2024/09/12 のログ
ナラン > ドン!と大きな破裂音の後に熱風が肌を打つ。
砦に立てこもる魔族の牽制だろうが、狙いが『外れた』のか『外した』のかは分からない。
女が思わず目を細めた視界で確認する中に被害は無いようだった。空は夕暮れだが、陽動作戦は始まったばかり。高く茂った夏草がある方向からじりじりと近寄って、見つかったのは(一応)作戦の内だ。

煙が収まらないうちに身を潜めていた味方勢が鬨の声を上げて砦へと駆ける。女も矢をつがえながらその後を追う。追いながら、砦からまたこちらへと『何か』迫ったものめがけて矢を放つ。
飛行する小さな魔物だったようでそれは呆気なく墜落していく。
休んでいる暇はない、次の矢をつがえながら味方の援護射撃と砦からの『飛び道具』をけん制するために、女は懸命に味方の背を追いかける。

――――火力がこちらに向くようになったタイミングで、反対側から本隊が仕掛けることになっている。

多分、そう上手くはいくまい。陽動部隊の誰もがそう思っている。
精々多少相手を足止めして削れるくらいが関の山。
そんな簡単に命を捨てられない。だから打って出てくる相手は仕留めるものの、自ら突出して切り込もうとする者はいない。
たまたま、精鋭の傭兵が多く混ざっているからの余裕だろう。上手く拮抗しているように見えている。女も露払いくらいをするくらいで、前衛に混ざるほどには近寄らずに済んでいる。

―――果たしてこの状態をどれくらい続けられるか。

ナラン > 見て解る程の火球が砦に灯ると間髪入れず飛来して、前衛が混戦しているあたりに命中した。
まき散らされる熱風が夏草を身体の軽い者たちを吹き飛ばす。
女も例にもれず熱風に打たれて、何とか踏みとどまれたのは上空を射るためたまたま身を屈めたタイミングだったからだろう。
巻きあがる煙に口元に布を引き上げながら、火球が落ちたと思われる場所を視認する。―――おどろいたことに焼け焦げ抉れたた地で混戦はまだ続いている。被害の程は解らないが、女が恐れていたほどではなかったらしい。

一応、相応の護りはつけてくれていたのか、だれかの何かの能力なのかは分からない。
兎に角吹き飛ばされた味方の分も援護に回らなければいけない。
女は次の弓をつがえながら混戦の続く場所へ向かう。
次の火球までまだ時間があればいいが―――果たして2度同じところに落ちたらどうなるか。
女の危惧は混戦の最中の味方も同じらしい、じりじりと、しかしはっきり後退し始めている。

つがえた矢を砦からこちらに向かってきた相手の増援に放って、女は混戦する最中に混じっていく。

確か、陽が沈む直前には本体が仕掛けるか、退却を決めるかすると言っていたはずだ。

――――果たしてそれまでどれくらいだろうか。
そんなことを考える余裕はない
ただ生き延びるために、生かすために
ひたすらに駆けて、弓を射て――――――戦場での日常が暮れていく。

ご案内:「タナール砦 戦時下」からナランさんが去りました。
ご案内:「平民地区 図書館」にオウルさんが現れました。
オウル > ――…今宵の天候は大荒れ、雨は図書館の屋根や窓を入れろと言わんばかりに叩く、そんな大雨。

最初はしとしとと穏やかな雨脚だったので、【ギルド】の仕事を早々に切り上げて、平民地区にある図書館への逃げ入り、適当にサボった後に【ギルド】に報告に帰ろうとしたら――…いきなり天気は大荒れ、んで、現在に至る。

急な雨に気分はダウン。
本を読む気にもならず誰もいない図書館の出入り口に近しい場所に設置されているソファを一人で占拠して、肘置きを枕に仰向けに寝転がっている。

図書館だからだろう。
空気は常に適度な湿度を保ち、館内は室温も調節されているおかげですこぶる過ごしやすく、雨が大人しく降るのを止めるか元気を失くすかするまで、今夜はここで雨宿りの予定。

最悪は一晩くらい泊ってしまおう。
都合いいことに利用者はいない、魔導人形が管理しているわけでもない、毛布も探せばあるだろうし、まあ怒られたらその時はその時である。

「…しかしさあ、皆ソワソワしすぎじゃね?
 うちの連中までソワソワしてるって何かイベントでもあるんかね?」

んっーとあくびを噛み締めながら、どうせ誰も来ないのだからと、珍しく自分から左目の眼帯に手をかけて、外すと魔獣革のベストのポケットへとしまい込む。

珍しく左目を覆うものがない状態で、ゆっくりと両目の瞼を下す……考え事をする時はいつもこんな感じだ。

しばらくぼんやりしていたが、次第に眠気に負けてくる。
うつら、うつらと船をこぎはじめ、気が付けば雨音を子守歌代わりに…。

ご案内:「平民地区 図書館」からオウルさんが去りました。