2024/11/27 のログ
ご案内:「無名の迷宮」にヴァーゲストさんが現れました。
ご案内:「無名の迷宮」にドリィさんが現れました。
ヴァーゲスト > ――…口の中の相棒の手作り料理、をごくりと嚥下する。

酒も女も博打(ギャンブル)も嗜む男である。
普段の調子であればどんなに強い酒でも軽く酔いはしても、
此処まで一気に酔う事は有り得ない。

一人酒ならともかくとして、誰かと酒を嗜む時は酔い過ぎると相手を口説く事が出来なくなるので、
いい具合に酔いを楽しんだところで体内に魔力を巡らせて酔いをセーブする。

だが現状はこの場で飲むのは酒ではなく珈琲で済ませる予定だったのと、
あまりに魔石に含まれる魔力の純度が高かったのでつまみ食いしたのが良くなかった。

結果として許容以上に酒が回り、軽度の酩酊状態。
軽くはあれど想定外の酔いに、頭の中でヤバっと思った時には魔力を巡らせまで意識は集中できず。

はい、結果として1匹の酔っぱらいの出来上がりである。

ンッ、ンッ……と、咳払い。
特に理由もなく、咳払い。
顔が熱いのは自覚ある、冷たい何かが欲しいくらい。

瞼は重くはないのだが、とろりとした隻眼を引き締められず、
誰が見ても判りやすいくらいに寄った顔になっている、自覚あり。

「い、いや、この程度、は…余裕、のはずなんだが、
 アレだつまみ食いした、魔、石、が良くなかった。
 いや味は、よ、かったんだが、魔力が、な?」

呂律は回ってる、良し。
落ち着け、落ち着け、と己に言い聞かせるように、肺に空気を溜め込んで、ゆっくりと息を吸い、酒臭い息を吐く。
アルコールと魔力、それが身体を巡る高揚感と酩酊感、
いろいろな意味で暴走しないように、ここはまだ迷宮内であるからして……。

「とりあえず、とりあえずだ。
 回収は済んだか?拾い残しは?
 帰還する準備は大丈夫か?」

魔石どころか、相棒をつまみぐいしたい衝動が沸くのを何とか誤魔化しながら、
普段でも美味しそうなのに酒のせいで普段以上に美味しそうに見える相棒に問い、
三十過ぎの男には似合わないだろうが首をかしげて見せる。

右手で自分の頬の片側をつねりながらである。

ドリィ > 一方、女は。男の変化を興味深く観察していた。

その反応は明瞭だった。まるで下戸に火酒を呷らせたかの如き──
或いは店に初めて訪れた童貞少年の唇に、チップスを一枚あーんしてあげた時のような。
なんとも初々しくも顕著な、分かり易い赤ら顔であり。
しかしながら男は下戸でも初見客の童貞少年でもなく、壮年の酒飲みである。

状況を取り繕うような咳払いと共に男が弁明を口にする。
女の双眸は珍妙なものでも眺めるよに男の様子を眺め遣りつつ、
魔石屑を思わずしげしげと見比べて。

「…魔石ってそんなに度数高いものなの? あたしも囓ってみちゃおうかしら。」

勿論冗談ではあるのだが、ここまで覿面に効いてると真似てみたくもなる。
帰ったらちょっと舐めるくらいはしてみようかしら等とこっそり思いながらに

「回収は一先ず済んだけどソッチこそ、だァいじょぶ?
 顔、ファイアウィスプに炙られたみたいに赤いけどぉー…。酔っ払いのカオしてる。」

相手の内心を知ってか知らずか、己が頬を抓る男の仕草を倣うよに、
女の長く白い指が男のざらりとした頬のもう片方に軽く触れ、抓るを素振りだけ真似て、離れた。
一応、腹いせに悪ノリを食わせた責は感じているのだ。これでも結構。
そしてここは未だ危険な迷宮内であるからして、酩酊の程度によっては帰路も危ぶまれるし。

「少し休んでから経ってもイイけどー…」

魔石と戯れる屈み腰から曲線美を誇示する体躯を立たせつつ、どうする? と小頚傾いで問うた。
石が放つ濃厚な魔力の残骸を嗅ぎ付ける魔物が現れる前にこの場は離れるけど、
少し戻ったところに比較的安全そうな場があったのは互いに知るところだ。
勿論、女的には小休止に他意はない。全く以て欠片もない。

ヴァーゲスト > 数か月……否、数年に一度の酩酊状態。

年齢を重ねそれなりに精悍な顔立ちの相貌は耳の先まで赤く、
黒い隻眼もほんのりと酔いで蕩けた危うい色合いを宿しと、
後で思い出して悶え苦しむような顔になりながらも、
諸々余計なことは言うまい、すまい、と自分の片頬を引っ張る事で酩酊の沼に沈む理性を呼び戻さんと。

「高い、間違いなくいい純度の魔力を宿している。
 それは保証する、味わいも深く、魔力の濃度に濃く深く。
 今のはコクと濃くをかけた冗句ではないぞ……。」

何を言ってるんだ己は。
あ、と大事なのは味のことではなくて「齧って歯が折れてもオレは一切責任はとらん、自己責任でどうぞ?」と言葉を慌て繋げると、無駄な咳ばらいを一つ。

なんてしている内に自分の手ではない、どこか冷たくも感じる相棒の白く長い指先に抓んでいる方とは逆の頬を触れられて、
ンッ、とまた咳払いの無駄打ちを。

ふれられた頬はファイアウィスプに焙られたように。
若しくはサラマンダーに舐められた後のように赤く、熱い。
――…相棒の指先は酷く心地よかったのは心の奥に秘めておくとして。

「……悩ましいところだな。
 出来れば此処から脱しておきたいところだが、
 今の状態だと足を引っ張りかねない、のも……なぁ。」

自分一人なら、なんとでも。
危険な目にあってもそれこそ自己責任であるが、
隻眼に映る相棒を巻き込むのは大変宜しくない。

床に触れている足裏に力を込めて、砂利を踏みしめる。
自分の頬を抓るのを止めて両腕に両手にすべての指先に力が入るか確認する。
最後に大きく息を吸って、酒臭い息を吐く。

……ダメだ本調子には正直程遠い。

「……少し戻って休もう。
 何1~2時間もすれば酒は抜けるはずだ。」

少し眉間に皺を刻んで、苦みを噛みしめるような笑みを浮かべて、
正直に休憩の提案を受け入れる。


酩酊、間違いなく酔っている。
そうでなければ、御休ってことか!何て鼻の下を伸ばしたが、
今はそれよりもオチも冗談もなく、ごく普通に答えてしまうのだった。
 
 

ドリィ > 見てくれの悪い男じゃない。野趣溢れる精悍さがある、脂の乗りきった男盛りだ。
そういう場馴れした男がこう、酩酊に些か調子を崩すさまというのは正直、眺めていたい趣がある。
実は結構、揶揄いたくなるし構いたくなっている。前職からの性分であり、悪癖だ。
勿論、探索地で迂闊な御節介は焼かないけれど。

「純度の高い──…ドワーフの炎酒を呷ったみたいな?所謂…魔力酔いってヤツなのかしら。
 そぉいえば、さっきから聞きたかったのだけど、魔石ってオイシイわけ?」

その癖、酔っ払いの上滑りの冗句は華麗にスルーをキメながら、
片手に残った魔石片とスキットルをポーチに仕舞い、採掘道具を手際良く収納して立ち上がった。

トントンとブーツの踵を数度鳴らして戦闘に酷使した靴底の踏み込みを確かめ。
瓦解したゴーレムの残骸を今一度眺め遣ってから、男を見、肩を竦めた。

「オッケー。せっかく稼ぎにもありつけたのだもの。
 下手を踏まずに帰りたいしね。──…ま、あとは帰るだけだもの。急がないわ。」

片手を軽く挙げて了解の意を示せば、早速歩き出す。
少しばかり歩いたところに地崩れにて生じた浅い横穴の遺構があった。
恐らく先程のゴーレムによる破壊だろうが、崩れた壁柱が即席の椅子にもなり好都合だ。
辿り付けば女はてきぱきと魔除けの符を敷き、草を焚く。一種の探索者の間で流通する簡易結界だ。
ふぅっ。場を整えれば女は短く息を抜き。

「さぁて、見張りはするから休んで貰っても大丈夫よ。
 なんなら、子守唄でも歌いましょうか?」

によん、と笑みを刻む唇が男を揶揄った。
別段機嫌は悪く無い。寧ろ、トラブルはあれど、事を成し遂げた充足感すらあるくらいだ。
女としてもこのタイミングで休憩を挟めるのは有難い。携帯の糧食を囓り。

ヴァーゲスト > 兎にも角にも安全な場所へ移動が優先だ。
相棒からの質疑応答は後の楽しみに取っておくとして、
何だ普段以上に相棒がやたら絡んでくるように思えて、
薄すらと苦みを帯びる笑みは嫌悪ではなく、少々困った風で。

相棒の美貌はこんな時は非常に毒である。
蠱惑的なプロポーションは言わずもがなだが、
愛嬌たっぷりの夕暮れ色の瞳と甘い言葉を奏でる唇が、毒。
こんな場所で無ければ、等と考えてしまう自分に小さく首を横にふり酒の香りたっぷりのため息を吐き出した。
そして色々と誤魔化すように親指で自分の顎を擦る。

少しばかり移動したのちに、たどり着いた先は浅い横穴。
確かに休憩するには手ごろな深さであり、尻が痛くなりそうだが手ごろな椅子もある。

ひとまず近くに背負っていた魔石満載の背負い鞄を下ろし、
それから相棒が結界を敷く姿を隻眼で眺めながら、柱の一つに腰を下ろした。

情けない。
まったくもって情けない。
もう少しビシっと格好よく終わりたかった。
それか傷を負うとか格好のつくダメージの負い方をだな。

「……ドワーフの火酒って例えは悪くない。
 こう濃度と純度の高い酒が喉を通り、胃に落ちて、内側から焼くような……。
 ああ、正しくは酒ではなく魔力で………。」

――…頭がまわらん。
いい言い回しも言葉も単語も喉から出てこない。
出てくるのは自分でも酒臭いと思う吐息。
言葉途中でクククッと喉を震わせ自分の現状に笑うしかなく、
「あー……。」と一度言葉をこぼしてから。

「美味しいか否かって言われたら旨い!
 が、ニンゲンにゃわからんと思うぞ?
 所詮は魔石だけあって石だしな?」

言葉の終わりに両肩を大きく竦めてから、おろした鞄から本来なら珈琲用に持ってきた革袋の水筒を取り出し、
蓋を捻るとすぐに口をつけて水を煽り飲む。

腐らぬように状態維持の魔法が付与されていたお陰か、
水は大変冷たく心地よく、誰もいなかったら頭からかぶりたいくらいである。

――…流石に着替えも何もないこの場ではやらないが。

あー……でも、子守歌は悪くないかもしれない。
でも、子守歌よりも、………膝枕だな、と……。
流石に口には出さないが、隻眼の行き着く先は肉付きよく大変二つの意味でおいしそうな相棒の太ももに。

ドリィ > 場に符を敷き、その上で草を焚けば馨しい独特の煙が薄く流れた。
浄化の煙が白んでいるうちは或る程度の魔物に不可視であるという。
その燻し火で糧食を炙るなんて罰当たりを何食わぬ風情にしてしまうのも冒険者ならではの所業であり。
端が焦げて甘く柔くなった芋を唇に咥え、噛みながら──…女は男の座るそれの隣、
入口に近い柱の残骸に、豊かな尻を置き、脚を優雅に組んだ。

「へぇー… ソコ迄言われると、やっぱり囓ってみたくなっちゃうかもぉ。
 でもそのまま囓るのも味気ないし ンー… やっぱり酒に漬けたりとかかなァ…」

男の、些かおぼつかぬ語りに相槌を打つ。
彼を見遣る視線が妙に愉しそうなのは、その語りの語彙の減退を自覚してそうな表情が酔っ払いのソレで、
実に観察に飽きず可愛らしいなどと思っているからだ。

得物のナイフを手入れしながら、傍らのスキットルを傾け、口中を潤し。

「あァ、そっか。ヒトが囓ってもワカらない味覚ってヤツかぁ。
 それじゃあやっぱり酒漬けもナシかしらー。」

少しばかり詰まらなそうに女の甘ったるい声が語尾を伸ばして諦めを告げた。
再び傾け口づけ──かけて、スキットルの中身が空なのに気付き、片眉を跳ね上げた。
残念。此処から先の復路は断酒らしい。

何とはなしに水筒傾ける男へ向いた視線が、己が太腿に留まる男の隻眼を捉えた。
十全を悟る訳でも無いが、そういうささやかな色の機微を察するのは慣れている。
女の眼差しが、僅かばかりに悪戯な色を含み細められ。
弛く組んでいた脚を、悠然と組み替えることをする。

「御所望は子守唄じゃあない───…そぉんなカオ。 クふっ。」

囓り千切った芋の半分を、ひょいと投げて寄越し。