2025/07/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にネーラさんが現れました。
ネーラ > ある昼下がり。
真っ白な日差しを防ぐひさしのコントラスト。
差し伸べられたその日陰のもと、西方式のバルの片隅で、スツールに腰掛けシェリーを喫しながら、たわいもない話をしている魔女。
店の主人である魔法使いの男、「失礼かもしれませんが、どうして普通に街にいるんです?士官なり栄達なり、できるのでは?」

グラスを揺らしながら、「面白そうに見えぬのでな」。魔女は答えた。

「欲を競って世が乱れるのなら、適当にやっていたほうが世界のためじゃろう…あくせく働き、自由に動くほうが、偉くなるよりよっぽど自由な気がしてな…」

外見にそぐわない憂わしい横顔で、もう一杯グラスを所望する。黄金のシェリー酒が注がれる。
かかる乱世においては、欲を競わずここにいるほうがまだしも安全であろう。

ネーラ > 「魔術を極めていくのが面白いのじゃ。魔術でもっと大いなるものを手に入れよう、とは思わん。」
支配者として育てられたわけでもない、一介の魔女にすぎない。それは謙遜ではなく。

魔女は知る限りの世相を話した。
大いなるものは富裕の方へ行く。あるいは陋巷を離れ貴顕となる。
または最初からやんごとなきか。

白魔女として知られるエリザベート、あるいはそこかしこの街に食い込んだ魔道貴族。

「力を求め自由を得んとするがため世が乱れる。すると、誰が街を守るのじゃろうの。……」

力の空白が、平民の世界のような気がする。
それは悪徳都市にとっての狩場であり、教会が搾取する子羊の群れ、であるようにも観ぜられる。
自分の店で日常を送っている時とは異なるあり様。静かに瞳を閉じて酒の香りを喉で吸う。

ネーラ > 「それなりの年月を修行に費やしておるが、大いなる技を少しでも修めようとし、手慰み程度には達したが、こまったものじゃの…其方と似たような悩みじゃ」

苦笑してグラスを磨く店主。

「素材を手に入れるためには、財がいる。カネさえあればと言い切れるものでもないが、必要なものが銭金のないばかりに買えぬ。さりとてコクマーの学園に頼るのも、面白くない。」

借りを作ったら囲われそうでな、と、つぶやく。

一旦席を立ち、払いを済ませ、店からふらり、と出る。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からネーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエリビオさんが現れました。
エリビオ > 木製の扉を押し開けた瞬間、こもった空気にオリーブオイルと焼きたてのパンの匂い、それに酒の匂いが混じって鼻をくすぐる。
まだ日も落ちきらぬ時刻、客の姿はまばら。高い椅子が並ぶカウンター、その一番端――外の風が届く席に、ひょいと腰を掛けたのは高らかな背ながらまだあどけなさを顔に残す少年だった。

「……赤、グラスで一つ。濃いやつ。」

カウンター越しに目を細めるバルの主人に、少し気取った声で告げる。大人びた風体でもなければ、酒を求めてきたような面でもない。だけどその目だけは、大人びた深さを湛えている。

「年齢? ……どう見ても、成人だろ?いいから出してよ」

にや、と片頬で笑ってみせる。すぐに視線をそらして、ぶら下がるランプを見上げながら指を組む。

「ここ、うまいチーズ出すって聞いたんだ。……それを酒で一杯やりたくてね……頼むよ。困るようなことはしないから。」

テーブルをとん、と軽く叩いて合図。――その手はどこか小さくて、爪の先に土の痕が残っている。
不審そうに置いたグラスに乱雑に酒を注ぐ姿を瞳を細めてみながら鼻腔を擽る香りにすんすん鼻先を鳴らしていく。

エリビオ > ……注がれた赤がグラスの内側にわずかに脚を残す。
それを指先でくるりと回して眺めていた少年はようやく唇を寄せた。

一口。喉に落ちるその熱に肩がわずかに揺れる。けれどすぐ唇の端を吊り上げてひとつ深く息をつく。

「……うん。ちょうどいいや。度数が高いと思ったけれど飲みやすいね。」

足をぶらりと揺らしながら、少年はまた赤を口に含む。窓の向こう、まだ藍色を帯びきらぬ空に鳥の影が横切った。
静かで、騒がしい街。バルの隅にできた小さな影は、
グラスの中に夕暮れを沈めて、確かにそこに息づいている。
店の雰囲気に酔いしれながら熟成されたチーズを口に運び、益体もない時間を楽しむのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエリビオさんが去りました。