2025/02/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > いい歳をしたオッサンが商売でもないのに、可愛らしい形の焼き菓子を作っている姿はかなりシュールだ。
「万愛節ってことで一年ぶりに作ったが、まぁ悪くないんじゃないか……?」
自画自賛、というよりはやや言い訳めいた呟きが漏れる。
贈り物用に作ったものをいくつかの小さな紙袋に詰めて、ちょっと形が悪かったり焦げがあったりしたものを皿の上に盛る。
大皿に山盛りになるくらいの量。大量に作って見栄えのいいものを厳選したようだ。
男の隣では満面の笑みを浮かべた黒髪の少女がエプロンを外し、皿からお手伝いの手間賃とばかりにチョコ入りの焼き菓子を摘まむ。
この不格好な焼き菓子の山がどうなるのかは男自身もわからない。隣の少女が食べるにしても限度がある。
丁寧にラッピングされた紙袋は、普段この二人が世話になっている人――片手で足りる数だが――への、ささやかなプレゼントといったところ。
そのうちの一人である女店主はカウンターの客席側に腰掛け、山盛りの更に少女と共に手を伸ばしている。
昼のピークタイムの終わりごろから作り始め、もう昼というよりは夕方に近いか。
食べ過ぎると夕飯が食べれないぞ、と少女に釘をさしてから入口を眺めた。
この店に来た連中に不格好な菓子を食べさせよう、という魂胆だ。
■ヴァン > 山盛りだったはずの焼き菓子が気付けば半分ほどになっている。
談笑するでもなく、一心不乱に頬張る女店主と少女は魔女が好む鼠の使い魔のようだ。確かハムスター……とかいったか。
少し喉が渇いたのでコップを手に取り、スタウトを樽から注ぐ。
少量ではあるが注ぎ方に妥協はしない。
「皆に配るのは明日でいいか……」
王城に勤める恋人、職場の同僚、この店の従業員……誰か漏らしていないかと確認する。
恩はあっても相手の立場上気軽に会えない人もいる。そんな人達には遅ればせながらで店のものを買っていこう。
若い頃は気にもしなかったが、こういう細やかなことの積み重ねが大事なのだと。