2024/11/14 のログ
■ヴァーゲスト > これはアレだな間違いなく100点満点中2000点の出来だろ。
喰えないのは残念だが、それはそれ、これはこれ、この稼ぎで、
美味いものでも食べればトントンだ…あだだだだ!!
落ち着いた土煙の向こうから飛散した瓦礫を越えて、
勝利の女神か相棒かって女が近づいてきて、耳朶を摘ままれると結構痛い。
捻る指先のピンチ力ではなく艶やかな爪が刺さるのだ耳に。
痛い、血は出ないが相当痛い、痛いうえに鼓膜を破らんばかりの声に耳がキーンっとキーンっと……。
「先に伝えたら切り札じゃねぇだろー?
使うつもりなかったし、いいじゃんか………。
男のロマンだぞロマン………。」
解放された耳を手で擦りながら、抗議の声を一応。
ここで負けると未来永劫尻に敷かれる可能性が……。
まあ相棒としては今回の依頼限りかもしれんが。
「……少なくとも耳がおかしくなるくらいにセクシーな声だったは認めてやる。
おーっまだ耳がキーンっとしやがる……。」
言葉ほど不機嫌ではない表情を浮かべながら、
背を向けてゴーレムの残骸のそばに屈みこみ採掘っぽい事を続けている相棒の言い方を真似て嫌みの一つでも飛ばすと、
立ってるだけもアレなんで屈託のない笑みを浮かべる相棒を横目に、
魔石塊を近くに落としておいたバックを拾って中に詰めていく。
見た目以上に容量の入るバックなので大丈夫かとは思うが、
いかんせんギガントゴーレムのサイズがサイズなんで、どうだろうか。
あと腰砕けにしたいのはこんな岩の塊ではなく相棒のほうだし、
できれば相棒の声で腰砕けにしてほしいものだが、耳がきーんとするレベルは勘弁願いたい。
なんで、まあ働こう。
さっさと仕事を済ませて打ち上げで浴びるほど酒を飲むぞ、と。
どや顔は終売。
今は再び隻眼を細めて軽薄そうな笑みを浮かべ、魔石塊を拾う作業に従事するのであった。
……小さな破片くらいなら齧って食べれないだろうか。
ふと興味は沸くのだが、今は拾って拾って拾わねば……。
■ドリィ > 「ロマンよりもぉー…相棒への配慮が先、でしょ!
耳塞いででもゾワゾワしたし、思い出すだけで…もぉ、ナンかこの辺が…」
男の抗議なんて、爪先でぱちりと弾いて返してやりながら、
頚の後ろ、項のあたりを気にするように女が片手で撫でた。
男の声は嫌いじゃない。寧ろ好ましさすらあったが、これは由々しき前言撤回案件である。
なにはともあれ、一喝に気は晴れたので、女はお宝回収に勤しむこととしよう。
傍らから途中嫌味めいた声が降ってくるも、女の意識は既に採掘に向いているが故。
視線すら向けずに、
「あらそぉ? 耳にクるくらいにセクシーだったならご褒美かもー?ヤッタァ」
如何にも空返事感満載の適当っぷりで返しながら、トンカントンカンと岩を割る。
「コレ高そ♡」だの「ヤダ綺麗な色、かぁわいい」だの魔石を猫撫で声で愛でながら、
時折惚れ惚れと眺めてキスすら降らせながらに手際良く魔石塊を選り分け男へと渡そうか。
そして暫くそんな作業を黙々としていれば、軈てピッケルの嘴が捉えるは、
───が、きんっ。 一際大きく絢爛たる輝きを放つ特大の魔石核。
「ぁ。ゴーレムの心臓、発見♡」
女の喜悦が一際大きく、その双眸が笑い猫のよに三日月を描く。
それは長い歳月に培われた育った、超級のお宝であったろう。
艶やかで深い濃紫の結晶は眺めているだけで吸い込まれそうな魅惑と魔力を擁し、
渾沌たる濁りと夜闇の透徹を同時に孕むかの彩を宿していた。
これを持ち帰れば一攫千金。否──売るも惜しい逸品であろう。
その処遇は後でじっくり考えるとして。そう、まずは。
女が慎重に、ピッケルを隙間に打ちあてた、瞬間。
「───… ェ!?」
石が。
男の一瞬にしてまるで薄氷に皹が敷き詰められゆくよに白濁し。
ぱき。ぴきぱきぱきぴき ッ。
「!???!??」
粉砕した。──────唖然。
思わずにフリーズする女の脳裡に蘇るは、
「水晶やガラスなど脆い物を破壊する」男の美声の“効能”に他ならず。
ご案内:「無名の迷宮」からヴァーゲストさんが去りました。
ご案内:「無名の迷宮」からドリィさんが去りました。