2025/06/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にトルドさんが現れました。
トルド > 家族との夕食後、何喰わぬ顔で屋敷を出た子供。既に陽も落ち本来なら子供が一人で歩く事等許容されるべきではない。
家族が子供の外出に気づく事はないだろう。白昼夢の中で、息子は傍に居るのだから。

その足が向かったのは勝手知ったる富裕地区ではなく平民地区。
行き交う人々の格好から言葉遣いまで全てが違う。その様子に胸がときめいてしまうのは子供の身体だからこそ。
そして、ときめくと同時に、幾許かの不安も襲う

夢魔として慣れていたはずの光景も、依り代との相性が良すぎたためか見える景色も変わるようで。

「──は……怖ッ。」

貴族の子供目線から見る大人の往来は、それだけでも圧迫感を覚えた。
表通りから一本外れた小さな公園、外灯の下にあるベンチに座ると思わずため息が一つ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカリーナ・メリアさんが現れました。
カリーナ・メリア > 「あら…」

平民地区のギルドを回っていた足を止めて、その女は公園を見る。
世闇に一人、女性が歩くのは危険だが。この辺りの往来は知り合いも多い。
何かあって声を上げれば、すぐに誰かが来てくれるのを知っているし。
この辺りに不審者がいれば、すぐに知り合いではないからわかる。

「どうしましたか?―――様」

呼ばれるのは、少年の名前ではなく、その家名。
貴族同士の関わりで、何度か話してお互いに名前や顔を覚えていた。
もっとも―――それは”本来の少年”のほうだが。
そして少年が見上げれば、下手な大人よりもずっと高く伸びた足の女性。
陽が落ちているせいでその全身黒い服はより恐怖をあおりかねないだろう。
外灯がなければ、お化けだと言われても仕方がない。

「こんな時間に出ていくのは、あのご両親からは許可を得ていないでしょう?
 それとも、なにかあったので?」

と、ベンチに座る彼の隣に座る。

トルド > 溜息も何度出ただろう。深い深い呼吸のおかげもあって多少の余裕も戻ってきた。
それでもまだ胸が早鐘を打つのは身体が適応出来てないない証。
そんな中外灯の下で明るいとはいえ、丁度俯きがちでいた所へ不意に掛けられた声。しかもそれが家名とあらば大きく肩が跳ねる。

「だ、誰だ!?」

ベンチから飛び上がりかねない勢いで声が零れる。
ただでさえ視認し難い喪服姿と女性としては大きな体躯。その姿には身体の方にも覚えがあった。あった、が──
上手く名前を思い出せない所に重ねられるような問いかけ。

大人として咎めるような。心配するような言葉と、隣へ腰を下ろされては自身を知る相手から逃げる術は無く。
ただ、一人でなくなった、見知った大人が傍に居る安堵が本能的に身体を弛緩させ、少しだけその体重が女性へかかる。

「パパもママも、ボクが良い子にしてると思ってるから大丈夫だって……
ちょっとした散歩くらい、いいだろ。」

親が傍に居た時とは違う。礼儀知らずな小生意気。見上げる形で女性の顔へ視線を投げる。ただ、安堵とは裏腹にやはり其のシルエットは怖かったのだろう。触れた部分から早鐘の音が伝わるかもしれない。

カリーナ・メリア > 声を荒げる少年に対して、少し驚いたように目を見開くが。
すぐに、反抗期なのかな?と思い直してハットを取る。
ふわり、と。甘い女性の香りが少年の鼻腔を擽る。

「あぁ、暗くてわかりませんわね。カリーナ・メリアでございますわ」

と、優雅に言いながら、少年の体重を支えて。
腕の感触が少年の頭に走り、その柔らかな肉は程よく脂が乗っていた。

「ちょっとした散歩、ですか。まぁそれぐらいなら大丈夫かもしれませんけど。
 でも一人で、それもご両親に何の連絡もなし、は。
 いささか頷けません話ですよ。ちゃんと帰ったら謝りませんと」

そう言いながら、そっと少年の黒髪を撫でて、慈愛のほほえみを向ける。

トルド > まさか、ちょっとした散歩を見咎められると思っていなかった。
しかもそれが、ある種失敗に終わって公園に居た所を見られたなら座りも悪い。
咄嗟に挙げた声に驚いたのは相手も同じだったようで、名を告げるそれを思い出す。ほんの数瞬。

パーティや舞踏会等で嗅ぐ香りとはまた別種のそれが、また別のものを擽るけれど今は、まだ──。

「あ。あぁ……ごめん、大きな声出して。カリーナさん。」

頭部に触れた柔らかな感覚、そしてより濃くなるのだろう女性の甘い香りに、スンと鼻が鳴った。

「大丈夫……、ボクは良い子にしてる。パパもママも、いい子のボクをずっと、見てるから。」

言葉の通り。夢を見ているのだから間違ってはいない。
ただそれを知らぬ者からすれば、素行不良の願望を知らぬ両親を皮肉って拗ねているように聞こえるかもしれない。

帰るつもりもない、と言いたげに頭を横へ振るっては撫でる手を払おうとするのだろう。
向けられる笑みにも、少し苛立ちを覚えるのはきっと思春期特有の、子ども扱いに対する、衝動。

「カリーナさんまで子ども扱いして、このまま帰らないで野宿だって別に。」

ムキになって抗議の声を上げる。寄りかかっていた身体を離し、角度は相手へ向き直る様に膝がもう少しで触れるそんな距離。

カリーナ・メリア > 「ふふ、いえいえ。びっくりしたし、近所迷惑だけど。私は気にしておりませんわ」

素直に謝る少年に、クスリと微笑みかけながら大丈夫と語りかける。
夜中の静かな空間では響く声ではあるが、少年に何らかの鬱憤があるなら仕方ないだろうと思って。
頭に伸ばした手を振り払われても、何も言わずに少年を見て。

「…………このあたりで野宿、か」

周囲を見渡して、向き直る少年へとこちらも軽く体を動かして向き。
互いに座っていれば、それでも大きな身長差があり。
こちらを少年が見ようとすれば、自ずと見上げることになるだろう。
その少年の目を見下げて、少し威圧感を見せて。

「間引きがあるとはいえ時々魔獣がいます。そうでなくても貴族の息子。
 そうなればきっと、運が悪ければだれかに誘拐されてしまうでしょうね。
 毛布もベッドもない中で寝れば、ひどいときは寒くて凍死もあり得るかも。
 …子供じゃないなら、それぐらいわかりますよね?」

と、柔和な笑みを浮かべるが。”お母さん”としての威圧感を彼へと発していた。

トルド > 「…………。」

何か、言い返そうと思った。しかしながら相手の言う言葉は全てが正論で、
それが頭上より、拗ねた視線から逃げる事無く真摯に告げられるのだから決まりも悪く逃げ場もない。
ぎゅ、と膝に置いた手が拳を作り、所詮少年の頭で考える事等
知識も、経験も乏しい、大人の真似事に落ち着いてしまう。
それはとても悪い、汚い大人の真似事。

「だったら、女を買えばいいんだ。連れ込み宿でも、女の家でも。」

腰の布袋から出す金貨。子供にとっては大金でも、はした金も良いところ。
娼婦の相場も、宿の値段も知らない身。大人からすれば呆れる事だろう。
しかし、思いついたが今、というよう立ち上がった。

カリーナ・メリア > 「いい加減になさい」

ぴしゃり、とその浮かんだ考えと手段に対して厳しく言い捨てて。
立ち上がった彼の前に改めて立つ。

「その程度の金で女は靡きません。それで頷く大人は、あなたよりもずっと頭がいいし、強い。
 あなたに何かあれば、誰もあなたのことを助けられなくなるのですよ」

そう告げて、彼の前に近づいていく。
喪服に包まれているが、外灯がその豊満な肉体を照らし出して。
スリットが入り大きく露出した太ももが彼の前に見えるだろう。

「…私も一緒に行きますから、今日は帰りましょう?
 また夜のお散歩がしたいというのであれば、時間が合えば今度は私も一緒に行きますから」

と、膝を曲げて。改めてその手を彼へと差し伸べる。

トルド > すぐさま、女性や娼婦の並び立つ路地裏へ向かおう、と歩を進めようとした矢先、
目の前を塞がれ鋭く声を頭上よりかけられれば、反射的に首を竦め肩を落とす。

「でも…… だって……。」

真剣に此方を諫めている事は理解している。理解しているが納得できないのが子供の思考。
結局言葉に窮してしまい暫く沈黙が続く。そして……目の前に晒される女体。
子供を思う母にしては聊か扇情的過ぎる格好に、少年のそれではない思考が顔を覗かせる。

それは、言うに事欠いた子供が如何にも良いそうな──

「やだ……カリーナさんがボクを買えばいい。心配なら。ボクを買って好きにしたらいいだろ。」

膝を曲げられれば豊かな胸の膨らみがより強調されることになるのだろう。そこは子供とはいえ男。
こくんと自然に喉が鳴り、言い訳がましく視線を逸らして。その手を取るともう一度。

「買ってよ。ママ。」

そう、先ほどまでの我儘な子供が出す声にしてはいやに甘く、誘惑するように奏でられる音を、心配する母の耳へ。

カリーナ・メリア > 「……………………」

肩を落として、曲げない。曲げられない子供の姿。
自分も覚えはある。自分自身、そして娘でもこういうことはあったのだから。
だから、叱る。それでも折れないのならば仕方ない。
強硬手段は逆効果。しかしいうことを聞くのも、子供はそれに味を占めてしまう。

「…今回だけですよ。明日は帰りますから、いいですね?」

そう告げて、少年の手を握る。
その音を聞いて、少し妙な気分になるが仕方がない。
ここまで甘えられれば、母親としては少し甘くなってしまうのも仕方がないのだと。
そう思って、𠮟ろうと思っていた気分が霧散していく。

「近くに私がオーナーの宿があります。そこに泊まりましょうか」

笑って告げて、パラソルを開いて少年の手を引こう。

トルド > 握られた手。そして今夜は帰らずに済んだ事、素直に安堵の吐息が零れる。
結局子供らしい意固地が通って握られた手が引かれるままに歩きだす。

「…………はい。」

きっと同じ問いを歩いている最中何度もされたのだろう。その二文字を引き出すまで。

もし、翌日送り届けられたとしたら。外泊したことすら認識していない両親との邂逅があるのかもしれないが、それは別の話。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカリーナ・メリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からトルドさんが去りました。