2025/02/11 のログ
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ベルナルド > 「俺も昔は楽しいと思わなかったよ、『勉強』は。
そういう意味では、アンジェは優等生だ。
俺も今はそうでもないけれど、俺が面白いと思っていることは、多分リュシーは面白いと思えないんじゃないかとも思うかな。」

結局受け身の『勉強』は全く持って面白くなかった。
攻めを覚えて意のままにできるようになって面白くなったが、優しい弟は同じことを楽しいとは思わないだろう。
だからこそ、まずは弟の楽しいを探さなくてはならないと思っていた。

そして、別の方面からの言葉で腑に落ちた様子に微笑んで、頷けば

「そうだね、いつもだったらそれでいい、と言うんだけれど……」

夜になったら部屋に来る。
それに対して少しだけ考えてから

「いや、今日については、ずっと一緒にいよう。
算術の勉強もこのまま続けるし、時間になったら一緒に食事に向かう。
いっそ今日は湯も一緒に使って、一緒にこの部屋に戻ってこよう。」

今日の今日で母親の許可を取るのは難しいかもしれない。
母も当主なのだから忙しい人だ。
だとすれば、今日は常に一緒にいればよい。
そして、教育係に何か言われることがあれば、自分が壁になり、きちんと主張すればよい。
『勉強』は教育係の特権ではないのだから、この方法で通るはずだ。

リュシアン > 「えっ?!
……そうなんだ、ちょっとびっくりしちゃった」

告げられた告白は余りに予想外だった。
一番近い年頃の姉がとにかくやる気なので他のきょうだいも同じだと思いこんでいた。
だから、自分のように面白いと思えていない可能性だってあるのだと知ればまず先に驚きがたつ。
そして、兄にとって面白いこともどうやら自分には面白くないらしい。
頭の中でだんだん情報が混線し手締めてきたのか、柔らかい眉間に皴が寄り始める。

兄の、今日はこのままでという言葉を心得たように一つ頷く。
それから随分ほったらかしてしまった机の上を一度取りまとめて宿題と今日の分の課題を分けることにした。
今後の憂いが晴れたこともあってか、表情は先程迄よりも随分明るく。

「…ちょっと楽しみだな」

勉強は今まで通りだが、少なくとも教育は今までほど辛いものにはならないだろう。
何より、普段はなかなか一緒に過ごすことが出来ない兄と長い時間一緒に過ごせるのだ。
教育如何を抜きにしても、久しぶりに心が躍るとはこのことだ。

だから今暫くは兄の良い算術の生徒であるべく

「えっと、今日もよろしくお願いします」

部屋に来たときと同じく、座ったままながらきちんと頭を下げて師事するための挨拶をしてみせようか。

ベルナルド > 「リシーが物心ついてからは、楽しみ方を理解してたからね。
リシーから見たら、ずっと楽しんでいるように見えたかもしれないな。」

自分が面白いと思っていなかったのも本当に小さいころ。
故に、知らなかっただろうことを知れるように伝えることで、物事は一方向から見るものではないと伝えて。
そして、色々と混戦し始める話題に、この先はゆっくりまたの機会に、と口にした。

課題を分けて整理する弟を穏やかに見やり、その表情が明るくなったことに安堵して。
更には楽しみだという言葉が届けば嬉しそうに頷いて

「ああ、こちらこそよろしくお願いします。
じゃあ、今日はリシーが気になる色々な単位についてなんだけど。
単位には、基本単位と補助単位があって……」

そして、今日の予定課題も横にのけて、白い紙の上に文字を書きつけながら、弟が興味を示すだろうことを説明していく。
曰く、単位は後ろの部分で何の単位か判断できること。
曰く、単位の前の文字は、何倍されているかを示している事。
曰く、重さも長さも切り分けたら同じ理屈で出来上がっている事、などなど。

弟の様子を見ながら、彼の知的好奇心を擽っていく講義は続いていく。
その後、食事、湯浴みと続いていく一日は、きょうだい2人、翌朝までの時間を共有してお互いが楽しめる時間となったことだろう。

リュシアン > 「楽しみ方?そんな勉強まであるの?
んー…、やっぱりむずかしいよ…」

それもそのうちに教えてもらえるとわかれば、一先ずは目の前の勉強のほうへと意識を戻す。


「うん、単位気になる。
……基本?……補助??ええと…あっ、重さとか長さで出てくるのかな」

今までの計算に重きを置いたものとは違う切り口で始まる新しい授業。
白い紙面に少年の文字よりも読みやすい大きさで書かれていくそれらを興味深く眺めながら学び始める。
気になる事があれば都度質問して解説を受け、自分が覚えておきたいことはきちんとメモを取る。
基本的に学ぶことが好きな性格が功を奏して、メモを取る手にも暫く飽きる気配は見られなかった。

きちんと弟の理解度に合わせて丁度良く先に進んでくれる授業は実に有意義なもの。
終わるまではきちんと集中しているものの、授業の終了が告げられた瞬間に集中力のスイッチが切れたようにまた天板の上に頬をつけて息抜きの時間。
頭をよく使ったからだろう、小柄なりにも育ちざかりの胃は空腹を訴えていて、小さく腹の虫が啼けばまだ柔らかい頬を真っ赤にして慌てたことだろう。

勉強の痕の息抜きが終わるころには待ちかねた夕食の時間。
それから湯浴みをすませて兄の部屋に戻るころには随分と弟の表情も柔らかくなっていたことだろう──。

ご案内:「カルネテル・ヴィスコワニティ邸」からベルナルドさんが去りました。
ご案内:「カルネテル・ヴィスコワニティ邸」からリュシアンさんが去りました。
ご案内:「商業都市ラディスファーン近郊」にラディスファーンの獣さんが現れました。
ラディスファーンの獣 > 雪だ。夜からしんしんと降り続くそれは大地を均等に覆い隠していた。

獣の覚えている限り、この山中に雪が降ることはあっても積もるのは珍しい。数年に一度くらいだろうか。
緑色の体毛は木々の間や岩の上ではよい迷彩となり、周囲の動魔物を怯えさせることがない。
だが、一面白が埋め尽くすここではただ目立つだけだ。
大好きな日向ぼっこも望めそうにない空を見上げて、きゅうと悲しく啼いた。

足跡を残しながら辿り着いたのは数ある洞窟の一つ。人の手は入ってなさそうだ。
入口のそばでも風が凌げるからか、暖かく感じる。
ぷるぷると身体を震わせて雪を落としてから、丸まって目を閉じる。
この雪の中、山中を越えていこうと考える者はそうそういないだろう。