2024/04/14 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道(過激描写注意)」に宿儺姫さんが現れました。
宿儺姫 >  
夕暮れに差し掛かったマグメールは山賊街道。
慌てふためく悲鳴と、散り散りに逃げる人間の姿…。
街道脇には車輪を破壊された馬車が転がる。
馬は早々に逃げたか。あるいは奪われたか。
襲われたのだろう馬車。しかし逃げた人間の風貌は商人ではない。

「鼠め。逃げ足の疾いことじゃ」

馬車を襲っていた族めらは、突如鬼に襲われ散り散りに逃げ出した。
馬車の持ち主であった商人の二人組も混乱に乗じて逃げたか、今この場には壊された馬車と、牝鬼が一匹──。

宿儺姫 >  
「置いて逃げたならば要らぬということであろう。頂いてゆくとするか」

極端な理論ではあるが鬼が現れねば族どもに奪われていたもの。
あるいは命が助かっただけ商人達にとってはめっけものか。

破れた幌から溢れ街道脇へと転がる木箱などを叩き壊し、中身の物色をはじめる。
果物、乾物、衣類…。
港町から王都に向け運ばれる予定だった品々は生活筆所品とも言える物々。

酒でもないものかと漁りはするがいまいちそれらしいものもなく……。

宿儺姫 >  
「ふむぅ…飯の類はありがたく頂いておこう」

溢れた果実を拾い上げ、大口で一齧り。
野の果実と比べて甘みの深いそれはみずみずしく喉までを潤してゆく。

さて、のんびりしていてもいいが、襲われた商人達が逃げていたとなればそのうち王都の騎士団がやってくるか。
それはそれで、強き騎士と一戦交えるのも……と思わなくもない。

以前自分の巣穴に現れた冒険者の話では、どうやら王都のぎるどとやらで自分は手配を受けているらしい。
まぁ、山賊を襲っているにしても人を襲っていることには変わりはない。
それでいて人でも竜でも喰うとなれば平和に生きようとする人にとっては害だろう。
鬼が人の害であることには別段その通りであるしどうでも良いが……。

額を撫で、己が角にするりと触れる。
己の風貌は人目で鬼と理解るであろうし、この場を見られれば馬車を襲ったようにも見える。

そろそろ日も落ちる頃…。
商人が騎士か傭兵を連れて戻って来るか。
それとも夜になり、食い物の匂いに釣られた凶暴な魔物でも現れるか。
どちらにしても歓迎のため鬼の出した結論は、もうしばしのんびり物色しておくか、というものだった。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道(過激描写注意)」に影時さんが現れました。
影時 > ――逢魔が時と人は云う。

こんな日のこんな夕暮れは、何か起こってもおかしくはない。
それはどんな国、どんな土地、どんな空の下であっても変わることはないのだろう。
魔物が蔓延りだす刻限となれば、如何なるものが起こっても、生じても不思議ではないのだ。

襲われた段階ですでに死んでおかしくなかったであろう商人が命からがらに逃げて、偶々見かけた冒険者や傭兵に声をかけたのは。
嗚呼、なるほど。それはそれは幸運だったのだろう。
ただ、同時に不幸であったとも云える。話を聞いた男に、「残念だったな。荷物は、まぁ、諦めとけ」と宣われ、捨て置かれるのだ。
そのかわり、商人が来た方角を辿り走りだす影のような姿は――速い。まるで風の如く、疾い。
街道脇に放棄されたように転がる馬車の蔭。そこにゴウ、と風が吹いて、不意に止む。

「――……よぅ、また遭ったな?」

それが人間が疾走したために生じたものと、と誰が思うか。感じるか。
風の如く疾く来たりて、それでいて地に落ちる影のようなおぼろな気配が口を開かねば、ヒトであると察しえまい。
夕暮れの日差しを受け、異邦の動きやすそうな装束を纏う姿が腰に差した刀の柄頭を叩きつつ、声を放つ。
辺りの惨状を見回しつつ、滲ませる表情は呆れのようにも見える苦笑で。

宿儺姫 >  
「───来たな」

近づいて来る気配に、ニィ‥と牙を見せ嘲笑う。
既に人が襲われている場所へ早足でやってくる者。
それは恐れを知らぬ者か、強者にであるに相違ない。
もしくはただただ、運のないものか。
まぁ、どれでもよかろうと横倒しになった馬車の柄へと手をかけた牝鬼は。

「───」

腕の筋肉が隆起した、かと思えば枝葉を振り抜くように破壊された馬車そのものを、声のしたほうへと放り投げた。
そうして漸く、飛んでゆく馬車の残骸の向かう先に視線を向ける。
…と同時に耳に声が届いた。

「ん?」

あやつ、知っとるな。と首を傾げていた。
しかし首を傾げようがそうであるまいが、飛んでゆく物体はそのまま飛んでゆくのである、

思わぬ再会。
牝鬼の姿は以前よりも上背が一回り大きく、より力溢れる姿になっているが。
纏う雰囲気などはそのままである故に見間違うことはなかろう。
思わぬ再会、というか…とんだ再会になりそうであることを飛来する馬車が風を切る音で教えていたが。

影時 > 早駆けに長ける者は大股に歩くもの、ストライダー等と呼ばれることがあるが、己もその類だろう。
千里を駆けるというのは大袈裟であろうとも、街道で急ぐなら下手に馬を使うよりも走るほうが一番手間がない。
聞き取った内容を思えば、疾走の最中に肩や頭上にしがみついてくる二匹の小動物は、早々に鞄の中に入れた。
足手纏い等という以前の問題だ。これから起こるかもしれないコトを思えば、彼らに見せたくない、という方が正しい。
運が良ければ生き延び。運が悪ければ――その時だ。何と言っても。

「!」

状況の見分ついでに見ておこうと思った馬車の残骸が、ひょいと腕を振り抜こうというような動きで飛んでくるのである。
それを大きく仰け反り、脚力と体幹の動きのみでバク転する動きで躱し、片膝を突いた姿勢で改めて相手を見遣る。
はるか後方に生じる破砕音やら何やらがどんな惨状を生んでいるかどうかは、まぁ、考えないでおこう。
どうせ酷いことになっているなぞ、見るまでもないという奴だろう。きっと。否、疑いなく。

「あっ、ぶねェなあ。
 故人曰く、三日会わざるならば刮目して見よ……とか云ったらしいが、何か変わったな――、とは、言え」

その上で首を傾げるのもまた、こちらもである。知己を得てそう日は経っていないだろうが、こうも変わるものか?
上背もきっと、力も増したろう。何か良いものでも食べたのか?それとも他の何かか?
細々とした事情は知り得るべくもない。であれば、この後の交わり方等は如何にすべきか。

「……戦るか?」

考えるべくもない。腰に差した刀の鍔に指を掛け、刃を押し出す。
覗く刃金が斜陽の残光を受け、雌鬼をねめつける様に輝く。
それは龍の眷属であるかどうかを見定めるように。是であるならば屠龍を為す。否であるなら、ただ使い手が欲する儘に頑強な刃足ろう。

宿儺姫 >  
「お。躱したか。結構結構…。
 ふむ、変わったかと問われれば変わったな。
 煩わしい鬼封じの術より漸く解き放たれた…とでも言えばよいか」

見事な回避。
特に悪びれもせず笑みを見せる女鬼。
その口から語られるは、現場に急行した忍びの問いかけへの返答でああるが。
余りに簡潔。女鬼の事情も知らぬ者に伝えるには不充分が過ぎる内容である。

「──そうさな。腹はさして減ってもおらんが。
 貴様仕事で此処に訪れたのであろう?影時。
 それで鬼と仲良く語らい帰ったのでは得られるものなぞ何もあるまい?」

賊は既に逃げてしまったしな。と嗤いながら、鬼は言葉を続ける。

「鬼を前にして戦る気が失せぬならそれは重畳。
 我の名はシェンヤンが八卦山に生まれし暴れ鬼、宿儺。
 ──以前遭おうた時とはまた違うぞ」

以前の邂逅とは別の、己の真の名を告げる。
酒を飲み比べた洞窟で遭った時の自分とはまた、この場では違うのだということを口にすれば、即座。
街道の脇に深く埋没した岩に向け、その強靭な脚を振り抜く。
轟音、続いて石礫と言うには余りにも大きな岩石の欠片が男へと向い、襲い来る。
実のところ、山賊に逃げられ欲求不満であったのだ。
目の前に強者が現れればそれが知己であろうとそれ幸い。
そんな女鬼でった。

影時 > 「聞きしに勝るってのはこのコト、か。……封じの術、ねぇ?」

封じとやらが難儀――であったかどうかは、聞くまい。おそらく訊くだけは野暮だろう。
龍やら竜を喰らっていれば、佩刀たる得物の特性が励起されるようだが、そのような様子はない。
刀が震えぬというのがその証左だろう。だが、震えたところでどうだ、という処でもある。
今欲するのは災厄の体現のように荒ぶる龍を屠る刃では、ない。苛烈な打ち合いと莫大な氣量に耐えうる剛き刃だ。
そういう刃でなければ、恐らく。諸々解き放たれた鬼と相対するに不足が過ぎる。

「――見ての通りのおっとり刀で駆けつけてみたが、まぁ、確かにそうだ。
 賊が逃げたというなら追っても良いが、今のこの場とお前さんを見るとな。仕事よりも俺の欲がどうにも疼く」
 
誉れと端金に血眼になる趣味はない。仕事は果たすべきものだが、それ以上に優先したいものもある。
見た目のように強い奴、対敵とやり合いたい。戦いたい。犯してみたい。そんな悪癖のような欲だ。

「馬鹿を言え。極上の女と褥で向かい合って昂るような心地を、放っておけるか。
 じゃァ改めて名乗るか。我は影時。笠置の里より来たりて、かつて“影喰らい”と呼ばれしもの……いざ」
 
スクナ、否、宿儺か。己が子分たる小動物の片割れの名と似て、大いに非なる。 
過日とは違うという感慨を噛み締めるより、まずは此れを噛み締めろ、とばかりに強靭過ぎる剛脚が振るわれる。
それが振るわれる先は岩だ。岩を蹴ればどうなるか? こうなる!とばかりに石礫が轟音とともに生じ、殺到する。
その光景を前に、大きく右方へと跳び躱す。まともに喰らえば衝撃で身体が止まり、次撃で間違いなく崩れる。
躱しきれなかった分が羽織の裾を千切り、胴鎧の表面で跳ねるが、即座に動くには問題ない。

「……はは、スゲぇや。聞きしに勝るとは、このことか!」

妖物やら怪異、妖怪同然と化した忍者やら何やらと戦ってきたが、斯様なまじりっけのない鬼は初めてだ。
口元を襟元で覆い、覆面代わりとしながらその下で浮かべる笑みを隠しきれない。
右手を振れば、羽織の裾の中から手のひらに二本の鉄棒が滑り落ちる。短い鉄棒の先端を鋭く削った棒手裏剣だ。
雌鬼の横に回り込もうと、敵を起点に時計回りに走りながらそれを続けざまに打ち投じる。
いずれも狙いは相手の目元。だが、投じた二発目には白いものが巻き付いている。爆裂の術を書き込んだ術符だ。
当たる――と思う頃合いで指を組み、念じれば札が予め篭めた氣を起爆剤に爆裂を生む。光と爆音で感覚が一瞬でも鈍るか否か。