2025/03/16 のログ
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ご案内:「王都――沃野の轍亭」にドリィさんが現れました。
ドリィ > とん、とん――。拡げられた地図を、艶やかな爪が弾く。
喧し過ぎず寂れ過ぎずの酒場の一角。奥まったカウンター席のスツールに腰掛けて、
女は蒸留酒で唇を湿らせ乍らに、酒の肴の話し相手を店主に定め、己が計画を諳んじる。

「今から出発すればぁー… 丁度、雪解けの“氷扉”の開錠に間に合う、でしょ?
 完全に雪が融けたら入れない場所なのだもの。動くなら今、なワケですよ。
 で。それでー…、――… お目当ての氷鯨の竜涎香を探しながらー…」

ちょぃ、ちょぃ。店主を指で招き。にこぉーー。女の双眸が笑弧を描く。
己が酒杯を軽く掲げてみせつつに。

「麓の村で、幻の雪雹酒を調達してー…
 万年氷で一献、ってヤツをね。しちゃおうかとー…。」

店主は視線で語る。この女、本当の目的はそれなのじゃないか。
くぃ、と女は手首を返して酒精を飲み干してから、指先で杯を揺らして店主に示した。
同じ酒をもう一杯、の意を込めて。

ドリィ > 「だぁって! マスターも飲んでみたい、――…でしょ?
 極寒で飲めば飲むほど度数が増す幻の酒、なんて。
 そんなの、そりゃあもぉ、―…氷窟の最奧部で飲めって言われてるようなモノじゃあない?」

間違いない。飲みたいだけだ。――店主の無言の視線が刺さる。
店主の視線を意に介さずに、女は注がれた一杯で唇を濡らした。

「雪雹酒、スノーウィスプと一緒に瓶に詰めておくと
 シャーベットになって最高にオイシイってゆぅけれどー… 
 やってみたくなぁい?」
 
酔っ払いの戯れ言――と謂うには、女の顔色は素面そのもの。
頬杖付きつつに、もう片方の手がサラミを摘まんでは口中に落とし、咀嚼する。
丁度他の客に呼ばれたらしい店主に、ぴらぴらと指を揺らして。

「いってらっしゃぁーい」

ご案内:「王都――沃野の轍亭」にジェナスさんが現れました。
ジェナス > 仕事からの逃避行。
生徒向けに配布する資料と試験を書き綴るのに飽きた。
――…訂正、飽きたのではなく詰まった。

生徒向けに試験の難易度を落とすべきか、それとも難易度は維持させある程度篩にかけるべきか。
当然落ちた生徒は補講等でフォローをする予定であり、見捨てるなんてとんでもないと、思っているがどうしたものか。

『そんな時こそ百薬の長に相談すべきだ!』と、仕事場を抜け出して、ふらりと立ち寄ったのが『沃野の轍亭』という酒場である。

疲れで溜まる体温。
さほど熱くないが何となくヨレヨレの白衣の袖をまくり、少々頼りない腕を晒しながら、
ひとまず適当な席に腰を下ろす。

おひとり様なのでテーブル席に非ず。
カウンターの奥まった席にあるスツールに腰を下ろすと、
口に加えていた巻薬を指先で摘まんで抜き、
ひとまず適当に冷えたエールを注文をしてから、隣席の人に手をひらひらとふって。

「こんばんはレディ、少々お邪魔をさせてもらうよ。」

メガネのレンズ奥からチラりと横目で見やるだけ。
流石に初対面でじーっと見る、なんて事は避けた。