2025/05/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 怪しい酒場」にれあさんが現れました。
■れあ > そこは貧民地区にある。とある酒場。
お店の外観はただの酒場で、看板も酒瓶を模した質素なものが下がっていた。
ただし、窓には遮光用の黒布が垂れているので、用心深い者はそこに違和感を抱くだろう。
何も知らずに入店した客は、異様な光景を目して驚くことになる。
店内の照明は故意に抑えられていて、入り口直ぐから薄暗い。
そんな薄ら闇で働いている女性キャスト全員が仮面(バタフライマスク)をつけていいて、全裸だった。
10数名の女達の他に、店内には2名の男性キャストの姿もある。
彼らはフォーマルな身なりをして支配人と用心棒といった佇まいをしているのだ。
そして入り口正面の壁にはひと際目立つ紋章が飾られていて、ここが「貴族が出資している店」であることを示していた。
客が店内に足を踏み入れると、手の空いている女性キャストがあいさつに出向き、一体何事かと緊張する客を座席に誘導しつつ、笑顔でお店のサービスの説明をすることになる。
「ようこそいらっしゃいました。当店のシステムをご紹介しますね。こちらは、お客様と女性キャストの1対1で、お酒とお食事と会話を楽しんでいただく場所となっております」
「ご注文いただいたドリンクを、こちらのテーブルに運んでくるキャストがお客様の相手をいたします。ですがお客様には、あらかじめ店内にいる女性キャストを指名していただくことも可能です。その時は、定められた指名料をお支払いいただくことになっております。よろしくおねがいいたします」
「私共はこんな格好をしておりますが、お店が提供しているのは「飲食と会話」でございます。軽く身体に触れるだけなら問題ございませんが、それ以上の行為は別途料金がかかりますので、ご了承おきくださいませ」
「それでは、最初のドリンクの注文を承ります。気に入った女性キャストの指名がありましたら、併せてお伝えくださいませ」
──と、そんな流れで男性客を案内してから、女冒険者はオーダーを厨房に伝えた。
残念ながら、今しがた案内した男性客は「じゃあ君を指名しようかな?」などと浮いたことは言ってくれなかった。
改めて。ここはとある若貴族が運営を開始した新しいサービス形態の酒場。
私はギルド経由で雇われ、オープニングスタッフとして(半分騙されたような形で)働いているのだった。
■れあ > キャストの報酬は接客した客の飲食代の1割が基本となる。
その他、指名をもらえた場合は指名料の10割が加算されるし、軽いボディタッチ以上のオプション行為をした場合の料金の5割が収入になる仕組みになっていた。
しかし、開店から既に数時間が経つ中、未だ報酬は「0」。これぞ0の悲劇。
その秘密は、若貴族が事前に自らが手配した「美女」の存在。
10数名の女性キャストの中に、5名の美女が送り込まれていて、彼女達が指名や太い客を独占し、荒稼ぎしてお店の収益を上げる。
頭数として雇われた私たちは、彼女たちの影に立ち、最低賃金で働く労働力になる。
そんな仕組みなのだ。
そのため、私は、ホールで注文を運びつつ、新たにやってくる客にお店のシステムを説明するのがルーティンになっている状態だった。
「はぁ……なーにが安全に稼げるいい仕事よ」
仮面の下で雇用主に毒づく。まあ彼はここにはいないのだけど。
仮面をつけているとはいえ、店内が薄暗いとはいえ、全裸で接客して、雀の涙の報酬を得るとか、素性がバレたら死ぬしかない。
なんて思っているところに次の男性客がやってくる。
彼らにお店のシステムを紹介している間に、それとなく気に入られる事が指名を獲る一番の近道なので、マスク越しながらも笑顔を作り、身振り手振りを交えて説明を終える。
「それでは、最初のドリンクの注文を承ります。気に入った女性キャストの指名がありましたら、併せてお伝えくださいませ❤」
男は店内を物色し、やはりあの美女軍団の誰かをロックオンして「じゃあ、あの人で」とか言ってエヘエへする始末。
該当する美女をお呼びして、ファーストドリンクの注文を厨房に届け、またホールに戻ると指名を受けて接客中の別の美女に呼ばれ、新たな注文を受けつつ、グラスを下げる。
下女の名を欲しいがままにしてしまい、ストレスのあまり暴れそうになった。