2023/11/04 のログ
ご案内:「平民地区 帰り道」にフィクシスさんが現れました。
ご案内:「平民地区 帰り道」にティアフェルさんが現れました。
フィクシス > 「物騒な世界なので……今夜のように運良く居合わせれば、それは、必ず」

助ける、にはあっさり頷くものの、王子、という言葉には飲み込めない顔をする。
王子というのは治世が役割ではないのか――と疑問が口から出かけたが。
彼女の言う王子は、もしや姫君を助ける物語の中の王子なのか、と途中で察した。
そういうお話を好む年頃なのかもしれない。自分の中からは出ない発想に、自然と微笑みが浮かんでしまう。

「ティアさん。フィーとでも……フィクスでもフィクシーとでも、お好きに呼んでください」

薄暗い裏通りから、表通りへ出る。
少しずつ人の姿が増える中、彼女の歩む方角へ、ゆったりと連れ立って歩く。

「喧嘩するほど仲が良いというやつですね。
 僕は血縁とはすっかり疎遠なので。喧嘩――……は、記憶に無いくらい昔の話ですね。
 ティアさんのお住まいは、この辺りですか」

人の多い場所。視力を感知魔法で補う男にとって、人間らしきものがたくさんいる、という認知になるが。
彼女の感情豊かな声は見失わずに済みそうだ。

「あの扉こそ紳士的なので。お困りの女性の匂いを嗅ぎつけると、開くんです。
 あれも魔法というか、魔法生物という括りが正しいのですかね。
 ……王都には、……そうですね、行ったり来たり、していますが、」

長いことは長い――とあやふやな言い方をする。

ティアフェル > 「おお。それじゃあその時は遠慮なく助けてーってお願いしよう。
 もしもスルーされたら人を信じる心を失いそうになるなぁ」

 などと戯れ交じりにのたまい、王子という表現がピンと来ない様子に小首を傾げ。
 何か違う連想をしている気配に、乙女思考は通じにくいらしいと察した。
 察したところで気にせずぽんぽん思いついたままに話すのだが。

「それじゃあフィーさん。フィクシスさんっていいお名前だけどさん付けで呼ぶとちと長いからねえ」

 好きなようにと云われるとお言葉に甘えて愛称めいて呼ぶ馴れ馴れしさを発揮。
 並んで歩いていると身長差がえぐい。大人と子供ほどに身長差が開く。自然仰ぎ見るような目線になりながら、暴漢とやり合った裏路地を抜けると表通りは明るく人並みもそれなりに増え。
 まだやっている店の灯りで賑わい始めていた。そこを下宿先の方へと向かい。

「えぇ……喧嘩は喧嘩よ……仲が悪くなっても良くはならないと思うけどなあ……。
 そうなんだ、それもちょっと淋しいわね……そもそもフィーさん穏和だし誰とも衝突しなさそう。
 え、と、そうね。もう少し先……あの、人、少し増えてきたけど、大丈夫? 手、とか繋ぐ?」

 そう申し出るのは失礼に当たらないか懸念は抱きつつも見えてないのは間違いないようなのだ。
 そうそうぶつかったり転んだりしなさそうな安定性はあるが、逸れないだろうか、と少しは気になり、おず…と遠慮がちに片手を伸べ。

「紳士な扉……? 何それ斬新。なんと。こう、わたしの場合困っているより猛っていた、という匂いが強かったかのように思うのだが。
 生物……? へええ……世の中扉型の生き物なんているのね……。深い。
 行ったり来たり……交易かなにか?」

 盲目でかなりの長身、そして不思議な技を使う、謎多き紳士のことをついつい知りたくなって職業など探ってみたくなる。
 何で生計を立てているのか想像もつかず。

フィクシス > 「本当ですか?……先ほどは、ご自分で撃退するつもりだったのでは……」

叫んで助けが来るとは限らないが、通り一本隔てれば大分様相が異なる。

テラス席のテーブルに椅子を逆さに乗せて店じまいをする飲食店。
雑貨屋の明かりを落とした窓辺に並ぶ玩具。
客引きと値引き交渉をしている酔客。
無数の窓――無数のカーテンの向こうの柔らかな明かりに揺れる影。
そこに働くもの、住む者の生活感が垣間見えてくる。

何でも自分の手でやってしまおう、という気質なのではと疑いが滲む。

「はい。呼び捨てで構いません。弟さんを呼ばれる時のように」

彼女を見ていると、弟に抜群の指揮を振るう姿が目に浮かぶ。
この短い時間で、会話の印象から得た想像でしかないのかもしれないが。

「こちらの住まいには、義母も――他に人もいるので。
 ティアさんのようにお若い方が少ない分、賑やかな生活でないのは、そうですが。
 あの通りが近道でも、避けた方が――……、て……、……手?」

差し出される手の方へ、顔が向く。
あまりに無警戒に思えて言葉に詰まる。

あなたの弟とは違う――歩くのに支障があるわけではない――盲いを装って色々企む者もいる――
無表情の下で色々と浮かんでは消えていく考え。妙に長い間になったかもしれない。
結局、僅かに足を止めて。
杖を持たぬ方の手で、彼女の手を取ると。上背を屈めてその指に唇を触れさせた。

「女性の心情を汲んでというより、状況を見て、じゃないですか。
 普通は、あなたのように小さなお嬢さんが立ち向かっていくとは思いませんよ。
 住まいが方々にありまして。女性をあちこち連れ込むのが趣味なので、気を付けてください」

気を付けてください、と二度言う。

ティアフェル > 「誰も助けてくれなかったらそうするしかないでしょ?
 フィーさんも見ての通り、あなたしか助けてくれる人なんかいなかったわ」

 大抵は関わり合いになるのを忌避して近づきもしてこない。
 人通りも少ない場所なら余計にそうだ。肩を竦めて零せば、わたしだって本当は助けてもらえるものならそうして欲しいのだと微苦笑気味に意図を織り込んで。
 夜になれば賑わう店もあれば夜になれば閉まる店もある。
 灯りが煌々としてざわめきを通りに零す店は大抵は飲み屋だ。
 遅くまで高らかな声が店の外まで響いている。
 
「弟みたいに? それはとても無理っ。生物として違い過ぎる……弟みたいに呼んだらもう無礼の領域になりそう」

 正直騒がしくて粗野な弟どもとは別の生き物のように思える。
 ふる、ふる、と首を振って浮かんでくる実家のサル――もとい弟の幻影を打ち消し。

「そうなんだ? お義母さん? それなら会いにこっちに来てるってことかしら。
 ――うーん、そうねえ……迂回できればそうするんだけど……用事があるとどうしても……
 ……手。やっぱり余計だったかしら」

 義母、とは奥さんの親ということか、養い親のことか。どっちかな、と首を捻り。まあ、年頃を見ても奥さんのという方が妥当だろうか。
 そして、手を、と差し出してみると。
 長考された。
 あ、拙かったか、と気が咎めたようにアホ毛を緩くへたらせ。
 差し出していた手を引っ込めようかと考えていれば、それを取られ指に唇が触れれば目を丸くして、反射的に頬を染め。

「なる、ほど……? 状況か……確かに傍から見たらわたしが一方的に襲われる弱者みたいだもんね。
 ――つ、連れ込……いや、いやいやいや、わたしなんて、ほら、女性っていうよりゴリだし? そんなそんな……冗談ばっかり」

 気を付けるよう注意する声に、まさかそんなと照れつつ笑いながら、ぶんぶんと落ち着かなげに振るアホ毛。

フィクシス > 自分を納得させるための短い間のあと、そうですね、と応じた。
後からどうとでも言うことはできても、それは過ぎたことで、彼女は彼女の最善を尽くしたのだ、と。

「無礼とは……残念です、あなたの政権下に入れば毎日楽しそうなのに。

 僕は恩人に養子に入れてもらっていまして。
 それで義母、にはなりますが、母と呼んだことはないな……」

口づけた手を緩めるが放すわけではなく。
行きましょう、と歩みを再開する。

「連れ込むは冗談ですが、理性を試されるのはつらいものなので……。
 あまり――愛らしい振舞いは。相手を選んで――いや。今更冷たくされるのもつらいか……。
 僕の問題ですね。すみません、自重します。
 ……ともかく、あなたはどうしたって女性です。男に立ち向かう勇気があっても、弟さんにとっては怖い姉であっても」

見えていなくとも、怖がられているわけではない、らしいことは判った。
また説教臭いことを言いそうになるのを飲み込んで。

「ティアフェルさんは、ご実家を出てここへ……冒険者になるために?
 だとしてもあなたを女性扱いする男くらい、いくらでもいそうですが」

ティアフェル >  肯定的な反応にうむ、と得心気味に肯いて。
 こうしてわたしはゴリラ化の一途を辿るのである…と人知れず渋い顔をしていた。

「え。進んで配下に下ろうとか。それまたとんでもないどMだと思う。それとも病んでるの? 大丈夫? 日常生活が辛いの?
 
 ほう……なんだか人の事情に突っ込んでしまったみたいでごめんなさい……
 そうなのね、じゃあなんて呼んでるの? 名前で?」

 母と呼称するには距離のある関係なのだろうか。無遠慮な実家の空気とは大違いだと感じつつ。
 緩くだがそのまま取られた手に、はにかんだ表情でうん、と首肯して家路を進み。

「理性て。そんな大げさなー。いやぁ…愛らしいなんて……ただただ距離感変なだけだと思われる……。
 ――フィーさんは親切だから、わたしもそうしたいなあと思って。だから、相手は選んでるよ。手を差し出す相手は誰でもって訳でもないし。
 やー……そうかもだけど。だってフィーさんはいい人だもん。そういう人とは仲良くなりたいじゃん」

 男も女も関係ない、と軽く唇を曲げて反論めいた言。
 それに盲目となると歩行の際は気になる。根本的にお節介な気質なので仕方ない。
 それにしてもやっぱり身体が大きいと手も大きいなと感心しながらその手を引いて軽く持ち上げてしげしげ眺めた。

「そうよ。てゆうか実家がカオス過ぎてもう住んでられないってか……本当にあれぞサル山……今は静かすぎて戸惑いを覚える程。
 なんで? フィーさん見えないんでしょ? だったらわたしの顔全く男受けのしないどブスかも知れないじゃない?」

 そして性格は地元じゃボス猿の名をほしいままにした――誰も欲しいとは云ってないが――ゴリラと名高き残念な女である。
 苦笑気味に肩を揺らし、ブスだと判ったらこの手も振り払われるだろうか、などと内心で思考し。

フィクシス > 「生き生きとした女性のそばにいると、生きている実感が沸くのはありますね。
 女性の声の聞こえない日常は死んでいるようなものなので、概ね当たっています。
 治癒してもらえますか」

病み疑惑に頷いて、治癒の依頼をする。
謝られて、名乗りはしたが、身分も明かさない人間に送られているのでは落ち着かないのは当然かと思い当たり。
しげしげと手を取られている間、己を人間社会で表す言葉は何だったかなと、閉じた目を宙へ向けて思い出す。

「いえ、事情というか――人と話すことが少ないので、まともな自己紹介も忘れてしまった。
 せっかく愛称で呼んでもらえたところを、態度を変えられてしまいそうで、つい。
 オリガ公爵夫人の元で世話になっていまして。仕事は、資産管理の手伝いを。
 魔法のあれこれは――趣味です」

夫を亡くした後、政治に出張るでもなく、年頃の淑女を招いたり催しを開くことが楽しみの未亡人たる義母――貴族の家名を、彼女が知るかはわからないが。
養子、という穏当な手段で得た、人の世で便利な貴族という身分を明かす。

「良い人、を続けられるように、まあ、頑張ります。

 見えてはいませんが、目が二つと、鼻が一つと、口が一つあるのでは……?
 それらの配置の多少の差異に是非をつける意味が僕には分かりません。
 安定して、あたたかく、のびやかで、あなたの色はとても綺麗だ。
 あ――色……色と言うのも僕の感覚ですが」

歩行の幅を考えれば、彼女に合わせて大分ゆっくりではあるので、特に支障はない。
しかし、繋いだ手の体温には癒される。彼女の下宿まで、癒される、で留めておくのが大変ではある。
警戒心丸出しの相手の方が、まだ自制心も働くというものだ。

ティアフェル > 「う。うん……結局どМなのかしら……? そういう感じもしないけど。
 治癒ー? その場合の処置は……耳元とかで歌ったりすれば回復するのかしら? だったら何とかなりそうだけど……なんとなくこの人は勝手に回復できるような気もする……」

 結構女好きなようだ、と認識。
 治療してくれと云われたが、その場合女性の声さえあればなんとかなるなら、歌か、と真顔で思い至り。
 しかしなかなかこの吾人は逞しそうな感じもするので果たして治療なんて必要なのかと悩むように首を捻り。
 爪の大きさが、違う……と手指の大きさを自分と比べて感心し、ついでに掌と掌を合わせてサイズも比べ。

「いやいや、わたしのが突っ込んで聞きがちな気もするし。
 態度?変えないわ。フィーさんがいきなり冷たくしてこない限り。
 きゃあ。公爵……ということはお貴族様? 敬語使うべき案件?
 ……結構なご趣味で……趣味の方が上達速かったりするわよね」

 魔法に長けていそうなのに趣味に留めているらしい。その方面からすると勿体ない限りだろうが。
 それにしても大分身分違いである。こんな風に気楽に手を繋いでため口聴いていいか悪いかで云えば悪い。
 だけど突然掌を返したようにへりくだったら、それはそれで好まれないのではなかろうかと考え。

「ふふ、いい人の方が好きだから、是非そうして欲しい所存。
 
 ……そっか。なるほど……顔の優劣なんて関係ない、か……。
 考えてみればそうよね、愚問だったわ。
 色? わたしの? 綺麗なの? それなら嬉しいけど……どんな色なんだろ。緑色かなー?
 わたしにはその、色、は見えないけど……見えたとしたらフィーさんは穏やかで涼し気で静かな……済んだ湖みたいな色かも。蒼とかそんな」

 視力に頼らない相手の感覚は独特だ。色、と表現する言葉に目をぱたぱたと瞬き。
 どんな風に見えているのか興味深げにアホ毛を揺らし。
 そして見えない色を見ようとするように目を眇めて長身の青年を仰ぎ。
 歩幅に合わせてくれることに、上機嫌そうにきゅ、と繋いだ手を握り。