2024/11/06 のログ
■ヴァーゲスト > 少しお道化た物言いではあるが、女は前に進むと。
勝手ながら想像通りの相棒の答えに隻眼を細めてニィと笑う。
当然の帰結でだろうさ。
退路を断たれた程度で泣き喚き帰りたがるような女だったら、
宝の眠る遺跡よりもベッドの中に引きずり込んで、だ。
黴臭い砂の粉塵の中より見えた眉を顰めた女の顔と、
その言葉に喉を震わせてククククッと楽し気に笑って。
「当たり前だなぁ。
折角の招待を断っちまったら男が廃るし?
何より手土産の一つも持って帰らねぇと割にあわん。」
手元の地図に印を描く慎重かつ丁寧な仕事の相棒に、
頼もしいやら、何やらで、己が不足している部分を的確に補う女の姿には少しばかり惚れそうになる。
もちろん男女がどうとかではなく、冒険の相棒としてな。
歩き進める道は相棒に任せ、己は罠を踏まぬように進む。
この道の先はどうなっているかは相棒に任せよう。
魔物でも現れれば次こそ己の出番である。
目的地に着く前に少しくらい活躍の場が訪れる事を祈りながら、女の隣をつかず離れず歩く。
「……今更だけど少し休んでからいくか?
魔物の奴らは休業中だけど、この先何があるかわからねぇからさ。
例えば罠とか、罠とか。」
相棒の方を見ずに軽口交えて尋ねる。
罠を抜けたばかり、次は何が待っているかわからない。
こうして背後から奇襲されにくい状況も滅多になく、
休みなら今のうちと考えて。
■ドリィ > 「そぉねえ。それにー…相棒のイイトコロ、一度くらい拝んで帰らなきゃあ。
今帰ったら、手土産どころかギルドに土産話もありゃしないもの。」
態とらしく流し目をくれ、愛嬌のある夕暮彩を僅かばかりに大きく開いてみせては男を見遣る。
口振りの巫山戯た風情は、実力がゆえの余裕に裏打ちされたものだと──思いたいところ。
魔物が現れぬに越したことはないが、多少なりと男の実力には興味があるのだ。
手帳を腰元に仕舞い、歩を進める。水溜まり一つに目を凝らし、
残響の幽かにも耳を欹てて進むことをする。
序盤にして二度三度と罠を踏むは流石に笑えないものだから。
それにしても、罠の発動に寄り付く魔物のひとつもいないのは僥倖か。
歩きはじめて暫く、そんな思いを汲み取ったかに男より提案が齎される。
確かに、小休止を取るなら今が最適なのやもしれぬ。
三叉路を越えたあたりから、空気が変わると地図にも書いてあることだし。
「───…確かに、休むなら今かもね。
もう少ししたら魔物の領域に突入みたいだしー…
今のうちに足を休めましょうか。」
一度、空間に視線を這わせる。不穏な音も──…大丈夫、多分。
ンッ。 小さく伸びをして。
■ヴァーゲスト > 「んじゃ、夜明けにゃ遠いが折角だし珈琲でも淹れますか。
オレ持参の安い珈琲豆だけどな!」
土産話の一つでも持ち帰れば酒代くらいにはなるが、
それも空振りじゃあ笑い話にもならないと、頭の中で打算計算しつつ、
休憩と決まれば徹底的に休むことにする。
たぶんであるがこの先は危険の度合いが増すだろう。
そう考えると休めるのは今しかなく、相棒が了承するなら仮眠もありだ。
相棒曰くの魔物の領域が近いということで、
下手をすると最後の休憩になることを想定しながら、珈琲の支度を始める。
こうして迷宮入り初めての休憩を入れる。
珈琲とおやつ代わりの角砂糖。
賞金稼ぎと冒険者はコーヒーの香りに包まれていく。
かび臭い香りよりも甘く刺激的な香りが休息する二人にひと時の癒しを……。
ご案内:「無名の迷宮」からドリィさんが去りました。
ご案内:「無名の迷宮」からヴァーゲストさんが去りました。
ご案内:「薬屋テント」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 王都を転々とする妖しい薬屋のテント。
人通りの少ない空き地で営まれる出入り口には「気力体力回復」「疲れた身体に」「元気いっぱい!」など、
日々の疲れに効くという売り文句の看板がいくつも立っている。
本日の薬屋は、そういった精力増強や疲労回復に役立つ薬の素材が大量に入荷したため、それらのタイプの薬の特化大バーゲンセール。
テントの外へと漏れ出す薬を煮詰めた桃色の煙は、心身ともに疲れ切った道行く人には、
これ以上無く甘く、匂いをかぐだけで飢えた部分を癒されるような…心と体の奥底の欲望を発散させてスッキリしたくなるような、
甘美な誘引剤となっていることだろう。
誰かがそのテントの天幕が開く気配がすれば、てとてと客の前に歩み寄り、
ぺこりとお行儀よくお辞儀するだろう薬師とは思えないほどあどけなく、
裸んぼうに桃色シャツ一枚という蠱惑的なファッションの幼く、可愛らしい子供店主の姿。
「いらっしゃいませっ…きょうは、どんなお薬をごきぼうですかーっ?」
下げた頭を上げた顔は少女のように長いまつ毛の中性的なもの。
つややかな黒髪からのぞく赤い目が捉えた客への挨拶は、ここを訪れたことのある客への定形のものだっただろうか、
それとも初めて此処を訪れた新規の客に向けてのものか―――。