2023/11/05 のログ
■フィクシス > 「組み敷く方がティアさんの趣味なら、喜んで。
歌は良いですね。幸せになれそうだ。約束ですよ。
放っておかれるのは一番つらい」
女性無くしては、文字通り生きてはいけない生き物なので、約束を取り付けた喜びを隠さない。
何やら手が弄られているのを、くすぐったく感じる。
あれこれ悪戯のできないように手の中に握りこんで。
「養子に入る前は、お貴族様、ではなかったので。そのままで。
上達……という概念が無いのかもしれませんね。好きでやっていると」
ほとんどが生まれもった能力であったり、借りている能力のため、上達、という言葉には首を傾げるが。
研鑽を積んだと言える頃もあったか、とぼんやり思い出す。
明るい声色の彼女と話すと、生きている実感とともに朧げな自分の輪郭が確かなものになってゆくようだ。
「緑が好きなんですか?……ああ、瞳の色がそうなんでしたね。
色んな色が入っている――日に透かした飴玉みたいな色ですね。
澄んだ湖とは、素敵な口説き文句だな。しかし、底の方まで澄んでいるとは限らないので」
気を付けてください、とは三度目。
期せずして、彼女へ顔を向ける呼吸が合って見合う形。
それが判ったのか、杖を脇へ抱えると、彼女の頭部に遠くから触れるように手が伸びて。
厭わないなら、先ほど自身で治癒をしたあたりに、男の掌が触れるだろう。
■ティアフェル > 「う。うーん? わたしは別にサドではないと思うんだけどな……。
好きで殴ったことはない。ムカついたらど突いてただけで。
いいよ。フィーさんには助けてもらっちゃったし、わたしで良ければ任せといて。
意外と淋しがり屋なのかなー? かわいー」
放置は辛いらしい。確かに一人きりでいるのは淋しい。気持ちが分かるがなんだかかわいいと頬を緩め。
悪戯するつもりはなかったが、この大きさの手というのは普段縁がないものでついつい弄ってしまっていたら、握り込む所作に、阻止された、とおかしげに肩を揺らし。
「そう? じゃあ…今さら猫被るのもなんだし、お言葉に甘えて。
そうねえ……人は楽しいことを繰り返す生き物だから上手くなろうがなるまいが続けるもんね。だけど、好きこそものの上手なれ。熟練してるとは思うよ」
例え高みを目指すつもりがなかったにせよ、やっていれば自然と腕は上がっているだろうと、訳知り顔でうむうむ首肯し。
「そう、緑色の目なの。あれ? 云ったかしら。
へえ、色んな色……わたし飴玉色か、なんかちょっと納得。
そうそ。深くて底が知れないって感じがぴったりだと思うの。油断したらすーっと吸い込まれそうなとこも」
はいはい、と三度目の忠告に笑って肯くが、危機感の薄さを露呈させているようなもので。
そして、顔を合わせる形になり、勿論目は合わないけれど正面から瞑目した涼やかな顔立ちを見つめ。
ふと伸びる長い手。側頭部に触れる掌に、きょとんとしたように目を瞬いては少し擽った気にふくりと笑気を洩らし。
■フィクシス > 「僕も被虐趣味はありません。女性の心を満たすことが至福なだけで。
……淋しい……? 可愛い……?」
次々と飛び出す言葉の意味は分かり切っているが、耳慣れないもののようにオウム返しに繰り返す。
女性の言う可愛い、があらゆるものに適用されるのは知っているので、そこは良しとするにしても。
「……そうかもしれません。ティアさんは感情が得意分野なんですね。
あなたは家族と離れて、一人で寂しくはないですか。逆に清々しましたか」
身体ごと向き直ると足が止まってしまう。
帰り着くまでの時間を遅らせたい気持ちを自覚してはいた。
歌わずとも耳に心地良い囀りを、聞いていられる時間は長いほど良い。
側頭部に傷痕が無いか、手が静かに――慎重に、なるべく崩さないように、その髪の内まで皮膚を辿る。
その手に他の意図が無いとは言い切れない。愛しむように、撫ぜるように、耳殻や顔の輪郭など余計なところまでも伸びてゆく。
「髪の色は薄茶色。先ほど言っていました。
祭りの屋台で売っている、美味しそうな飴玉、持っていても似合いそうだ、……
……ティアさん、淑女は、みだりに体に触れさせてはいけないそうですよ」
吸い込まれそう、という言葉を、使いたいのは此方の方だ。
■ティアフェル > 「なんと。それは素晴らしい心がけだと思う。動機については問うまい。
うん。なんか、こんだけ立派な成人男性が淋しがりとか割と愛い事象だと思う」
真顔。至って真剣なことを語るように個人的見解をのたまい。
意外な話を聞いているような顔をされるが、大して気にせずしれっと。
「う? 感情……って得意分野ってゆうのかなあ……?
そーだな……もちろん清々した! 解放感と自由! とも思う。
物足りないな…と思うこともある。最初は一人で淋しかったけど、王都もほら、フィーさんみたいにいい人も結構いるし、ほら、今とか全然淋しくないし、楽しいし。会いたくなったら帰省すればいいし」
脚が停まるのに合わせてこちらも停止して見上げ。
へら、と見えないにしても笑いかけては、ねー。と同意を求めているつもりはないがそんな感じで握った手を揺らして。
お喋りしながらわざとゆっくり帰るのも乙だなと呑気に歩調は緩く。
殴られた痕跡はさっぱりと消えていて、触れても頭皮にはなんの異常も認められないだろう。
髪の内にまで差し込まれる指先が擽ったくて、ふるふる肩を揺らし。傷痕を心配してくれるのも合わせて面映ゆい心地になるも、耳や顔にまで触れられると、照れくさそうに首を竦めて。そこは怪我してないから、と耳を赤く熱くして。
「そっか、云ったね。ちゃんと覚えてくれてるとは。
ふふ、飴玉色が飴玉食べたら共食いみたい?
そうなんだ、淑女じゃないから存じ上げませんでしたわー」
おどけてくすくすと笑声を零して口にしては、じゃあ触るのはもっと淑女じゃないかなー、と笑いながら繋いでいない方の、側頭部に触れた彼の手も握って向き合って両手を繋いだ状態で、捕まえたー、とふざけて。
■フィクシス > 「動機は、常に、問うべきでは……? 今が正に、殴るタイミングですよ」
言ったところで拳が飛んでくる気はしない。
彼女が撃退しようとした男や、弟とは別の枠に入れてもらえているのは、ありがたい話ではある。
一方で、穢したくないという思いが無防備さに突き崩されようとしている。
つらい……と呻きながら、見えずとも見えた気になる笑顔。感情が豊かすぎる。
触れている肌の熱。微かな動き。傷が無いことを確認した後も暫し堪能し、いよいよ良い人でいることに困難を感じ、手を引いた。
「だめだ……この人は……つらい……あまり試さないでください。
色気とは無縁の……子どもか何かだと思うことにします……
掴まって、……道、どちらですか……」
両手を繋ぐ、子どもじみた絵面。子ども、なのだ。そう思おう。
この明るさを壊したくない。――息をついて、彼女の手からするりと抜け出た。
片腕で、子どもを抱くように抱き上げる。
「……僕が食べる分には……一口食べても……許されるのでは……?」
横抱きにした彼女に、道を指示してください、と言いながらぼやく。
■ティアフェル > 「今殴りかかったら大分ちゃんとしたゴリラだと思うよ。
え? ほんとにマゾっ気とかない? 大丈夫? もっとびしばしされたいとかそういう?」
殴られたいんですか、とそちらの疑いを向け始めた。自分で殴るタイミングとか云ってくるのはなかなか新手だなと感じつつ。
内心での相手の懊悩は良く分からないが、つらい、と零されると、え?なに? 気分悪い?と背中に手を伸ばしてぽんぽんし始めようか。
ふは、とくすぐったく感じた指先が離れると小さく息を吐いて、確認丁寧過ぎ、とアホ毛を照れくさそうに揺らしながら突っ込み。
「は? こどm……いやそれはそれで何やら失礼な件。
どうせ色気の含有量は残念なことは認めますけどね。
もう19だし、そろそろ大人の色気が出始めるころだと自覚している!
え、あ、わゎっ……!」
大人の色気、とちゃんちゃらおかしいことを主張していたが。
捕まえた手が容易く抜けて行ってしまい、ちぇ、と詰まらなさそうな顔をしたのもつかの間。
片腕で荷物か何かのように抱き上げられ、大きく目を見開いて。慌てたような声を上げ。
「えぇ……、じゃあそっちの湖の水もがぶ飲みされるよ………あっち……まっすぐ……」
一口に対してがぶ飲み、と強欲なことを云いながらも、抱えられて忙しなくアホ毛を揺らしながらも、訊かれると指先で方向を示し。下宿先へと続く道を教え。
何で抱えられているのだろうか?と果てしない疑問符を浮かべながら運搬されてゆくのであった……。
■フィクシス > 「……、あなたの方が、……よほど、……されたいのかと、……。……」
そのまま口にすると、溢れてはいけないものが溢れてきそうで、言葉は全く要領を得なくなる。
色気で競うタイプでないのは本人の言う通りかもしれないが、色気のカタマリでしかない種族に親しむ者からすれば、彼女の振舞いの方がよほど突き刺さってくる――のか、あるいは単なる好みの問題なのか。
悶々とさせられたまま、じゃれるような手を、抱き上げることでどうにか制して。
手を繋いで歩くよりは、実際に子どもか荷物でも運んでいる気分になれた。
「……がぶ飲みって……。……。
この人……何もかも……大丈夫なのか……」
大股に道を辿り、彼女を宿まで運んだ後。
果たして宿かどこかで、懇切丁寧に自分が何を抑えているのか説明することになるのか、
あるいは説明を諦めて――すっ飛ばして――思い知らせることにするのか。
揺れる男心の天秤はまだ定まらない……
ご案内:「平民地区 帰り道」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「平民地区 帰り道」からフィクシスさんが去りました。