2023/09/18 のログ
■タルフ > 「そういった、身に余り過ぎる光栄を口になさるぐらいなら、
怠惰と自称しようとも十二位に就いていただきたいと申しているのです」
苦言めいた言葉、しかし続く言葉には。
「また、いずれ、ドライアドを挟まず相対して。
それほどの秘めし者、私も雄しべとして相対すべきでしょう」
襟元を開くような物言いに、この街の秩序として雄しべの立場を掲げる紳士は頷いて。
「しかしあの時の私は、摂理に従えば確実に腐り果てるべきでした。
それを拾い上げて下さった方が、そうではないこともあるのだと示してくださったからこそ。
だからこそ、このナグアルにあって序列の上下にも視野が向くと言うものです」
恩方が笑う様を見て咳ばらいをして、己を崩し過ぎたかと改めて”言い訳”をしてしまう。
「……何を仰いますか。このナグアルにあって序列は絶対。
それは伝統だの家柄などという半端な知恵を得た”肉”の申すことではありません。
正しく欲望、正しく弱肉強食。
私が序列十一位たるセーレ様に遠く及ばぬがその何よりの証。
そも私如きを”災難”などと畏怖する者達には元来序列に挑む資格などないのです」
既に、序列二位アルデバとの激闘に合って失われた四肢はより良い部品で構成されている。
それは貴方が憐れむ、しかし相応に有能な”部品”がこの街に訪れたのだと。
「はい。そこは未だ私の学習が及ばぬところです。
抱くことと権力、果たしてどちらを先と、真とすべきか。
そう言う意味では、私はやはり名代であり、ドライアド達全ての意志が恩方様に向けられている今とあっては、
彼女達の欲こそが序列に相応しいと思う時もあります」
その紳士にあって繁殖とは受粉。交尾を概念として理解しても心情として受け止めるにはいまだ遠く。
故にこそ、その機微を以て恩方を慕う”めしべ達”にこそ
本来序列を担うべきではないのかと、普段は口にせぬ苦悩を貴方には曝け出して。
「薬など使うまでも。皆一様に恩方様のまたぐらの”妖刀”を望んでおりますので」
一瞥して、嗤う。その仕草がより”人間らしい”仕草を求めての結果だと貴女にも伝わるだろうか。
「……。」
乾杯とは、相手が必要な”作法”であると。
貴方の言外の要求を受け止めて、もう一つの御猪口を手にして小気味よい音を打ち鳴らす。
そうしてテラスで宴が始まる。
しばしの忌憚ない歓談。貴女が招けばドライアド達も席を共にするだろう。
全ては貴方を楽しませる為、貴方をあるべき地位へと導く為。
それは惑うものを導くものさえ仰ぎ見る貴方への、十二位の”我々”の総意でもあって。
ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」第十二区画植物園」からウロ・ネセサリスさんが去りました。
ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」第十二区画植物園」からタルフさんが去りました。