2024/11/20 のログ
■ヴァーゲスト > 振り払おうとすれば容易く振り払えるはず。
なのに、男の性(さが)というべきか、或いは相棒の迫力に負けてか、振り払えずなすが儘。
勢い良く端折られた呼び名に抗議の声を上げる事もできず、
ただこの場をやり過ごす事に全力を尽くすのだが、
夕暮れ色の眼差しに勝てず、何とも言えない表情を浮かべた。
「アハ、アハハハ………。
はい、その、ゴーレムの………。」
歯切れ悪い口ぶりで言葉を何時になくモソモソと紡ぎ、
気まずそうに少しだけ苦みの混じる笑みを浮かべ直し、
最後まで言葉を紡ぎだして問いかけ?に答える前に、
小さく呟いた今言うべきではない言葉を聞かれたようで、
マズイ!と言わんばかりの表情の後に隻眼を夕暮れ色の視線から逃すように俯き加減に逸らした。
が、それがいけなかった。
鼻孔を擽る火酒の匂い、肉に振りかけられ、魔核の粉末に彩られ、嫌な予感に首を横に振る前に――…口の中へ。
「んんっ!!!!!んっ!!!!!!」
美女の手であーん、ではロマンであるが、それは今ではない。
無理やり口に放り込まれるとそれはもう咀嚼するしかなく、
魔核の高純度の魔力に加えて火酒の文字通り燃えるようなアルコールと肉のスパイスとで、
――…顔が見る見る赤く染まっていくのを感じるし、
実際酒に弱い人間が無理やり酒を飲んだ時のように、
顔が真っ赤に染まっていくだろう。
酒だけでは中々弱い。
魔石を噛み砕いたところで酔いは遠い。
だが、その二つが組み合わさると、どうなるか。
更に干し肉のスパイスが相乗効果でその酔いを深めていく。
魔力酔い、酒酔い、スパイスによる効能
……つまり結果として魔族でも酔う状態に。
少なくとも、男はその酔いから逃げることはできず。
すぐにも隻眼が少々とろんと眠たげなモノに近しい色へ。
■ドリィ > 存外、素直で単純な男というのは可愛らしいと思えてしまうもの。
弁を弄して煙に撒こうとする男よりも、彼の分かり易い挙動は、この女、嫌いでは無いのだ。
とはいえ、そこで一緒にアハハと笑い合うも癪であるし、
そこはホラ、彼を雇った側としても、甘やかすもどうかと思う。──ので、
仕置きというか厭がらせというか、気の紛らわしというか。
この期に及んで暢気を宣う男の口を塞ぐには、御期待に応えるしかないだろう。
まあ、大丈夫なのではないかと思う。
だってさっきまで魔石をがりがりぼりぼりさせてたくらいなのだから。
なので、その艶やかな形良い爪先が魔核というスパイスをたっぷり散らした乾し肉を摘まみ、
男の口に放って、ぐいと肉を舌の上に押し込むまでしてやり、指を離した。
「おーいし?」
悪びれぬ顔にて、問うたなら、己はスパイスと香草を漬けた火酒を
ぐびぐびと自棄酒の如くに呷りつつに、男の反応を窺おうか。
斯くしてその“反応”は直ぐに現れる。女が双眸を丸くするほどの顕著さで。
まるで下戸が酒を呷ったかの変化は、女にしても意外であったのだろう。
きょんと双眸丸くして、男の顔色が茹で蛸めいて赤くなり、
そして弛緩しだすに到って、
「──…ぉ。 そんなに効いちゃうカンジ?」
興味深く観察していた女も、この男まさか寝てしまいやしないかと不安になる。
つまりは流石の魔核。覿面ということなのだろうけども──。
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