2023/11/08 のログ
■アルマース > 誰かに尋ねるか頼むかして、王都までの足を探すことにしよう。
赤いスカーフの結んである革のトランクケースを持って、踏み固められた道を村の中へ向かう。
余生を過ごすならこういう村が良いのかもしれない。
実際、先ほどまでいた家の、病気で死期が近いという女性は、さほど不幸には見えなかった。
音楽が何よりも好きだと言う彼女が弾く楽器に合わせ、舞をつけ、疲れたら休みながら互いの話をして。
初めて会うのに友達のようだった。
死ぬことを隣の村に越すような軽い口ぶりで言うところが、昔の友達と似ていたからかもしれない。
――先いって待っててやるから。焦らなくていいぞ。
また明日な、と日頃言うのと変わらぬ温度で別れ、それきりになった友人も、今日知り合った彼女も。
越した先でもこの村のような、のどかなところにいてほしい。
日差しが注ぎ、あたたかく、話し相手のいる、孤独ではない場所に。
いずれ自分も行く場所に、待つ人がいると思った日から、それが怖くはなくなったけれど。
それでも会うには遠い場所。
旅はもう少し続くのだろう。
教会を訪ねたら、『隣村まで歩けば馬車がある』と言われたから。
焦らずに、景色でも眺めながら帰ることにしよう。
旧友に会う時には、土産話をたくさん持っていくのだ。
ご案内:「王都近郊の村」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「カフェ:ホワイトドレス」にアティルさんが現れました。
■アティル > 【待ち合わせです】
ご案内:「カフェ:ホワイトドレス」にリーナさんが現れました。
■アティル > 大通り沿いにあるパフェ専門店。
石造りの建物の周囲に季節の花を植えられており、店の外では季節に応じた花や往来を眺めながら飲食を楽しめる。
店内は静けさの中に時折華やいだ笑い声が響く。
ほんのりとした灯りが壁に灯されているが採光窓が大きく、日中のこの時間は店内の灯りは要らない程に明るい。
そのお店の前で男は往来を眺めつつ人を待っている様子。
天候も良く往来は活気づいている。
治安も良く、少なくとも表通りなら犯罪などに巻き込まれる事も少ないだろう。
少女にはお店の名前と地図を簡単に書いた物を渡しておいたが
ふと無事に辿り着けるだろうかという不安がよぎったのは、人が良すぎる少女がトラブルに巻き込まれないだろうかという心配もあっての事。
未だ待ち合わせの時間には余裕があるが、きょろきょろと視線が右往左往する様な素振りを見せていた。
■リーナ > お約束の時間、一時間前から出てはいた、家は富裕地区と言っても、其処迄遠い場所ではない。
初めての場所、と言っても平民地区の中で、地図もある。
地図を片手にぽてり、ぽてりと歩く少女、一歩歩くたびに、白いワンピースを持ち上げる胸が、ゆさりゆさりと揺れる。
肩掛けにしている鞄のベルトが食い込んで、乳房をさらに強調する物だから、つんと、服を持ち上げる胸が更に。
金色の長い髪の毛は、三つ編みに結ばれていて、今日はナースキャップはしていない。
歩くたびに三つ編みがゆらりゆらりと楽し気に揺られて、姉の尻尾の様だ。
ほんわかと笑みを浮かべる笑顔も楽しそうに緩んで、にっこりにこにこしている。
お出かけが楽しくてたまらない、遊びに行くのが楽しみである。
それで、彼が来てから時間がかかった理由としては。
襲われる事は無くても、ふいに怪我をする人がいる、子供が迷子になったりする。
怪我をした人を治療したり、迷子のお母さんを探したり。
人が良いと感じる彼の予測通りに、何かしらのトラブルに対応して居た。
間に合ったのは、リーナも早めに出ていたからに過ぎない。
「こんにちはぁ~。アティルさま。」
きょろり、きょろりと周囲を見渡す彼を見つければ。
とたとたとことこ、と少し小走りに走る少女。
パイスラッシュしたむねが、だぷんだゆんと、強調されてみせようか。
手をあげてふりふり、と振りながら、アティルの方に向かい、近づいて行く。
■アティル > 少女の風貌は良い意味で目立つ。人目を惹く華やかさがある上に平和を象徴するような穏やかさを併せ持つから。
往来を通る人が思わず道を空けたくなるような、無邪気かつ無垢な笑顔。
楽しそうな笑顔に周囲の人もその楽しさ。穏やかさを分け与えられるような魅力を持つ少女。
その、邪な心でさえ見なければの話だが。
少し小走りになると暴力的なまでに自己主張している胸はより狂暴さを増して男達の目を惹く事にもなる。
胸と胸の間に走る一筋の帯が余計に目立っていた。
「あぁ、リーナさん。こんにちは。
先日はありがとうございました。……ッ。」
その穏やかな声に誘われる様にして視線が少女の方に向くと、会釈と同時に僅かに視線が下がる。
その下がった視線の先には踊る、というかもう今にも破裂しそうな胸があった。
慌てて視線を上げて少女の笑顔の方に視線を固定させる努力をしつつ。
手にしている小さな紙袋の中にあるのは先日、少女との出会いの理由になった物。
ドレスシャツと、あの後自分が口にしていた酒とグラスの中身の余りを瓶詰にした物が入っている。
「今日も可愛らしいですね、リーナさん。
……見ているだけで此方も笑顔になりそうな、平穏な笑顔です。
こちら、先日のお約束の物と。運よくグラスの中身が残っていたので。」
より解析と解毒薬の開発には役立つかもしれない。
その2つをそっと手渡ししつつ、改めてお店の方に向かう。
少し髪の毛をカットした為に、男の方はマッシュルームボブではなく、オールバックの首筋は襟までの長さに整えられた髪の毛。
たぷたぷしている胸に視線が時折向いてしまうのは仕方がない。
改めてお店の方に向かいつつ、手を差し出しても大丈夫な物かどうか。
おずおずと手を差し出す。お店の前にには少しだけ段差があるのでエスコートをするつもりのようだ。
白いワンピースに金色の髪の毛。此処で転んでしまうと、折角のおしゃれも台無しになってしまう。
「段差がありますのでお気をつけて。
……外でお花を眺めながらと、お店の中でゆっくり寛ぎながらならどちらが良いですか?」
事前の予約で席は両方空けてもらっている。
リーナの希望に沿う形で席は用意してもらえるだろう。
首を微かに傾げ、お店に入る前にその確認を。
確認を取り終わればお店に入り、自分の名前とリーナが希望した席に案内を受ける形になるだろう。
どちらでも構わない、といった場合には店内の方に案内をされる形になる。
■リーナ > 自分に向かう視線に関しては、無頓着、と言うよりも、何でこちらを見るのかが判らない。
珍しい服装をしているわけでは無い、ワンピースだって、白いもので無地の物だ、確かに、商家だから、生地は良い物だけど。
それが、視線を集める理由と云うには弱いと思うし、魔術で、角も翼も尻尾も全部ちゃんと隠して人間の姿。
金髪が長くてプラプラしているけれどそれだけだし、有名人か?と云えば、有名人でもない。
それが、リーナが自分に持っている評価、だから、見られても気に成らない。
その結果が。たぷんたぷんぷるんぷるんと言う擬音に繋がる。
さらに後ろから見れば、下着は見えない者のワンピースを押し上げるまぁるい桃がぷりんぷりんと、ゆれている。
そんな少女は、彼の―――貴族の基へとたどり着く。
サラサラの髪の毛、汗一つ書いていないのは、気候も、役に立っているのだろう。
会釈する彼に対して、此方も一度止まり。
「改めまして……ごきげんよう、アティルさま。
本日も、お日柄良くぅ、ご機嫌麗しくぅ。
可愛らしい、だなんてぇお上手、ですよぅ。
お招きいただきぃ、誠にありがとうございますぅ
私は、仕事を、熟しただけですからぁ。助かっていただき、有難う御座いますぅ」
スカートの裾をチョンと摘まみ、ぺこり、と一つカーテシーを。
褒められてしまい嬉しいのか、頭を下げたままでも、頬とか耳とかまっかっかになってしまっている。
彼は、貴族だ、前に日取りと地図を盛って来て下さった、以前の老紳士……家令の人に聞いた。
だから、平民であるリーナは、ちゃんとしないといけない、と感じての事だった。
先日に関しては、患者と医療従事者という関係で、緊急時だったが、今は平時だ。
家族の中に居る貴族の人にも、ちゃんと色々聞いてお勉強したので、間違いない。
それから、前日おねだりした、彼が当時着ていて、毒の付着したドレスシャツとワインの残り、毒の解析の為に、勉強のために持ってきてもらったそれ。
紙袋に入っているそれを恭しく与ると、持っていた鞄の中に。
マジックバックなので、するり、と紙袋が入るも、大きさに変化はなく、重さも変わったように見えなかった。
それと同時に、リーナももそもそ、とバックから取り出す。
「本当にぃ、有難う御座いますぅ。
お返しの、ドレスシャツですぅ、郵送はぁ……失礼と思いましたのでぇ。
手渡しさせていただければ、とぉ……。
頑張って、おまじない、しておきましたぁ。」
貴族から一つ与るのだ、同等以上の物を返すのは礼儀。
と言う事で、同じ最上級のドレスシャツを買った上で、リーナは叔母にお願いして、シャツに自ら防護魔法を掛けた。
見た目に反して、刃を通さない防御力と毒成分を解毒する魔法を掛けたそれ、今回のように、飲んだり塗られたり刺されたりしても、大丈夫なように、と。
身長差もあり、上目遣いになってしまうのは仕方がないが、どうぞ、と彼に、パリパリに糊のきいたシャツを差し出した。
「はい、有難う御座いますぅ。
ではぁ。……アティルさまが、エスコート、してくださる方が、良いですぅ。」
受け取ってもらうのを確認してから、彼の手を取り、どっちが良いか、と言われる。
お花を見るのも楽しそうだし、静かな所でと言うのも嬉しいのだ。
金色の目で、ぱちくり瞬いて、ちょっと悩んで。
アティル様のお好きな方、楽しめる方で、と。
お誘いいただいたので、此処は、彼が、自分に望む方を、と。
■アティル > 「ご丁寧にありがとうございます。
おまじないですか。それではその気持ちも含めて有難く頂きます。
……社交界にご出席されたりしてましたか?
礼儀がとても丁寧で、私の方が立場らしくない振舞になってしまいました。
今日は、お互いそういう立場抜きで楽しみましょう。」
スカートの裾を軽くつまんでのお辞儀。
礼儀作法が完璧とも言えるその1つの所作に舌を巻く。
会釈程度で済ませた自分の方が無作法にも思える程、行き届いたお辞儀だった。
手にしたドレスシャツは最上級の自分があの日着用していたものと同じ。
差し出されたそれを手に取ると確りと糊も聞いて手入れが行き届く事が判る。
おまじない、の具体的な中身までは判らないが。少女の気遣いを断るのは失礼だし、折角用意してくれた気持ちを台無しにする。
だから有難く受け取り、トートバッグの中に静かにしまい込む。
可憐な花を包み込む様に少女の手を取り、緩やかに手を引き、半歩だけ己が前に出る形で入口を潜る。
直ぐに案内されるのはお店の中でも少し奥まった場所。
お互いが向かい合いになる様に椅子が設置され、植物の蔦で編まれた籠が足元に置かれ。
目の前には白樺の古木から作られたテーブルが設置されている。
リーナの胸の下がギリギリ届くかどうかの高さで、パフェが食べやすい様になのか最初から受け皿とスプーン、フォークが並べられていた。
椅子は楡木を加工された物。それを引いて少女へお座りください、と手で示し。
リーナが座った後で己は向かい側に座る。
それを待っていたかのようにメニューが二人の間に並べられ、呪文書の様にずらりと十を超えるパフェに数十種のトッピングが並ぶ。
「今の季節なら葡萄や無花果もあるみたいですね。
通年で楽しめる果物を使った物もあります。
生クリームが苦手でしたら、チョコレートクリームへの変更も出来ますよ。」
魔導映像機から映し出されているのか、お互いの指がパフェに触れると幻像が宙に浮かぶ仕組み。
トッピング等も触れると、こういった完成形になるといった具合に浮かび上がるのが特徴的だった。
人気があるのは季節の果物のお任せパフェ。
トッピングでキャラメリゼされたナッツや果物のトッピング。
チョコレートチップやブランデーのワンショットソース。
……ブランデーのワンショットは流石に選ばない方が良さそうな気はするが。
メニューを眺めつつちらちらと少女の方を伺う。
少しでも楽しんでもらえたり、美味しそうだと思ってくれるなら嬉しいというのもある。
■リーナ > 「はい~。
頑張ってぇ、叔母様にお願いしてぇ、付与魔法のお勉強をしましたの~。
社交界はぁ、いいえ~無いのですぅ。お姉様のぉ、奥様のうち一人にぃ、貴族の方がいますぅ~。
なのでぇ。教えて貰いましたぁ~。
了解しましたぁ、ええ。アティルさまがぁ、そう仰られるならぁ。」
マナーとかそう言った物に関しては、まだまだ勉強中でもあるから、色々と不安がある。
彼の方からその言葉を聞いて、安堵したように、はふぅ、と吐息を一つ。
なので、しっかりとした、カーテシーと、食事は兎も角、他は自信が殆ど無い。
糊をしっかりとしたものも、魔法の付与に対して、自分で触れてしまったから、だ。
しまってくれて、ありがとうございます、とほにゃ、と笑いかけて、ペコリ、とお辞儀をひとつ。
プルンと揺れる、胸の谷間が、ワンピースの隙間から見えたりみえなかったり。
アティルと共に、ゆっくりお店の中に入っていく。
奥の方に導かれていく、静かな場所で、とてもゆっくり落ち着ける場所なのが判る。
足元に置かれた籠に自分の鞄を置いて。
目の前にある白樺のテーブル、アティル様が引いてくれた椅子に腰を下ろしたところ。
「有難う~ございますぅ。」
椅子を引いてくれた真摯な振る舞いに、ほわ、と頬を染めながら、上に、立っているままの彼に笑いかける。
乳房の下に来るテーブルは、とても良さそうで、椅子に座ると多きな乳房が、ぽよん、と乗っかってしまう。
そして、対面に座る彼を見ながら、メニューを見せてくれるので、それを眺める。
「わわぁ~凄いですねぇ~。
とても、おいしそうですぅ。」
魔導機械は良く見る物で、指で捜査して、画像を見やる。
凄い機能ですねぇ、と、言いながらも、メニューを一通り眺めて。
「それではぁ、アティルさま。
私は、この、お勧めの季節の果物のお任せパフェのキャラメリゼされたナッツや果物のトッピング。
チョコレートチップやブランデーのワンショットソース。」
お勧めを見ながら、これで行きましょう、とにっこり笑ってみる。
楽しみですわぁ、といながらも、アティルの方を見やりなおす。
「アティルさまはぁ、如何されます~?
私だけと言うのはぁ、凄く、気に成りますぅ。」
彼の事に対して、おもてなしを感じるのだけども。
自分だけ甘い思いをするのは、悪い気しかしないので。
一緒に食べたいです、と。
■アティル > 「リーナさんは努力家……ですね。
礼儀作法に、普段のお仕事。魔法の勉強とは。
私も見習うべき点が多い。それに笑顔もとてもチャーミングです。」
才能、とは言わなかった。魔法を使える才能。
短期間で習得したのは才もある。けれど才の一語で済ませるのは失礼だろう。
日頃ナースとして、看護師として勤務しながら。礼儀作法にこのおまじない。
リーナと言う少女がどれ程打ち込み、身に付けていたか。
それはそれとして胸の谷間が隙間から見えた時に視線が吸い寄せられたのは男の性。
頬を赤くしたのは今度はこちらの番だった。
座席まで案内が終わり、微笑には微笑で首を左右に。
御礼の言葉には当然の事なので、と一言告げながらもメニューをお互いに広げて見遣る。
映像に映し出されるパフェの完成予想図に声を上げるリーナの微笑ましい姿につられるように、自分の笑顔も力の抜けた自然な、楽しい様子を強く前面に押し出す笑みに変わり。
ブランデーのワンショットソースには大丈夫だろうか、と思いつつ。
ブランデーを知らない事は無いだろう、と信じた。
実際にワンショットのブランデーソースは余程お酒に弱くない限り、体をポカポカ温める程度の筈だ。
「見ているだけでも楽しいですからね。
1つだけじゃなくても大丈夫ですよ?
そうですね、私は折角なので梨のコンポートをベースにして……
梨のコンポートドレッシングパフェに、シナモンホイップ。
クラッシュナッツにピスタチオとアボガドのグリーンクリームを。
お飲み物はどうします?紅茶やコーヒーもあります。
私はコーヒーを頼むつもりですが。」
一緒に食べたいという少女の申し出を有難く受け、今日は栄養を取る日なので少しばかり健康的にも見えるクリームを添える。
飲物までを手早く決めつつ、オーダーを取りに来るウェイターにそれを伝え――改めてみる少女の可愛らしさや笑顔が途切れない様子が一番の楽しさでもある。
メニューを一旦返すとテーブルの上に乗る胸も目を惹くが。
目を惹くが、頑張ってリーナの笑顔。太陽の其れに笑顔を向けるのだった。
「叔母様も優しくて素敵な方なのですね。
ご家族とも仲が良さそうで良かった。
そうか、リーナさんの素敵な笑顔は毎日が幸せだから、自然と人の笑顔を導くのかもしれないですね。」
お姉さまの奥様の内1人、という事は結構な大家族なのだろうか。
等と思うが、実際は知らないし余り家の事をあれこれ聞くのも良くないだろう。
貴族がいるという事は、優しいリーナの性格を考えると緊張を与えるかもしれなかった。
家族仲が良さそうな事は伺えるので、リーナが幸せを享受できる環境なら一番だ。
パフェが届くまで少し時間もある。お互いに聞きたい事があれば今のうちに会話が出来るだろう。
こちらから聞くのは、魔導映像施設。魔導撮影機を使ってドラマを流すという仕組みを大きなホールで行う場所に興味があるのだろうか、といった内容や書物に興味がありますか?
といった少女の趣味を知ろうとする質問が多くなる。
こちらから一方的ではなく、交互に情報交換をする様な形で時間を過ごしたいという思いがあった。
■リーナ > 「そう、なのですかね……?
私は普通に学んでいるだけ、ですわ?
見習うだなんて、それに、チャーミング、なんて、お上手。」
ぽぽぽ、と甘い言葉に頬が熱くなってしまいますわ、と両手を頬をに宛てて冷やします、冷やします。
才能とかを信じているわけでは無いし、唯々、色々と有るのかもしれない。
人ではないから、色々と恵まれているだけなのだろう、それを誇る事は、無いだろうとも思う。
出来る事を、する、そして、したい事をする、それだけの話なのだ、と思っている。
「アティルさま~、これもぉ、これもぉ、美味しそうですよぉ!」
楽しそうに笑って、パラパラと変わる画面、完成予想図を見て、美味しそう、あれも、これも、と、思わずめぐる。
頬が赤くなっているアティルに、如何いたしました?と首を、傾いで見せる。
それでも、楽しそうに笑う彼を見やって、もう一度、首を傾いでみる。
お酒に関しては、リーナは、人竜であることも多く作用する。
お酒には強く、ブランデー程度で酔っぱらう事もないのだ。
ドラゴン殺しとか、超強力な酒をがぽがぽ飲んで、漸く酔えるかどうか、でもある。
「……ふにゃ~?」
アティルの注文に関しては、手慣れ過ぎていて、目を瞬く。
あれ?あれれ?上級者の手早さに、凄いなぁ、と思いながらも。
最後の一言に、あ、と。
「私は、紅茶でお願いします~」
なんとかかんとか、飲み物の注文に対して反応して、お願いしますぅ、と手を合わせて見せる。
かっこよくやってきたウエイターに、お願いしますぅ、と、さらにお願い。
ちょこんと、両手を膝にのせて、きょろきょろ、と今更ながらに、店の中を見やるのだ。
こういう場所はあまり来ないので、珍しくて仕方がないというのは見て取れるだろう。
「はい~。叔母さまは、お優しい方、ですよぅ。
でもぉ……魔法の事、とか、色々、厳しくもありますぅ。
アティルさまも……素敵なご家庭だと、思いますよぅ?
家令の方が、あんなにも必死に、アティルさまを心配、しておりましたしぃ。」
彼の事を、何も知らない。
それでも、彼の家令があんなに必死に、彼のことを心配していた。
家族でもない、他人でしかない家令が、だ。
それだけ、大事にされている人、彼自身が素敵な人なのだろう、とそう、思うのだ。
■アティル > 「その普通が出来る事、学ぶ事への真摯な姿勢も併せて、ですよ。
本音を口に出しただけですし、ころころと表情が変わるのも素敵です。」
両手に頬を当てる様子は見た目の年齢相応な仕草。
冷やそうとするリーナの様子はみているだけで人の心の部分。
穏やかな、本来持ち得ている善性の部分を癒す様な柔らかさだ。
一応ウェイターに酔い覚ましを追加でそっと注文したのは少女の特性やお酒への強さを知らないから。
そうしているとバナナや温暖な気候下でのみ採取される特別な果実
それをフローズンチップにさせたスノウマウントを思わせるパフェ。
時には植物の蔦の様に伸びる緑色のソースがホワイトマウントに絡まり、早春の山を思わせる色合いのパフェになったり。
首を傾げてこちらを見遣る少女には、こほん、と咳ばらいを一つしてから「大丈夫です、なんでもないです、はい」と呟く。
お店の中は基本的に静かで、学院に通う生徒や少し裕福な女性
或いは華やかに学校の事を話し合う若い女子生徒の姿が散見される。
ただ、話の内容は恋バナだったり。どうしても目を惹くリーナへの羨望めいた声だったりするのだが。
「優しさの中の厳しさは、それだけ大切だという事を伝えたいのでしょうね。
優しいからこそ、リーナさんを大切に思うからこそ厳しく言うべき場面で、ちゃんと口に出来る。
……羨ましい限りです。」
魔法の事は自分の卑しい物に仕込んでいる魔法しか知らない。
自分が単独で使える魔法と言うのは無い。家の至宝を介して使う物しか使えず。
自分の家はどうか、と思い返せば厳しくはあるが、そこにあるのは打算と保身を元にする厳しさ。
悪徳貴族として世の中を渡りゆく為の厳しさなのだから、少女の家の厳しさとは訳が違った。
「爺は、長年仕えてくれているからね。
……今回も色々な意味で助けられましたし。
親兄弟とは殆どが無いんですよ。
今はこうしてリーナさんの温かさとチャーミングな笑顔で癒されていますが。
家の中では爺くらいでしょうかね、私を一個人として見て、接してくれているのは。
だからリーナさんの言う家族は、私にとっては爺だけかもしれません。」
だからという訳ではないが、リーナと言う少女の笑顔が。
ころころと変わる顔色に楽しそうな笑顔。
それを見ている間は悪徳貴族ではなく、一個人として普通に心が動き、安らぐ時間。
もっと笑顔が見たいと思いつつも、そのタイミングでお待たせしました、とパフェに飲物が並べられる。
パフェはちょっと大きいかもしれない。
30センチほどの高さのガラス細工の内側に、リーナの分は底から梨の層、生クリームの層、葡萄の層、キウイやリンゴと言ったカラフルな層に区切られており。
その器から山のように紡錘形をした生クリームにチョコレートチップは最初から掛けられている。
白い山を思わせる生クリームの山から顔を覗かせるキャラメリゼされたナッツやトッピングフルーツが並び。
そして芳醇な香りをさせたブランデーのワンショットソースが小瓶に詰められて並べられた。
一応、というか酔い覚ましのお水も横に。
自分の方は平たい器の底に梨のコンポート。シロップをゼリーで固めた土台の上に生クリームが盛られ、そこに梨の果実をダイスカットさせつつ、果実の水分を逃がさない様に表面をゼリーで覆った梨とクラッシュされたナッツが。
少女のクリームの山と異なり、緑色の層も混ざるグラデーションが。
シナモンホイップは別な器で用意されている。
「……思ったより大きいですね。
リーナさん、お酒は大丈夫ですか?
危なそうならかけ過ぎない方が良いと思いますよ。」
■リーナ > 「もう!もう!そんな風に言わないで下さいましぃ。
恥ずかしくなって、しまいますわ~。」
ぷく、と頬を膨らませて、憤慨してます、のポーズ。見た目ほどに怒っているわけでは無いので、直ぐにぷしゅ、吐息を吐き出す。
怒ってませんよ、と微笑みを作っても見せようか。
そんなこんなをしている間に、パフェがウエィターが持ってやってきて、テーブルに置いて行く。
その時に何かを注文しているのを見て、何を注文しているのかしら、と考える。
出されたパフェは、大きく、綺麗な器、そして、おいしそうだし、良い匂いがする。
雪山の様な、純白のパフェは、とても、とても、綺麗だ、また、もう一度、綺麗、とキラキラした目で見やる。
雪に、春山の様な色合い、ふわわわわ、と。
商家の自分の家でも、見たことの無い様な、立派で綺麗なパフェだ。
思わず色々な角度から見て、物理的にも、精神的にも、胸が躍る。
運が良かったか、豊満な胸が器に直撃はしなかった程度には、はしゃいでは無いの、かも。
そんなリーナの様子。
学生たちの声とか、視線とか、そんなものには一切気が付いてない様子が、無くて。
「はい~、叔母様は、厳しくも優しい方ですわぁ。
私も、そんな優しい方になりたいのですぅ。
ゼナお母様も、素敵で優しい方、ですわ?
あと。
アティルさまにもぉ、そう言う方は、いらっしゃいますわ~。」
彼の家令を思い出して、素敵な方ですわ、と微笑ましく思いながら伝えて見せる。
羨ましがることはない、彼もまた、素敵な人がいるだろう、と、思う。
貴族と言う物は……家としては違うので、推測しかできない。
そう言う意味では、リーナの頭の中は、お花畑、なのだろう、彼から見れば。
逆に言えば、それだけ、見ているもの、感じ方が違う、とも思える。
「ええ、ええ~。
アティルさま、その爺やさまは、大事な方になるんですのね~
なので、爺やさまを、大事にされた方が、良いと思いますわぁ。
後、私で良ければぁ。おともだち、になりますからぁ。」
親兄弟と不仲なのは寂しい事、辛い事。
仲良くなること自体は、いつかできるのかもしれないけれど、それが出来るようになるまでは。
リーナは協力しますから、と。
彼の寂しさを少しでも癒す事が出来れば良いなと、思うのだった。
そして。
いざ、パフェを手にしたところ、の事だ。
「………あのぅ。」
添えられたソースなどをちゃんと、振りかけて。そして、パフェをいざ、と言う時にスプーンを持って。
少しだけ、恥ずかしそうに、困ったように、上目遣いで見上げる。
もじもじ、もじもじ、と言いづらそうにしている、実際、言いづらい事でも、有る。
「あのぅ。 はしたない、とぉ、思わないでぇ、下さい……ね?」
これはまあ、乙女としては、本当に、本当に、切実な問題。
トゥルネソルの一族は大体においての事であるのだけども、人竜と言う所がある。
そう。
おおぐらいというものだ、一杯食べる女の子がはしたないと思われがちだ。
これでも、小食な方なのだけども、それでも、普通の人と比べれば、何倍以上も食べるので。
このパフェも、一人で食べられてしまう。
それで、引かれてしまうのは、リーナとしても、不安でしかないのであった。
■アティル > 「あはは、意地悪で言っているんじゃないですよ。
そういう所も含めて、チャーミングと言っているんです。
優しさは、もう十分に備わっていると思いますよ。」
チャーミング、という言葉の後に続けたのは小声。
聞こえなければまぁ、それで良い。ナンパは好きだが。
こういうナンパと少し距離を置いた距離感で人と会うのを楽しいと、癒されると思うのは初めてでもあるのだから。
酔い覚ましの水と一応アルコールを解毒するためのお薬がテーブルに並ぶと、何を小声で注文したのかは理解出来るかもしれない。
的外れな心配なのだが。
宝石よりも輝く目でパフェを見遣るリーナの姿に笑みが深くなる。
そこまで喜んでくれるなら、誘った事が間違いではなかった。
少女に食べてもらうために、陽光を煌びやかに反射する表面をキャラメリゼされ、コーティングされたナッツが。
控えめだが暖色の色合いを宿す灯を硝子細工の器が。
それぞれに反射してリーナの食欲を刺激し、甘く漂う生クリームとフルーツの香りが違う側面から彼女を誘惑している。
紅茶の香りは少しだが苦みを連想させる薫り高い物。
甘い物に慣れた舌には程よく苦味と言う形で綺麗に舌を洗ってくれるだろう。
紅茶のセットなのか、スライスされたレモンに砂糖の小さな壺。
クリームミルクが満たされたレンゲが別な皿に並べられている。
「……そうですね。爺も大切に。
友達となって頂けるリーナ様も大切にさせていただきます。
友達になるからには、様、は不要ですけどね。」
笑顔と弾む声。お花畑、とは思わない。
ただ、たとえば自分の趣味に引き込むにしても少女が泣く様な事や真似はしたくないと思える。
心の栄養と言うのがあるなら、今十分その恩恵にあずかっているのだから。
お互いにスプーンやフォークといったパフェに挑む為の道具を手にすると、ふと掛けられた声。
視線を少女に移すと上目遣いで、しかももじもじとしている。
最初はお花摘みか?と思ったがそうではなさそうだ。
言葉の先を促そうと唇を開きかけた時に、はしたないと思わないでという声。
きょとん、と。自分が今度は眼を開いて首を傾げる番。
はしたないと思う要素が今あるとすれば、食欲とかのお話になるのだろうか?
「……あぁ、なるほど。
もし、私が思っている事と。リーナさんが思っている事が一致しているならの話ですが。
私は笑顔で、たくさん食べてくれる人が好ましいです。
それに、残すよりもたくさん食べて頂ければ。
パティシエも喜ぶでしょうし、私もこの店に案内出来た事を嬉しく思います。」
何を意味するのかは全然隠す事が出来ていないが。
それでも、食べてもらえる方が作る側も。
誘った側も嬉しい物だ。そこにはしたないといった相手を蔑む感情は存在しない。
何故なら、笑顔で食べてくれる。パフェを気に入ってくれるなら誰も嫌な思いをしない。
そう伝えて、心行くまで食べましょう?と。
小さな声で続けながら、そっとメニューをもう一度手元に置いておくのだ。
何より、食べて、笑顔になってくれるなら。
――自分もまた嬉しいと思うのだから。
■リーナ > 「本当にぃ、アティルさまは、お上手、なんですから~」
ちゃんと聞こえた、しかし、彼の言葉が小さいのは、恥ずかしいのだと思ったから、其処に言葉は紡がない。
一応、リーナは、空気を読めるタイプ、斜めにずれているかもしれないけど。
隣に置かれた、お水と、酔い覚ましに、意図を理解し有難う御座います、と微笑んで。
彼の的外れとか別に、その心意気が、良いのだ、と。
微笑みを零すアティルの様子に、素敵です、とにこやかに微笑んで見せる。
本当に、有難う御座います、とパフェを前に、にっこり微笑んでいて。
きらきらしているパフェが、食べるのは、とても、とても勿体ない、とおもえてしまう。
凄くイイ臭いで、食べて、食べて、と言っているようにも見えて。
凄く良いお茶、この店の取り扱は素敵だと思い、今度、皆で遊びに来ましょう、と思う。
綺麗なお茶のカップに、お洒落な砂糖ポットに、レモンスライス。
色々とあるお茶のセットが素晴らしくて。
「ふふぅ。でも~
アティル……さま。もう少しだけ、ご容赦くださいましぃ。」
様ではなく、「さま」。
個人的に、親愛を込めている積り、彼の事を安心している証拠でもある。
お友達と認定している、男性にしては、本当に、初めての相手。
呼び捨て、は、まだ、まだ、もう少し、待って欲しい、と。
「……はいぃ。」
アティルの言葉、上手く察してくれて、明言を避けつつも言ってくれる。
有難う御座いますね、と恥ずかしそうに、小さく、小さくつぶやく。
そして、スプーンを一匙。
甘くおいしいパフェ、ぱくり、と口にして、頬を赤く。
とてもおいしくて、頬に手を当てて、思わずほわぁ、と声が零れてしまう。
「アティルさま、とてもおいしいですぅ
アティルさま!」
思わずと言うか、自分が口にしたスプーンでパフェを一匙掬う。
どうぞ、どうぞ!とばかりに、彼の口元に。
はい、あーん、と。さしだすのだ。
とてもおいしいから、甘いから。
彼は別の物を注文したのだし、同じものを共有したかった。
なので、どうぞ、と。
彼がそれを食べたのかどうかは二人の秘密。
ただ、終始キラキラしながら、パフェを食べて、楽しくデートを続ける。
最後には、有難う御座いました、と心からのお礼を伝えるのは、間違いは、無い。
■アティル > 「ゆっくり、で大丈夫ですよ。
気を許せる友達、は初めてですから。」
そうして。パフェを口に運んだ少女の笑顔は室内の照明より。
天井からの陽光よりも輝き、眩しく見える満面の笑み。
一つの所作に声が漏れる様子。
それは素直な感情表現と捉えられて自分の心もまた浮き上がる。
差し出されたスプーンに、自分の方が頬を少し赤くして口を開いたのは内緒の話。
――濃厚な甘さのクリームや1つ1つに手を加えたパフェ以上に。
甘味を感じたのは間違いがない話。
御礼に、と自分のコンポートの土台をそっと掬い取り、2色のクリームを乗せた一口パフェの様にスプーンの上に作ると、お互いに、少しずつ目の前のパフェを食していく。
楽しい時間が過ぎて、暗くなる前に家に戻る事が出来る様に。
お店を出た所で――。
「こちらこそ。とても、とても楽しい時間でした。
リーナさん、また今度お話しましょう。
帰り道、本当にお気をつけてくださいね!」
お互いが楽しい時間を過ごせたのならばそれが一番だ。
こちらからも御礼を告げ。少女を送るのも考えたが流石にそれは少女の事を思えばマズイだろう。
だから、暗くなる前に手を振ってこの場はお互いの記憶に刻み見送る。
余談だが、しばらくの間。心の栄養を摂った事により男の表情からは険しさやカドが消え。
人当たりも良くなった、等という評判があったとか。
少女との出会いとお話1つでアティルの道がまた少し、陽の当たる側へ引き寄せられたのは間違いが無く――。
ご案内:「カフェ:ホワイトドレス」からアティルさんが去りました。
ご案内:「カフェ:ホワイトドレス」からリーナさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市 裏路地」にサウロさんが現れました。
■サウロ > (陽が落ちて空は暗く星と月が瞬く夜でも、この都市はダイラスに負けず劣らずの煌々と輝いている。
昼は奴隷売買で賑わい、夜は娼館が開き、多く訪れる者達の熱と嬌声が響いている。
すっぽりと頭から被ったローブ。そんな変わった格好をしている者も少なくはないだろう。
サウロの場合は顔を出して歩く方が人の目に留まりやすい造形をしているから、フードを被っているほうが目立ちにくい。
さておき────そんな奴隷市場都市の娼館が並ぶ区域の路地裏。
娼婦から得た情報を頼りに進んでいく先には、近くにそびえる九頭龍山脈に広がる無名遺跡から発掘されるお宝を買い取る店があるとか。
古い書物から名品、曰く付きの品から呪具に魔具。
怪しい薬と情報も取り扱っている、変わり者がいるらしい。
その店を探しているのだが、王都の貧民地区よりも入り組んだ狭い路地を迂回、迂回、迂回──。
中々目的地までたどり着けず、何度目か分からないため息を吐く。)
「────さっきも通ったな」
(目印に塀の上に石を乗せたが、それがまた目について足を止める。
紙に簡素なマッピングをしてはいるが、このままでは店を見つける前にその店が閉まってしまいそうだ。)