2023/09/20 のログ
セーレ >  
「うーん、特定個人。
アレはアレで、分かりやすいからボクは嫌いでは無いんだけどな」

なにより己自らの力で欲しいものを勝ち取るその性質は、セーレにとっては好ましい。
とはいえ、そうぼやく彼女の気持ちそのものは、理解はできるのだが。

「親バカにならないことを祈っておこうかな、手遅れそうだけど」

「そりゃまあ、真っ当にやり合う理由もないしな、キミとは。
やったところで、勝敗も見えてるようなもんだし。
……ま、そうまでして序列を上げた理由がそれなのは、ちょっと初耳だったけど。」

ああ、なんとも…こんな国の面々としては献身的すぎる少女であると息を吐く。
魔族らしいからぬその精神性は、恐らくは己よりもよっぽど天使に近しいそれだとそう感じる。
しかし、それ故にセーレにとって、それは少しばかり眩しすぎるものなのだ。

「でもそうだね、キミはボクみたいなのの心配より、自分の心配をまずするべきだ。
そりゃあ叱られて当然って奴だろう?」

サテラ >  
「まあ……わかりやすいのはその通りだけど。
 その通りだけどーっ」

 それはそれとして、不満なのである。
 とはいえ、彼の二位が非常に努力も重ねた上の強さと魔族らしさを持っている事は認めざるを得ないので、余計に悔しいのだ

「初耳じゃなかったら恥ずかしいよぉ。
 こんなの、ちゃんと上位まで登れてないのに言ったら、恰好つかないもん」

 やれるだけの事はやったと言える今だからこそ、動機の一つとなった事を、憧れのヒトに言えるのだ。

「うー、だって、それくらい頑張らなかったら身につかなかったんだもん。
 パパとかママと違って、わたし、あんまり才能とかないし……」

 サテラ本人は、自分にあるのは、何事も真正面から根強く努力と失敗と学習を繰り返すひたむきさくらいだと思い込んでいるのだ。
 

セーレ >  
「そりゃあ確かに。
口だけ達者な連中は山ほど居るし、そういう奴らは大抵、結果も伴わないんだけどさ。
キミの場合は、もうちょい自分に自信持ってもいいんじゃないかな?」

はてさて、才能がないとは言うものの…
本当に才能が無いのであれば、序列に食い込むことすら普通は出来ないというのに。

天使は己の目に映る、目の前の少女の姿を見つめる。

「ま、比較対象がそうなるのは致し方ないところかな。
無いものねだりをしてるわけでもなし、ボクが言う事でもないか」

サテラ >  
「口だけにはなりたくなかったもん。
 ……うーん、そうかなぁ。
 あ、でも、お菓子作りには自信でたかも」

 褒められたので。
 実際のところ、自然界の四大属性を扱える時点で並大抵ではないはずなのだが。
 本人にとって当たり前に出来てしまう事は、なかなか自信にならないのは困りものだろうか。

「ううん、お姉様が言うなら、きっとそうなんだろうなぁって思うんだけど……。
 なんか、実感わかないなぁ」

 比較対象が上位四人と言うのもあるが。
 やはり、自分を過小評価してしまうクセは簡単には抜けなさそうだ。

「でもそれを言ったら、お姉様だってもっと序列高くてもおかしくないでしょ?
 わたしみたいに正面から挑むしか脳がないならともかく、その気になったら今よりずっと上位にいたっておかしくない気がするもん」

 それだけ、目の前の憧れが持つ『特別な能力』は、重大な価値を持っていると考えているのである。
 

セーレ >  
「ボクは純粋に、そんなに強くはないだけだよ」

そこに嘘は欠片もない、それは純然たる事実である。
それでも並の魔族であれば、歯牙にもかけないくらいの力はあるが、序列に食い込むには物足りない程度のモノ。
そんなセーレが最下位でなく『十一位』であるのも、そのあたりに理由があるくらいなのだから。

「何より、そんなに良い力ではないのさ、願いを叶えるなんてね。
ここに居つく理由が無ければ、ひっそり隠居していたさ」

そう言って、自嘲するように笑うのだ。

サテラ >  
「それは……そうかもしれないけど」

 純粋な強さを例に挙げられてしまえば、自分が追い越してしまっている以上、同意せざるをえない。

「そういうものなの?
 すごく、意味のある力だと思うけど……」

 その本質を理解できていないのもあり、純粋にすごい力だと思ってしまうのは、間違いなくサテラの思い込みだ。
 それを一番よく理解している本人だからこそ、自嘲して言えるのだろう。

「ええ、やだぁ。
 お姉様が隠居しちゃったら、わたし寂しくて泣くからね!」

 そう、泣きまねまでして言ってみる。
 実際に、隠居してどこかに行かれてしまったら、暫く後を引くくらいのショックは受けてしまうだろう。
 

セーレ >  
「なぁに、契約満了するまで隠居はしないさ」

天使は肩をすくめながら答える。
実際、隠居することがあるとしてもそれはきっと遥か先の事。
恐らくは、目の前の少女を看取るよりも先のことだろう。

「まあ何かな、願いを叶えるなんて甘言に釣られてくる存在がどんなものかなんて、直視しないほうが楽ってことだよ。」

そんな風に答えて。
天使は苦笑しながら、もう一口チーズケーキを口に運ぶ。
甘い味が舌の上で溶けていく。

サテラ >  
「そっか、ならよかった」

 泣きまねが、けろっとした子供っぽい笑顔に変わる。
 その『契約』がいつまでなのか、サテラには想像もつかなかったが。

「うーん……願いを叶えに来るヒト、かあ」

 どんなヒトだろう、と考えてみるものの。
 自分じゃどうしようもないほどの願い、と言うものを持たないサテラには想像できず。
 まさか、努力を放棄して安易に甘える存在が少なくないという事も、ぱっと思いつかないのだ。

「……よくわからないけど、お姉様が楽しそうじゃないのはわかった。
 わたしも、うっかり甘えない様にしなくちゃね」

 あこがれのヒトの心労を増やしたくはないと、改めて自分に気合を入れてみたりする。
 

セーレ >  
「その方がキミらしいと思うよ。
キミはそれでいい…ま、どうしてもという時には、迷わない方が良いかもしれないけど」

そうした願いを叶えることに忌諱はしない。
けれど、そうでないならば、なるべくそうならないようにするのが正解なのである。

そして、そんなことになる事があれば、
それはきっと何度も見た、歯車を踏み外したその末路であるのだろうけど。

「……して、結局用事ってのは純粋に、ボクとの雑談だった感じかな?」

サテラ >  
「んえ、お姉様に会いたかったから来たんだよ?」

 特に用事があったわけじゃなく、ただ会いたかっただけだ、と首を傾げる。

「あ、チーズケーキを食べてもらいたかったの!
 桃はお土産ね。
 お姉様はあんまり、食べ物にこだわりとか無いと思うけど。
 それでも、ちょっとでも楽しんでもらえたらいいなぁって思ったから」

 いつも、どことなく退屈そうであったり、つまらなそうな、憧れの天使に、少しでも娯楽を提供したいと思っているのだ。

「……ね、お姉様。
 また、お菓子作ったら味見してもらったりしてくれる?」

 そんな、本当にささやかな、願い事未満のお願いをしてみる。
 

セーレ >  
「やっぱりかい。
…まったく、仕方のない子だなぁ」

本当に、彼女は他者に気を払い過ぎなくらいだと。
その言葉に、改めてそう感じながらも、その笑みはどこか穏やかな者。

「別に構わないさ、味見くらいならね」

だから、それくらいの頼みは聞いてやろう。
減るものがあるとすれば、幾らでもある自分の時間位なのだから。

サテラ >  
「えへへ、やったぁ!
 それじゃあ、ケーキのお供に、お茶も淹れるね?
 桃で紅茶も作ってみたの!」

 そう言いながら、嬉しそうに手慣れた様子でお茶の準備をし始める。

 そうして、彼の天使が許す限り、憧れと同席するお茶の時間を楽しむのだった。
 

ご案内:「欲望の街『ナグアル』第十一区」からサテラさんが去りました。
ご案内:「欲望の街『ナグアル』第十一区」からセーレさんが去りました。