2023/08/13 のログ
ご案内:「マグメールの怖い話」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > これは例えば茹るような夏場の日の夜に酒場に貴方が足を運んだ時だとする。これは例えば酒を一杯飲んでいる際に見知らぬ誰かと同席になったとする。そして酒を酌み交わしている間に酔いに意識と思考を散漫にしながら懇談に興じ。そして相手が一夜の納涼に怪談話でもと切り出したとする。
貴方は賑やかな酒場内の席についており、その同席している相手が目の前に居て、話を始めていた。
『ところで知っている?』
『この王都周辺に伝わる怖いお話の一つ』
『ほら、今更な話だけれども性的被害って多いでしょ?この街』
『その対象が男だったら…それはそれで軽く見ちゃうのは男女差別って奴なんだろうけど』
『女性だった場合、運が悪ければ…相手も自分も生殖可能だったらデキちゃう時って在るでしょ?』
『詰まる所は子供が。強姦魔が避妊してくれるなら良いけれども、そんな律儀な奴も居ないだろうしね』
『それに産ませた側が立派にパパをやってるって話も、そんなに聞いた事が無い』
『大抵は産ませっぱなしでしょ。いきなり一子の母にされても困っちゃうよね、女性側は。色々な面において』
『でも、そういう時に助けてくれる人が居るんだって。望まれぬ父なし子を預かる教会とか?』
『ううん?そうじゃない。子供を買い取ってくれる所があるんだって。噂ではそれなりのお値段で』
■ドラゴン・ジーン > 『春をひさぐ人達には人気があるみたい。避妊にも限度があるし、気を付けていても出来ちゃう時ってあるもんでしょ』
『それで、これはその子供の買い取り屋にまつわるお話なんだけれども…昔々に男女のカップルが居ました』
『二人は愛し合っていたけれども、男性側がうっかりと女性の方を身籠らせてしまう』
『普通はそこで責任をとって夫婦に、みたいな流れになると思うかも知れないけれども、男の方はその気じゃなかった』
『昨日までは優しかったのに急にツレなくなってしまう、良くある話でしょ』
『それで女も男も出来てしまった授かりものにおおいに困り果ててしまう訳、まだそういう準備が出来ていなかったから』
『…その時に聞いた噂に藁をも縋る想い、伝手を頼って子供を買い取ってくれるという話に飛びついた』
『相手は黒づくめの恰好の見知らぬ何者か、顔すらも隠してる、いかにも裏街道の人物って感じ』
『でも、困ってる所を助けてくれるんだから、そのカップルにとっては天使様みたいに見えていたかも』
『その誰かは子供を買い取ってくれた。全部なくしてくれたの。カップル二人の障害をね』
■ドラゴン・ジーン > 『それから二人はまた今迄のように仲親しく付き合い始めた。次第に経済基盤もしっかりして来て二人は大人になった』
『もう無軌道で無責任だった子供時代とは違う。二人には新しく子供が出来てすくすくと育ち始める』
『…でも二人は何時も思い返す事があった。それは昔にやってしまった自分達の所業の一つ』
『二人とも根は善性だったのか…それとも今更思い返すなんて身勝手だと思う?』
『何時も心にちくちくと刺さるトゲのように感じていた。あんなことをやらなければ良かった、って』
『…それで気になる訳、結局あの子供はどうなったんだろう。一度気になったらもうそれを解消しないと夜も眠れない』
『追い遣るようにしていた昔の伝手を辿り直し、また噂の根源にへと辿り着く』
『そして昔と全く変わらない何者かにへとお願いする訳、あの子は一体どうなったのか、もしも生きているなら会いたい、と』
『その誰かさんは結局、そのお願いを承諾した。会わせてくれるって話になったの。でも絶対に近づいてはいけないっていう条件付きで』
■ドラゴン・ジーン > 『二人はそれから王都の辺境にある屋敷の中に案内された。そして薄暗い部屋の中で待っていると、こんこん、と、ノックの音が聞こえて来る』
『ドアについた覗き窓を覗き込んでみる。するとそこには立派に育った子供の姿があった。二人には直ぐに解った、何故って自分達の特徴を受け継いでいたから』
『両親はドア越しに子供に謝ったし。子供はそれを快く許した…でもそこで話は終わらない、子供は立ち去る前に二人に抱きしめて欲しいってお願いをしたの』
『自分達のやったことを思えばそれぐらいの事…一瞬頭の片隅に掲示された条件を思い出したけど。でも、そんな事は既に些細だった』
『二人はドアを開け放った。そしてその次の瞬間に劈き渡る悲鳴。どうしてって、その子供の下半身が忌まわしい獣の姿をしていたから』
『のぞき窓からでは顔と上半身しか見えなかったんでしょうね。パパ、ママ…子供は両親の事を呼びながら飛び掛かった。凍り付いて動けない二人を『抱き締める』為に…』
■ドラゴン・ジーン > 『二人の顔をそれから見た者はいない…この話の大事な点は避妊は勿論だけど、大事な事を他人任せにしてはいけないって事』
『自分のやったことは自分で責任をつけないと、不安でしょう?さて、此処からが本題なんだけれども』
『実はこの話には続きがある。今、話に出て来た屋敷の場所を知ってるの。これから一緒に行ってみない?』
『何故って勿論ただの度胸試し。噂話、本当かどうかだなんて定かじゃない。名前だって一言も出て来なかったでしょ?』
『夜長の怖い話の後には、今度は自分が恐ろしい体験を…どう?』
相手はそのように会話を括って誘い掛けて来る。今の話の真偽はさておいて、本当に話に出て来た屋敷はあるようだ。酒精の巡っている表情からは相手がどのような意図をもって持ち掛けて来たのかは計り知れない…。
貴方はこの話に乗ってもいいだろう。それが如何なる論理に導かれたのかは貴方の性格や考え次第になるが。そして勿論貴方はこの話を突っ撥ねてもいい。慎重深く振舞い人の集まる場所で生きて行くならば、そのような判断力は決して馬鹿には出来ない。
ご案内:「マグメールの怖い話」からドラゴン・ジーンさんが去りました。