2025/05/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 怪しい酒場」にれあさんが現れました。
れあ > その酒場は、貧民地区にある。
お店の外観はただの酒場で、看板も酒瓶を模した質素なものが下がっていた。
ただし、窓には遮光用の黒布が垂れているので、用心深い者はそこに違和感を抱くだろう。

何も知らずに入店した客は、異様な光景を目にすることになり、ただの酒場だと思って立ち寄ったものほど驚くことになる。

店内の照明は抑えられていて、入り口直ぐから薄暗い。
そんな中で、入店者には手の空いている女性キャストが声をかけ、まずテーブルへと案内するのだが、店内の女性キャスト全員が仮面(バタフライマスク)をつけていいて、全裸であった。

尚、店内には2名の男性キャストの姿もあるが、彼らはフォーマルな身なりをしている。
屈強かつ静観な風貌の彼らは、支配人と用心棒といった佇まいをしている。
お店の壁には、紋章が飾られていて、ここが「貴族が出資している店」であることを示していた。

一体何事かと緊張する客を座席に誘導した女性キャストは、彼ら/彼女らに、笑顔でお店のサービスの説明をすることになる。

「ようこそいらっしゃいました。当店のシステムをご紹介しますね。こちらは、お客様と女性キャストの1対1で、お酒とお食事と会話を楽しんでいただく場所となっております」

「ご注文いただいたドリンクを、こちらのテーブルに運んでくるキャストがお客様の相手をいたします。ですがお客様には、あらかじめ店内にいる女性キャストを指名していただくことも可能です。その時は、定められた指名料をお支払いいただくことになっております。よろしくおねがいいたします」

「私共はこんな格好をしておりますが、お店が提供しているのは「飲食と会話」でございます。軽く身体に触れるだけなら問題ございませんが、それ以上の行為は別途料金がかかりますので、ご了承おきくださいませ」

「それでは、最初のドリンクの注文を承ります。気に入った女性キャストの指名がありましたら、併せてお伝えくださいませ」


──と、そんな流れで男性客を案内してから、女冒険者はオーダーを厨房に伝えた。
残念ながら、今しがた案内した男性客は「じゃあ君を指名しようかな?」などとは言ってくれなかったのである。

ここはとある貴族が運営を開始した酒場で、そのオープニングスタッフとなり、働いているのだ。
キャストの報酬は接客した客の飲食代の1割が基本。
他、指名をもらえた場合は指名料の10割が、軽いボディタッチ以上のオプション行為をした場合の料金の5割が収入になる仕組みになっていたが、開店から既に数時間が経つ中、未だ報酬は「0」だった。

れあ > この仕事の依頼をギルドで受けたのは今日のお昼の事。
そして何も知らされぬまま貴族と「面談」した。
その貴族は20かそこらの若い、イケメンと言って良い顔立ちの男だった。
そんな彼は私を前に、「ふむ」とかいいながら爪先から頭の上までをじろじろと値踏みして、「まあいいだろう」の一言を告げ、「お前のようなひ弱な女冒険者が、男に混じって命懸けで危険を冒さずとも、安全に稼げるいい仕事がある」と言ってきた。
なんでも、天才的な閃きによる、まったく新しいサービス形態の酒場なんだそうだ。

私はそんな彼を前にしながら「なんだこいつ。1秒に1回殺せそうなのに…なんでこんなにいばってんの?」とか思っていたけど、稼げると聞き……その「まったく新しいサービス形態の酒場」なるもののキャストとして契約を交わしたのだった。

で、コレ。

バタフライマスクをしていて目元を隠し、そして店内が薄暗いとはいえ…全裸で接客している。
キャストの中にはお店の収益を上げるために貴族が直々にスカウトしたとされる「美女」が複数いて、彼女達は指名をうけて客の相手をしていた。
指名を受けていない私は、ホールで注文を運びつつ、新たにやってくる客にお店のシステムを説明するのがルーティンになっている状態だった。

「はぁ……なーにが安全に稼げるいい仕事よ」

仮面の下で雇用主に毒づく。まあ彼はここにはいないのだけど。

次の男性客がやってくる。
彼らにお店のシステムを紹介している間に、それとなく気に入られる事が指名を獲る一番の近道だった。
口元には笑顔を浮かべ、なるべく身振り手振りを交えて説明を終える。指名はなし。ぐぬぬ。

指名を受けて接客中の「美女」に呼ばれ、新たな注文を受け、そしてグラスを下げる。

これを一晩繰り返して、身入り0だったら本気で泣く。
最低限度の報酬は保証してもらえるように、掛け合う必要があった。