2023/09/05 のログ
ご案内:「王都 富裕地区」にサタンさんが現れました。
サタン > 夜闇の王都富裕地区。
月や星の光は厚い雲覆われ、華やかな明かり灯る富裕地区の邸宅街も、
今宵は一際暗闇深く。
まして路地裏などはその闇深さが、近づく事への潜在的な恐怖ともなろうか。
そんな通りに奏でる足音と共に、黒衣の男は行く。
今夜の獲物は、この地区に居を構えるとある伯爵の男。
貧民地区の無頼共や傭兵崩れの賊徒共よりも、存外貴族階級への悪感情を抱く者が多いのも、この国の爛れ具合故だろうか、
などと思いつつ。

既に、魔王の配下により誘き出された獲物へと、1歩、また1歩とゆっくりと、ただ確実に、その死神は近づいてゆく。
この裏通りへと至る入り口も、近づく事を躊躇うかのような人除けの術も張られ、この後起こる出来事を知る者は恐らくは居ない。
僅かに、その違和感を感じ取れるか、運悪く巻き込まれてしまうかを除いては…。

ご案内:「王都 富裕地区」にセレンルーナさんが現れました。
セレンルーナ > 「うーん、参ったかな。証拠も順調に揃ってもう帰って手続きするだけだったのに…。」

無意識に近づく事を躊躇う忌避感を感じさせる裏通り、その建物の屋上から眼下を見下ろして暗い色のローブを羽織、フードを目深にかぶった人物はそうボヤキを零す。
その視線の先にいるのは、調査対象である伯爵と、黒衣の人物。
伯爵が呼び出されたため、念の為にと取り急ぎ後を尾けてきた。
ただの娼婦からの呼び出しなど他愛ないものであれば、そのまま帰還すればいいし、追加で汚職の証拠がつかめればより万全なものとなる。
しかし、実際は謎の黒衣の男との邂逅で雰囲気からして汚職現場というわけでもない。
それに加えて、黒衣の男からは何とも言えない威圧感が感じられてフードの人物は、眉を顰めていた。
伯爵を守る義理はないものの、伯爵の命がとられるならばそれはそれで問題であり、腰のレイピアに手をかけながら様子をとりあえずは伺って。

サタン > 既にこの男の狙いたる獲物は、一拍踏み込みさえすれば終わる距離。
なんという事は無い、何時もの容易い狩り――だが、

カツ、距離を詰める足音が不意に、その歩みを止めた。
この処刑場に、訪れた招かれざる客の存在を告げる、男の配下からの念話。
仕留めるは容易いが、此方の存在を知られる事は今後面倒となるか。

――とは言え、この状況無碍に放棄するつもりはない。
男は、踵を返し、カツン、と一つ足音を奏でる。
その音は、恐らく獲物たる人物にも聞こえ、彼はその音の方へと振り向くだろうか。

「―――ヤレ。」

独白のような声、恐らくこの伯爵にも、そして侵入者にも届きはしないだろう。
主の命を受けた闇は、刹那蠢き、
対象たる人物の首筋に、光も無く一閃が走る。
僅かな間の後に、男の背後では、命絞り出すかのような男の乱れた悲鳴の如き声が奏でられよう。

セレンルーナ > 様子を見ているが、黒衣の男の足が止まる様子はない。
相手の情報は全くなし。力量、脅威、何もかもわからぬ中に飛び込むというのは、無謀もいいところであるがそんなことも言っていられない。
ぐっと屋上の縁に足をかけると、そのままフードを押さえて自由落下していく人物。
翻るローブの合間からは、執事服が見えて地面へと落下し切るまえに、足元に風魔法で圧縮した空気の層を作り出して衝撃を緩和する。
しかし、思ったほど衝撃が緩和しきれずにズダンと少々派手な靴音が鳴ってしまった。
今にも襲われそうな伯爵と、黒衣の人物の間に割ってはいた形ではあるが…

「―――っ」

着地した次の瞬間には、伯爵の首筋から血しぶきがあがり、命を絞り出すような空気の漏れるような断末魔の声が響いていくのに、フードの下のグリーンブルーの瞳を見開かせていた。

「ちっ」

倒れゆく伯爵へと駆け寄ると、切り裂かれた首を抑えて溢れる血を止めようと圧迫していくだろう。
伯爵の首の傷の深さを測り、流れる血の量を見れば生存はかなり厳しい。
フードを被った人物から見えるのは、黒衣の男の後ろ姿だけだ。

「待て!そのまま動くな。殺人の現行犯として拘束させてもらう!」

執事服のクラバットを外すと、その布で圧迫止血を行いながら黒衣の人物へと声をかけていくだろう。