2024/09/04 のログ
ドリィ > 酷く美味そうに酒を呷り、んーーーっ、としみわたる酒精を噛み締めつつ。
男の太っ腹な提案に女は目を丸めてみせて。

「やだもぉ、お兄さん、最っ高 ♡
 マスターぁ! イイ女とイイ男の出逢いに、本日のとびきり美味しい逸品ひとつー。」

女より請われた酒瓶を探す手を止めさせては、マスターお任せにて注文しようか。
こういう頼み方をすると、一番高い上物が出てくるがゆえ、
女も店主もWin-Winだ。…男の懐にはどうかは知れぬけども。

兎角、愉しい夜だ。飲むに限るし飲ませるに限る。
ジョッキがぶつかる重みも、波打ちあふれて繊手を濡らすやんちゃな泡も御愛嬌。
男の煽るに倣って、女も景気よく一気に酒を呷り。半分以上を減らしては、ぷはぁぁぁっ。濡れた唇を拭う。

「んふ。 イイ女の飲ませる酒を、こぉやってーぇ…気持ち好く飲んでくれちゃう
 飲みっぷりのイイ男はだぁいすき。 …ぁ。 お肉もどぉーぞ? ぁーーん♡」

先程からマスターがじゅうじゅうと炙っていた肉汁たっぷりの塊肉が届けば、
その一切れを女は指でひょいと摘まみ、野獣を手懐けるが如くの戯れに、男の口元に運びゆく。
愉しげに双眸細め。あかい色の爪先、ちろちろと揺らしながら。

ヴァーゲスト > んー聊か軽率だった気がしない事もない。
もう一度確認するがイイ女にかける金をケチるつもりもない。
隻眼に映る女はそれだけ価値を感じるのだが、東方でいう『ウワバミ』の気配をほんのりと感じてしまうのだが。

ほら、来たぞ注文の仕方の手慣れた感。
イイ女は酒も金も食らうって同業者が言ってた事を今さらしみじみ思いだしながら――…なのに嫌な気分にならない自分に内心苦笑いである。

まさにイイ女って奴だ。

一先ず一気に木製のジョッキを空にして、コンッっといい音立ててカウンターにジョッキを置くと、鼻腔を擽る香しき焼けた肉の油の香りに鼻をひくっと疼かせて、捧げられるがままに口を開けて遠慮なく口元に運ばれた肉に食らいつくが、ついでに赤い爪先艶やかな女の指先までぺろっと舌ベロでなぞって、悪戯の後に焼き立ての肉を咀嚼する。

おっと、お返しに真似てやろうか?と指先で肉汁たっぷりの肉の一切れに指を伸ばしたところで――…来客のようだ。

黒服ならぬ物々しい全身鎧の男が慌てた様子で酒場の扉をけり破りながら、何とも派手な来店の後に店内を見渡し、肉を摘まみかけた男の首根っこをつかむと、無言でダンッと硬貨の詰まった革袋をカウンターに叩き置く。

「おっと、まて、俺は、今夜はこのお嬢さんとお酒と白餅を味わって、朝焼けを楽しみながら濃い珈琲を頂く予定……。」

最後まで言えなかった、もう豪快にずるずると物凄い力で引き摺られていくことしかできない、ずるずる、ずるずると、引きずられていく、抵抗もむなしく……。

「悪い!仕事の予定が入っちまった!オレの名はヴァーゲスト!お嬢さん!今度ゆっくりと一緒にこの続きで………。」

やはり最後まで言えなかった。
――こうして男は全身鎧の何者かに引きずられて夜の闇へと消えていくのだった……悲しいことに。

ご案内:「平民地区:場末の酒場」からヴァーゲストさんが去りました。
ドリィ > 爪先に摘まんだ熱さが指まで伝播するより先。男の大口が肉を食んだ。
指先を舐め浚う悪戯に、大型犬めいたものを感じれば、可愛らしさすら感じるもの。
ついでに美味そうな食いっぷりも晩酌相手としては合格点だ。

「ぁは。お返ししてくれるの?


 ──────… あら?」

男の指が皿に伸び──…掛けた時。
女の双眸が、きょんと大きくまるくなる。
長い睫毛をぱちぱちと瞬かせるのは、こんな場末の店にはどうにも物騒な珍客。
吃驚したよに、さも面白い寸劇でもはじまったかのように、女が巫山戯た合いの手を入れ。

「あら? あらあらあら?」

酒と肉を支払って余りあるだろう重たげな革袋が卓に威圧的に鎮座し。
そして口上も半端に首根っこをむんずと掴まれて引き摺られゆくは、さしもの女もイイ笑顔。
片手がぴらぴらと指先を揺らし暢気な別れを告げつつに、

「ヴァーゲスト、楽しいお酒をありがと♡ 
 あたしの名前はぁ───… あはは。もぉ聞こえないっぽい?」

まぁいっか。あっさりと諦め、笑った。
嵐のように去った、気のいい一夜の乾杯相手。
女はエールをまたぐびりと豪快に傾け、肉を咀嚼しながらに──
今度こそ。店主が携え取り出した稀少な酒瓶を肴に酒を飲むだろう。

「よぉーーし、 今夜のお酒はぁ…、イイ男の奢りで飲んじゃうぞーぉ!」

だって革袋は随分重いし。あと二杯や三杯や四杯くらいは許される。きっと、たぶん。
朝焼けの珈琲は斯くして訪れず、未だ夜は長く酒は旨く──。

ご案内:「平民地区:場末の酒場」からドリィさんが去りました。