2025/01/27 のログ
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ご案内:「魔族の国・水辺(過激描写注意)2」に宿儺さんが現れました。
宿儺 >  
鬼は人を喰らうものである。
人、と称するものの中には、いわゆるミレー族や、魔族といったものも含まれる。
要するに、大体人の形をしていれば人であり、喰らう対象である。

しかし世の中、簡単に餌となってくれる者などいない。
人である、ということは故に知能も高く、危険から逃げる術など当然のように心得ている。
──つまりどういうことかと言えば。

「……不味い」

ぺ、と血肉を口から吐き出し、女鬼はぼやく。

「見た目が悪い上に味まで悪いとは…、野生の亜竜でも喰らったほうがまだ腹の足しになる……」

手元には仕留めたばかりの魔物の肉。
水辺の付近を縄張りにしていあのだろう、黒い粘体に身を包む触手のような魔物であった。
それなりに仕留めるのに苦労したと言うのに。

「餌、という点では向こう(王国領)のほうが余程良いな」

一応口にしてみた程度の肉塊を放り捨て、魔物の体液と血に濡れた襤褸を脱ぎ捨て、湖へと歩みを進める。
然程見た目を気にするタチではないものの、魔物の血漿に身を濡らしたままというのは気分も悪い。

欲を言えば湯浴みが望ましいが、都合よく湧いている筈もなく、浅黒の肌を冷えた水にて洗い流してゆく───。

宿儺 >  
亜麻色の髪に水滴が滴る様、黒曜の如く濡れ照り映える肌もまた美と思えるものではある。
されど佇むは鬼。泉で身を清めて尚、人非ざる剣呑な空気を纏っている。

払い落とした襤褸を眺め、やれいい加減あれも変えなばならないか、と双眸を細める。
衣類への頓着こそないが、濫りに晒し歩くものでもない。
適当に隠せれば良いといった程度の認識ではあるが、必要とあらば用意もする。
──とはいえ、今この場で替えは望めない。
水を跳ねさせながら泉からあがり、血濡れの襤褸布を手に取り泉へと投げ込むのだった。

鬼火にて火を起こせば、じわりと乾かし多少なり身綺麗にはなっただろうか。

宿儺 >  
火に浅黒の肌を照り映えさせながら、乾いた襤褸布を身に纏う。
胸元、そして腰元を僅かに隠すだけの"取り敢えず"
かつて鬼の集落に住んでいた頃はそれなりに上等な布を纏っていた記憶もあるが、
それは鬼姫などと呼ばれていた過去の話。
今となっては野山を駆け、強者に襲いかかるただの一匹の戦鬼。
上等な布切れなど必要である筈もない。

「──それとして上等な飯くらいは欲しいな」

近くに喰い現れた血肉の塊を眺める。
辺りに血生臭さが漂ってはいるが、矮小な魔物が近づいてくるような気配はない。
この当たりではそれなりに強力な魔物であったのか。味は下の下であったが。
九頭龍の山で竜の肉でも喰らったほうが以下ほどもマジである。

──、人の肉は口にせずして久しい。
時折無償に喰らいたくなることもあれど、人の生み出す飯や酒の味に慣れた所為か。
望んで襲い、喰らってやろうという腹積もりは然程も沸かなくなっていた。
賊などの類は、襲ってくればその限りでこそないが──あの手合いは、肉も不味いと来ている。
やはり喰らうならば女子か、赤子───。

宿儺 >  
──否、今は然程に餓えてもいない。

灯した火を踏み消し、立ち上がる。
そのまま大欠伸をかいて、見据えるは魔族の国の山領。

魔族の国の竜種もなればさぞ闘い甲斐もあるだろう。
ついでに飯にもなってもらうか、と勇んで女鬼は水辺を後にする。

ご案内:「魔族の国・水辺(過激描写注意)2」から宿儺さんが去りました。