2023/08/17 のログ
ご案内:「王都 平民地区/雑貨商店」にセリアスさんが現れました。
セリアス > 【待ち合わせ待機中です】
セリアス > 王都、平民地区。大通り沿いにある雑貨商店。
普段から扱う日用雑貨や学用品、冒険者向けの商品も扱っている。
店の一部は魔獣の素材や遺跡からの発掘品の買い取りもしており、
周辺の冒険者ギルドとも提携し、ギルドが欲している素材は価格も合わせるなど、
儲け優先でなく周囲との連帯感も重視するため、
商会に必要なものは買取価格を上げても目こぼしをしてもらうなどの融通は効かせてもらってもいる。

店自体は雑多な物が並ぶ棚が所狭しと並べられ、
初めて来店する学院の生徒らしい少年少女は宝探しをするように店内を見回し物色する。
店員たちは黒基調という点は統一した、思い思いの恰好をしており。
その腰元には賽子のデザインをあしらった店名ロゴの入った揃いのサテンエプロンを着けている。

「ヴィーニー、耐暑ポーションが切れかかっています。在庫補……ええ、はい、お願いします」

暑い季節の新製品として、体温調整の魔導具などに手が出せない駆け出し冒険者も使える、
安価な体温調整のポーションを売り出したところ頗る好評で。

並べる端から無くなる在庫を補充する様に店員に指示を出せば、
解ってますと言わんばかりに食い気味に返事が返ってくる。

元気の良い店員の態度に一つ息を吐いて、いくらか来客のピークを過ぎた店先で自身の肩をとんとんと叩いた。

ご案内:「王都 平民地区/雑貨商店」にメリッサさんが現れました。
メリッサ > 「……ストリングス商会の…。ああ、ここだ」

(蒼い髪を束ね、夏でも関係なくきっちり着込んだ従者服の女が訪れたのは雑貨商店『アーレア・ミラ』。
 以前市場で遭遇したストリングス卿の店のことを思い出し、今日は時間もあるしと早速足を運んでみた。
 学生服をきた年若い少年少女が連れ立って店から出ていき楽しんでいった様子で、
 学院も近いし、関連する雑貨も置いてあるのかもしれないとそんな風に考える。
 ともあれ入れ違うように扉を開けて、店内へと入り。
 その雑多な具合に目を丸くした。
 並ぶ棚には所狭しと商品が陳列しており、まさに雑多という様子。
 目当てのモノを探し出すのも苦労しそうではあるけれど、この雑多具合を学生たちは
 ほらこっち、見て見てと言いながら楽しんでいる様子も見られる。)

「……これはまた、色々と、」

(あっちは日用品、こっちは冒険者のための必需品、そっちは学生用の雑貨。
 などなど、店内を歩くだけでも時間があっという間に過ぎていきそうである。
 そんな中、肩を叩いて一息ついている男性を見つければ、そちらへと近づいていく。)

「こんにちは、ストリングス卿。盛況ですね」

(店内にもまだ人がまばらにいるようだが、どうやら少し前は相当忙しかったようで。
 棚には補充待ちの空になっている部分があり、奥から店員が運んでくる様子も伺える。
 さすが音に聞く人気の商会だというように感心しながら、お疲れ様ですと伝えよう。)

セリアス > いらっしゃいませー、と、店員の明るい声が上がる。
店の扉を開けば、室内は空調の魔導具を使ってあるのだろう、涼し気な空気が流れ出て。
からんころんと小気味よくドアベルが鳴り、嬉しそうに包みを抱えた制服姿の学生たちが蒼髪の女性の横を通り抜けていく。

雑貨商店の名に偽りない店内、新たに訪れた来客に気付いた店主は、
おや、というように数度瞬いてから、人好きのする笑みを浮かべて礼を送り。

「いらっしゃいませ、メリッサ様。
 先日仰っていたペット用品のご用命で?」

顔を上げては、相手の紅い瞳を覗き、先日縁を繋いだ折の話題を出して。
二人の脇を通って棚にポーションを補充しに行く店員を傍目に見送れば、
軽く半身を引いてどうぞもう少し奥へ、と来客たる従者姿の女性に促した。

探す楽しみを助長する雑貨棚、それと対照的に目的のものが分かりやすく並べられた日用品の棚。
それらが並ぶ少し奥に、バックスペースに続く扉が見える。

その周囲は物が出入りすることが多いからか、いくらか広く場所を取られており。
店先で話すよりは周囲を気にせずにいられるだろうと。

メリッサ > 「ええ。お誘いも頂きましたし、良い機会でしたので立ち寄らせていただきました」

(涼し気な店内の空調には気持ちよさそうに表情を微かに緩ませる。
 こちらに気付いた店主たる男性に促されて、頷きながらもう少し店の奥のほうのスペースへと移動しよう。
 バックスペースへと続く扉の近くの空間にゆとりがある場所へと立てば、
 軽く店内を見渡してから、再び彼の方へと視線を戻した。)

「それにしても、本当に色んな品があるのですね」

(雑貨商というだけあって見事な商品の数々。ここに来れば何でも揃いそうだとも思う。
 メリッサにとっては個人的な嗜好品というものに興味を示さないので、実用的なものを欲している。
 主君が必要なものも考え、それらをリストにしてまとめている最中ではあるが、
 今回は一足先に愛犬と愛猫の遊び道具を揃えよう。
 訓練後に与えられるような、彼らが気に入るおやつなどもあれば購入を検討したいとも付け足して。
 必要最低限の会話は出来るものの、相変わらず表情はやや堅い。
 冷淡にも見えるかもしれないが、人と話すのがそう得意ではないのだろうという様子。自然と冷淡にも見える表情になってしまうようで。)

セリアス > 店内の涼気に頬を緩ませる様子に男も笑みを深めながら。
どうぞ、と案内した他の客に気を使わなくて構わなさそうな場所。
来客が一番多い時間帯は過ぎていても、疎らにいる客たちは雑貨商店内を思い思いの視線で物色している。

ふと、ポケットからメモ用紙とペンを取り出せばそこにすらすらと何事か書いて。
近くにいた店員に渡しては、奥で準備を、と。
渡された店員は店主と蒼髪の女性客をちら、と見てから一例。
バックヤードにと引き込んでいく。

「ええ、ええ。私が王都に来て目を惹かれたのはそれこそ、先日お逢いした市場のような場所で。
 どれだけ見て回っても飽きない、それでいてなんでも揃いそうな。欲を満たせそうな。
 自身で店を構えるにも、そういうところが良いと思ったものですから」

それゆえに雑貨商店がストリングス商会の始まりの店であり、今の店の在り方と。
自身の店の中を愉しげに見まわしては語って。

ちら、と相手の方を見遣ればどこか堅い顔つきに、くつりと喉を揺らして。
自分の口の端に指をあて、くい、と、引き上げ笑みをかたどって見せる。気楽に、と言いたげに。
もっとも、そんなことをしなくても男の方は緩いともいえるほどにこやかではあるけれど。

「まぁ、そう緊張されずに。ここで色々と拡げるわけにもいきませんから。
 奥に用意させています。お時間が許すなら、見ていかれますか?」

ここより奥、となれば扉の向こうなのだろう。
そこは商品倉庫にも繋がっているが、応接室兼、執務室の様になっている場所に繋がってもいて。

商談の際に商品を並べたり、商談をしたりする部屋でもある。
あるいは、余人を交えない話をするときにも。
先にメモを渡した店員は今頃そこに犬猫用のいろいろな商品類を並べているのだろう。

メリッサ > (何かを記したメモらしきものを店員が受け取り、礼をしてから奥へと向かっていく。
 その姿を傍目に見送り、彼が揚々と語る楽し気な様子には先日の市場の事を思い出す。
 多くの人、種族が入り混じり、活気に溢れ呼び込んだり品を進めたり売買をしたり。
 賑やかというのはああいうことを指すのだろうとも思う。
 今は日々の買い出しで何度も足を運ぶ場所になっているがああいう場に惹かれるというのは共感できた。)

「そうですね、ああいう場に集まる活気や、並ぶ品々は見ているだけでも楽しいです。
 ここもそういう欲が満たせる場所にしたいと、……ん、失礼」

(魔族もまた欲に素直なもの。
 彼の目指している形があるのだろうと思えば、確かに色々と満たせそうな。
 と考えていたところで、口元に指をあてて笑みを浮かべる様子に真紅の目を数度瞬かせ。
 にこやかな人好きのする微笑を浮かべる彼に、少しだけつり上がった眦を緩める。
 それでもまだ少しぎこちなさはあるが。
 奥へと誘われれば、頷いて見せる。)

「ええ、是非お願いします」

(時間はある。そのまま扉の向こうまで通され、案内されて。
 彼の招きに応じ用意された部屋へと着く頃には、先ほどの店員によって色々な商品が並べられていることだろう。
 キャットウォークから猫用の玩具、犬用の遊び道具、おやつやら色々。
 動物をペットにして飼うという貴族も少なからずいるのだろう。
 並ぶ商品はどれも質が良さそうに見える。)

セリアス > こちらの言葉を適当に流すわけでもなく、笑い飛ばすわけでもなく。
同意するように言葉を返してくれる相手を見つめる赤い瞳が笑みに細まる。

人間の国に来た本来の目的は諜報活動であるはずなのだが、
セリアスがそんな様子を微塵も見せないのは隠すのが上手いからでなく、
とっくにこちらでの日々のほうに興味が映っているからで。

こちらの仕草を見てはぎこちなくも表情を緩める相手を見ては小さく頷いて見せる。

「ぃえ、いえ。引き締まった表情はお美しいですけれど、
 折角の買い物の時間ですから。楽しそうにしてくださいな」

人の街に紛れては気の休まるところではないのかもしれないけれど。
彼女が魔族の気配に敏感なら、店員も多くが純粋な人間でないのは知れるだろう。
もちろん、同族とて安心できる相手出ないのが魔族でもあるけれど。

バックヤードに入り、更に一つ扉の奥に進んだ場所。
執務机があり、手前には応接セットがある。
そうしてその脇にはちょっとした展示用のスペースがあり、そこにペット用品が整然と並べられていた。

「アールサ、ありがとうございます。……一応、あれから幾つかこちらに取り寄せてみたのですが」

店主が店員に礼を向ければ、小柄な女性店員が恭しく一礼して下がっていく。
キャットウォークは数点、高さや造りで種類がある。
梯子のような造りのものに足場があるもの、壁に直接据えるもの。
衣服掛けのような全長で足場が据えてあるものなど。
犬と引っ張り合いをして遊ぶ、ボールにロープが着いたような玩具や、
ただの棒のようなもの、毛帚のようなものは猫をあやして遊ぶ用途だろうか。
ぬいぐるみのようなものもあるが造りは人間の子供向けのそれより簡素で代わりに頑丈そうであったりと。
どうぞ、というようにメリッサに向けて促すようにして見せる。
すぐ傍にいるままなのは、説明なりが必要なら対応するためだろう。

メリッサ > (ヴァハフント家と関わりがあった時点で彼が魔族であるとは分かっている。
 人間の国で商売をしている理由まではわからないが、店も軌道に乗せてどこか愉しんでいるようにも見える。
 彼のように人間の国に紛れ込んで暮らしている魔族は少なくはないし、メリッサもまたその一人だ。
 魔族だと知られないように気を張る生活をしてはいるが、それでも今の暮らしは楽しいもので。
 故に彼の事情を深く言及することはせず、買い物の時間だから楽しそうにしてくださいと言う言葉には、
 少しだけ息を吐いて、肩の力を抜こうと努める。出来ているかはさておき。)

「……すごいですね、こんなに沢山用意してくださったんですか?」

(案内された部屋の脇に並ぶキャットウォークを含めたペット用品に目を瞠る。
 用意してくれた店員に軽く目礼してから、並べられている品をまじまじと見つめて。
 キャットウォークを置くスペースの候補は広間と主寝室なので二つ欲しいということと。
 犬たちが遊べる道具は見ただけでは分かりづらいものもあって、これは何かとかも尋ねたりしただろう。
 頑丈な蹴りぐるみもいるだろうかとまじまじ考えながら、手に取ったのはブラッシング用のブラシ。
 これは絶対買おうと決めたようだ。
 あとは主君が犬猫たちと遊ぶ時にも良さそうな道具も欲しいな、と色々と真剣な表情で考え込んでいる。
 なにせ主、時々でろんと触手をだして驚かせたりもするから。)

「これと、これがいいですね。あとはここからここまでを」

(と、買うと決めた決断は早く、はしごのような壁に添えられるものと、タワーと繋がりそうなものを。
 それから遊び道具にケア用品、専用のタオルやおやつなども含めて結構な量になっただろうか。
 選び抜いて顔を上げた時には、犬猫や彼らと遊ぶ主君の顔が浮かんで、緊張のない自然な微笑が浮かんでいた。)

セリアス > 魔族に限らず人以外も多く過ごしているのがこの街でもある。
多種多様な欲の蠢く街で、その欲の一部を満たす商いというのは実際楽しいもので。
それから派生するような欲を垣間見ることもできるから、
今ではそちらが人の域に居を構えている理由のようなもので。

「ええ、ええ。手間暇を惜しんで上客を掴まえ損ねては大損ですから」

彼女のことを上客、と評したのは、人間の国に紛れ暮らすだけにしては上等な身なりであったり、
先日の市場での買い付け具合を目ざとく見ていたりしたからではあるが、
当然、彼女自身に興味を持っているからという意味も込めてはいる。

所狭しと並べられたそれらをまじまじと吟味する相手を眺めながら、
遊具類やケア用品などの用途を尋ねられれば、すらすらと答えていく。
そのあたりもそつなく自分でこなせるよう準備しているあたり、上客相手というのが偽りない言葉と知れるだろうか。

元々購入する気だっただろうキャットウォークの購入を決め、
そこからここからここまで、と。範囲で購入を決めるあたりでは、数度瞬いて見せたが、
かしこまりました、と頷いて見せては彼女が買うと決めた商品をメモしていく。
後日、彼女の住む屋敷にそれらが配達されるだろう。
満足気に笑む彼女の表情を見ては、セリアスも笑みをいくらか深めて。

「では、後日送り届けますので、こちらで取引の書類にサインを」

こちら、と、応接セットのほうを示しながら、執務机のほうから簡易な売買契約書のような書類を持ち出してくる。
この街ではこんなやり取りでも妙な仕掛けがないか怪しんだほうがよいものだけれど。
少なくとも今回は普通に支払いや受け渡しについて書かれただけの内容で。
それを書き終えるころには、先程の女性店員が冷えた果実水……白ブドウのものを運んでくる。

メリッサ > (上客と言うのが自分のことだと一拍の間を置いて理解すれば、
 数度目を瞬かせてから根っからの商人ですね、と笑みを零して見せた。
 しっかりと見ている、ということだろう。
 事実爵位と屋敷を買えるだけの金をポンと出せるのだ。財貨をため込んでいた元魔王様には感謝しかない。
 それらの財貨は戦利品。魔族にとって勝利者が全て得るのは基本であり、
 メリッサもそれを使うことに疑念や忌避感がないあたり、しっかりと魔族側の価値観をもっている。
 とは言え、金銭の使い方も学んでいかなければならないのだが、今は買い物を楽しむことに専念したようで────。

 どれを尋ねてもスラスラと用途の説明をしてくれる当たり、彼の誠実さも伺い知れる。
 おかげで要・不要の分別もしっかりとつけることが出来た。
 屋敷に届けてくれるということに礼を伝え取引書類を促されれば、応接セットのソファへと腰を掛けて。
 その書類の内容をしっかりと確認し、とくに問題がないと判断すれば、
 支払方法や送り先の住所などを記載して終了となるだろう。
 それを相手の方に差し出す頃にやってきた先ほどの店員が再び顔を見せ、綺麗なグラスに入った冷えた果実水を置いていく。)

「ありがとうございます。いただきます。……ん、白ブドウですね」

(一口含めば、その爽やかで芳醇な甘味のある果実水の味にすぐに気づけただろう。
 あの日買ったものと同じものを用意してくれる当たり、彼の人柄が伝わるようで。
 店を訪れた時よりはいくらかリラックスした様子で表情を穏やかにしている。)

セリアス > 滅んだ領地の生き残り。
かつての支配者と、それを滅した何某か。
そこで冷遇されていた、支配者に傅いていた一族の女魔族。
けれどその境遇は惨めなものではなく、人の域で新たな生活基盤を構えている。

断片的な情報だけでも、ことの顛末は十二分に想像もできようもので。
出逢ったのはほんとうに偶然の賜物なれど、男の好奇心を煽る相手の様子を眺めながら。
正しく上客と言える財力が一時のものかは分からないけれど、
支払いや引き渡しの手続きが終われば書類を片していく。

最初と比べれば随分と落ち着いた様子に瞳を細め、
相手と対面に座れば、店員に向けて視線をちらりと向けて。
それを受けた店員は小さく礼を送ってから部屋を後にする。

「今の季節に屋外で喉に流し込むよりは、幾らか物足りないかもしれませんが、ご容赦を」

当然、彼女の考えの通り、先日の彼女の注文を憶えていての準備ではあるけれど、
思っていたよりも良い印象を与えたように見えれば男も軽口を告げながらに笑んで。
自身も運ばれていた果実水、こちらもあの日と同じ白桃のものを一口含み、口腔を湿らせて。

「さて、他にお入り用などありますか? 大抵の物なら、伝手がありますので。
 それとも、折角の同郷とのご縁ですし――……苦労話でもあれば」

ご相談に乗らせていただきますよ、と。
商売の話でも、他の話でもいい、と。変わらぬ人好きのする笑みを浮かべたまま。
男の視線は雑貨に目を瞬かせる学生たちと相違ないどこか楽し気なもの。
彼女から楽し気な話が出ないかと期待しているのか。
もしくはただ、彼女と話すのを楽しみにしているのか。

メリッサ > (今のメリッサを正しく北方の滅んだ領にいた一族の最後の生き残りと気付けるのは、交流があった魔族ぐらいだろう。
 まさしく一族と関わりがあったらしい彼が推測できる程度には情報も落ちている。
 忠義心の強い一族の血を引いている女が主様と呼ぶ相手が、
 よもや彼が非常勤講師として訪れる学院の生徒として通っていることはまだ気づいていないようだ。
 メリッサも彼がコクマー・ラジエル学院の臨時講師とはまだ知らないけれど。
 彼の手に渡った書類からも情報は拾える。
 着々と、女の現状を知る術は彼の手元に集まりつつある。)

「いいえ、丁寧な対応に痛み入ります。
 先日は氷を削って甘い果実を絞って煮詰めて冷やした蜜をかけたものを食べたのですが、
 あれこそこの時期に相応しいですね。」

(今開かれているレジャー施設の屋台で購入したものを思い出しながら、
 それを食べて頭がキーンとなって悶えたことは内緒にしたけれど。
 人好きの笑顔を浮かべている相手に、やや人見知りの気がある女もいくらか慣れたようではあり。
 入り用のものはまたリストにして、注文させて貰うことを伝えながら。
 他の苦労話、ともなれば顎に手を当てて考え込む仕草。
 楽しそうにしている様子に、彼を楽しませられるような話題などぱっと思い浮かばず。
 メリッサの話題の8、9割ぐらいは主君の話になってしまうので。)

「そうですね……今はなんとか、主様と平穏な日々を過ごすことが出来れば、と。 
 全部なくなってしまうと、存外、どうでもよくなってしまうものですね」

(あれほど当主に認められたかった妄執も、跡形もなくなってしまえば呆気ないもので。
 軽く左胸に手を当てれば、メリッサが今の暮らしを大事にしようとしているのも伝わるだろう。
 面白い話など出来ませんよ、と困ったように眉尻を下げる。)

セリアス > かの一族は魔獣を手懐け、地位を成してきた一族だった。
かつてその一族の夜会に参加したおりに、最後に聞こえてきた話があった。
『領内に強力な魔獣が迷い込んだ』と。
その一族の主は強欲であったから、その魔獣に対し何を企んだのかなど予想も容易い。
勿論、まだ確信には至らず。セリアスの想像と、今ある断片からの推測でしかないけれど。
こつり、こつりと。グラスの縁を男の指が叩く。

「ああ、削氷菓子ですか。私は食べるのが遅いので溶けて果実水とかわらなくなってしまいますが。
 ……使われている果実は獣に好くないものもあるので、ご注意を」

この部屋でのやり取りを考えれば、獣という言い方は犬猫を指して言っていると思うだろうか。
それとも何かしら探りを入れていると思われるだろうか。
彼女の反応を眺める男の表情に特段の意図的なものは見えず、変わらぬ笑みを浮かべたまま。

苦労話、と話を振っても特段口が出るわけでも、困りごとが出るわけでもなく。
左胸に手を触れさせる様子。そこから感じる何かしらかと繋がる気配。
それを眺めては一つ、頷いて見せて。

「ご主君と。成る程、成る程。
 ……かつてのヴァハフント家の領地はまだ周辺の有力者が睨み合っているところですが」

そちらには興味、心残りというものはないのかと問うてみる。
彼女の様子を見れば聞くまでもないような気もしたが、
彼女自身の口から聞くのと推し量るのでは、また事の意味合いも違うだろうと。

メリッサ > (他領を侵略し、自らも戦線に立ち、いくつもの領を食いつぶしては財を収集し。
 まさに強欲を体現するような魔王だった。自らの支配下に置いて、自らを信奉しない者を許さない苛烈さもあった。
 全ての頂点に立たねば気が済まない、そんな貪婪な魔王が領内の魔獣を利用しようとしたのも事実。
 その企みが、ただ一人、一族から冷遇され忠義の血を裏切った女によって挫かれたと知る者は、
 もうこの世に自分と主君の二人を除いて存在しない。
 それでもある程度の推測は出来るだろう。彼のように。)

「そうなのですか? それは気をつけないと……」

(獣によくない果実があるというのは初耳だった。
 何気ない話題からそこへ食いつくのは、主君の身を案じたのもあるが。
 しかしすぐに主君が果実ごときで具合を悪くするはずもないと思い至る。
 次に浮かぶのは犬猫たち。与えてはならない食物は聞いていたが果実もあるとは。
 気をつけないと、と彼らの食事も用意する飼い主の反応だった。
 最低限の家具を揃えて、すぐにペット用品を購入しているあたり、
 魔犬を使役する一族の血らしく、愛犬家とも愛猫家とも取れるような様子に見えるだろう。)

「……それは、好きにすればよいかと?」

(空の土地があるなら、奪い合うだけ。
 ヴァハフント家の領地、その跡地を狙うものがいても、メリッサに思う所はない。
 なにせあの辺り一帯はすべて更地になっている。得られるものもなく、一から築かねばならない。
 北方の薄暗く寒々しい土地を欲しがるようなもの好きがいればだが。
 そんな風に淡々と返す様子は、思い入れなどないと明言しているのも同じだ。
 こういう話を出来るのも、同じ魔族で、彼が事情を知る存在だからだろう。
 グラスを傾けて果実水を味わいながら、今はそうなっているんだなという感覚でしかないようだ。)

「ストリングス卿の家も参戦なされているのですか?」

(彼がその手の話題を得られるのであれば、魔族領にあるであろう彼の実家からの伝手だろうと察せられる。
 それについても特段思う事はないようで、肯定されても否定されても、そうなのですねと流す話題ではあるのだが。)

セリアス > 果実の話は、素直な忠告と取られたようで。
こちらの思っているよりも信用を得られたのか、彼女が底抜けに素直なのか。
彼女の『主』について、別に探られても何とも思っていないのかもしれない。
領地についても彼女自身、あるいは彼女の主も興味は無さそうであれば
いくらか拍子が抜けたように息を吐き、グラスを再度、口元に寄せて。

「ストリングス家の領土は東寄りですからねぇ。そちらまでは手は伸びないかと」

旧ヴァハフント家領地の状態は風の噂に聞いているが、周辺領主たちは領土拡充の思惑をぶつけあっている。
北方であろうと、僻地であろうと、領土は領土。
余計な先住も、内患に成りえる前の支配者も居ない。
睨み合っているのは領土を挟みあった領主たち同士の牽制があることと、
あとは、やはり其処にいた魔族を滅ぼした存在が何処かにいるだろうという点があるから。

一応、自身の家に情報を送る積りもあるが、外交狂いの姉が手札が少し増えたと喜ぶくらいか。

「ふむ。個人的には肩透かしですが、実りはあるというところですかねぇ。
 そこまですっきりと遺恨なく新しい門出を迎えられるのは幸いなことで。
 ほんとうに、良き絆に恵まれた模様ですねぇ」

あやかりたいものです、と。口元に笑み浮かべながら、彼女と主君の縁を言祝ぐ。
先日も注げたことではあるが、純粋にそこは祝う気持ちがあるようで。

メリッサ > (戦う技術に優れ、才能を持ち、冷静に振舞う所作が出来ていても、
 魔族や人間の貴族特有の腹の探り合いやら、裏の読みあいやら。
 そう言うものに不向きな質であることが知れるかもしれない。
 そうした教育すらされなかったからか、あるいは別の理由かというところ。
 拍子抜けしたような雰囲気があれば、何かを探られていたのかと気付ける程度には、愚鈍すぎるというわけでもないが。
 事実として、メリッサにとって興味がないものへの対応は、これぐらい淡々としたものだ。
 彼の家に関しての反応もまたそこまで深くは言及せず。
 絆を寿ぐ言葉も、素直に受け止めよう。)

「家の再興をするつもりもないですからね。
 ……、ありがとうございます。
 ────そういえば、話は変わりますが、ここでは魔物の素材も買い取りされているのですよね?」

(と、資産は潤沢にあるとはいえそれはそれ。
 新たな収入源を探しているところでもある。
 とは言え、屋敷の維持や主君の世話もあるので、働きに出る程の余裕はない。
 たまに外へ行って鍛錬がてら魔物を狩って、その素材を買い取って貰えるなら、
 好い収入になるのではと思い至ってのこと。
 商人として、また同郷のよしみとして彼を信用しているからこそだ。)