなことを言われ、口を尖らせ黙る他ないのだった。
■紅小姫 >
「大体アイツ、従順になるようなタマじゃないでしょ。見てわかるもの。そーゆーのはパス!楽しめないもの」
息荒く捲し立て、もういいでしょと葡萄をちぎって頬張る后女に二人の道士は溜息を吐く。
この童女がそうは言っていても火遊びもそれはそれで好きな困ったちゃんであることが身に染みているからである。
「にしてもアイツ以外はまともそうなのばっかり?
こんな夜会久々ね…うちの国よりこっちのほうがいくらかマシなんじゃないの…?」
そんなことはありませんと道士に窘められつつも、椅子にふんぞる童女の態度は変わらず。
夜会の時間は流れ、少しずつ一人、また一人と紳士淑女は退室してゆく。
お行儀の良い人達は良い子が寝る時間に寝ちゃうのかしら。なんて嘲るようなことを思いつつ、湧き上がる小さな欠伸を噛み殺していた。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区・宴の邸宅」から紅小姫さんが去りました。