2024/12/08 のログ
■ナラン > すっかり油断していたから、とはいえるが、そもそも彼の腕に掴まって逃げおおせた覚えがない。
だから本当は捕まる前に逃げなければいけなかった。
(そういえば、そうだった)
肉食獣の前に据え膳された、わざわざ調理済みの草食獣よろしく空しくじたばたしながら女はまた『この感じ』を思い出す。叶う事のない脱出と解っていてももがいてしまうのも含めて、既視感を覚えてしまって女は頬を朱くしたまま困ったように眉を寄せる。
「もう少しも何も
ですから、私は食べられません と ――――ひぅ ん!」
女は髪を編んでいるので、項は無防備とまでは言わないが探り当てるのは容易だ。
彼の嗅ぐ気配が頭上からするすると降りて来るのに予感がした身体がびくんと少し跳ねる。そのまま噛まれ、あまつさえぬるりと項を伝う感触まであれば悲鳴が零れそうになって、半分を何とか飲み込んだ。
女の項をねぶった彼の舌は、ぞくぞくと肌を粟だてた滑らかな肌の感触が感じられるかもしれない。
そうして女は更にじたばたと藻掻く。これ以上何かここであったら、何だかはしたない悲鳴を上げてしまう気がする―――その危機感に顔を赤くしながら。
「はい、 もう 少しは 終わりです!」
■ヒュー > ふっふっふっとばかりに腕の中に捕まえた相手、男は楽し気に腕の中の相手にまとわりつく様は妙に緊張感があるかもしれない。
藻掻く相手になれた物とばかりに男の腕は相手を捕え、その動きに柔軟に反応しながらも逃がさずにいて。
久しぶりの感覚と相手の抗議の声に小さく笑いながら男はついつい項を甘く食み舌でぬるりと舐めあげれば相手の肌が粟立つ感覚を感じながらも皿にじたばたとして、一方的な終わりを告げられれば男はさらりと引く代わりに、興奮とちょっとした怒りと羞恥に赤くなる頬に口づけを落とし離れて。
「ふむ。 仕方がない。 ではまた後でがっつりと…。 味見程度しかできなかったが旨かったぞ?」
等と男はどこか悪戯っぽく相手の耳元に囁きを落として。
「さて、久しぶりだからな、ここからの案内はナランにしてもらおうか… リクエストはナランと肉が食べたい。」
そんなおねだりをしながら男は肩腕に酒、片腕にナランの肩を抱いて。
■ナラン > すっかり赤く熱くなった頬に落とされ、彼の身体が離れると女は一瞬呆然としたように動きを止めて、それからはあーと肩で大仰に長いため息をつく。安堵と―――すこしのさびしさをまじえて。
「がっつりともなにも、わたしは 食べられません。
…… 気のせいだと思います」
彼の舌が触れた辺りを片手で撫でながら、女は彼と対峙するように振り返る。頬は熱いしむくれたように口は尖ってしまうがこれはもう仕方がない。不機嫌にじっと見上げて、旨かった、という囁きには一瞬絶句した様に唇を動かしてから、再び唇を尖らせて言葉を返した。
「…港の傍ですから、近い場所は魚を売りにしている店が多いです。
だから、街中まで少し歩きますよ」
女は憤懣やるかたなしと言った風情でまた吐息を着いて見せる。だが、肩を抱く暖かい腕は避けようとする気配はない。そうして歩き出す途中で別の露天商に彼女の稼ぎを託して
二人一緒に、港を街の方へ出る事になるだろう。
「…船旅はどうでした?」
道中、女から口火を切る。天気と波はどうだったのかとか、そもそもの依頼はどんなものだったのだとか
ある種雰囲気を誤魔化すように、矢継ぎ早に彼に質問を投げた。
――海自体、あまり馴染みが無いんです。
と最後に言い訳めいて付け足しを。
■ヒュー > 「む。それはいわゆる見解のそーいというやつだな。」
くつくつと男は笑いながら応え、大仰にため息をつく相手の様子を楽し気に見詰め。
気のせいですとか男の言葉にいちいち唇を尖らせ抗議の声を上げ、憤懣やるかたなしといいながらも、肩を抱く腕から逃げない相手に男は小さく満足気にうなづき。
「船旅か─。」
天気は途中で嵐に合い、船のマスト上部にあるもの実よりも高い波を受けたり、一点凪で船が海流に任されるままに進むしかなかったが水平線だけの海の雄大さを身振り手振りを交えて話しをしていて。 依頼は海を渡った先の大陸の情報収集やら調査。 思いのほか連絡をする手段がなかった等と呟きを漏らしたりしながらのんびりとした足取り相手の歩幅に合わせて二人で進んでいく。
■ナラン > 海上での話を聞いていると、不機嫌そうに肩を怒らせていた女の身体から段々と力が抜けていく。
彼の話の合間に、それで、とか 時には感嘆の声を上げながら、景色は網やら小舟やらが見える漁港のものから、街―――ダイラスの歓楽街のものへと変わっていく。
「… そう、ですか」
連絡手段についての話にはひとつ、言葉をこぼして
兎に角無事に戻って来てよかったです。と前を向いたまま言った後、女は笑みこぼした顔で彼を見上げた。
「―――あそこです。
猟師の方に教えて貰ったので、肉は家畜よりジビエが多いですけど」
言いながら女が指さしたのは、ハイブラゼールでも歓楽街からは一歩入った路地、所謂卸の商店が多い界隈の一つの店。店の看板も『卸』と銘打ってはあるが、夜は酒場もやっているものらしかった。
当然片手間のような商売なので、店の入り口は商店と同じだし、店に入っても飲食用のテーブルと机は適当な大小の木箱、本来の商店を区切った隅にあるようなものでとても広いとは言えない。
それからでかでかと壁のあちこちに
『飲み物はエールしかありません 店主』
という張り紙。
それでも十ほどある席は埋まっていて、客は体格のいい男ばかり。殆どが仕入れ業者仲間かも知れない。
女は店に入って見回すと、隅に空いた席を見付けつけて肩を抱く彼の腕にするりと自分の腕を絡めて引いていく。多分これなら、肩を抱かれていというよりは彼の腕を引いている様に見えるはず。
「…お酒はエールだけですけど、その代わり幾ら飲んでも品切れと言うことは無いそうですから」
女は席に向かう途中、そういえばお酒の内容を失念していた、と半ば申し訳なさそうに彼を少し振り返った。
■ヒュー > 僅かに遠くなる波の音と潮の香、案内してたどり着いたのは路地にある繁盛店。
中々強気な張り紙にフムフムト頷き、相手に腕を引かれるるままに脚をすすめ、ガタイの良い男たちの間をすり抜けて。
「ふふエールだけでも問題ない。 それに久しぶりの飯をナランと食べるというのが大事だからな。」
申し訳なさげに振り変える相手に男は古りと首を振り応えながら、問題ない事を強調する様に相手の手をぎゅっと握り、むしろ楽し気な笑みを相手に向け。
席に着くと目についた肉を適当に頼み、男の強い酒は置いておいて、ナランのために買ってきたワインだけはチップを積んで目こぼしをしてもらい。
「そういえば、俺が出ている間ナランはどうしていたんだ?」
等と、今度は男が相手のことを聞き始める。
賑やかな店内程よい距離で肉が出てくるまでのんびりとした会話を交わしていく。
■ナラン > エールだけで問題ない、という応えによかった、と笑みを零す。
席に着くとそこには獣と部位の名前が書かれたリスト。調理方法は基本串焼きで、お任せと言うことも出来るらしい。
そんな店の仕組みを女が伝えるまでもなく
あらゆる酒場に慣れているらしい彼が、持ち込みの酒にチップを払ったりまごつくこともなく注文を終えたりする様子を女はすこしだけぽかんとした様子で見ていたが
彼から質問を向けられてから二つ瞬きをして、考え込む様にテーブルがわりの木箱に視線を落とす。
「…そうですね、いつも どおりです。
狩りをして、お金が無くなったらギルドの依頼を受けたり、傭兵の仕事をしたり――
そういえば、今度どこかにパンをを焼けるようなかまどを作ろうと思って」
とはいっても森を点々とする暮らしだ。 使い続けるのは難しいかも知れないけれど、隠しておいて 必要なときに使えるようにできれば。
そんな事を考えていたと告げている間に、彼の分のエールが運ばれてくる。
「自分でパンが焼けるようになれば、今日みたいな料理も作れますし…」
■ヒュー > 久しぶりながら去りと注文をすれば、その様子を何やらぽかんとした様子で見られていて。
男はア小首をかしげながらもどう過ごしていたか聞いてみれば、普段通りの生活と聞けばふむふむと頷き。
最期に竈門をと聞けば興味が湧いたようで。
「確かにそんな大きくなければ作れるな。」
煉瓦でつくるとやや大仰すぎるが、泥で作るのでは雨や雪で劣化が早い。
痛しかゆしという所で、男の前にはジョッキに入ったエール、相手の前にはグラス。 男はいつのまにやらコルクを開けたワインを空のグラスに注いで相手の前に。
「ほう。今日のような料理が気軽に食べられるというのは魅力的だな。」
頷きながら、ふとした時にねだったりするのも良いな、等と食い気に支配されやすい思考。
何はともあれとグラスを持ち上げ、久方ぶりの再会に。と小さく告げてから乾杯の為にジョッキの取っ手を掴み軽く掲げる。
「場所が決まっていれば後は作るだけだな。 俺ももちろん手伝うぞ?」
愉し気にジョッキに口をつけエールを流し込みながら言葉を向けて。
■ナラン > 「できれば、とは思っているんですけど…
ひとつ、作っておけば色々料理も出来ますし、冬はついでに暖も取れると思うんです。
―――あ、すみません ありがとうございます」
グラスに酒を注いで貰うと、先ほどのチップの件を思い出して謝罪と感謝が混じった言葉を口にする。
彼の乾杯に合わせて微笑んでグラスを掲げると、一口、くちに含んで 喉に流し込む。香りとともに渋みがのこる風味が、先ほどまでの肉の香りを鼻腔の奥から拭ってくれる気がする。
「場所が、なかなか決まらなくて。
川の傍が良いとは思うんですけど、水浸しにはならな場所がいいとも思いますし…」
考え込む様に言いながら、グラスの淵に唇をつける。そのまま、飲むでもなく ただ香りを嗅いでいるかのように留めていると、ふと思い出したように視線を上げて彼を見る。
「そういえば、ここの店主さんに燻製の作り方を教わって作るようになったんです。 今度、おすそ分けしますね。」
チーズと干し肉があります、と笑う女の頬は早くも少しほの朱い。
ご案内:「設定自由部屋」からナランさんが去りました。
■ヒュー > 「なに。ナランと旨いものを気兼ねなく飲み食いする意味でも稼ぎに行っていただけだからな。」
愉しげに笑って答え、ぐビリと飲み込むエール。
「川の傍は少し緩かったりもするからなぁしかしながら遠い歯とおいで不便だしな。」
等と相槌を打ちながら干し肉、燻製という言葉に目を輝かせて。
「ほう。それは楽しみだ。 チーズと燻製か─。」
会話を重ねながら穏やかな時を過ごしていくのであった。
ご案内:「設定自由部屋」からヒューさんが去りました。