2023/12/09 のログ
■アルマース > 「受け入れ準備万端のところを揶揄うのは難易度高いわね……」
思案しながら、案の定溢れ出して口の端についたパンの具をぺろりと舐める。
「んふふ。実感がこもってるじゃあないの。
ちゃんと古傷になったらアドラーくんの恋物語もお聞かせ願いたいわね。
あたしの話はもう、こう――何て言うんだっけ……同じところ堂々巡りしてるからつまんなあい」
意図したわけではないけれど、揶揄う、を果たせたようだ。
にこーっとして。スープも飲み終え、クッキーに手をつける。
型で抜いたわけでもない素朴なまるい形の生地に、甘酸っぱい木苺。
コーヒーが欲しいなあと思いながら。
「きてきて。あたしのお勧めは羊の串焼きと、ライムとヨーグルトのお酒のシャーベット。
……。そおね……あなた意外とらんぼうなんだった。紳士教育がまだ必要ね」
笑みを浮かべる男に、まったくもう、と肩を竦める。
■アドラー > 「ふふ、確かにな。
とはいっても、こちらも意識して油断などできない。頑張ってくれ」
相手の言葉に微笑みながら、こちらもパンを食べ終え、スープを飲み干す。
彼女がどのようにして自分の虚を突くのか、楽しみにしながらクッキーに手を付ける。
「君も私も似た者同士だからな。
もちろん、必ず話すさ。女性ばかりに秘密を話させるのは、失礼だものな」
恋をして、それでも上手く行かなくて、願った通りに叶わなかったことに関しては彼女と自分は似ている。
自分ばかり女性の恋の事を知るのは流石に気が引ける。
でも、いまだに自分の心の中で踏ん切りがついていないのも事実。
時が来たら必ず話すとは約束をしておこう。
「おお、覚えておこう。羊の串焼きとシャーベットか。
…ふふ、次の機会があるなら、是非とも教育をしておくれ」
彼女のおすすめのメニューを復唱して、乱暴という言葉には目を細めて。
また機会があれば、なんて相手を揶揄うように怪しく笑いながら告げる。
■アルマース > さくさくクッキーを齧って、手についた粉を皿の上に払う。
「酔ったら誰にでも愚痴るから、あたしのは秘密じゃあないかな。
人に喋った方が気持ちが軽くなるような気がしない?
あなたもあんまり、一人で抱え込んじゃだめよ」
訊かれても訊かれていなくても、思ったことは大体そのまま口に出る性分である。
酔っているかどうかさえあまり関係無いかもしれない。
お腹が満ちて、ほとんど空になったトレイをひょいとよけた。
あくびをして、眠気のままアドラーの膝に頭を乗せて見上げて……
「紳士とは。優しさなのかしら?
優しさを教えるのは難しいなあ……。
……。……もともと優しいんだし……? そのままで良いのでは……? んー……」
日向ぼっこのお昼寝タイムに入りそうに瞬きが緩やかになっている。
「撫でてくれたらそれで良いかな……まぶしい……」
アドラーのコートを引っ張って陽射しの覆いにしようとしている。
■アドラー > 「…確かに、ため込むのは毒と言うしな。
わかった。抱え込まないように努力しよう」
言いたいことが言えず、ため込んで爆発するなんてことケースはよく聞く。
自分はそうならない…とは言い切れず、せめてそうなる前に言いたいことは言えるように
頼りたいときに頼れるように努力すると、彼女を真っすぐ見て告げる。
「ふふ、そうか?嬉しいな。ありがとう」
膝の上に彼女の頭が来れば、手を布で綺麗に拭ってその黒髪に指を絡ませて撫でる。
青い瞳と黒い瞳を交差させて、にっこりと微笑みながらその美しい顔を見つめる。
「…寝るなら部屋の方が良くないか?」
コートを引っ張られ、日差しの遮りに利用されれば、天を見上げたのちにそのように問いかける。
■アルマース > 「ふむ……。あなたは溜め込みがちで、あたしは垂れ流しすぎなのかなー……。
あたしは逆に……もう少し自分の中に溜め込む方が供養になるのかもしれないなあ……。
……。……。んー。……。……そうしてみようかな」
似ているところと似ていないところ。
見習った方が良いのかもしれないと、何となく直観しただけだけれど。
彼のコートの湿っていた部分をぽんぽんと手で確認する。お昼を食べている間に、どうやら乾いたようだ。
撫でる手と、晴天と、少し遠くから聞こえる雑踏の音。
近づいてくる馬車の音。
そこから降りた旅行客が御者に礼を言う声。
その旅行客目がけて荷物持ちの交渉をする少年――
の声に重なる、追いかけっこしながらあっという間に遠くなる子どもたちの笑い声――
平和な音に気持ち良くうとうとしながら、アドラーの指を掴んで口づけた。
「んー……ねむたい……つれてって……」
あとトレイもおねがい……あとコーヒーが飲みたい……と次々に注文を出す。
「よろしくね紳士のアドラーくん……」
睡眠時間の足りないところで起こされて、お腹も満ちたタイミングの眠気に抗いがたく。
口付けがその代金ですと言わんばかりにあとを任せて目を閉じる。
■アドラー > 「……そうなのかもな」
供養、という言葉に目を細める。
あそこでああすればよかった、と思う場面は無数にある。
それでも過去は変えられないし、過去を変えられたとしても何か別の後悔がやってくるだろう。
『人は最良の人生を無意識に選択している』と旧友に教えられたことは、心に刻んでいるが、その刻んだものが重い枷になっている気もする。
―――嗚呼、こうして街の音にゆったりと耳を傾けたのはいつぶりだろうか。
あれをしなければ、これをしなければ、そうしなければ生き残れない。
『あれから』一人で生きるつもりだったのだが、気付いたら彼女のように信頼できる、親愛なる人が増えてしまった
きっと、それは良いことなのだが、同時に失うのが、怖い。
「…全く、本当に自由だな君は。
その自由さには、やはり敵わない」
寝床に連れていけ、トレイを片付けてコーヒーを用意してくれという注文。
断る隙もなく代金を支払われてしまったのなら、その分の働きはしなければならない。
相手のわがままにも思える自由さには改めて、敵わないと思って、彼女を抱きかかえて部屋まで行く。
その後はベッドに彼女を寝かせ、トレイを片付けて。
女将さんにアルマが起きたタイミングで温かいコーヒーと一枚の手紙を渡すようお願いする。
手紙には…
『また来るよ。
君の親愛なる友人より』
ご案内:「平民地区 宿の屋上」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「平民地区 宿の屋上」からアドラーさんが去りました。
ご案内:「南方の島」にジギィさんが現れました。
ご案内:「南方の島」に影時さんが現れました。
■ジギィ > 空は抜けるように青く浮かぶ雲は白く薄くけぶって青地に白を刷毛で塗ったようにも見える。
潮騒とともに海から吹く風は穏やかで湿気もなく、少し汗をかいた肌を心地よくくすぐっていって、やや荒涼とした丘を駆け上がり
海の上空を旋回している鳥がいて、すいと大きく弧を描くと陸から丘の向こうへとその姿が消えていった。
『おや、 中々に鋭くていらっしゃる』
容姿は所謂天使像そっくりな、華奢な身体に黒い肌と深緑の瞳の少年はきっと彫刻と見比べたら光と影の対比のように見えただろう。
浮かべる笑みも屈託ないものの筈なのに、逆光もあいまった表情は何か含みがあるように思える。その少年の向こうには目指していた最後の島が、透明に青く輝く海の上に緑色に鎮座する姿を見せている。
『まあまあ、取り敢えず耳長の方がココナツを持ってくるまでお待ちください。
――――ふう』
少年はちらり横目でヤシの木と格闘しているエルフを見てから、おもむろに背負っていたものを縛っていた幅広の紐を解く。
紐というより長い布と形容したほうが正しかったようだ。生成に墨色で幾何学模様を織り込んだような布で、赤子をくるんで背中に負ぶうようにしていた何かを説くと、どさり、と砂上に重い音が響いた。
それと、ヤシの木のほうから1人と3匹が歓声をあげる声が聞こえてきたのは、ほぼ同時だったろう。
「やーんもー。結構コレってとりづらいね、まるちゃんたちも飲んで大丈夫だよね?」
のんきな声を上げながら銅色のエルフがやってくる。彼の声は聞こえていたけれど、取り敢えずは目の前の仕事の完遂を優先させたようだ。
そのエルフは片腕にココナツを抱えて、もう片方にはややぐったりした毛玉たちを抱えている。そちらを見るならば、小動物たちが着ていた法被を頭にかぶったコガモが、よちよちとそのまた後をついてくる影も見えるだろう。
「えーっと、んで? 影時さんてココナツをチョップで割れたりするんだっけ? あーでもそうすると中身出ちゃうよねえ… あっと、一応キミのぶんも採ってきたから。
…んで? お告げで影時さんがキミの運命のひとだって?」
エルフは彼の傍らまでたどり着くと、抱えていた2匹をそっと彼の傍に降ろす。それから砂の上に胡坐をかくように座ると、目の前に緑色の丸い果実を掲げて見せた。三つ、白い砂の上に並べていく
ぐったりとした毛玉ーズはよろよろと親分のほうへと歩いて、取り敢えずその身体の影にばったりと身体を伸ばす。視線をやるならば、上目に親分を伺っている真っ黒な瞳とぶつかるだろう。
曰く
『つめたいやつを…ビールじゃないでやんすよ…』
少年はすこし2匹を気の毒そうに見た後
曰く
『え、わかっちゃいました?』
エルフの言葉に頬に両手を当てて身をよじるその少年の下半身が埋まった砂上を、斑の巻貝を背中に乗せたヤドカリが登って、降りていく。
そうして気付くかもしれない、少年の手からはいつの間にか羽根が消えているのを。
■影時 > 全く全く、いい天気だ。腹立たしくなるのも馬鹿らしい位にいい天気である。
些細な諍いも血みどろの闘争も。多種多様の様々な戦いがなくなった世の中だと、何処もこんな空が見えるだろう。
爽快な海風に誘われるように虚空を仰げば、優雅に翼を広げた鳥が見える。
余分な羽撃きも力みもなく、吹き上がる爽風を受けて丘の向こうへ――――、
……と。そんな現実逃避に浸るのも束の間の話。
「聞きようによっては、こうであると思わせるまじない師の手妻にも聞こえんことも無いがね。
だが、色々と引っかかることが多すぎる。……良いだろう。まずは待ってやるか」
まるで理想が幻想という鏨を用いて岩を穿ち、削って美を現実に叩き出したような。
そんな見目整った少年の顔は街中であればきっと十人中、ほぼ全員が振り返り見ることであろう。
だが、強い日差しの下の表情はどうも含みがあるように見え、そして聞こえてしまって複雑な貌にならざるをえない。
探し物を持っていると思われる様子と、降ろされる荷物が結ぶ因果も含め、如何なる背景、そして所以の持ち主であろうか?
しゃがみ込んだ姿勢のまま、ちら、と問題の背負いものを見る。
随分と重いものであるらしい。広がった布地に見える模様は、魔除けかそれとも魔力を逃さぬ類の効用を持つのか否か。考えていれば。
「おお、悪いな。……念のため、以前調べた限りだと恐らく問題無ェ筈だがね?与えすぎなきゃ大丈夫だろうよ」
呑気な声と共に、色々と抱えたエルフが戻ってくる。その情景を片手を挙げ、ひらりと手指を振りつつ迎えよう。
抱えられたぐったり気味の毛玉たちは、暑い中で働き過ぎたからだろうか。
そのうちの、シマリスの方が着ていた法被が見当たらないのに気になれば、その答えが視線を少しずらすと見えてくる。
何やら法被を頭にかぶったコガモが、よちよち歩きで砂浜に小さな足跡を残しつつ、ついてくる。
その有様にほっと内心で息を吐きつつ、続く言葉に思いっきり憮然とした顔つきをみせよう。
「割れねぇワケじゃないンだがな。だが、ここは素直に道具使うか。
……――ああこら待て待て勝手に決めるな俺の運命を定めるなわかっちゃうんじゃねえ」
三つ並んだ丸い実の運び手にかたじけない、と会釈したところで、ぐったりとした毛玉コンビが日陰に入る様を見る。
日陰とは己が作る影であり、名にもある影の主が視線を下ろすならば、冷たーいものをこれでもかと希求する目線がある。
分かった分かったと頷きながら、まずは先に二匹への労いを優先する。
羽織の下の雑嚢に手を遣れば、堅く閉じられた留め金が勝手に開く。蓋の下に手を入れ、もそもそとやっていれば指先に触れるものを引っ張り出す。
取り出すのは一枚の深皿だ。ただの皿、ではない。踊る乙女の図案が浮き彫りにされた白い皿は、自ずと水を湛える魔法の品だ。
こんな日差しの下でも冷たい水を湛えてみせるものを二匹の傍に置き、再度腰の後ろに手を伸ばす。
今度は雑嚢の裏に仕込んだ鞘から、木目めいた模様を浮かべる黒檀色の苦無を引き抜く。それで手近なココナツに手を乗せ、ぴし、と固まる。
その原因は考えるまでもなく、少年とエルフのやり取りだ。
一瞬時が止まったような沈黙を経て動き出せば、苦無を振り下ろす。こつん、と突いた先からココナツをぱかりと割って見せながら、はたと気づく。
「おい、さっきの羽根は何処に仕舞った?」
如何なる手妻か。それとも、幻か。交渉材料がふっと消えていることに。
■ジギィ > 規則的に打ち寄せる波音に、時折不規則に波音が跳ねる音が入る。 色鮮やかな景色も相まって陽光を弾く海辺にエルフは目を細める。
(この島の住人の事を知ることが出来れば、一曲くらいはつくれそう)
そんなことを考えたりしながら、エルフは諸々を抱えて彼の元まで砂の上を戻っていく。
色々と出来過ぎた少年との邂逅は、この状況に流されろとエルフに囁く。
抗うことよりも導かれることが多かった出自だったからか、彼と違ってエルフは少年に対して警戒心が薄いようだ。
砂上に腰を下ろしてココナツを並べると、少年を改めてしげしげと見つめて、それから砂の上に投げ出された『荷物』にすこし眉を顰める。―――目を眇めるように。
(何か、いるなぁ)
エルフが囁けば、囁きを返してくれそうな類の何か。
よちよちと歩いてようやく傍らにたどり着いた、そのコガモが生まれたときと同じような。
(封じられたというのとは…ちょっと違う)
そうやってエルフは荷物にガンをつけていたため、不思議な深皿の登場を見逃してしまった。毛玉たちが喜色満面で深皿に顔を突っ込んで、ばしゃばしゃと水音を立ててからようやくそちらを振り返る。
「えーなにそのお皿! カゲトキさんもう一回やってよお腹に埋めてたの?
おっと、さっすがー」
皿も気になるがエルフはまずはココナツ派のようだ。
ぱかっと割られたココナツをさっと受け取るととりあえず冷たい水にはしゃぐ毛玉たちの傍らにひとつおいて、次のひとつを彼に手渡す。
そうして、彼が上げた声に首をかしげて、その視線を負う様にエルフも少年を見た。
『はて、さっきの、とは?』
少年は相変わらずの笑みを口元に浮かべ、そこへ指先を上げて見せる。よく見ればその手には、先ほどの羽とは似ても似つかぬ白い小さな羽がある。
『…ふふふ、冗談です。 ここに訪れる方は大概欲しがるものですから。 ちょっとした目くらましのおまじないですよ』
やや要領を得ない解答に、エルフは怪訝に眉を顰める。だがまあ、彼の言葉からは大体想定がついた。
一応愁眉をひらいて少年を見ると、胡坐をかいた膝に肩肘をついて頬杖をつき、背筋を伸ばしている少年を下から見上げるように見る。
「ン―――何?その荷物をどうにかしてほしいってカンジ?
ていうか半分埋まったままで熱くないの?」
『おや、耳長の方も鋭いですね。
ああいえこれは、じつはここに来る途中の海の中でスボンが下着ごと流されてしまいまして。 いやあ、お告げって当たりますねえー』
あはははははは
と快活に笑う少年。
エルフは一瞬目を丸くすると、少年からちょっと距離を取るように胡坐をかいた姿勢のまま器用に後ろに下がった。
『ここで埋まっていれば、待ち人が来るというお告げがあったんです』
少年はそんなエルフに構わず、彼の方にてを差し出す。
次に割ったココナツをくれ、ということらしい。
■影時 > 人の世に争いと諍いは尽きない。尽きないにしても、否、ここはそれらは遠い。錯覚ながらそう思う。
酒を満たした甕を海水に漬け、少しでも冷やした酒があれば、それだけで暫く過ごせてしまいそうな程に。
そんな時に出会ったモノを思うと、少なからず警戒の念が湧く。
忍者として培ったセンスと、冒険者として重ねた経験が一線を引いて構えるように己を促す。
出先で思わぬ何かと出会うことは、喜びでもあり、ある種の苦難を齎す凶兆の足音とも言いうる。
とはいえ、肩を落としかねない気分を紛らわせるのは、雇い主との雇用契約を改定した際、手に入れた恩恵だ。
「ンなモン腹に埋められるか。
鞄から出したんだよ。俺の雇い主に頼んで、鞄を俺専用の倉庫に繋がるようにして貰ったのさ」
羽織の下に隠れている雑嚢自体は、大まかには冒険者たちが使う革製のウェストバッグの形状をしている。
所有者の好みで色々と手を加えられているが、そこにさらに魔法で手を加えられた。
魔法で内部空間を拡張された、雇い主の屋敷の庭にある倉庫と繋がることで、旧来と比較にならない収容力を得たのだ。
先程出した皿は、毛玉たちの避難場所、隠れ家としてそこに設けたスペースに置いていたものである。
毛玉たちがどれだけばしゃばしゃ水浴びしても、水は絶えず。冷たさも失せず。
シマリスが羽織を被ったコガモを見て、こっちにおいでー、とばかりに手招きするのを見つつ、エルフの言葉に笑う。
ぱっかり割ったココナツに、追加のおかわりを受け取れば狙い定めて苦無を振り下ろす。もう一つぱっかり。
「……皆まで言わせンなよ、やーらしい奴め。
とは言ってみたものの、あれか? 本当に好事家の手合いが喉から手が出そうな位に欲しがる代物なのか」
毛玉たちの傍に置かれたココナツを見れば、彼らが食べやすいように白い果肉に苦無で幾つか刻みをつけておく。
問題は自分たちが食べる、または呑む方だ。ストローの類は生憎鞄(の向こうの倉庫)にはない。
飲み口となる側に、苦無の刃を立てて削り出す。まずは自分の分と。エルフが求めるなら、エルフの方にも
そんな作業の手を止めて、先程とは違う白い羽根を見る。片目を眇め、氣を起こせば開いた眼に微かに紅い光が点る。
向こうが言うような目くらましの術の有無は、見定めきれない。鑑識眼が負けているのか、それとも重量物に篭っていそうな何かのせいか。
「あー。お告げが当たってそれってのは、痛し痒しな心地になっちまいそうだ。
そのお告げの先は、その、なんだ? さっきの羽根を持っていれば、重そうな荷物をどうにかしてくれる、とかみてェな奴かね?」
快活に笑う少年が吐いたセリフに、エルフが実に器用に後ずさるのも無理もないことか。
思いっきり呆れたような面持ちで青空を仰ぎ、気を取り直す。
お告げとやらも、埋まっていればいいコトがある――みたいなことのみではあるまい、と。
言葉の先、話の先を促すように少年を見ながら、ココナツを手渡そう。これもまた、呑みやすそうに飲み口を削り出したうえで。