2024/08/11 のログ
ご案内:「イフレーア・カルネテル邸・書庫」にアイシャさんが現れました。
アイシャ > 整然と書庫の中には今日も相変わらず古今東西の書物が整然と並ぶ。
半ば背中で押し開けるようにして抱えてきたそれらはすでに部屋に一度持ち帰って読み終えたもの。
部屋から抱えてきた本は歴史書や文芸書など様々。

先に読み終えたものを書架へと戻し、その途中で興味があるものがあれば返却するものと混ざらないように注意しながら新しい本を抜き出していく。

「…たくさん読みたいものがあるから仕方がないけれど、あまり欲を出すのも考えものね」

侍女の一人でもいたならば半分手伝ってもらうこともできただろうが、生憎とすぐには見つからず。
だからと言って呼び鈴を使ってまで呼び出すことの程でもない。

返却をすべて完了し、少し強張った姿勢を解すように肩に手のひらを当てて柔く揉んだのち、改めて読むために書架から抜き出してきた本を抱えて閲覧用に置かれた優美なテーブルの上に本を置いた。

ぐ、っ、と上に大きく伸びをした後、テーブルの前の椅子に腰かけて早速瀟洒な装丁の本を開き、ページをめくり始める。

アイシャ > 窓の外はまだ気温が高いと聞くが、構造上適度な室温が保たれている書庫の中では季節を強く感じるのは日差しくらいか。
ぺら、と、紙のめくれる音が静かに重なるなかに、少しばかり舞い上がる埃がその窓から刺す光に煌めく様は、文字を負う銀色の瞳には今は映る様子はない。

独りしかいない気楽さ故に頬杖をついてじっくりと本の世界に没頭していく。
少女自身は物心がついた時にはもう邸の外に出ることを諦めてしまっていた。
庭に出ることすら怖かった時期もある。
その狭い世界を広げてくれたのが、本だった。

本は邸の中に居てもわからないことを教えてくれる。
自分を攫っていくような恐ろしい腕もなければ、下卑た濁声で怒鳴りつけてくることもない。
何より、本からは紙とインクの香りがするだけで、饐えた汚れがこびりついたような体臭もない。
それらを自分が感じることなく文章だけで伝えるだけで恐ろしいものではなかった。

ぺらり、と、またページをめくる。
本の中では、大きな帆船が作られるまでの構造が図と共に説明されていた。
船を作りたいわけではないが、夏に庭園の池に浮かぶ優美な舟とは違う作りの設計図は、少なくとも少女の今の知識欲を満たしてくれた。

アイシャ > あらから読み終えたところで帆船の作り方を示す本を胸に抱く。
設計の部分を通り越してしまうと、少女の興味からは少しそれた内容になってしまって一人で読むには少し難しい。

「これは部屋でゆっくり読もうかしら」

先程本を引き抜いた書架へと戻り、似たような内容の本を数冊追加して抱えなおす。
返却しに来た量よりは大分少ないけれど、これでまた暫くは部屋で本にかじりつく日々を送るのだろう。

ご案内:「イフレーア・カルネテル邸・書庫」からアイシャさんが去りました。