2023/09/16 のログ
ミホ・クギヤ > クマだって気の弱い手合いなら不意打ちのビンタ一発で怯み逃げ帰ってくれる可能性がワンチャンと言う。
期待しちゃいけない確立かもしれないが、一応の荒事経験から回避不能と踏んで、口の軌道を変える事に賭けた。
――振りかぶった瞬間、釘屋!と声が追いかけて来る。

「――っむ、っわぁああああああっっ!!」

無理、と抗議する暇もなし。
横からぶん殴るつもりだった拳を引っ込めている余裕も無いが、身を屈め、両前腕を盾にサメの顎下へ潜り込もうとする。
押し倒されるような姿勢になりながら ふんぬっ! と両腕でサメの顎を持ち上げる形。
本格的に体が傾いだら倒れ込みざまに片足もサメの下腹部を蹴っ飛ばそう。
後ろに投げるような形でちょっとでも滞空時間が伸びるように支えてやれば、ぬっと差す物の字の影。
手裏剣が刺さったのも分からなかったが、手品のように上顎が、頭部が飛んでいくのは分かった。
びしゃりと地飛沫浴びながら、ざぶんと水の中。
鮫肌VS人肌では勝負にならず、前腕ズタズタ足裏ヒリヒリといったところだが、死ななきゃ安い。

「――っぷはっ! あー… あー、やっちゃった… ごめんねえ…」

夕日でなく赤く染まる水面に顔を出して… 我が身の軽率が九音に無用な殺生をさせたと、
立ち位置的に『殺すな』なんて戒律は守れそうな相手ではないが、数は少ない方が良くすまぬと唸る。

「すまない… すまないとは思うが、助かったけど、それにしてもお早いお着きだったねえ物の字。」

…それはそれとして、犯した戒律は一つではないなと半眼だ。
別に行為に及んでないにせよ『妻以外とするな』ってのは、欲情すんのもほどほどにという意味合いのはずで。
まさかとは思うがそういうの卒業できてないのかいと、赤く筋の伝う裸身で腰に手を当てて。
とはいえ全然、本気ではない。だからすぐにぷっかり浮かぶサメに目をやり。

「…これ、食べられるかね?」

無用な殺生とせぬために、肉食しちゃいましょうかねえと。
別に教義として肉食への禁忌は無いけれど、生贄用の巫女としては控えるべき食事で、落第した今もそれに倣っているとかそんな。

九音物 > 体術センスが良い。拳を引っ込めない判断も良かった。
落葉桜でも通用すると思うし、若い衆に勉強をさせるのも悪くはない。
不死であっても恐怖感諸々を呑み込めた丹力も併せて、素直に相手に称賛の拍手を心の中で。
そして予想外に時間を稼いでくれたおかげで自分の刃は相手の鮫肌をするり、と薄紙を裂くような手応えと気軽さで行動出来たのは大きかった。

――だが。だがしかし。水面に混ざった赤い液体は鮫だけの物ではない。
彼女の腕からも無視はできない赤い筋が流れ落ちていた。

「……ごめんはこっちの言う事。処置しようか。
鮫は血の匂いを嗅ぎつけるし、1匹とも限らない。
あー、うん…………はやかった、ね?きっとクギヤの危機を神様が教えてくれたんじゃないかな。」

半眼で此方を見てくるもじゃもじゃ髪の巫女。
いくらなんでも、五戒を破っただけではなく護衛対象に傷を負わせるという体たらく。
謝るべきは此方なのだ。他の人によっては『ノロマ!』とか言われる失態だっただけに、むしろ優しい言葉の方がぐさりと心に刺さった。

「立派に育って僕は嬉しいよ。
と、冗談はおいておこう。うーん……食べようと思えば食べられるかもしれないけど、僕とクギヤだけしかいない野営には大きすぎない?
手持ちの調味料なんてほとんどないし。塩も醤油もないから。
適当に解体して川に流しちゃった方が良いと思う。」

自然に返す方が良いだろう。少なくとも食べる事は出来るけど完食は無理なサイズだ。
味は………知っている鮫なら美味しくないし、知らない鮫でも毒やら何やらに怯えるくらいなら調理しない方がマシだった。
即断実行。スパンスパンと鮫を解体する腕の振るい方は、妙に慣れた命を奪う手付きだった。
食べる?と言う感じで一応切り身を差し出しているけれど、美味しそうかどうかは……人によって、違うんじゃないかなとか逆に半眼で相手を見遣った。
ヒレの部分と、切り身1個。それ以外は先に川に流して弔おう。

「まぁ、ほら。護衛任務だから。眼を離しすぎても駄目だと思わない?」

最後の言い訳というか苦労して絞り出した答弁。
許すのも許さず鉄拳……じゃなくて蹴りでお仕置きをするのも自由。
何よりも少し気落ちしているのは、覗き見がバレた事ではなく相手に怪我をさせた事が一番効いている。
しょんぼりとした様に。ちょっとだけ俯いたが判断は相手に任せよう。
無罪放免ならよし、有罪放免なら仕方なし。

ミホ・クギヤ > 「――んん? そうかね?」

物の字がごめんと言う事ではなかろうにと、呑気に深みでぱしゃぱしゃやっていたのも悪かろうと、首を傾げて。
指摘されてはじめて、予想外に前腕の肌がズタズタと気付くアドレナリン。

「お? おええっ!? いやあ、鮫肌ってヤツかあ… うわあ…」

うおお?と自分でビビリ、そそくさと水から上がろう。
血だまりにいた体をすすげないのは困るけど、サメがもう一匹は冗談でなく、
十分に川辺でばしゃばしゃ流すが、両腕出血では自分の血液が。

「…減るもんじゃ無し見たけりゃいいが―― いや良くはないか。とはいえ今はしょうがないので、お願いしよう。」

これじゃあ何もやり難い。
女子としては一枚羽織るところなのだろうけど、生贄用の巫女としてはその辺り別にそんなに平気らしく。
止むを得ないなら裸でもしょうがないよねと、川辺に屈んで手当てを待つ姿勢。

「そんな台詞が出る相手の体が見たいもんかね? 邪な目じゃなくて、親心的な関心かい?」

サメっぽい大魚の処置についても判断は九音に一任で、そう言うのならと解体を見送ろう。
生食は遠慮しつつ、もしもやりとりで欲情を肯定したりするのなら『ほーらグロいぞー』と腕の傷で萎えさせにかかるのだ。
――護衛と言われると、助けられた手前。

「それを言われちゃぐうの音も。実際助かったよ、ああでも水浴びしろって言ったのは物の字だ。気持ち良かったけど。」

覗きはさして気にしていないようだった。あまり自分に価値を見出しておらず。大事にするものでもなく。
裸を見られる事は別にどうでもいいのだが、その事に物の字が欲情してしまうなら問題だよねというスタンスで。
無罪か有罪かを判定するのは私ではないから、手や足が出るなんてとんでもない。
これが手を出そうとしてくるのなら対応が変わるけれど、今はまだ物の字が自身の欲望とどう対峙するかという。

――逆に、そんなに年頃の男に見える相手に興味を持たないのかと嘆くなかれ、自分が恋愛するという思考が無い。

九音物 > 例えば笹の葉なら多少の消毒効果があるといわれているが、あくまで綺麗な場合。
そのため、土地や水を詳しく調べていない以上簡単に薬草だぞーと適当な薬草を集める訳にも行かない。
植物は繊細なのだ。ここにいる人間達よりも。
酒が少し残っている野営地に向かう方が建設的だろう。
黒装束も水にぬれているが、血染めではないので。そう、これは合理的な判断として巫女服と下着は自分が持ち運ぶ事にした。
ごうりてきなはんだんで。

「……思ったより傷が深いし広いね。
消毒含めて野営地に戻ろうか。
え、普通に見たいけど。両方の意味で。性欲食欲睡眠欲は活動の源。
クギヤは磨かなくても光るし、ないすばでーだから。」

素直に返答した。グロいぞー腕の傷を見せられてくるが、どちらかと言えば傷の深さや状況を見るのに都合が良い。
その程度のグロでは長い間性欲と向き合ってきた爺にはまるで響かない。
手を出そうとはしないのは、中途半端な情欲という一番性質が悪いモノだった。

さて森に戻って直ぐ野営地。流石に水に濡れっぱなしではまずい。
火の前に巫女を座らせ、その火の上に巫女服と下着を干していく。
乾ききるかと言われると微妙。
身体を拭く布はあるので、綺麗な布で体を自分で拭く様に手渡す。
流石に体を拭くのが自分では色々な意味で拙いだろう。これで何もハプニングがなかったらラッキー!で触り放題だったのは言うまでもない。

「見ていい、とか平気で言っちゃだめだよ。
一応僕も男だからね。
拭き終わったら下に作務衣履いて。腕、ちょっとしみるよ。」

こういう手際は良い方。というか実際慣れている。髪の毛で血管を縛り止血を促す。
傷の表面に酒をとぷとぷと落し、染みるだろうけれど表面の消毒。
傷の表面を消毒し終えたら包帯を巻いていく。
軟膏は流石に持ってないので包帯がちょっと水気を帯びて気持ち悪いかもしれないけれど。
それ以上に腕を動かすと出血がまた発生するかもしれない。

「……後はご飯を食べて栄養を付ける事。
もうちょっと栄養のありそうな保存食あるけど。食べる?
落葉桜にも教えてない、僕の特製丸薬。」

ころころと掌で転がしているのは黒い枝豆くらいの大きさの物。
見るからに『まずい』の3文字を現す様な色合いと、なんか苦い匂いがゾースイの匂いに混ざって巫女に届くだろう。
栄養たっぷり、苦味たっぷり、精力も回復する優れモノ。
女性が食べても媚薬的な効果は無いのでそこは安心。

ミホ・クギヤ > ――相手が着衣、自分は裸、そしてロケーションが水辺から離れるとだんだん照れが出て来るが。
両腕からトロトロ血を滴らせていると、やはりその事態の方が優先度は高く、腕を差し出すゾンビめいた姿勢で追従する。

荷物持ちは任せるし、合理的な判断に異論なし。
そこで邪な何かを感じてしまうとしたら、それはやはり物の字の問題というスタンスだ。

「五戒には意味がある。そういうのは奥方のために取っておいでと、何かと過ちの元じゃないか男の女のってのは。
 物の字はそういうの卒業出来ていそうな気がするんだけどね、例えば色に惑わされて騙されるんじゃないかとか、心配になるよ。」

本気じゃなければ良いのだ。
女の子()との楽しい付き合い方として、こうしておちゃらけた雰囲気の方が良かろうと思っているとか。
でもそういうキャラクターでもない気がして、ないすばでーをスルーし ふむ? と見つめる。

野営地では指示に従うが、血液がそこかしこに付着するのはいたく気にして、
とはいえこのまま手当てもし難いと思えば、もたもた体を拭いて作務衣を履くところまで。

「いや良くはないんだ。別にそんなに気にしやしないけどって事で… あい。すまないねえ…」

処置を開始されても、あー火あったけぇ と焚火の炎に照らされ むふー と静かな様子。
酒が傷口を伝うと僅かに緊張が走るけれど、安らいだ表情を崩さないのは精神力のなせる業だろう。

「――ああ、ありがとう。それは食べてみたいな。」

保存食、状況によってはおいそれと手をつけられないが、街道沿いだ。
血を失ってしまったし精をつけなければと、特製 なんて言葉にもつられてご馳走に。

口に含めば反応に困った食レポの雰囲気で、これはまた独特な味で、とかごにょごにょ。
雑炊の味を引き立たせるね!なんて喜んだのが会心のフォローだ。

――何か過ちが起きるような事は無く、守られて夜が更けていく。
治癒術などが出て来なかったのは、この程度は神仏に頼るほどではないという判断で。
翌朝にはしっかり荷車を押して行くのだ。 九音のサポートがもしかしたら少し大きくなったかもしれない事には、何も言わずに。

九音物 > 「……僕と似て異なる不死性のクギヤなら理解してもらえるかもしれないけど。
僕は妻子を持つつもりはないよ。
僕に許されているのは突発的な死だけ。
老いる事も許されない、相方が出来ても相方は歳を重ねても僕はこの外見の儘。」

そういう意味で安易に覗きもするしお触りもするが、本番行為はほとんどしない。
忌避感すらあるのは自分なりの死生観による所が大きい。
といって自分と似てるからといって目の前の巫女を押し倒すチャンスで押し倒さないのは、そういう理由。
娼婦街で性欲を発散するのも、そういうお店で自分の子供を残さない事が確定しているお店だけなのは秘密だ。

「……渾身のフォローありがとう。
味は改善の余地あり、と。」

丸薬の様な黒い粒。頑張って食べたいい子の巫女の頭を撫でた。
もし何もトラブルが無ければお触りなり何なりとしていたかもしれないが。
焚火を消し、眠りに就く。過ちと呼べる様な事は起きる事が無い。
翌朝の出発だが――まぁ、流石に。出血した女のコに荷車を押させるほどは鬼ではない。
『血が飛び散ったら神様に迷惑』といって出来るだけ腕に力を入れさせずに歩きだす。
完全に手を離させないのは昨夜の話で少しなり手伝わせないと逆に気を使わせそうだったから。
ちなみに。他の霊桜教の人間とクギヤがコンタクトを取った瞬間にふらっと消えるのは何時もの事。

ご案内:「田舎道」から九音物さんが去りました。
ご案内:「田舎道」からミホ・クギヤさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──さーて、今日もブブイーンと張り切ってやりますか、ねぇッ……と」

その中の一室に腕をグリングリンと回しながらやってきたのは作務衣姿の金髪の男。
知り合いからの依頼という形で臨時のマッサージ師としてやってきている冒険者、という立場は今も変わらないのだが、
もうすっかりここの一員として馴染んでしまっていた。
そんな自分に時折疑問を持たないでもないが、男自身としてもなんやかんやこの仕事は
気に入っているのでまあいいか、とあまり深く考えないことにしたのだった。

「今日はどんなお客が来るかねぇ……」

ともかく、男は施術台の傍のスツールに腰掛け、腕組みしながら客待ちを始める。
出入り口のカーテンが開かれ客が現れるか、あるいは魔導機械の通信機を通して客室への
出張依頼が来るか。
いずれかの訪れが、今日の男の仕事の開始の合図となるのだろう。
もしかしたら、受付を経ずに紛れ込んで来てしまうような珍客が現れる、なんてこともあるかもしれないが。