2023/09/12 のログ
ご案内:「田舎道」にミホ・クギヤさんが現れました。
■ミホ・クギヤ > 王都北東、まれびとの道へと通じる田舎道。
両脇を木立に囲まれた悪路を、重そうな手押し車を引いて白衣に赤いスカート… 巫女装束の女がもったり進む。
荷台には木造のミニチュア家屋。シェンヤン風のようだけど、見る者が見れば趣きが違うと分かるだろう。
見る者が見れば、そのミニチュアの屋根にデンと鎮座する『ナマズ頭のカエル』といった霊的実体を捉える事も出来る。
――ガコンと、荷車の車輪が窪みにはまり込んだ。
「――うおっと。ああも… どーなってもっ…! 知りませんっ! からねーっと…!」
愚痴っぽい掛け声で ふんぬっ と荷車押し出して、ゴトリ ゴトリ それなりの重量がありそうな車をがんばって引いていく。
――その地方村は水害に悩まされていた。
元より立地がよろしくなくてその気はあったのだが、永劫変わらずとはいかないお天気事情によって、近年は特に酷いようだった。
それは丸っきり川の曲がりくねり具合と、村周辺のすり鉢状な起伏によるもので、誰のせいでもないのだが。
葦原会の見回り役がその川で無為に遊んでいる神格実体を捕捉したのが布教チャンス。
地元では精霊と呼ばれたりするそのナマズ頭のカエルは、河川の流れに干渉する力を持ち、
しかし作為的にそれを行う理由は無く、荒ぶりも宥めもせずにただ野生の営みがそこに在って。
祀り上げ、信仰によって『かくあれかし』と形を与えれば、
信心の続く限り人に助力を頂ける、教科書的に理想の関係を築けるはずだった。
――そのように地方村へ紹介し、出だしは良好。
祠を築きその精霊を神と奉り(住民に対して神との単語は使わなかったが)霊桜教流の奉納儀礼を伝授して、この夏は被害なし。
この先も末永く地元の守り神として良好な関係を築いて行けると思われたが、
気軽に『調子どうっすか』と顔を出してみたらまさかのクーリングオフ。
どうも異国のマジナイを不安に思った村民が『これアリっすか?』とノーシス主教に確認をとったらしく。
何も言われなければ咎め立てしないギリギリのラインであったとしても、聞かれたらウンとは言えない境地というものがあり。
ダメかなあ?という事で、邪教崇拝はお役御免。
神様じゃなくて精霊様で! 全然違うけど害獣を撒き餌して遠ざけたり、農地の雑草抜いておくような生活の知恵と思ってもらえれば!
…なんて訴えも、当の胡散臭いシャーマンから言われて響くわけがなく『祠片付けてね?』となってしまい。
一度祀り上げてしまったら無下に扱うのは非常に危険という事で、止むを得ず『お引越し』の手続きを取っている。
「ああヤブヘビ… いや早いうちで良かったのか。ああ日が暮れるぅ…」
村民の契約違反であるが、この異国の地においては祭主の不手際にも違いない。
祠の移設は誠意を持って人力で。いや式神の何のといった助力を得ても良そうだけど、なるべくならば。
出がけに迎えを寄越してね!とは言って来たけど確約無いので期待はできず、宿を取れる場所まで急げとえっちらおっちら。
ご案内:「田舎道」に九音物さんが現れました。
■九音物 > 「……………ぷっ。」
そんな真面目な巫女を見て噴き出すのは。
何時の間にか荷車の上に腰を下ろしていた黒尽くめのフシンシャ、フシンジンブツ、エロジジイは男の出した声だった。
座り心地は決して良くなかったが、こう、積み重ねられた物の上から巫女の髪の毛だとか胸の谷間を見ていたのだが。
ついついおかしさと面白さがエロ興味を上回って声に出てしまっていた。
「――――追放、で丸く収まって良かったと思うよ。クギヤ。」
その声は澄み渡る空に消える様な吹奏楽の音色を思わせる。
声を術の媒介にしている関係で耳障りな声からこういった声音まで自由に使える男。
荷台の上からは動こうとせずに、荷台を引っ張るケナゲなオンナノコを見守っていた。
……実際は彼女が囚われそうになれば救助也救出也と。出番はありそうだったが、放免されたので気配を潜ませていたわけだが。
手伝うつもり?そんなの荷台の上に座っているから察してください。
■ミホ・クギヤ > 「――馬車がダメなら牛車でもいい… この荷車ってそんなに快適ですかね正味な話。」
お祭りする神様に敬意を表する意味で苦行めいた事をしているが、意味あります?と一人ごちる。
豪勢な牛車の方がお互いハッピーなのではなかろうかと思うが、現場の汗で補えるところは経費節減か。
ナマズ頭はぼんやりと天を仰いで答えない―― 代わりに聞こえた吹き出す声に、ム と半眼になった。
「三番隊の勇み足だった事は認めざるを得ないけど、ここで介入しなかったらどこで介入するんだって…
――とにかく下りれ物の字。 手伝えとは言わないからせめて邪魔はしないでおくれ。
…ところで自分が外れクジになった気分はどうだい。」
言外に あーあアンタかあ… という雰囲気を醸し出す。
応援に来たのが手伝ってくれる人だとしても、この行為の性質上あまり代役は頼み難いのだが、
信徒としてちょっと押してくれたってバチは当たらないと思うのだ。
女の子()が細腕でリヤカーゴトゴトがんばっているんだぞ?と。 乗っかっているのにはちょっとイラッときたらしい。
――日暮れの迫る赤い木立の中で、一人でなくなった事にはいくらかホッとしているのだが。
「ノーシスさんにも一応話は通してあるんだから… いやこの件個別に許可申請なんてしないけど。
向こうも『ダメ』とは言いたくなかったんじゃないかと思うよ、本当は。
今夏の大水を押さえられたのがどうしてか、分からない人達じゃない。
それがこれからも続くとなったら対策はしなきゃいけないが、他の方法ってなると治水工事だ。」
■九音物 > 「牛馬は僕達の故郷みたいに余っている訳じゃないと思うよ。
こっちの土地は魔族との戦争に内乱。馬は常に不足して牛は食事にされているんだから。
――僕のような軽い物なんて降りても変わらないと思うけどね。」
と、という軽い音。それは巫女姿の彼女のすぐ横だ。
珍しく手伝うつもりなのか、引手側の片方に手を添える。明日は雨か嵐か雷雨でも降ろうかという奇行。
感情の起伏を久々に、色事や戦以外で引き起こした相手への感謝と言うのも、ひょっとしたら万に一つくらいはあったかもしれない。
元々重かった錘がどけた事。引手をひく手が増えた事で彼女の負担はかなり楽になるはず。
それと共に、少年の様な爺にある加護の力で。荷車は不思議と石に乗り上げたりといったことは少なくなり左右の安定も取れていた。
「外れクジと思ったら富くじで悪くない当たり方をしたよ。
……ダメと『言えなかった』が客観正しいと思うけど。
そこはクギヤがそう結論したなら僕が口を挟む事じゃないかな。」
勇み足と言う言葉には異論をはさまない。
実際彼女達がどういう思惑で動いたかは分からないのだし、GOサインを出したり出した側の思惑なんて自分からすれば調べ様も無い。
しかしこのリヤカー重い。掌に引手である木の棒が食い込むとその重さが良く分かる。
オンナノコとかホソウデとか口に出していたら珍しい大笑いも見れた程に。
時折首が左右に、後方に向くのは何かしらの気配を察知して視線や殺気といった物で獣を追い払っている――が、なるべく彼女には知られないように。
その殺気の形を練って目標に届かせるのは自分達の得意技能でもあるのだから。
日没間近だが、この調子だと宿の取れる場所には遠く届かないかもしれない。
野宿は慣れた物なのでどうこう言う訳でもないが。
「災害が起きて潤う人種もいるから。
――まさかとは思うけど、三番隊、治水工事でも手伝うつもりなの?」
長い間死ねない、死なない間柄。なんか嫌な予感がする。
目の前の相手は『巫女』としてもそうだが妙に優しい部分がある。
下手にあの村の住人に情けなど抱いていなければいいのだが。
巫女服のおっぱいと見てから相手の汗だくの表情――それこそちゃんと出る所に出れば輝く原石の様な顔立ちを見上げるのだった。
なお番付がない関係だけではないが、このパーティーの場合決定権は彼女にある。
野宿をすると言えば素直に手伝う義務はあり、徹夜で進むなら進む事に異論をはさむことは無い。
■ミホ・クギヤ > 「いやいや、何なら今ウチの厩舎で草食んでるのがいなかったっけ?今日は。
冴えない話だからねえ… 地味に慎ましくやっておいでって事なんだろうけど… ああ、あー、日が、暮れるぅ…」
野宿はイヤだなあと呻くけど、宿場はまだ先か。
水の確保できる場所でもあればそこが今夜の宿になるのかなあと、周囲へ首を巡らせながら歩みを早めた。
降りても不思議と軽くならない彼が、期待していなかった助力をくれるとだいぶ楽になる。
どうした風の吹き回しだろうと思うけど、なんとなくこんなに大変だと手伝ってくれるような気もしていた。
すまないねえ、と へへっ と照れくさそうに笑い。
「うんうん、凶ってのは箱からメが出たがってるんだ。
…ダメと言えなかったってのは、最初の最初に私達がこの国に居を構える事を、ノーシスさんが?
それとも今度の私達の申し出に対して、村民側が?
――いやいや、しっかり者の村人がノーシスへ正式なお伺いなんかを立てなけりゃ、この件は丸く収まってた… と思うんだけど。」
口を挟む事ではないと言われると何だか心細く、思うところがあるなら聞かせておくれなと苦笑して。
――運搬しているミニチュア家屋は、しっかりとした木材で拵えられた風雨に耐えて威厳を保つ祠である。
それなりの重量を、二人でゴトゴト。
それまでは自分でも周囲に警戒していただろうけど、九音が合流してからはお任せの姿勢だった。
「――っははは、まさか。 …まさかね? ないと思うよこの期に及んで未練たらしく手伝いなんて。
それで私達への理解を深めてもらうには、事の成り行きが良くないもの。
あそこの人達は、私達の事が信用ならなくて、決別しようと決めた。なら、しょうがないさ。
押し付けがましくいくところじゃないし、この夏は大水が起きなくて、私達の引き際が良かったのを覚えててくれればそれでいい。
霊桜教ってのがあるんだよって、ひとまずは認知してもらうところまでが当面の目標なら。」
水の豊かな我が国は、治水がお家芸のようなところもあるかもしれないが。
どうかねえ、と気楽な調子でへらへらし。
「…間に合わないかなあ。野宿が無難かねえ、物の字。」
いよいよ昏くなっていく空に、宿場は諦めるべきかなと。
それこそ一人なら多少の無理を押しても屋根の下を目指すが、二人でなら野宿のハードルも下がる。
一応、見越して簡単な野営の準備はしてきている。