2024/12/07 のログ
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ご案内:「平民地区 雑貨店」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > この店を見つけたのは偶然のこと。
城下町を散策する中、不意に降り出したひやりと身体冷やす秋雨。
雨から身を守るものも所持していなければ、霊体となって逃げるには街歩きに満足しておらず、結果その場をしのぐ為に取った方法は雨宿り。
その雨宿り先が、この雑貨店であった。

雨降る町を眺める事に飽いた妖怪は、振り返った先にある店に興味を持つ。
開放的なショーウインドウがある訳でもなく、入口であろう扉の小窓から覗き込んだ店内。
雑多に様々な物が並ぶ様子に長い前髪の下の双眸を見開くと、迷うことなく扉を開き店内へと。

初老の男性の、今にも眠ってしまいそうな「いらっしゃいませ」の声。
奥まった所から聞こえた其れに、さすがの妖怪もその姿を探してしまう。
見つけたのはカウンターのようにして置かれた横長の木製机。其処に積み上げられた書物からひょっこり覗く、白髪交じりの栗色の髪の毛。
ともあれ店員の存在を認めれば、妖怪は並ぶ品々にすぐさま興味を移す。

どう見ても錆びている様にしか見えないナイフ。
己の掌には収まらなさそうなサイズのコンパス。
いったい何人分の調理を行うのだろうという程に大きな鉄鍋。
小綺麗な装飾が施された懐中時計。

ひとつひとつをまじまじと見つめ、あるいは手に取ってあらゆる角度から眺め、また次の品へと移る。
そうこうして辿り着いたのは、壁に貼られた地図。
この王都を中心に、近隣の地理や国を描いた古びた其れを見つけると、少し高めの位置に貼られた其れをよく見ようと、妖怪は背伸びをする。
持ち上げた左手。白い指が触れたのは、地図の中央で。

「マグ、メール。……この国?」

枢樹雨 > 王都を示す文字を辿る指先。
それがゆっくり、ゆっくりと海沿いの陸を辿り、その経路で目に入った文字を読みあげていく。
ル・リエー、ゾス村、バフート。
知っているもの、知らないもの、確認する様に、覚える様に呟いて、視線と指先が地図上を旅していく。
次いで指が止まったのは、街道名の先に見つけた都市名で。

「ダイラス!」

思わずといった様子で大きくなった声量。
静寂が支配するこの小さな店舗では思いのほか響き、反射的に右手が己の口を塞ぐ。
しかし何処からも咎める声は飛んでこない。
数秒の後、その手をそっと外せば意識は再び地図の方へ。
指が留まる港湾都市は、先日初めて旅をした先。
こうした経路を辿ったのかと、今更感心した様子で繋がる街道を改めて視線で辿っては、再びダイラスへと戻ってくる。

トン―――と、指先で叩いた都市の名称。
其処から右へと指先を動かし、地図の端まで辿り着いてしまえば、次いで上下に視線を彷徨わせ。

「シェンヤンは、…ないのか、」

ぽつり、零れた呟き。
この地図では足りない、さらにもっと遠い場所に噂の国が在るのかと思えば、どこか残念そうに嘆息し。

ご案内:「平民地区 雑貨店」にタマモさんが現れました。
タマモ > 少女の気紛れのように、不意に訪れた、天気の気紛れであろう、不意に降り始めた秋雨。
今日の散歩は屋根の上であった為、唐傘を差して…と言うのは、出来ない事はないが、少々面倒。
それでも、幾つかの屋根を跳び移った後、仕方なし、と足を止める場所を探ろうと…

と、そんな時に意識が向いたのが、この雨の中に聞こえた、どこかから聞こえた大きな声。
普通では、耳を傾けていてこそ聞こえる声、なのだろうが、少女の耳は無駄なところで鋭い。
気になり視線を向け、そこで目に付いたのが、あれは何の店?と思える、その雑貨店だった。
何せ、視線を向けている先に見えるのは、窓から僅かに見える、何かしら並んでいる品々の光景。
それだけで、何の店か、なんて分かる訳もないのもあれば。

「………はて?」

まぁ、気になれば、危険があろうと確かめてみたい性格だ。
たんっ、と屋根を蹴って宙に身を舞わせれば、すとん、と店の扉の前に着地する。
…大丈夫、濡れた地面に滑って転ぶとか、初歩的なミスはしやしない。

さて、それでは、気になった声が何なのか、確かめる為に…少女は、扉に手を添えた。
少女を知った者が見たら、きっと、おい馬鹿止めろ、とか止めた事だろう。
そして、手を添えた扉が…すぱーんっと、勢いよく開け放たれる。
静かだった店内に、大きな音が響き渡った。

枢樹雨 > 見渡した店内。
その他の壁に地図が張られた様子はなく、シェンヤンの場所を明確に確認することは叶わない。
一度気になれば確認したくなってしまうのが妖怪の性。――否、この妖怪の性。
知恵の詰まった書物集まる場所へ移動しようかと地図から指を離したその矢先、不意に店内に響き渡る物音に小さく肩が跳ねる。
視線は自ずと音の出所…、店の出入り口へと向かい。

「…………なに?」

其処に居たのは、馴染みある衣服を身に纏う少女。
その頭に愛らしい獣耳を、そして背後で揺らめくいくつもの尻尾を見つけると、長い前髪の下でゆっくりと瞬きを繰り返す。
そして傾いだ首。僅かに揺れる頭上の白絹。
背伸びしていた踵を降ろせば、それでも少し下にある赤みを帯びた双眸を見つめて。

タマモ > 扉を開け放った店の中、そこに広がる光景は…まぁ、よく見る雑貨店の一つ、と言えるもの。
ただ、この天気の中である為か、人の姿は疎ら、奥に音に驚いたであろう店主らしい男の姿と。

「む…?」

もう一つ、視線の中に捉えた姿は、同じような考えを浮かべさせるだろう、女の姿だった。
もっとも、己から見た相手の姿は、一見すると服装以外は、今のところは普通の人間、ではあるのだが。
そうとも思えないのは、相手から感じた、人ではないであろう気配…むしろ、己と同類か、妖の類の気配だから。

「あー…あぁ、うん?何事かと思い来てみたが…何も無かったようじゃのぅ」

声質からして、声を上げていたのは、その女の方。
とは言え、今この状況を見た感じ…単に、何か吃驚した事があったかして、ただ上げた声だったのだろう。
ちょっとした肩透かし、みたいなものを感じてはいるのだが、そこは気にせずにいておこう。