2023/08/18 のログ
■セリアス > かつての夜会での扱いのころから、赤く美しい瞳に籠る意思の変わらない彼女。
その彼女が一族の復興など考えているのならそれはそれでというところもあるけれど、
彼女自身にその気も無いようならそれ以上に問うことはせず。
過去にとらわれず新しい生活を始めている様子は素直に喜ばしい事と、
現状に至ることのできた縁を祝って。
「ぃやご主君が羨ましい。
メリッサ様のような女性に二人で過ごせれば重畳と言わせるのですからねぇ」
本心半分、からかい半分にへらりと笑みながら告げる。
興味を持た相手のことを探り、知ろうとするのは男の癖ではあるけれど。
なにも後ろ暗い感情がないかと探るばかりでなく、
単純に相手の内外の表情を知りたいのがその実のところであり。
目の前の女性は大いに男の興味を引く対象であるから、羨むのを隠すことなく。
「ええ、ええ。素材の買い取りもしておりますよ。
まぁ冒険者ギルドや商業ギルドとの折り合いもありますので、特別他より高値でというわけではありませんが」
凛々しさの中に、いくらかこちらへの警戒も薄れ柔らかくなったような彼女の表情を眺めていれば、
不意に買い取りについて問われ、頷いて返す。
他と競合するというより、単にそれぞれのギルドとも提携し、買取窓口を増やしている一環。
ゆえにただ卸すだけなら冒険者の登録でもして討伐依頼も一緒に受けた方が、と。
暗に言葉の裏に意を顰めながら返して。
■メリッサ > 「そうでしょうか…? もう、あまり揶揄わないでください」
(そこは羨むところなのだろうかと少し考えて、笑っている表情を見れば揶揄われたと分かって、眦をきゅっと吊り上げた。
彼の丁寧な物腰のおかげか、柔和な笑みか、あるいは所作や言葉か。
ことここに至っても、メリッサは彼が自分のことを知りたがっているとは思っていない様子であった。
それは彼が上手く隠し通せている証でもあり、警戒心を抱かせない技術とも呼べる称賛すべきもの。
もし仮に彼が何かしらの能力で精神干渉を行えば、メリッサは即座に感知しただろうし
警戒を引き上げて冴え冴えと凍てつく視線を向けることになった筈だ。
それがない時点で、メリッサも彼に信用を寄せられるのである。
いずれはその信用が信頼に昇華する時もくるのだろう。
その興味の行きつく先が何処であっても、この人ならば、と許せるようになってしまう程に。)
「なるほど……ありがとうございます。検討してみますね」
(彼が言外に含めた内容にも一考の余地はあるが、あまり目立つ行為は避けたい。
登録するにしても未知の領域なので、一度主君に相談してみた方がいいかという結論に至る。
あとはぽつりぽつりと会話を交えグラスの果実水も空になる頃に、胸ポケットから懐中時計を取り出して時刻を確認して。)
「……と、もう良い時間ですね。
そろそろお暇させていただきます。本日は有意義な時間をありがとうございました」
(そう告げて、座り心地のよいソファから立ち上がり、姿勢よく一礼する。
他に特になければ、このまま店を出て、市場のほうまで買い出しにその足で向かうだろう。)
■セリアス > 目つきをややきつくして見せ、こちらを窘めるような言葉にも小さく肩を竦め笑って見せる。
からかう心づもりもあれど、本心から羨む気持ちもあるのだけれど。
今それを全面に押し出したところで、彼女から色よい反応を引き出せるはずもない。
彼女より幾許か対人経験があるが故のことか、彼女に対して今は妙な搦め手を使うことも無く。
主と二人で、と願うということ。かつての領地に興味は無さそうなこと。
逆に言えばまだ新たな旅路に脚を進め始めたのはつい最近のことなのだろう。
頼る先、縋る先は主以外にはそう選択肢が無いのも想像がつくことで。
「ええ、ええ。ご検討の中でご意見やご相談があれば遠慮なく。
メリッサ様にでしたら、いつでもこちらの応接室へご案内いたしますので」
そうやって私心も交えた取引相手への『今後とも御贔屓に』という意を伝えていく。
平穏な日々を主と、と彼女自身が言ったのだから、これからも機会はある。
彼女のことを色々と引き出し知っていくのは、じっくりそうしていける、と。
たわいもない話をしながらに、楽し気な様子が途切れることもないのは、そんな思惑もあってのことで。
「ああ、すっかりとお引止めしてしまいまして。
いえいえ、こちらこそ楽しくお話させていただきました。
またどうぞ良しなに」
相手が立ち上がり礼を向けてくるのにも合わせ、男も立ち上がって礼を返す。
店を出る相手を恭しくエスコートし、ご主君とどうぞ、と、焼菓子を手土産にと渡して。
市場へ向かうその凛とした背を見送りながら、さて、次はどのように彼女の一面を引き出したものか、と。
新しい興味の対象を姿が見えなくなるまで見送り――……。
邪魔だと店員に退けられるまでが、たまにある雑貨店の閉店間際の光景であるとか、ないとか。
ご案内:「王都 平民地区/雑貨商店」からメリッサさんが去りました。
ご案内:「王都 平民地区/雑貨商店」からセリアスさんが去りました。
ご案内:「平民地区 路地裏」にカジャさんが現れました。
■カジャ > 王都マグメールその賑やかなる大通りより伸びる路地の一つ。
誰かが近道に使うような、誰かが誰かと内密に取引を行うような、そんな状況が似合う薄暗い路地裏であるが、その薄暗さの他に僅かな霧が霧と共にゾクリとする程の冷たい空気が満ちている。
警邏の兵士や冒険者であれば異変にその路地へ立ち入ろうと、もしくはその変化に気がつかず足早に路地を抜けようと、その路地裏の道を通り抜ける理由は様々あるだろう。
しかし今宵踏み込むモノは非なる日常と遭遇する事となるだろう――若しくはその餌食となるだろう。
其処には今にも朽ち果てそうな呪詛の塊たる生物が居た。
冒険者ギルドに捕獲依頼の依頼書が貼られるような希少な生物だ。
それが今や肉体を保てず半透明で不確かな姿となって路地を彷徨い、その身に宿る魔力が拡散して僅かな冷気と薄らとした霧を発生させている。
半透明なる腕、手、指にしか変化ができぬ化生。
物陰より、地面より、手を指を伸ばし蠢かせながら、獲物が迷い込んでくるのをまっている。
ぞわ、ぞわ、ざわ、ざわ、ざわ
飢えたモノ達は誘う、日常たる大通りから非日常たる異形が満ちる路地裏へと。
そのザワメキは誘いの声、おいでおいで、とその路地に視線を向けてしまった者を誘うのであった。
■カジャ > 誘いに乗る者がいなければカジャは呪詛の塊は退くしかない。
何故なら今のカジャに敵対者に抗う力はゼロに等しいのだ。
あるいは他の同族を取り込むか脆弱な身体でも食える相手を飲み込むしかないのだが、現状ではそれを望むのは難しいだろう。
だから今宵は退く。
脅威なる者に眼をつけられる前に影へと消える。
とぷんっ、と液体に何かが沈む音がして、路地の物陰から伸びる腕も手も指も陰の中へと沈んで消えて、路地裏に広がる霧さえも今はなく、通りの喧騒が路地まで響き何時もの日常がやってくるだろう。
此処にはもう呪詛の形跡はない。
もし辿ろうとすれば――余程の術者か魔法に精通したものだけ、後はない、何もない路地には静寂と夜の闇だけだ。
ご案内:「平民地区 路地裏」からカジャさんが去りました。