2025/04/16 のログ
ご案内:「イフレーア・カルネテル邸 邸内」にアイシャさんが現れました。
アイシャ > 【お約束待機中】
ご案内:「イフレーア・カルネテル邸 邸内」にアリマさんが現れました。
アイシャ > 未だお戻りになったばかりなのですから、と、嗜める侍女を余所に少女の足は真っ直ぐに私室の並ぶ中を進む。
腕に抱えたのは沢山の布が挟まった所謂仕立てのための見本帳。
それも一冊や二冊ではない。

「だって、やっと御戻りなんでしょう?
だったら、妹が姉に会いにいったらいけない理由なんてないじゃない」

頬を膨らませる様は年齢より少し幼い。
侍女の制止を振り切る様も同様だろう。
イフレーア・カルネテル家の7人きょうだいは、その生まれた順番が上になる程に家の中ではなかなか捕まえづらいところがある。
そして、事情により極端な人見知りを拗らせて万年留守番を決め込んでいた次女が姉を訪ねるのに躍起になっている理由は、中々予定をもぎ取ることが難しい姉が今日は邸内にいると知ったからだ。
だから、次女にしては意気揚々と、姉の部屋に奇襲──改め、訪ねようとしているわけである。

だが、次女も次女で一応は貴族の端くれ。
故に、淑女たるもの勢いで事を成してはいけない。
すぐ上の兄からの教えを忘れたわけではないのだ。

「姉さま、いらっしゃる?
えっと…お忙しいかしら。
もしお邪魔だったら、またあとで出直すのだけど…」

扉を二回、軽く叩く。
少し気を抜くと勢いでドアを勝手に開けてしまいかねないので、自分を落ち着かせるように胸の間にノックしたその手を置いて少し待つ。
休んでいるところに押し掛けるような無粋な真似はしたくない。
無理矢理自分に付き合わせるのは流石に悪いと素直に考えられる程度には、この妹だって弁えている。

アリマ > イフレーア・カルネテル家長姉は多忙だった。
生まれた家は王族であり父について騎士道に目覚めたかと思うと家を出て
遠方にある神聖都市ヤルダバオートに住まいを移してそこで腕を磨いたり学びを得て過ごしていたからだった。
両親や7人きょうだいの例にならい?各々が進みたい道に進んでいくので自覚はしているが
最も家にいなくて下の妹や弟たちに心配をかけていると思うのは常日頃思うので、
数日しか滞在できないが滞在期間はなるべく家族や使用人たちと日頃できていない交流や関りを深めてみようと思っていた。

その長姉アリマはシンプルな部屋備え付けのソファに腰を下ろし、何やら難しそうな分厚い本を開いて読み耽っていた所、
扉が数回ノックされたことに意識が浮上して頭を上げた。

「おっと、だ…アイシャ。大丈夫よ?入っていらっしゃい」

何時もの男勝りの口調で返事をしそうになり、慌てて母親直伝の?お嬢さま口調でアイシャに対し入室を促そう。
扉が開かれると同時に手にしていた本を閉じて、そばに置くのは忘れない。

アイシャ > 中から返事があったことで聊か緊張の面持ちであった妹の表情はあっという間に明るくなる。
許可があったことを受けて意気揚々と、けれど少しばかりの落ち着きを以て扉を開いた。

「姉さま、お帰りなさい!
お元気だった?」

ソファに腰掛ける姉に近寄る様は子供のころからあまり変わらない。
腕に抱えているものが絵本から小説に変わり、今は見本帳になっていることと、体のサイズが変わったことを除けば凡そそのままだろう。

「あのね、姉さまが御戻りになったって聞いたから相談に乗ってほしくて来たの。
……本当に、お邪魔じゃなかった?」

姉の傍らにある本に視線を向ける。
何やら分厚いその一冊は、濫読家としても中身が気になるところだけれど無理に尋ねるつもりはない。
自分にだって、他の誰かに内容を伝えづらい愛読書が沢山あるのだから。

「わたしね、今、少しずつ外に出るようにしているの。
それでね、もう、何着かは作ったのだけど、新しい服をもう少し増やしたいと思っていて…
だから姉様にもどんな布がいいか相談したくて!」

若干早口でまくし立ててしまうのは姉が帰ってきたことがとにかく嬉しいからだろう。
見本帳を抱えなおしながら姉のそばまで近づきはするものの、ソファに腰掛けるのは少し待ちの姿勢。
宛ら、よし、と言われるまでは待機するかのよう。

アリマ > 家に帰ってきても両親は無論きょうだいたちはみな忙しく生活しているのが分かった。
貴族のお付き合いというのを早々にみなに丸投げしてしまい、お外の付き合いは行おうと妙な契約はした記憶がある。
そのうちの次女アイシャは…見ないうちにあの小さな妹はこんなに美しく女性らしく育って元気そうで何よりだ。

意気揚々と入ってくる様を親の様に、いや長女だからだろうけど下の子たちを見る際は、
怪我をしていないか何か病気になっていないかを見てしまう癖があった。
彼女はどれ等も当てはまっておらずとても美しく育って安堵の息を吐いたのは秘密にしたい。
近くに寄って来たのにソファに腰かけようとしない、小さいころは言われる前に腰かけていたというのに、
些末な作法か年頃に育って、と妙な親心を含みながら見上げていた。

「アイシャ、うん、元気で何より。
 私はいつも病にならず過ごしていたよ。

 うん?相談ごと?私で出来る範囲ならいつでも相談に乗りますわ。
 …付け焼刃気味のお嬢さま口調ダメみたいだね、ごめんね?
 今は何もないから…隣に座ったら?貴女が小さい頃は隣に引っ付くように座っていたのに。」

家にある本は魔法本や専門書、色々な本があるのでそれこそ外部から持ってきた本は彼女は目にしていないはず。
暇な時に読むと決めたその本は外の国の貿易冒険本みたいな本だった。
もしも聞かれれば本をこよなく愛し読み耽る彼女に差し上げようかと思う。

「え?外に? 護衛はつけているの?
 ちょっと驚いたわ。ああ、ごめんなさい。服。それはこれからの季節の服なの?
 そうね、これからだと、麻かリネンかコットンか。
 外の布を使いたいのであったら、麻とか綿とか?
 夏ならリネンかしら。暑くなると出回るけど。」

そんな彼女が家から少しずつ出て出掛け始めている事に驚く。
瞼を大きく開き瞳孔も大きくなったけどすぐに戻った。其れは驚きものだ。
何があったのかは聞かないが少しずつ外に出ようとしているのを驚きつつも嬉しそうに微笑み、
ソファの空いているスペースに手でぽんぽんと当てて座る事を促そう。
彼女には及ばないが王都外に普段いるから浅く広くわかる範囲の言葉をかけよう。

アイシャ > 病で臥せっていることもなかったと聞けばやはりどこか安心した。
離れて暮らしているうえに、直ぐには会いにはいけない距離だ。
だから、こうやって互いに健康で、言葉を楽しく交わせることの何と有難いことか。

「だって目上の相手と同席する時はちゃんと確認しなきゃ駄目だって、レオンハルト兄さまに教わったもの。
…でも、姉さまが折角お誘いしてくれるんだから、甘えちゃおうかしら」

自分よりも姉の目線のほうが下にある珍しさを感じつつも、少しは大人になったのだとばかりに自慢げに胸を逸らす。
だからと言って小さい頃からの本質が変わるわけではない。
上質な生地が張られたソファの座面を示されるとついつい昔どおりの甘えたな面が顔を覗かせて、幼い頃と変わらない、ぴったりと引っ付くように姉の側へと傍らに腰掛けた。
一先ずは見本帳を膝の上に置いて、子供の時と同じように姉の腕に甘えて掌を絡ませもするか。

「街中に出るような時には誰かについてきてもらうことが殆どだけど、時々、凄く近いところだったら独りで行くときもあるの。
あ、えっともちろん、安全だってわかっているところだけよ?
少しずつだけど、夜会に行ってみたりもしているし…あとはね、そう、旅行もできるようになったの。
レオンハルト兄さまに、海が見たいってお願いして、泊りで連れて行ってもらったのよ。
すっごく楽しかった!」

姉の驚いた様子には、少し照れたような恥ずかしそうな顔をするだろう。
驚かれるのも無理はないという自覚もある。
何せ、人生の3/4以上引きこもって過ごしていたのだから。

「旅行に行く前に春先の服は仕立てたから、今増やしたいのは夏の服かしら。
秋冬の服も必要になると思うけれど、流石に時期が早すぎると思うのよね。
麻は涼しいから、一着は麻にしたいわ」

姉の傍らまで近くなれば分厚い本の表題くらいは見て取れる。
自邸の書庫では見かけたことのない題名に、本の装丁。
それらはあっという間に妹の好奇心を掻き立てたが、それよりも前に姉の時間を貰う目的を忘れてはならないとばかりに慌てて一冊目の見本帳を開けば、中から溢れだすような布地の色見本たち。
描かれた服のデザイン達が続く頁の中には、何度か繰り返し開いたのだろう捲り癖のようなものがついているところもあった。

アリマ > お互い距離溢れる所に住んでいるからこそ久しぶりの交流は
友人とは違う肉親なればこその遠慮なき関わり合いに感謝であった。

「レオンハルト、レオンか。あれも悪いことは聞かないから元気なのだろうね。
 うん、久しぶりに王都に来たから後できょうだいたちにも手紙なりを残すなり顔を出さねば。
 小さい頃を思い出すね、あの時と違うのは美しくレディに育ったアイシャだということ。」

大人になっても大きく関係が拗れるわけもない。
こうした些細なやり取りの後に隣に腰かける妹の可愛らしさに美しさも備わって、
彼女の膝の上に置かれる見本帳、腕を絡ませられれば絡ませよう。
密着して思う、いい香りがする。うん、貴族としての嗜みの香りがほのかに薫る。

「分かっていたらいいのよ、王都には近づくのも宜しくない場所もある。
 夜会。夜会は…色々とあるからお勧めはあー。レオンと旅行?
 それは誰だったか手紙で知ったけど楽しめて何より。ここから海だと王都から近いから行けるかしら。」

何とも珍しいこと。
アイシャ、付き添いにレオンハルト添えてだけど泊りで海に行く!
何か絵物語でも描けそうな題名が出来そう、ただしアリマに文才はなくすぐに出来たのは題名だけ。
脳内でぽっとで出来た塊は頭脳の海にすぐに流された。

「夏の服なら、リネンを筆頭に。
 麻は帝国産なら手に入るかしら、港湾都市に赴くなり、
 顔馴染みの商人にお願いをするくらいしか。秋冬はもう一か月か二ヶ月でも間に合うのでは。
 今 アイシャが自分でこれがいいというデザインはどれかしら。」

所々捲り癖がある頁があった。
アイシャが普段見本帳を見逃さない様に眺めているのが見えるように、
布地の宝箱たる見本帳。姉にできる事とすれば少しでも手助けになる位の言葉をかけてやる位。
さて、彼女はどのようなデザインに目星をつけているのか。アリマも、見本帳を横目だけどのぞき込もう。
知らない世界がそこには広がっている。知らないデザインや王都でも見かけるデザイン。やはり世界は広いなと思う。

アイシャ > 「忙しそうにしているけれど、元気よ。
邸で勉強を教わる時間があるから、兄さまとは私が一番会っているかしらね。
双子たちも相変わらずだし、テミスも凄くたまにだけど、部屋の外で見かけることもあるわ。
一番心配なのは兄上よ、もう、ぜーんぜんお見掛けしないのよ。
…もちろん、元気なら、別にいいのだけど」

諳んじるようにしながら知る限りのきょうだいたちの近況を知らせるも、最後に頬を膨らませながら挙げるのは長兄のこと。
姉同様に忙しくしているのだろうとは思えど、甘えたが抜けきらない妹からすれば心配と同じくらい拗ねたい気持ちがある。
けれど、姉に美しくレディに育ったなんて持ち上げられれば慌てて膨らんだ頬を萎ませてすまし顔をちょっと取り繕ってみたりもした。
妹のあしらいを心得た姉が昔のように腕を絡ませてくれるなら、猶更機嫌がよくなるのだ。

「もちろん、宜しくないようなところには行かないもの。
夜会は大きいところはまだまだ怖いけど、小さいところなら、って。
それに兄上はとにかく忙しそう、姉さまも王都を離れてるから行かない、兄さまはお仕事で…、となると、次はわたしの番じゃない?」

夜会に難色を示す姉と絡めた腕の先、一つずつ指を折って数えれば薬指に来たところでその指先を器用に揺らして見せる。
それからその指先は見本帳のページをめくり、反対の手には色見本を軽く掲げた。

「港湾都市…ええと、海より遠いのかしら。
仕立て屋さんのところには直接入ってこないの?
秋冬は早いんだけど、夏に仕立てたら試着の時に暑さが我慢できるか自信がなくて」

んー、と、少し伸びるような相槌と共に気になるデザインがある頁を捲りながら

「夏だけど、あまり肌は出したくないから、裾の長いワンピース…こういうのはいいんじゃないかと思うの」

まず開いたのは水兵風の大きな襟が付いたワンピース。
それから、太めのウエストべルトが付いた膝丈のものは半袖ながら、いかにも妹好みの膨らんだ丸みのある袖。
他にも複数気になっているデザインがあるせいで、見本帳を捲る指先は休んでいる暇もない。

「…本当はね、わたし、姉さまとお揃いの服が欲しかったの。
でもほら、わたしは姉さまみたいに背も高くないし体型のバランスも良くないでしょ。
だから、せめて同じ布で仕立てられないかしら…って、思って」

双子たちが揃いのような服を着ているのを見て、いいな、と幼心に思ったのは昔の話。
そのころは、ただぼんやりと『いいな』、と思うだけだったが、歳を重ねてみるとそれは良いというよりも羨ましいという感情が勝っていたことを朧気ながら理解してしまった。
けれど、お揃いというのは妹たちが限りなく揃っているからこそのもの。
姉と揃いのデザインは自分には合わない自覚があるのか、少しだけ眉が下がった。

アリマ > 「元気ならいいの。一筆位は書き残そうかな。
 双子やテミス…ソル兄上、私も全然外でも会わないわね。
 どこかで悪い報告もないから生存はしていると思っていてもよくて?」

普段神聖都市にいるので逆に王都のきょうだいたちの近況が分からない。
悪い知らせが全くないから逆に考えたらどこかで野垂れ死にはない事。
生きているからこそ頼りがないと解釈した姉としては便りがないのは生きていると思って祈ればいいと呟く。
姉は貴族としての振る舞いが少し欠けているから、美しくレディに育った妹たちの眩さに目が眩みそう。
普段武骨に騎士しているからレディとは何かを後でこっそり教えてくれまいかと聞こうと思う。

「分かっているのなら言うことはないわ。
 夜会は顔馴染みの所から経験を積めばいいと思う。
 まぁ、年を重ねれば自然とこうなるのよね、ただ無理は禁物、ね?」

あ、夜会も含めて貴族交流出来そうな家族がいなければ 妥当な彼女が駆り出されたのか。
迂闊であったが、お外での交流は引き受けているのでこれ以上は増やしようがない。
まだ海を隔てた所には出ていなさそうな感じが見れたので、ああ、と呟いてから。

「港湾都市は海を越えた先の半島沿いにあるわ。
 ここからだと遠いわね、船なりで海を横断しないと行けないし、陸路だと遠回りになる。
 王都の仕立て屋には大きい店なら入るかもだけど…ここじゃ麻は船舶品に近いはず。
 多めに欲しいのなら大手の仕立て屋に顔覗かないと。
 ふぅん、じゃあ、もう少したったら秋冬のを考えたら?」

港湾都市は地味に遠い。陸路は大変、海路は近いけど船酔いは酷いとそれで億劫。
夏の日差しには肌が弱ければあっという間に荒れるのが肌。なるべく肌は晒さないようにしたいが、
これがいいとデザインの知識が足りていない姉としては、うーんと唸るばかり。

「夏の日差しは強いからね、なるべくなら肌は隠しなさい」

なんていうかどこかの地域には布を被った風習があると聞いている。
レディならその手のデザインを選ぶのかと普段全く女っ気のない恰好ですみません。
眺めるだけでも目の保養になるけどよくわからないから見てるだけ。

「お揃い。なんというか…。私に合いそうな服ってあるのかしらね?
 背が高いと違う意味であわない服があるのよ、男装に走ってしまったり、
 今着ているのは母上のデザインを基にだったかしら。」

双子たちの揃いの服はいいと思う、でも気づけば騎士になるべく家を出てしまったから、
レディらしい服とは何かを知る前に着る服ほぼ騎士服。お揃い?今着ている服の色は赤いけど…。
彼女に赤い服…うん、合う合わないで言ったら合わない。デザインはお揃いにしようと思えばできる、問題は…。

「好みと色がお揃いにできたら満足できる?」

見本帳にちらっと見えたとある頁に唐突に指を突っ込み、
これよこれ、とほぼ目元以外見えないベールに包まれたヒジャーブ風のベール、丈は足首までを示す。
王都にはまずない風習なので抵抗はあるかもだけど。普段騎士服しか着ない姉が割と珍しい事を言ったとんでもない冒険。

アイシャ > 【後日継続予定】
ご案内:「イフレーア・カルネテル邸 邸内」からアイシャさんが去りました。
ご案内:「イフレーア・カルネテル邸 邸内」からアリマさんが去りました。