2024/11/28 のログ
ヴァーゲスト > 浄化の煙とやらはだいぶ甘い芳しい食をそそる香り。
って芋を炙ってる匂いじゃねぇか?と、心の中で自分に突っ込みを入れて、
幾度目かのお酒の香りがいまだ残る吐息を吐く。

だーめだこりゃ。
判断力が低下し過ぎている、休憩を選んで大正解だ。

向かいではなく隣に、と何処に腰を掛けようが自由ではあるが、己の隣に腰を掛けた相棒に向ける表情は未だ炭を舐めたような苦い笑い方である。

魔石に関しては言葉にした通り人間にはわからん味だ。
己が魔族であるから、あるいは魔族でも稀有な一族だから、
だから味を感じている可能性があるのだが、いちいち会うやつ会うやつに魔力って美味しい?何て聞きやしないのでわからない。

だが、相棒の発想は凄く面白い。
そうだよなー……どうせ酔うなら。
酒につける、そうすりゃ少なくとも己には旨い酒になる。

そのアイデアに苦みを噛みしめるような笑みを止めて、
真っ赤な顔でへらりと口元に軽薄な浮かべた。

「いやー?酒に漬けるのは悪くねぇアイデアだな。
 ニンゲンにはわからなくても、オレにはわかる。
 つまりオレ専用の酒になるってわけだし。」

うんうん、と縦に首を振る。
首を振ると頭が揺れて少々気持ち悪くなるが、耐えた。
そしてまた一口だけ水筒の中の冷たい水を喉へと流し、
キュと蓋をしめてから鞄へと戻すと、座っている柱を尻で磨きながら身体を相棒の方へと向ける。

そのタイミングでひょいと投げられた炙り芋の半分を開けた口でパクっと受け止めて、
炙られた事で程よく柔らかくなった芋を齧り、途中で手で芋を掴んで食いちぎった。

「そうだなー……今こんな場所でなきゃ子守唄よりも、
 聞きてぇ声はいろいろあるんだがな?
 酒も望んじゃいねぇがいい具合に回ってるし、
 視線の先には可愛い可愛い相棒がいるしな?」

何て、隻眼をすっと細めて意味ありげな視線を相棒のふっくらと艶ののった唇へと向けてから、
酒臭い息を繰り返し入っているガッサガサの乾いた唇を相棒の唇に近づけていき、
唇を重ねるような角度で近づけておきながら、隙あらば相棒の鼻でも食んでやろうと、悪戯を企てる。

ドリィ > 隣に座ったのに他意は無い。──いや、あるかも。
酔った男の傍に座して構いたくなるのは商売女の癖のようなものだ。
後は単純に、酔いに弛んだ男の忍耐に、少しばかり仕向けた可愛らしい悪戯心のようなもの。
つまりは激戦を終え目的を完遂し、女も僅かばかりに気が抜けているらしい。

「ナニソレ。ヴァーゲスト用のボトルキープぅ? 
 あたしが美味しく飲めないと意味ナイんですけどぉー…」

まあ、一本くらいは漬けてみてもいいかも知れない。
一口飲んで不味ければ男にやれば良いのだし。
正直なところ女も厳密にはヒトでは無い。
ひょっとしたらひょっとして美味しいかもなんて──…多分無さそうだけれども。  
 
「酔っ払いさんにしては賢明な判断だこと。
 もぉ少し酒が入ったくらいがベストな声を聞かせてあげられるんだけどー…ぉ、
 生憎“燃料”の持ち合わせが切れちゃったみたいなの。」

宣う口振りの滑りは相変わらず滑らかで、蜜を孕んだ甘やかな愛嬌を含む。
男の半分を寄越し短くなった芋を口中に押し込み咀嚼し終えて指をちろと舐め、
男と見遣れば、思惑をのせた男の荒れた唇が直ぐ傍にあった。
あら、せっかく褒めたのに我慢が利かなくなったクチかしら、と意外に思えばこそ
ゲームの行方を見守るよに、女はその唇を薄紙一枚の距離まで避けることをしなかった。
ただ少しだけ重なる唇に備えて双眸を細め、視野を狭くした、ときに。

「 ッ、」

かぷりと鼻梁を食む唇があったなら、女は途端に双眸を丸め。
少し遅れて眉を顰めることをしてみせる。
 
「もぉっ…酒の匂い、ヒド。 あとはぁーー…… 唇荒れすぎ。」

成る程そういうことなら、芋に続いて、ひょいと放り渡すはもうヒトツ。
蜜蝋とハーブを練ったリップバーム。
キスはお預けだ。ガッサガサの唇が触れるに心地好くなるまで、暫くは。
…まあ、リップバームは酔いの詫びと、男の忍耐を讃えて差し上げようじゃないか。

他愛もない語らいは闇の間隙にささやかに続くことだろう。魔を退けし燻煙が途切れるまでもう少し───。

ご案内:「無名の迷宮」からヴァーゲストさんが去りました。
ご案内:「無名の迷宮」からドリィさんが去りました。