2024/09/14 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」にマカナさんが現れました。
■マカナ > 昨夜からまた王都から戻ってきたシスター・ルチア。
帰ってきたときいつもの通りに信徒たちを指揮しながら大聖堂の掃除をしている。
シスター・ルチアの指揮の時は、効率的に手早く終わると評判で、だからと言って適当に終わっているわけでもないのが不思議なことだ。
「あなた方は、こちらの拭き掃除を。……あぁ、そこのはたきは終わっています。
はたきをするのであればあちらの方を。」
シスター・ルチアは大聖堂の中央部分で的確に周囲に指示を出していて、大聖堂をいくつかのブロックに分けて、順番に輪唱のように掃除をさせているのだ。
これに気付く人は気づくだろうし、気付かない人は気づかないだろう。
だが、それは正直どちらでもいいことなのだ。
■マカナ > 大切なのは、早めに掃除を終わらせて、信徒たちの手を空けること。
もしかしたら、他の奉仕作業で手がいるかもしれないし。
だからこそ、一か所に集中させるのではなくて、流動性を維持することも大事。
さらに言えば、ミサの日は信徒たちの来訪が大量に増えるのだから、食事の時間もシフトしながら取らせる必要がある。
つまり、いかに効率的に動かすかが司祭職以上にとって必要な能力なのだ。
程なく掃除が全カ所おわれば、信徒たちに頭を下げて
「本日はご奉仕ありがとうございました。庭と孤児院の方でもまだご奉仕を必要とする仕事があると聞いております。
もし、お疲れでなければ是非そちらへもお力をお貸しいただけますと幸いです。」
信徒たちに告げた言葉。
この後の動きはそれぞれに任せる。
どちらかへの動いて皿に奉仕するのも良いだろう。
もしかしたらどこかでサボるかもしれない。
サボっているものを見かけてケンカが起きるかもしれない。
その時は、アリの社会性の話をしてやっても良いだろう。
勿論、サボるという事は、いざというとこにその身を賭して協会に奉仕するという事でもあるのだ、と。
分からなければ、将来何かに食われるだけの話。
賢くあろうとする者には賢い知識が与えられ
ただ漫然と生きようとする者には、漫然と生きた証の奉仕が最後に待つものなのだ。
■マカナ > 程なく、信徒たちが全員大聖堂から離れていく。
その姿を見送った後で、聖女主催のミサの準備を始めていく。
必要な美術品を、聖具を並べ、花を生け、この場を必要な範囲で飾り立てて。
その出来を遠くから見やり、小さく頷けば、己も大聖堂を離れていく。
本日聖女はどうしていただろうか?……恐らくは、次の間で待機しておいた方が良いだろう。
いざ時間が無くなった時こそ、己が力が必要になるだろうから。
聖女はいつも清廉にして信徒たちの希望の星でなくてはならない。
そのためには周囲の我々が全ての準備を整えればよいこと。
当然の帰結へと至れば、口元薄い笑みを浮かべて目的の場所へと消えていった。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」からマカナさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」にルスランさんが現れました。
■ルスラン > 墓地のあるエリアから歩いてきた男はフードを目深に被っていた。
奉仕活動で忙しそうな信徒や司祭たちとすれ違えば顔を極力上げずに会釈のみですれ違う。
この聖堂にいい思い出など何一つありはしないが、それでも来る理由が男にはあった。
理由は簡単だ、亡くなった母は聖堂裏の墓地に葬られている。
墓標があるわけではない無縁の遺骸となった母がここに眠る理由もあまり難しくはない。
母が亡くなった折、借りていた住まいの家主が敬虔な信徒だったからだ。
そして、敬虔かつ例の塩の恩恵にあずかっていた家主は、己が徳を積み、ひいては塩を恵んでもらうために親を失った子供を孤児院へと差し出した。
家主の顔も名前も覚えてはいないし、もちろん思い出したくもないのだが。
修道会直下の孤児院は幸いにして衣食住に関しては保証されていたし、文字を教わり、計算を学び、限られたものではあったが本を読むことも許された。
感謝していることがあるとすれば、本当にそれくらいだろう。
(相変わらず、か)
孤児院のほうから聞こえてくる子供たちの騒がしい声にぽつりと、呟く。
あの、秘密裡に行われていた『教育』も、きっと今でも行われているのだろう。
■ルスラン > 不愉快なまでに丁寧に体を清められ、撫でまわされ、時には塩粒を与えられ、その先は──言わずもがな。
今でも、そこはかとなくこの身を蝕む飢餓を植え付けられた場所。
光の裏には必ず影が、闇がある。
いまとなっては理解していても、それを知らされるにはあまりに早い年齢。
最初は母を失いひとりになった悲しみに流れていた涙も、やがて夜が来る不安と恐怖故に流れるものに変わってしまった。
しばらくぼんやりと立ち止まっていたが、改めてフードを目深に被りなおして帰路を急ぐ。
浸りたい思い出かと言われたらそれは違う。
計らず市もそれなりの職位を得てしまった今となっては、過去の自分を知るものに会うのもあまりよくないだろう。
「……また来るよ、母さん」
この場所に来るには少し距離もあるし時間もかかる。
まとまった休みが取れなくてはなかなか難しい。
呟きだけ一つ残して、マントの裾を揺らした男は聖堂を去ってゆく。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート・ファルズフ大聖堂」からルスランさんが去りました。