2024/01/01 のログ
ご案内:「劇場」にシルフィアさんが現れました。
シルフィア > 今年最後の公演も無事に終わった。
客の入りは盛況で、一年の締め括りとしては上々だろう。

ホワイエでは、まだそれなりの数の客が、今日の公演について語り合っている。
そんな客たちを持て成すのもまた劇団員の務めではあるのだけれど。
誰もいなくなった舞台の上に、劇団員である少女がひとり佇んでいた。

既に舞台には緞帳が下ろされ、魔導ランプの灯りも僅かに残して落ちている。
そんな暗がりの中に、少女の歌声が響く。
それは先程まで上演されていた戯曲とは正反対に、深く静かな旋律だった。

シルフィア > その旋律もやがては消えゆき―――
ご案内:「劇場」からシルフィアさんが去りました。
ご案内:「海魔の巣窟」にイソギンチャクさんが現れました。
イソギンチャク > 王都マグメールより馬車を使いまるっと3日間。
揺られに揺られ、途中で野営し、辿り着くここはセレネルの海でも珍しい、さらさらの白い砂浜と荒波に磨かれた大小様々な大きさのガラスや岩の球体が転がる海岸線である。

今夜は夜空に見事な月が輝いている。
潮は引き潮で、潮風は緩やかで潮騒も穏やか。
いくつかある条件を満たし、今宵は迷宮の入り口が姿を見せる。

その名は『海魔の巣窟』
セレネルの海に出没する初級ダンジョンで中は天然の洞窟であるが、階層を下だり最下層に近づくと徐々に人工物の様相を見せる不思議な迷宮である。

初級ダンジョンに分類されるように数多存在するダンジョンの中では罠も少なく安全だと認定されていて、冒険者ギルドで受ける初心者向けの依頼書でよく見かける。

冒険者以外にもギルド関係者や珍しいもの見たさの観光客紛いの人間や何も知らず入り込んでしまう人間も多い、その迷宮の海水が流れ込むような浅い階層に今夜は珍しく活発的に蠢く海魔がいる。

潮の満ち引きに研磨されたつやつやつるつるの壁に1匹。
人間であれば脛辺りまでの深さの潮だまりに1匹。
その潮だまりを回避しようとすれば壁にイソギンチャクに、壁を怪しんでまっすぐ進むなら潮だまりの中のイソギンチャクに、と罠にしては結構えげつない状態でうぞうぞと。

明かりをかざして目を凝らせば見えるかもしれない。
でもそうでもしないとこの2匹は透明な姿で見えない。
あるいは熱を見ることができる、生命の鼓動をみることができる目でもないと、容易く捕まることになるだろう。

と、それを狙ってダンジョンのボス直々に配置した二匹。
さてダンジョンのボスの狙い通り獲物を捕まえることはできるだろうか?それともそんなボスに用事のあるギルド関係者がくるのか――それはボスにもイソギンチャクにもわからないのだった。

もしギルド関係者でボスである彼?彼女?に用事があるなら、大きな声で呼べばいい。

それを知らずに探検をするならば、慎重に進むべきである。
ダンジョンを出没する魔物はイソギンチャクだけではないのだから。

例えば人型の小さな種族名すらない海魔達。
空中に浮かび彷徨う亡霊のごときクラゲ。
浅瀬状になっている通路には生殖狂いのタコもいる。

ご案内:「海魔の巣窟」にミューアさんが現れました。
ミューア > 王都から少し離れた海岸に初心者向けの迷宮があるらしい。
学院で聞いたそんな噂だったけれど、それだけではわざわざ何日も場所に乗って行くことはしなかっただろう。
迷宮探索は冒険者の領分なのだから。

けれども、天然の洞窟の奥に、人工的な区画があるというならば、それは遺跡に違いない。
遺跡の探索ならば、考古学を専攻する自身の領域だと、使い慣れたリュックに調査道具を詰め込んでやって来た。

冬の海は寒々しく荒れてはいたけれど、幸いにも引き潮
白い砂浜が広がる一画に鎮座する岩山にまでやってくると手慣れた様子でランプに火を灯す。

「満ち潮まではまだ時間があるけど……帰りを考えると、あんまり長居は無理かなぁ…」

パチッと懐中時計を開いて時間を確認し。
濡れた岩場に足を滑らせないように注意しながら、狭い入り口を潜る。

ランプの灯りを翳して、何もいないのは確認済み
だから注意は足元に向いてしまって。
荒波に削られた壁に手を突きながら、一歩一歩慎重に進んでいき。

イソギンチャク > 狭い入り口を潜り抜けた先は荒波によって削り磨かれた天然の岩肌が目立つ区画であり、未だ人工物がそこにある気配は遠く、もし人工的に作られた何かを探しに来たのであれば、より奥へ、より深き場所へと進まなければならないだろう。

天然の岩肌が荒波で研磨されてすべすべになっている壁は余程の事がない触れるその手を傷つけることはない、それくらい長い年月をかけて砕き削られ磨かれた結果なのだ。

――…だがしかし、その岩壁にはこの海魔の巣窟の主が直々に配置した罠とも言うべき生物が張り付いている。

侵入者が一歩一歩進んでいくと、その気配に壁に床に天井にと張り付けられたイソギンチャクのモンスターは次々に目を覚まし、その役目を果たすべく活性化を始める。

普段はこんな浅い階層に罠など張らないのだが、ここ最近利用者がめっきりと減っており、冒険者ギルドにも掛け合ったが、今は時期が時期なのでと濁されて、栄養不足と苗床不足に陥ったボスが涙を呑んで仕掛けた罠達。

捕獲する事と繁殖することに特化した命の危険性的には非常に安全な透明なイソギンチャク達なのだが、ボスの命令により多少手荒でも良いので良き苗床になるか確かめた後に、産めよ増やせよ、つれて来いと指示されていて、いつになく緩慢な動作ではなく、比較的に素早い動きを見せるのだった。

――…そう、壁に手をつきながら歩く少女のその手を体内にずるりと飲み込むくらいに。

足元に注意が向いていれば壁への注意は希薄だろうか。
少女が触れてついた岩壁の一部は透明なイソギンチャクが張り付いており、不気味な柔らかさとひんやりとした触感と多大なる滑りをもって、少女の手を手首までをぐぷりと不気味な音を立てて飲み込み、ぎゅっ、と体内の肉を窄めて、その手首を締めて放そうとしない。

そのうえ、壁のイソギンチャク達は捕らえ始めた少女に完全に覚醒したようで、近くに存在している別のイソギンチャクの魔物が身体の一部から透き通るような透明な肉で出来た触手をぬるんっと伸ばして、少女がランプを持つ、その手首に触手を巻き付けて、捕まえようとする。

1匹ではなく2匹、天井を見上げれば更に。
連携など知らぬモンスターたちは少女という手柄にこぞって襲い掛かるだろう。

ミューア > こんな入り口で滑って怪我でもしてしまったら、目も当てられない。
いくら治癒の魔法が使えても、何のために数日も掛けて、こんなところまでやって来たのか分からなくなってしまう。
そう考えて慎重に岩場を足掛かりに進んでいただのけれど。

―――ずぷり。

壁を支えにしていた右手が、突然何かに包まれる。
ぶよぶよとした気持ち悪い感触に、反射的にすぐさま手を引こうとするも、
思いのほかしっかりと手首を固定されてしまい動かない。

「な、何が……きゃっ!?」

不安定な姿勢でランプを翳すものの、そこには一見しても何も見えない。
否、よく見れば、透明な何かが手首の周りに巻き付いているのが見える。
すぐさま思考を切り替えて、魔法で攻撃しようとしたのだけれど、それは一体ではなかったらしい。

ランプを持つ左手を、バシッと払われる。
地面を転がっていくランプを尻目に、左手にも何かが巻き付いていく。
それだけなら、まだ魔法使いの少女になら対処はできたかもしれない。

けれど魔法を詠唱しようとしたその口元にまで不可視の触手が殺到する。
あっというまに口を塞がれ、四肢をぐるぐる巻きにされてしまうと、
護衛の居ない魔法使いなど、文字通り手も足も出ない状況になってしまい。

イソギンチャク > 天井に張り付いたイソギンチャクが伸ばした透き通るような肉質の触手は的確に侵入者の少女の口を覆うように、紅碧色の夜明けを想像させるような髪ごと頭部にぐるりと巻き付き、右の手は手首まで壁に張り付いたイソギンチャクが飲み込み、ランプを叩き落としたイソギンチャクは少女の左手に触手を絡ませたと同時に、その左手を右手と同じ末路を辿らせる。

右の手も左の手もイソギンチャクが一匹ずつ美味しそうに飲みこみ、その体内の肉でむぎゅ、むぎゅと締め付けて搾りたてて、引き抜けないように丸で岩壁に両手をつかせるようにして、捕まえるとその少女の足元には覚醒したイソギンチャク達がウゾウゾと透明な触手をうごめかせる。

その様子は見えない、ハズだったのだが、少女の手から離れたランプの明かりが透明な肉にまとわりついている粘液をキラキラと輝かせることで不気味なシルエットを浮かび上がらせ、不気味でどこか隠微な光景を生み出す。

――…そして天井よりもう1本、少女の細い首に向けて、イソギンチャクが触手を伸ばして、その首にらせん状にぐるりぐるりと巻き付いていく。


すべては潮騒の音に紛れて外には聞こえない。
天然の洞窟は「海魔の巣窟」は久々の獲物に沸き立ち、獲物の捕獲をしったダンジョンの主は潮の満ち引きに干渉して、狭い入口に徐々に海水を流れ込ませていく。

少女の運命は如何に。

ご案内:「海魔の巣窟」からイソギンチャクさんが去りました。
ご案内:「海魔の巣窟」からミューアさんが去りました。