2023/12/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 港の酒場 舶来亭」にアルマースさんが現れました。
アルマース > 船に乗る者、降りた者でいつも人気の絶えない港そばの酒場――
間近な海の波の音が掻き消えるくらいの笑い声や話し声で今夜も賑わっている。

船庫の中にある店だから、船の出入りを横目に飲むことになる。
ステージがあるわけではないけれど、場を盛り上げる吟遊詩人や踊り子などは出入り自由。
店からギャラは出ない代わり、チップはそのまま懐に入れてよいことになっている。

制約の多い船上生活の鬱屈を晴らすような飲み方をする海の男が多くいるから、後ろ盾の無い流しの踊り子の仕事場としては危ないことも多い。
が、旅行中で財布の紐を緩める者や、異国の富豪がぽんと巨額のチップを投げることもある。
つまるところ稼げる額に当たり外れの大きい場所で――

「…………海に帰りたいよお…………」

踊り子――であるはずの女は、巨大な丸い硝子の鉢の中で、攫われてきた人魚の気持ちを理解したところだった。
水槽のふちに両腕をかけて、ゆらゆらと、魚の下半身で立ち泳ぎしている。

ル・リエーから払い下げして、ハイブラゼールへ輸送されるという巨大金魚鉢と人魚の衣装。
経由地のココで使わせてもらう代わりにお安く運ぶことになったとか。

物珍しさに歓喜して、「人魚!やりたいやりたい!」と諸手を挙げたまでは良かったものの、水槽の中ではテーブルを回ってチップを稼げるわけでなし。
水でなく、ぬるま湯であるのが救いだが、そのせいで魚を放つこともできず、大変孤独なのだった。
せめて広い海に帰りたい気持ちになるが、それはそれで寒さで死んでしまう。
夏が終わったル・リエーから鉢が撤去されるのも納得である。やはり陸が一番だ。

硝子越しに目の合った客が水槽にチップを投げ込んでくれることはあるけれど。
そこまで広いわけではない鉢の中を泳ぎ回るのにもそろそろ飽きてきてしまった。

後先考えず、勢いで何でもやりがたるものではない……という教訓を得て、人魚の下半身の尾鰭で水を掻く。
脚を左右ばらばらに動かせないのも結構窮屈なものだ。
卑猥なジェスチャーをしてくる客に、ぴしゃん! と尾鰭で飛沫を上げてストレスを発散するくらいしかない。

ご案内:「王都マグメール 港の酒場 舶来亭」にアドラーさんが現れました。
アドラー > 新しい武器のおかげもあり、最近では遂行できる依頼の幅も広がってきている。
ナイフやただのワイヤーだけでは遂行が困難であったセレネルの海での漁。
漁とは名ばかりの、子供の海竜との戦闘依頼となった訳だが、無事に依頼を遂行。

子供の海竜といえど、民間船と比較しても巨大な大きさ。
それを吊るした船が船庫内へと戻ってくる。

「失礼する。店主はいるか?」

腰に黒いサーベルを携えたコートの男が複数の乗組員と共に船から降りる。
酒場の従業員が店主を呼ぶと、店主がやってきて本日の漁獲に感嘆の声を上げる。
ざわざわと酒場の客と従業員もざわめき出し、乗組員たちは一同に本日の獲物との死闘についての自慢話を始める。
その様子を尻目に、書類を取り出して店主に、『ここにサインを』と依頼の完了報告を終えて。

報酬を待っている間、酒場を一望すると
やけに目立った巨大金魚鉢と褐色の人魚が居て…

「…んふっ」

その様子を見ながら、小さく吹き出してしまう。
彼女も一生懸命仕事をしているのだから笑ってはいけない。
のだが、普段見ない装いとそれとは裏腹につまらなそうな表情は滑稽で

踊り子としての仕事中だから関わるのはよしておこうと思ったが、ついつい気になってそちらを見てしまう
何かの拍子で目も合ってしまうだろうか。

アルマース > 暇にまかせてすいーっと硝子の壁面を周回していたら、新たな船が入ってくる。
海藻のように揺れる黒髪が浮上して、ぱちゃんと水上に顔を覗かせた。
逆さに吊られているのは巨大魚かと思いきや、何か見たことの無い生物のよう。

「あれは子どもの頃よく一緒に遊んだ子――かわいそうに、あなたも捕まってしまったのね……」

憂いの人魚ごっこをしていると、吹き出す男と目が合った……

「!?」

……季節外れの人魚のナリを見られるのは良い。
が、それでろくに仕事になっていない今の状況があるわけで、知り合いに見られることに一抹の気恥ずかしさがこみ上げる。
遊んでいるとでも思われているのではないかと、鉢の底に沈んでいる巻貝を拾って来て、適当に攻撃理由をつけて投げつける。

「……うちの子の仇~~~」

ナイフ投げなんかもやることがあるから投擲の腕は割とあるので、狙い過たず一仕事終えた男の方へ放物線を描いてゆく。

アドラー > 漁獲に喜びながらサインをする店主。
その書類と報酬を受け取り、『それでは』と酒場を後にしようとしたその時。

「いたっ!?」

頭に巻貝が見事命中。
ぶつかった部分を擦りながら、巻貝を拾って友人の方を見る。
あの視線は…怒っているような、気恥ずかしさも混じっている視線だ。

無視して逃げても次会った時が怖い。
ここはフォローの言葉を掛けに行こう…というのは建前で。
単に彼女を少し揶揄しようと思い、そちらの方へと向かって。

「…麗しい人魚姫よ。私に海の恵みをぶつけるのはやめてくれないか」

人魚になりきっている彼女にそう揶揄うように言い放ちながら、巻貝を金魚鉢に戻す。
その表情はいつもよりも悪戯っぽいニュアンスが含まれた笑みで。

「冗談はさておき…息災なようで何よりだ、アルマ。
 少し見ていたが、砂漠出身にしては泳ぎがかなり達者じゃないか」

開口一番は揶揄いの言葉だったが、改めて友人としてあいさつをする。
前回の富裕地区で会った時から一週間。元気そうで安心したと思いながら笑みを浮かべる。
そして、人魚の衣装で優雅に、自在に泳ぐ様子には素直に感動していたようだ。

アルマース > 笑っておいて素知らぬ振りで帰ろうとしたのだから、巻貝は天罰と言ってよい。
いい気味、と悪戯が成功した笑みを浮かべ、機嫌よく尾鰭を揺らす。

人魚姫、の台詞に、近づいてくる男を指さして――

「海に生きる私たちを敵に回したのはお前ではないの。
 心を改め、太っ腹な喜捨をしないことには、更なる災厄が降りかかることでしょう――」

この男と会うと芝居がかるのは毎度のことである。
水槽は人の背丈より高さがあるから、普通にしていても見下ろして高慢な感じになる。
チップを寄越せという内容を、海の生き物代表の脅しとしながら、ちょいちょいと人差し指で招く仕草には人間臭さしかない。

通りすがりに、小芝居に笑った船乗りからチップが飛んできたのは半分彼のおかげだろう。
瞬時に笑顔に切り替えて、「ありがとお~あなたに海の祝福を~」と接吻を投げて返し、アドラーに顔を向け直した時には素の顔である。

「海辺の街にしばらくいたからねー。毎日泳いでたもん。

 アドラーくん、怪我も治ってでっかく稼いだみたいじゃない? 何あれ鯨?
 お腹空いたなー……美味しいお魚食べたいなー……?」

戻された貝殻が鉢の底に沈んでいくのを背に、むくれて見下ろす視線。

アドラー > 「ふふ、はいはい、わかったよ姫様」

芝居がかった言葉遣い、そして水槽の高さも相まって少しだけ荘厳さと傲慢さを醸し出す姫。
船乗りに感謝の投げキッスをした後に素の表情をこちらに向ける様子も面白くて
背伸びをして、彼らよりも多めのチップを彼女の手に握らせようとする。

「へぇ~、通りで。
 ふふ、お陰様でな。君が包帯にキスをしてくれたお陰だよ。 

 シードラゴン、海竜という奴だな。あの個体はまだ幼体だ。成体はあれとは比較にならないほどの巨体になる。
 …あぁ、アレを食べたいのか?」

左手を示して、ぐーぱーと嬉しそうにしながら、またも調子のいいことを言う。
そして今回仕留めたモンスターの話をすると、相手の言葉が聞こえて、まさか海竜を食べたいのかと問いかける。
幼体は身が柔らかく、可食部も多いし、美味と聞く。
しかし、鮫やトカゲにも似た凶悪な顔をしているそれを初めて見たはずなのに食べたいと思い込んでいて、驚きを隠せずに。
 

アルマース > 「わあーいっ。あなたにも海の祝福があるでしょう……」

祝福を安売りし、厳か風に教会の祈りの仕草。敬虔な人間があたりにいたら眉を顰めただろう。
貰ったチップを水着の胸の中にねじ込んでにっこりすると、ざばあっと鉢のふちから身を乗り出して、水を滴らせながら彼の方へ腕を伸ばした。
アドラーの襟もとに濡れた指を引っ掛け、顔をぐいっと引き寄せたらその頬に口づける。
ちゅ、とわざと派手に音を立てて、耳に唇を近づけて、

「――ついでに次の仕事もうまくいくように、幸運分けといてあげる」

うふふ、と笑い声を響かせ、ぱ、と手を離し解放する。
じゃぷん、と鉢の中に戻り――

「竜の一種ってこと……!? あらあら、ドラゴンスレイヤーの称号を進呈しようじゃない。
 うちの子食べるのは役柄的にまずくない……?
 食べたことないモノは何でも食べてはみたいけどさ。
 フィッシュボールがいいなあ。ねえ、投げて投げて、キャッチするから」

魚肉を丸めて揚げたものを所望する。
暇つぶしを思いついて目を輝かせた。

アドラー > 相手の芝居がかった言葉遣いに口元に手を添えてくすくすと笑う。
金魚鉢から身を乗り出す様子に目を丸くして、特段避けることはせずに
彼女にぐいっと引っ張られるとそのまま、近づいて、頬に口づけをされる。

「ははは、ありがとう。姫様」

ニコッと笑って、彼女に礼をしながら、接吻をされた部分を小さく指先で摩る。
先ほどまで海竜の討伐を一緒にしていた乗組員たちから『ヒューヒュー』『お熱いねぇ!』などと
揶揄するような声が飛び、そちらに笑顔で小さく手を振る。

「あぁ、そうか。竜ということになるのか。
 ドラゴンスレイヤーなんてそんな大仰なものじゃないさ。せめてこの成体を倒せるくらいじゃないとその称号は受け取れないな。

 フィッシュボール?そんなのがあるのか。わかった。行くぞ」

従業員に彼女が言われた通りのものを頼み、それが提供されると手を軽く拭ってから指先でそれを摘む。
アルマに合図をしてから、言われた通りに投げてみて

アルマース > アドラーの頬には擦った後もうっすら口紅の跡が残っているが、あえて言うまい。
瞳を細くして微笑み、鷹揚に頷く様は、姫というより女王を目指している。

「大儀無い。楽になさいな。

 ……他の客が真似したがったら困るわねえ。
 もー……アドラーのせいだかんね」

ただでさえ娼婦扱いされることが多い仕事である。
野次や口笛には笑って応じるが、こういうのが悪ノリに変じると始末が悪い。
やりすぎたかなあとぼやきながら、注文の品が出来上がってくるまで少し。

高く投げられたフィッシュボールを、あーんと口を開けて待って――
ぱく。

外さず口にできたものの、揚げたてだったので口を押さえ……

「あっふ……!」

しばらく涙目で静かに苦しんでいる。

「……揚げたては、やめた方が、良いね……。

 楽しいけど色気が無いから儲からないかなあ。
 子どもが多いところでやればいいのかしら…… え? セータイ……ってことはあれで子どもなの……?」

人魚の餌付けショーという新たな見世物の可能性を探りつつ、火傷した、と赤い舌を出す。
一口サイズには少々大きい魚の揚げ団子。頬袋をふくらませてもぐもぐしながら首を傾げる。
やる前からわかりそうな結論も、やらねば納得しない性質である。

何人がかりかで運ばれている海竜を見て、こわ、と呟く。

アドラー > 頬に口紅の跡が残っていることは知らず、彼女との会話を続ける。
女王を目指しているのだろうが、相手の本性を知ってしまっているからか
姫か、あるいは子供ような扱いをついついしてしまって

「もし変な輩に絡まれたら、今日のアルマは私専属の人魚ということにしておこう。
 私のせいなのだから、責任はしっかりと果たさなければな?」

事あるごとに自分のせいにするのを逆手にとってように、自分専属の人魚にすることを提案してみる。
踊り子としての商売としてはあまり良くないやり方ではあるが、面倒な連中に絡まれるよりは良いだろう。
それに今日の海竜の報酬を使えば、自分ひとりを相手にしても、彼女の本来の稼ぎくらいのチップは贈れるだろう。

「おぉ、ナイスキャッチ」

外もやや暖かいフィッシュボール。
冷まさずに食べれはそれは当然熱くて、上手にキャッチ出来たものの熱さに悶える彼女には
苦笑いしながらもサムズアップを送る。

「大丈夫か?すいません、彼女に水を。
 
 その人魚に衣装は子供向けにしては中々に色気があるとは思うけどな。
 あぁ、成体はもっと巨体と言ったろ?それにこの種類のは成長すると尾びれが蛸のように分離し吸盤を帯びるそうな」

赤い舌を見ると、流石に心配が勝って冷たい水を従業員に頼む。
届いたコップに入った水を渡しながら、彼女の衣装を笑顔で褒めてみる。

そして運ばれていく海竜を横目に、さらっと更に怖いことを述べて。

アルマース > フィッシュボールをひとつ食べ終えて、アドラーの提案には首を傾げた。

「んー……買えるってイメージ自体が良くないんだけど――……まあいっか、買われてあげる。
 ゴシュジンサマって呼んであげましょうか」

出入りの激しい場所だから、同じ船乗りと人魚として顔を合わせることもそうそうあるまい。
次の時には化粧や髪型を変えて人魚とは別人の振りをしようと心には留めておく。
買われる側とは思えぬ高慢な口ぶりは、お客様にすべきものでも、ゴシュジンサマにすべきものでもないが、無意識に甘えが出てしまっているよう。

「アドラーも投げんのうまいね……」

役立つ場面がかなり限定されそうな技術を褒める。

「そお? でも人魚の衣装ってこれ以外イメージ無いよねえ」

腰から下がぴたぴたの鱗風の衣装で覆われている分、いつもより露出は少ないくらいである。
谷間隠すくらいでも違ってくるかしら、と水着の胸を持ち上げて見下ろす。

「味も蛸なのかな。捕まえたら一口食べたあい。残しといて」

そういえば先ほど、セイタイとかヨウタイとか言っていた気がする。
鯨で無くて竜だということまでしか飲み込めていなかったよう。
お水を受け取って口に含み舌を冷やす。コップは鉢のふちに置いておこう。

「んーん、ふんふふんーふふ?」

それで、このあとどーする? と言っているのだが伝わるかどうか。
買われた側として意向を伺うつもりはあるらしい。

アドラー > 「あぁ、いや、そういうつもりではないのだが…すまない。
 ご主人様かぁ…慣れない呼び方だ」

言い方として、金で買うということになってしまいどもりながら謝罪をする。
そしてかけられた呼び方には違和感を抱きながら、手を顎に添える。
高慢な口ぶりにも慣れてきていて、むしろ彼女の友愛や甘えのようなものが見えていて好ましいとも思っている。

「ありがとう。手先は器用な方でな。ナイフを投げるのと似ている。
 君はスタイルがいいからな。水着だからサラシを巻くという訳もいかないし、難しいな…」

投げる技術を褒められると、微笑みながら返して
子供向けの人魚衣装は難しいなと彼女の恰好をまじまじと見ながら答える
素材が良いから、それを色気ではなくコミカルにする方向はなかなか難しい。

「簡単に言ってくれる。
 遭遇すら珍しいのに、捕まえるなんて何年後になるやら…」

相手の呑気な発言に目を細めて、唇を尖がらせる。
シードラゴンの成体の討伐を目指して生涯を終える人物もいるというのに、“釣ったら味見させて”のノリでいうのは少し呆れる
というか本当に討伐出来たら一人で食べきれるわけがない。

ま、彼女の本業は踊り子なのだから、強くは言えないが…

「あぁ…どうしようか。
 普通なら宿に誘うのか?わからないが…とりあえず、飲むか?」

相手の言葉は自然に理解するが、次はどうするか決めていなかった。
一応彼女を買ったわけで、普通なら情事に持っていくのだろうが、こんな形で誘うのは失礼な気もして目を細めて悩む。
とりあえず暫定として、酒を飲むこと提案してみる。

アルマース > 「ン? なあに? 良いよ、今日はもう仕事にならなさそうだったし。
 人魚やるならもうちょっとやり方考えなくちゃあねー」

珍しくどもるのに、律儀ねえと面白そうに口の端を吊り上げた。

「じゃ、冒険者の次の人生は人魚の餌付け師でいけそうね。
 胸は潰せば潰れるけど――子どもウケを狙っても稼ぎにはならなさそ。
 貴族の子どもの誕生パーティーとかなら需要あるかしら……」

新しい仕事を開拓することについ意識が向くが、そもそも鉢は自分のモノではないのだ、とはたと気づく。

「幸運のお裾分けしたのに弱気じゃない。
 あたしねえ、初めて海で泳いだ日に亀見たんだー。亀って幸福を呼ぶんだって。
 海のカミサマはどうしてもあたしを幸せにしたいみたいだから大丈夫よ。
 言ったでしょ、信じない魔法は叶わない、って」

現実的でないと言いたげなアドラーの表情に、どこまでも楽観的に請け合った。

「普通――? は、金払ってしか満たせない歪んだ性癖をぶつけるんじゃない?
 ゴシュジンサマのご命令とあらば仕方ない。本日は売り切れ閉店! 飲みまあす」

大義名分を手に入れて、人魚の営業を終了することにした。
くるんと水中で宙返りをし、伸縮性に富んだ尾鰭スーツを水中で脱げば、ただの水着のヒトの女に戻る。
その後身体を乾かしたら、とりあえず飲むのに付き合うことにする。
彼の悩みなど知らず、美味しい魚と酒に楽しく舌鼓を打つのである。

どうあれ、女の方は、寒いから一緒に寝よ、と毛布扱いするまでは確実である。

アドラー > 「踊り子の商売もなかなか一筋縄ではいかないみたいだな」

美人で踊りが上手で、愛想が良ければ人気になれる、という訳でもないようだ。
自分が買わなかったら人魚としての営業を失敗していた様子に、楽な仕事はないと実感して。

「どういう職業なんだそれは…ま、依頼遂行が出来なくなったらそれも考えておこう。
 それはいいが、変な貴族に引っかからないようにな」

色々と新しい仕事のことを考えるも、結局心配なのは彼女の身の安全。
貴族に騙され奴隷にされる友人など見たくない。
その時は、一肌脱いで助けるかもだが…

「亀。珍しいな、ウミガメか。
 ふふ、そうだな。君の言う通りだ。

 …やはり、敵わないなぁ」

楽観的で、夢見がちな彼女の自身にあふれた台詞を聞いて笑顔を浮かべながら、小さくつぶやく。
気付けばこれだから駄目だ。無理だ。諦めよう。そればかり考えるようになってしまった。
時折、キラキラと希望に溢れている彼女を直視できない時がある。

「なるほど。そんな性癖ないのだが…
 あぁ、少しばかり羽目を外そうか。楽しもう」

性癖としては普通だと、思う。多分。
人魚の営業を終了して、器用に水着に戻る様子に「おぉ」と感嘆の声を上げる。
やはり身のこなしはピカイチだ。

そして彼女と肩を並べて、海の幸や酒を楽しむ。
その後は宿で彼女を暖める役目を全うするだろう―――

ご案内:「王都マグメール 港の酒場 舶来亭」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 港の酒場 舶来亭」からアドラーさんが去りました。