2026/03/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/市場」にリーネさんが現れました。
■リーネ > ――王都、平民地区。昼の陽が石畳を白く照らしていた。
補装しきってない地面の上、荷車の轍が幾多にも刻まれるような雑多さが目立つ。
通りには屋台や簡素な店が並び、市場を形成しているだろう、
焼けた肉の香り、嗅ぎなれない香草の香り、野菜や果実の香気が混ざり合っていた。
其処を一人歩むのは、精霊銀の軽鎧と緑の外套を纏った天馬騎士。
愛馬であるセレスタを伴っておらず、今は一人で市場へ買い付けの用事。
天馬の好物とされているサジーの実を、この目で選別しに来たのだった。
「……こう沢山ありますと、迷ってしまいますね。」
産地や価格を見比べながら、それぞれ屋台に並べられた果実へ双眸を落とした。
山で取れたもの、森で取れたもの、乾燥させたものや色が違うもの、熟していないもの――。
実と一口に言っても、随分と違いがあるらしく、見極めは難航中という所。
――指先でそっと一粒つまみ上げ、陽にかざす。
橙色の小さな果実が、陽光を受けて淡く透けた。
■リーネ > 『――お嬢さん、それ買うのかい?
北の山から届いたばっかりだ。天馬が食うなら悪くないやつだと思うがね。』
屋台の店主が年季の入った手で籠を軽く叩いた。
騎士の鎧姿の儘、真剣に果実を観察している様子は、
市場の人々からすれば、目を引く光景であったやも知れず。
「そうなのですね、教えて頂き有り難う御座います。
……では、少しずつ頂いても宜しいでしょうか?」
礼節は忘れない。一礼をした後に再び果実を見詰めた。
かの愛馬が好むのは酸味が強すぎず、香りの良いもの。
どうせなら他の天馬達の口に合わないだろうかと、思案する。
その様子を、近くに居た子供がじっと此方を眺めていた
鎧姿の騎士が、深刻そうな顔をして果実を選んでいるのだから無理もない。
ふと視線に気が付けば、しゃがみ込んで目を合わせて――。
「天馬のご飯を探しているのです。」
柔らかな声音で子へそう云い伝えて。
不思議そうな相貌をするようならば、淡くほほえんだ。
■リーネ > 選んだ実を包んで貰っていると、店主が腕を組み感心したように頷いた。
『へぇ、天馬の餌か。騎士様が自分で選びに来るとは思わなかったな。』
子供から目線を外し店主へと向ければ佇まいを正し、すっと立ち上がる。
丁度包みを渡そうとしていたのに気づくと、代金を支払い包みを受け取って。
「……ああ、有り難う御座います。
はい、好物にも好き嫌いがあるものでして。
気に入ったものが見つかると良いなと思い、こうして選びに参りました。」
騎士が深く礼をするものだから、店主の方が少し慌てたように手を振る。
天馬騎士にとっては何時もの事でも、その礼儀正しい様子に面食らった様子だった。
『お、おう、また違うのが欲しかったら来な。』
包みを両手で受け取り、胸元でそっと抱える。
小さな橙色の実が、包み越しにやんわりと重みを伝えていた。
「はい、その時はまた伺います。」
そう言って、もう一度だけ丁寧に頭を下げた。
先程傍にいた筈の子供は、今は友達の輪へと加わり、
もう騎士に対する物珍しさは掻き消えていたようだった。
市場の喧騒は相変わらず賑やかで。
呼び込みの声、荷車の軋む音、遠くで笑う子供の声。
その中を――精霊銀の鎧を纏った騎士は、静かに歩き出した。
■リーネ > 包みを抱えたまま、市場の通りを抜けて行く。
昼の喧噪は背後へと遠さがり、補装もまばらな石畳の道を辿って厩舎へ向かうと、
待ちくたびれた様子の愛馬が此方の姿を視止め、小さく鼻を鳴らしていた。
「――セレスタ、お待たせしました。
今日は、良さそうなものが見つかりましたよ。」
駆け寄って鬣をそっと撫でる。
そして包みを開き、騎士は橙色の実をひとつ手のひらに乗せて差し出した。
咀嚼している姿を眺め、気に入ったのか尾を揺らして満足そうにする様子に、自然と笑みが綻んだ。
そんなやり取りを交わしたのちに、天馬騎士はまた空へと愛馬と共に駆け抜けて行った――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/市場」からリーネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリーネさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリーネさんが去りました。