2024/04/28 のログ
ご案内:「無名遺跡」にE・T・D・Mさんが現れました。
E・T・D・M > ダンジョンが在る
ダンジョンが居る

そこは巨大なつぼ型の空間となっていた
幅は凡そにおいて底半径6m程度の円形型、高さは10m近くある上に内側面が深い曲面を描いている所為で、登攀に全く適していない
そして内部には丁寧にも、平均的な人間の腰の高さ程度に及び、肉体的な行動を阻害する水が張られている
即ち脱出が極めて困難な環境が設えられていた、食虫植物のウツボカヅラを彷彿させるかのようなトラップ
この真上は迷宮内の変哲も無い通路となっており、餌として大粒の宝石まで仕掛けられている
歩行して抜ける程度ならば問題ないが、その場に長く立ち止まって宝石を回収しようと留まる場合
即座に床面に穴が開いて犠牲者を呑み込んでしまう、という仕組みだ
これが人為的な手を加えられて築かれたものであるのは明らかであり
内空間には暗がりを照らすランタンの明かりが天井近くに吊るされている

水が張られていると前述したが、正確には少しばかりそれは違う
照らし付ける薄明りによって浮き上がる水面の色は牛乳のような乳白色を湛えている
但しながら匂い立つ臭気は乳臭さのそれとは全く異なり、吐き気を催すような生臭い獣臭だ
水面は常に波打つように揺れている、時折にぱしゃ、と、水を叩く水音が閉鎖された空間内に響き渡った
何がそこに巣食っているのか…それは、夥しい量の精蟲の群生である
それも自然界ならば、到底に在り得ない程に巨大さを誇る

E・T・D・M > 本来であれば精子とは0.06mmにも満たないというのに
その全長の規模たるや悍ましくも、軽く見込んでも1m近くにも達する
尾の如き鞭毛を揺すり立てて適温に保温された水中を泳ぎ回るそれらは
顎も目も目鼻も無い蛇かおたまじゃくしのようにも見えるだろう
精蟲がこの大きさとなると、その機能性も本来のものとは大分異なる
周囲の水辺を少し見渡してみると良い、トラップに掛かるのは何も人間ばかりではない
迷宮において息衝いている怪物達すらも落下してこの場に囚われになっていた
その中の犬のような魔物は、牝性生物であったという事が災いしている
腹部はこんもりと膨らみを帯びて尚も入り切らなかった精蟲の尾部が尻尾のように膣穴から食み出して延びていた
その胎内では排出させられた卵子を受精、させるのではなく、精蟲自体が卵細胞を喰って格納してしまっている状態だ

その異常な性交紛いの捕食行為により生じた受精卵ならぬ攻卵精より、一体何が生誕するかも全く定かでは無い
そしてその在り得ざる変異を齎した迷宮の一角の主は
内壁より触手を覗かせ水晶眼の定点撮影記録を黙々と積み上げ続けている
また、新たに此処に落ちて来るものの不幸な末路を見届ける、その為に

ご案内:「無名遺跡」からE・T・D・Mさんが去りました。