2025/04/09 のログ
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ご案内:「宿屋『マグメールの灯』」にミレイさんが現れました。
ミレイ >  
「今日はもう少ししたら看板かしらね」

ざー…と季節柄の大雨。
一回の酒場から見える外の町並みは曇り空から降りしきる雨、雨。
当然こういう日は酒場の客入りもよくはない。
席も空きが目立ち、珍しく連日の活気が感じられない店内となっていた

カウンターに頬杖をつきつつ、雨模様の外を眺めていた。

「(あの子達、無事にダイラスにつけたかしら)」

先日、二組程の若い冒険者パーティーが依頼を受け、湾岸都市に向けて出発した。
遠出の依頼は初めてだと、不安があったのか色々と相談に乗ったりしていたのだけど。
道中のこの雨、海に近い向こうあたりは嵐に見舞われているかもしれないと、心配事も浮かんでくる。

ミレイ >  
『じゃあ、姐さん俺らはこれで』

看板を出すのも近いかと、食事を終えた一団が席を立つ。
一年程前から見せに顔を出すようになった彼ら、当時は新米であどけなさも目立つ少年達だったが、
今となって見れば精悍さを讃えた立派な冒険者。男の子の成長は早いものである。

「この後も仕事?
 王都の地下水路も水が増えてるだろうから注意するのよ?」

この長雨が彼らの行く先に影響を与えているだろうことは予想できる。
王都の地下水路の害獣駆除。新米に与えられる仕事としてはポピュラーなものだ。
同時に嫌がられる仕事でもあるため、ベテランの冒険者となればそれを忌避する者も珍しくない。
そんな中で、彼らは今も暇があれば新人を連れ立って地下水路へと向かっている。

「気をつけてね。最近、余り良くない噂も聞くから」

王都の地下水路に纏わる不穏な噂。
飽くまで噂レベルのものしかない情報も一応伝えるだけは伝え、一団を送り出して。

「ふう…」

一段落。
数名のお客が残る店内は歌い手も踊り手も今は居らず、静かなもの。
静けさの中でしっとりとお酒を楽しみたいお客もいなくはない故、これはこれで良い雰囲気ではあるのだが。

「(にしても連日雨続きだと、洗濯物が溜まっちゃうわね)」

そんな日常の中の考え事をしながら、時おり遠くの曇り空が光る雨模様の外景色を眺めていた

ミレイ >  
普段から酒場を訪れる冒険者の中には、それこそ自分の息子と同じくらいの年頃の若者も多い。
あまり世話を焼きすぎるのも良くはないと思いつつ…頼られればやはり応えてしまう。

まぁ、自分の過去の経験なんかからアドバイスできることがあればそれは嬉しいし、
それで少しでも事件や事故に巻き込まれる若者が減ることはやはり望ましい。

「(騎士も、冒険者も、危険と隣合わせの仕事だものね)」

グラスの手入れをしながら、視線を外から店内の壁へと向ける。
飾られているいくつかの古びた品々…欠けた剣や破れた外套などのいくつかには、冒険者の遺物も含まれている。

宿を構えてから十数年。
変わらず成長した顔を出してくれる者も、それが適わなかった者もいる──。

ご案内:「設定自由部屋」にミレイさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」からミレイさんが去りました。
ご案内:「宿屋『マグメールの灯』」にミレイさんが現れました。
ミレイ >  
磨かれたグラスを並べ、店内を見回せば客も疎ら。
今日は、潰れているお客はいない様子で何より。

「ほら、もうそろそろ看板出しちゃうわよ。
 食べ終わったら雨足が酷くならないうちに帰りなさい」

それとも二人で泊まってく?
なんてくすりと笑って。

若い冒険者の中にはこの宿を拠点に活動する者もいる。
二階には相応の数の部屋があり、今は空き部屋もある。
必要なら一時的な鍵の貸し出しもする。

声をかけたお客は、冒険者の男女のペアだ。
まだ十代半ば頃か。そう言うと顔を赤くして見合っているのが可愛らしい。

ご案内:「宿屋『マグメールの灯』」にシルドさんが現れました。
シルド > そんな静かな店内に突如外と通じる扉が開く音がする。
雨足が強くなっていたのか、外からの雨音が店内にも響くように大きく、そして雨特有の香りが店内に。雨による冷気も店内に流れ込んでくるだろう。
そうして扉を開いた男は――濡れネズミ。だが、その手には大きな荷物を持っている様子だ。

「えぇっと、マグメールの灯はこちらであってますか。
商品の納入に来ましたー!」

そんな声が店内に。視線はきょろきょろと物珍しそうに店内を往復した後、グラスを並べている女亭主へ。
にまっとした笑みと品物を示す様に木箱を向けて見せる。
それは普通の食料品で、たしかにこの宿から依頼が出た――ハズのもの。彼女がその記憶が無ければ配達に来た人間は困ったように店を後にするだけだろう。

ミレイ >  
濡れネズミな様子の男を見れば、あらあらと。
カウンターの奥の棚からタオルを手に、やってきた男へと足を向けて。

「ご苦労さま。帳簿は濡れてない?」

納入のサインをするための羽ペンを手に、
ずぶ濡れの男を酒場中央の暖炉の方へと促してタオルを手渡そうと。

「こんな雨の中…。明朝でも良かったのよ?」

見るに体格の良さそうな壮年ではあるけれど、風邪を引いては申し訳ない。

「なにか飲む? 身体が温まるもの、お出ししましょうか」

シルド > 「へぶしっ。あぁ、大丈夫大丈夫!帳簿とか仕事にかかわるものはちゃーんと防水加工してあるんで!」

くしゃみを1つ。その後一旦木箱を床に置くと、それなりに重い音がする。
その後懐から取り出された皮のカバーにさらに厳重に油紙に包まれていた帳簿を相手に差し出し、サインされるのを待っている間に食料品をどこに運べば良いか重ねて聞いていた。

「雨は降ってますが依頼品はちゃんと届けねぇと怒られるんで。
それに長い雨だからこそ、食品は傷みやすくなるしねぇ。」

明日でも、と言う声には首を左右に振った。
水滴がパタタ、と周りに散る。あわよくば妙齢のお姉さんの服に掛かれば透けないか、なんて期待しているが。
この雨が明日の朝に止む保証も無かった。配送した後の礼金を受け取るのは後回しにしてもいいが、配送が遅れると食料品の販売側の信用にもかかわるためだ。

「あー……そうですね。
流石にちょっと雨が上がるのを待ちたいかな。
この焼きリンゴ入りホットサイダーとか注文しても?」

雨が上がらなければ最悪宿を取る事になるだろうか。
お金は――注文したものからもあまり持ってない。メニューの中でも自分で頼めそうなもの。
酒が入って無さそうなモノを選んでいた。
妙齢の女性を見てすぐに帰るのはもったいない。眼福を楽しむのもいいだろう。

ミレイ >  
「ほら、身体を拭いて。
 お仕事に真面目なのは良いけれど、風邪を引いてしまうわ」

帳簿に受取のサインをしつつ、食料品はカウンターに置いてもらえれば良いと指示する。
どの道今日はそろそろ看板を出そうとしていたところだったし、食料品の仕分けは後でのんびりでも構わない。

「雨足が弱まるまでごゆっくりどうぞ。
 身体を張ってまで今日中に届けてくれたから、飲み物はサービスしてあげる」

服も乾かさないといけないだろうし。
雫の滴る男の頭へとタオルを掛けてやれば、ミレイの姿は間近で目に入る。
見下ろせば水滴による透けは兎も角、みっちりとした谷間であるとか、そういった眼福は得られるかもしれない。

男にタオルを渡せばカウンターへと戻り、手際よく人気メニューの一つであるホットサイダーを用意する。
身体も温まる一品。雨で冷えた身体には丁度よい筈である。

「雨足は強まってきたところだから、そうそうは上がらないかも知れないわね…」

幸い、上の部屋は空いてはいるけれど。
宿屋としては場所柄、価格もそこまで高くはない。
色々な事情の者が利用する宿でもあるため、手持ちがなくとも後払いで泊めてはもらえるだろう。

シルド > みっちりした谷間は間違いなく眼福だ。その谷間を見ていけない妄想を幾つか浮かべつつも、素直に渡された、被せられたタオルに甘んじて帽子を脱ぎ、顔や首筋を伝うまだ冷たい雨粒の雫を拭きとっていく。
むき出しになっていた手首などもタオルでふき取り、ぷはぁと、生き返ったような声を出していた。

「良いんですか?サービスって……。
うーん。雨が上がらないなら……一晩ご厄介になる方が良いかなぁ。
一部屋空いてるなら宿泊で。あ、こっちはサービスはいいです。
さーすがに大の大人が飲み物からお部屋までサービスされたんじゃ立つ瀬もない。」

言われた通りにカウンターに木箱を運び、その後雨足の強さを思い出す。
荷車を引いて帰るなら、雨が上がってからの方が望ましい。
雨に晒しても一応防水の魔法が刻まれた荷車なので、そこは安心と言えた。
サインをもらった帳簿を又油紙に包み、カバーで覆い隠すようにして懐へ。
差し出されたホットサイダーは湯気から漂う香りがたまらない。
口に運ぶとリンゴの甘みに香辛料の組み合わせが意外なまでに飲み口を良くしている。
その温かさ以外にも、香辛料によるものか体の内側からゆっくり温められるような心地だった。

そして一息つくと、改めて女将の方を見てしまう。素晴らしく目を引く外見に丸みを帯びたフォルムが素晴らしい。
なんて、口に出せないながらも眼福のひと時を満喫していた。

ミレイ >  
「一杯だけ、ね」

サービスにいいのかと言われればぱちりと片目を閉じて微笑む。
雨足の強まる外へと一歩踏み出し、CLOSEDの看板をドアへと掲げ、酒場の中へと戻る。

「お泊りね。あとでお部屋のメイクしておくわ。
 にしてもこんな雨の中で荷運びなんて、扱う商品が商品なのもあるだろうけど、大変ねえ」

店内に残る客も僅かとなり、亭主の女は声を投げかける
手持ち無沙汰な従業員の若い女の子に木箱の中の食料品のチェックを指示してから、暖炉近くの空いた椅子に腰を掛けて。

「でも、貴方達みたいな人のおかげでうちも営業できているのだから、感謝しないとね」

くすりと柔和な笑みを浮かべ、感謝を口にする。
諸々が乾くには時間がかかるだろう見込み、男の話し相手になろうという腹積もりのようだった。

シルド > 木箱の中の食料品はきちんと取り揃えられている。
欠品もなく、値段のわりに質の良い食品が並び、専用の容器に収められた香辛料も保存状態は良好だった。

「ははは、こんなに良いサービスされたなら、今日の内に運んだ甲斐もあるってもんで。
商品も大切だけど販売店と卸先の信用もあるんでねぇ。
まぁ、それに――。」

それに、と続けると妙齢の女性を見て、更に店内の冒険者を。従業員の若い子にとぐるっと一通り視線を巡らせる。
最後にもう一度女将に視線を向けると、にやにやとした笑みを浮かべてしまう。

「それに、冒険者さんにしろ女将にしろ届けたモノで誰かしらが笑顔になるってんなら、金にゃならんけど良いもんで。」

自分もこうして美味しい飲み物にありつけているわけだし、と。サイダーの甘みに舌鼓を打つようにして、こくこくと喉を鳴らす。
味以上に寒さからか暖かい物は体にもありがたかったようで、大人の癖に子供の様に美味しい暖かなモノに吸い寄せられてもいるのだった。

「女将さんもそうでしょ?美味しいモノを美味しいっていってくれたり、誰かしらの笑顔は自分の心にも温かさを届けてくれる。
そういう仕事でしょうしねぇ。」

数々の冒険者の装備品が並ぶ。店内は静かでこんなにも魅力的な女性がいるのに乱暴狼藉を働くような愚か者もいない。
治安はかなりいい方と言えるだろう、雨が降る日に自分の様な飛び入りでも温かく出迎えてくれるような女将だ。
人徳もあれば、周りからの信用も高い事だろう。

――その指に輝く指輪は見えているが、あえて触れずにいた。

ミレイ >  
誰かが笑顔になれるなら。
この街の現実を知る者としては、そんな言葉が出ることを嬉しく思う。

「珍しいわね。この街で。
 そんなことを仕事のやりがいにしてる若い人、そんなにいないものよ?」

壮年の男を見やる。
まぁ自分よりは若いだろうと思い、出た言葉だった。
少年の頃にはそんな思いを持っていても、大人になるにつれ失うものに違いない。
それが心から出ている言葉だとしたら、尚更。上辺だけだったとしても、そう語る者は少ないだろう。

「私はどうかしら。どちらかといえば…」

お客との語らいに興じる。
それは仕事でありつつも、冒険者を辞めてからの女の在り方の一つでもある。
僅か、男の視線に沿うように店内に飾られた古びた装備品へと目を留めて。

「出かけたらちゃんと顔を見せに帰ってきて欲しいわね。
 笑顔なんて贅沢は言わないし、泣いたり怒ったりしててもいいから」

そういうのは、生きて帰ってきてこそだから、と。

「私の子供と同じくらいの年なのに、ヘマしちゃう子なんかも結構いるものだから余計にそう思っちゃうわね」

口調は僅かにしっとりと。
勿論笑顔で帰ってきてくれることに越したことはないけれど。
常にそれが望めるような…安全な仕事に出ていく者ばかりではないから。

シルド > 「口に出さんでも、それをやりがいにしてる人は少なくないでしょうよ。
ははっ、若いなんて言われたのはいつ以来か。
――ヘマなんてのは若いうちはいくらでもやっちまうもんで。
泣き顔も、笑顔も、怒る事も人生経験の1つ。いつも笑顔、なんてぇのは難しいからその考えはわかりますねぇ。あ、俺に子供はいねぇんですけどね。」

しっとりとした物を帯びた口調と、古びた装備品。欠けたものや破損しているものは良くも悪くもそういう悲劇を経験してきたか。
それとも悲劇を肩代わりしてくれた防具なのかもしれない。
仕事を選べる立場ではない、冒険者ではない男からすれば自由に旅に出られる冒険者はうらやましくもあり、憧れが全くない、とは言い切れないモノだった。

「んじゃ、ヘマした子には人生の先輩から、温かい言葉や手解きをして。
成長した笑顔や声を聴けることを祈りましょうかね。
女将さんみたいな美人さんの顔を曇らせるんじゃぁねぇぞ小僧っこ。」

なんて。酒を飲んでないのにも関わらずホットサイダーの温かさと女将の魅力、包容力とやさしさにふれたからかひとり呟く。
浴場を感じないと言えばウソだが、自分もいっぱしの人間だ。この手の心を温かくさせる手合いにはつい気を許してしまう。
コートが少しずつ乾き始めているし、他の客も宿のフロアに上がり始めた様子だ。
自分がこれ以上長居をしては女将と、従業員の子も帰れないし自由時間も取れないだろう。

「っと、そろそろお部屋に移動させてもらおうかな?
女将さん、お部屋はどこだい?」

なんて。お部屋の場所を聞いたのはあわよくば先導してもらう事で、階段の下から女将のお尻などを見たい欲望なんかもあるのだった。
お部屋で二人きりにでもなればいいが、まぁそれは余分なぜいたく。

ミレイ >  
「ふふ。そうなの?
 そうねえ、貴方くらいの年で子供がいない男の人も珍しくはないけど。
 子供もいいものよ。いい女性(ひと)とか、いないの?」

そんな、酒場であれば茶飯事の他愛のない言葉を交わしながら、
女性の従業員も諸々の始末を終えてお先に失礼しますと頭を下げ、酒場を後にする。
残った客や仕事も僅か、あとは亭主の女だけでも十分にこなせる程度だった。

「お上手。でもそういうのはもっと若い子に言ってあげたら?」

美人と評されれば勿論悪い気はしない。
どこかくすぐったい感覚には小さく肩を竦め、立ち上がって。

「二階よ。一泊だけならすぐに支度できるから、案内するわね」

どうぞ、と先に立って酒場の階段を上がってゆく。
真後ろから見上げれば、経産婦であることを納得させるような安産型の丸みが目に入る。

「いくつか部屋はあるけど今日空いてるのは此処だけかしら」

202と番号の割り振られたドアを開けて室内を開けさせれば、丁寧に手入れのされた小綺麗な宿屋の一室といった趣である。

「雨が止めば良かったのだけど…鍵は後から持ってくるわね」

下心は知ってから知らずか、にこりと微笑んで。

シルド > 「子供をもつにゃぁ分不相応だもんで。
良い出会いってのは中々ないんですよ。それに冒険者でも騎士でも裕福でもねぇ。その日暮らしの男にそんなお相手なんていねぇもんです。
はは、美人に年齢は関係ないでしょうよ。っと。」

折角のサービスだ、ちゃんとサイダーは最後の一滴まで喉に流し、口のついた部分はハンカチで軽くふき取ってから器を返す。
案内をされるなら見事な肉付きと魅力的な丸みを両立させたその光景にコートの内側で静かに男の興奮が高められているのだった。
もっとも、手を急いで出すような事は無いが。

「ひえぇ、こんな綺麗な宿であの値段……?」

自分が普段使っているグレードの低い宿屋よりも格段に広く。
手入れも入念にされているためほんのわずかな料金の差があるとはいえ、ここまで違うのは女将や店員の意識の違いだろう。
コートを脱ぎながら微笑み掛けられると頷き、そして鍵の話を向けられた際に――

「あ、女将さん。もしお嫌じゃなければもう少しお話ししません?
明日の仕事に障るなら大丈夫ですんで、お話し乗ってもらえるならカギと一緒に濃縮羊乳とハチミツの白蜜。2人前を追加注文で。」

ミレイ >  
「こんなおばさんで良ければお話くらいいくらでも、だけど…。
 少し待ってね。酒場のほうの片付けをしてしまわないといけないから」

言葉通り、少しの時間が経てば、やがて階段をあがる音が聞こえ…
注文どおりの二人分のグラスを手に、部屋へと訪れる。

「一階の施錠なんかもあったりするから遅くなっちゃったわね」

はいどうぞ、とトレイからグラスを部屋のテーブルへと移し、部屋の鍵を横へと添える。
小さな椅子を引いて腰掛ければ、さて…と。

「明日もあるから、一杯分だけね」

にこやかに微笑んで、男の話し相手に興じるつもりのようだった。

シルド > 「おばさんは謙遜が過ぎますよ。お姐さんで十分通じますって。」

とてもではないがおばさんと言うには早い。まだまだ色香を漂わせる妙齢の女性となれば十分お姐さんでも通じるのだ。
手持ちの財布から2人分の代金を出すと、予想以上に安かった宿代のおかげで支払う事も出来る。
引かれた椅子に腰を下ろす様子を見つめながら――そっとその代金をテーブルの上にのせて微笑む彼女にこちらも満面と言える笑みを浮かべるのだった。

「お互い仕事がありますしね。女将さんの欠伸をする姿もかわいらしいと思うけど~?
不思議とこの宿に足を踏み入れた時から気分が安らぐというか、和らぐんですよねぇ。
不安が薄れるというか。なんかそういう効果のある魔法とかが掛かってるのかな?ってくらい。
皆そういいません?」

いただきます、とグラスを片手に飲み物を口に含む。
先程の甘さと香辛料の組み合わせと異なり、純粋な優しい甘さが口の中を満たしてくれる。
こくん、と喉を鳴らしたのは女将を真正面から見るせいでもあるのだが――宿に足を踏み入れた時の感想を口に出してみた。

ミレイ >  
「おばさんでいいのよ。
 若い子はたくさんいるんだから、そっちに目を向けてあげなきゃ」

丁重に払われた代金を丁寧に受け取って。ありがとうね、と微笑む。
こういった宿をやっているとツケや後払い、出世払いも慣れたもの。
こうして手渡しでいただけるのはそれだけでありがたかったりもするものだ。

「そうねえ。リラックスできるような香りのするお花なんかは飾っているけれど。
 魔法アイテムでそういう効果のあるものなんかを探してみるのも、いいかもね」

宿を褒められれば当然悪い気はしない。
亡くした夫との思い出が詰まった場所でもあるからだろう、より穏やかな笑みを浮かべて。グラスを傾ける。

「お客さんは今日が初めてよね?どうぞ、今後もご贔屓に。
 今日は雨が降っているから疎らだけれど、普段は夕方あたりは賑やかなものよ?」

その日の仕事を終えた冒険者や商人、宿をとった旅人などで普段から店は賑わっている。
気に入ったらまた来てみてね、という営業トークは忘れずに。

シルド > 「じゃぁその若い子達にはおじさんよりも有望な若い子がくっつく方が良いでしょうに。
おや、ナンパみたいになってしまった。
しかし若い子達には、相応に未来が開けているか、未来を拓く力を持った若い子が隣に立つ方が良いでしょうよ。」

ね?なんて不器用なウィンクを。
代金に関してはこういう日雇いの仕事をしているので価値観は近いものがある。
だから極力自分も現金で払うようにしているし、ツケや後払いは極力避けているのだ。

「初めてだけど、本当に贔屓にしちゃいそうだなぁ。
料理の値段も、宿のお値段もお手頃。何より、女将さんが暖かくて美人なんだから。
――部屋の掃除も本当によく行き届いているし、今利用している宿から本当に移ろうかねぇ?」

セールストークには本当に悩んでいる表情で答えた。
少しだけ余裕はなくなるが、それでもこれだけ条件のいい宿は珍しい。
その日暮らしをしており、仕事から戻ってきたときに利用すると考えると――悪くないどころか有力な選択肢になる。
冒険者の数がいればその分、売れ残りの薬草なりで小銭をまっとうに稼ぐことが出来るかもしれない。

「うん、本当に検討する価値あるなぁ。」

欲望もある。落ち着くミルクを飲んでいなければ、今頃襲い掛かっていそうなほどに魅力的な女将だ。
仲良くなれたら、という思いは当然あるが、宿そのものの魅力もやはり高い。
懐具合が冷え切らなければの条件付きだが。

「――なんだろうなぁ女将さんと話ししていると心が安らぐというか。
子供のころに母親に向かって安心していたような気分ってこんな感じなんだろうなぁ。
――親の記憶はねぇから、こういうものなのかって憧れはあるんだろうけど。女将さん若いから失礼になっちまうかな?」

ミレイ >  
「あら、男の人はその限りじゃないでしょう?
 若い女の子のほうが、って思う人が大半じゃないかしら」

勿論そう思わない人もいるのだろうけど、
往々にして男はうら若い娘を好むものだと思っている。

宿としてとることも検討する、という男にはにこりと満面の笑み。
勿論、宿の亭主としては利用者が増えることは実に喜ばしいことである。

「ふふ、お客さんが増えるのは大歓迎よ?
 まぁ、私も一応息子のいる母親ではあるしね……あら、親御さんがいないの?」

この国では珍しいことではないのかもしれないが、少し驚いたような顔をする。
自ら口にするあたりは、とうに振り切っている事情なのかもしれないけれど。
自身も貧民地区の出身であり、十代になる頃には冒険者として活動を始めていた故に、そういった環境にはシンパシーも在った。

シルド > 「若い女の子からすりゃおっさんより気心の知れた、もしくは背中を預けられる若い男の子の方が良いと思いますがねぇ。
それに女将さんは若い子にはない成熟した美貌があるんですし。
そういうのを好む男がいるってのも忘れない方が良いよ~?目の前のおっさんとか、女将さん美人だーって思ってるし。

まぁ、親の顔見る前に貧民街の孤児院にいたようなもんなんで。
生きているか死んでいるのかすらわからないってね。」

生れ落ちてすぐに捨てられ孤児院でこき使われてきた記憶しかない。
なので、不思議とこういう包容力と言うか温かみのある相手には絆され易い。
ミルクを半分以上も飲み終えると、ぽつりと。

「……ご子息が羨ましいですよ。優しい母親で。」

心の底からの言葉。嫉妬とかではなく純粋な羨ましさの言葉だ。
その後でお酒を飲んだわけではないが――ふにゃり、とほおを緩めて彼女を見つめていた。
そろそろ眠らないとお互い仕事に響くだろう。
ベッドを指さし――

「女将さん、膝枕とか子守唄のサービスってやってる~?」

ミレイ >  
「意外と頼りになる経験豊富な男の人が…なんて娘もいるかもしれないじゃない?
 優しい母親…だったかどうかはわからないわね。どう思っているのやら…」

親の心子知らず、その逆もまた然り。
しかし親を知らないと話す目の前の彼のような人にすれば、それすらも羨むものなのかもしれない。

グラスを傾ける、中身も減ってきた頃。
部屋に備え付けた時計を見れば、時間も程々に経っていた。

「女の人に甘えたいなら、そういうお店に行かないとね」

微笑みは崩さず。
なんとなく母親を求めたかに見える壮年の男にはそう告げる。
何らかの母性を求めてしまったとしても、壮年たる彼は自分自身の力で生きている立派な男である。
その程度の寂しさなんて既に噛み分け、生きてきた筈だと。

そして、それに応えることの出来る店舗はこのマグメールにもしっかり在る。
此処はただの宿屋で、そういった男性の甘えを満たす場ではないと弁えた返答をしつつ。

「それとも、下心でも湧いてきた?」

シルド > 「下心0は流石に嘘だし、女将さんみたいな美人には失礼だよ。
まぁ、安眠は出来るだろうけどね。
ふっと母親の温かさの興味が沸いたからねぇ。体験してみたさが強かったかな。ごめんね女将さん、変な事言ったか。」

微笑みを崩さない相手には正直に告げた。もちろん下心――膝枕してもらえればその香りにしろ、柔らかさにしろ男の欲望を刺激するには十分なものがあるだろう。
ただ、それ以上に自分は知らない母親のぬくもりと言う物を知りたがっていたのもあった。
だから相手が拒むならそこでこの話は御終いになる。

「……あふ。と。女将さんの前で欠伸しちゃ悪いね。
……お話しありがとう、今日はゆっくり……眠れると、良いなぁ。」


グラスの残りをゆっくり飲み干す。その後ふらふらと眠気に誘われるようにしてロングブーツを脱ぎベッドの上へ。
ぼふん、という音を立てながらベッドに沈むと、ほどなく寝息が聞こえてくるだろう。

ミレイ >  
「…そのうちに良い女性(ひと)が見つかったら、きっとそのひとが教えてくれると思うわ」

男の言葉にはそう返し、2人分のグラスをトレイに乗せて、椅子から立ち上がる。

「いいえ。宿は疲れを癒やして眠りにつく場所…。
 おやすみなさい。ちゃんと身体は温まったかしら? 風邪、ひかないといいわね」

テーブルの上の小さなランプに灯を灯す。
大きな灯りを消しても部屋が真っ暗闇にはならない、僅かな灯。

「───じゃあ、ごゆっくり、ね」

そう言って亭主の女は寝息を立てはじめた男の身体へ毛布をしっかりと掛け、グラスの乗ったトレイを手に、部屋をそっと退室するのだった。

シルド > すぅ、すぅと寝息は静かに。朝起きて毛布が掛けられていることを知れば宿を出る前にありがと、なんていう男には似つかわしくない言葉を出していく事だろう。

無論、足取りは軽く。そして男の下心にしっかりと火はつくのだが――その下心がどうなるかは今後次第、と言うところ。
翌日以降、この宿の利用が増えたりした、というのはまた別の話。

ご案内:「宿屋『マグメールの灯』」からシルドさんが去りました。
ご案内:「宿屋『マグメールの灯』」からミレイさんが去りました。