2024/06/07 のログ
ご案内:「山窟寺院跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「山窟寺院跡」にフィリさんが現れました。
■フィリ > 「ぃぇまぁ。それにつきましては――私から見ても。 …とぃぅかひょっとすれば、同種から見ても――かと。思われますので。はぃ。
本当に、個体毎に千差万別なのですかと。
――…ん…家に着く猫など、も。例ぇ相手が主でぁろうと、構ぃ過ぎるのは許さなぃと……プライベート。大事。なのでしょぅか。
尻尾などでしたらともあれ。齧歯類様の歯による一撃とぃぅのは――どぅにか。遠慮したぃ所…なので、す。
形から。はぃ、とても大切だと思われ、まして。…習ぅのも、倣ぅ所から、とも言ぃますし。
まずぉ話出来るのか。…ハードルを其処に設定させてぃただく必要が、御座ぃますの…で。
――ぃっそそぅやって。話すのは苦手、とぃぅ事、それ自体。話のタネと言ぃますか、切っ掛け作りと言ぃますか――なるのかも。と。
…其処からまぁ、はぃ、興味や、趣味――の話等も。出来るよぅになってぃけましたらと…?」
そんな竜達の間同士でも。飛べる種が居れば泳げる種も居り、自分は――さてどうだろう。取り敢えず姿は変わらないようだが。
お互いに違う所が有って当然である、という事を。まず見てくれからも判るのだから。人以上に実感している事は確か。
そして、違っていて当たり前であるという事は。いっそ無理に揃える事はない、という理解にも繋がるだろう。
少なくとも少女が、自身の力量を見誤り。無理に補おうとする心配は無い――その筈だ。
勿論、他の竜や周りの者――彼を含め――に任せられない、少女自身が努力しなければいけない事も有る。
自分で他者とのコミュニケーションを成立させなければならない、というのは。その中でも大きな物だろう。
まだ見ぬ刀匠氏然り。目の前の毛玉先輩達だってまた然り。
取り敢えず猫で例えてみた所。『一緒にするな』と言わんばかりの目を二匹から向けられたので。
行動を共にするだけならともあれ、相互理解はまだまだこれから、と言った所…かもしれず。
「そもそも――はぃ。此方の遺跡もその類と言ぃますか。……偶然、見つかったそぅですし……其処まで。
其処まで全て、何者かの計算通りと言ぅか、演出とぃぅかは――ぁまり。ぞっとしなぃと思われ、ます……ぅぅ。
それこそ。其処までするのは、趣味に偏り過ぎてぃると思われますし――
後は、その。……矢張り夜と言ぅのは。ちゃんと寝るべきだと思われまして。
人間――こほん、半分含め、人間とぃぃますのは。夜行性になりきれない生き物なのではと…無理をしなぃに。越した事はなぃのです」
そんな偶然からお約束からテンプレートから。須く熟知している、人間の文化と冗句に精通した黒幕というのも。考えたくないものだ。
寧ろ其処まで演出に拘る位なら。一からどかんと迷宮を構築している気もしてしまう。
矢張り、地震で入口が出て来た、という点は。本当の本当に偶然だったと思いたいものの。
それではもし、誰ぞ魔物を召喚する者が居たのなら――という疑問。
取り敢えず宙でも舞えば来られる事は確定したが、翼在る者を利用する等、其処まで苦労して入り込むメリットが…小鬼達に有ったのかどうか。
改めて向こう側の遺構に、もしくは中途に見受けられる廃墟に。一夜を過ごせる可能性は有るだろうか。
…勿論それは。まんじりともせず、夕闇が落ちてから夜が明けるまで、耐久戦を過ごすという意味ではなく。
食事睡眠その他、体力の回復ないし温存を図れるか、という事だ。
例え彼が慣れているのだとしても。せずに済むならそれに越した事は無い。
――本当に本格的に、あの山中に広大な迷宮が拡がっていて。より時間を掛けて精査が必要になるのなら。お弁当一つでは到底足りない。一度出直す事も視野に入れるべきだろう。
経験を積ませる、という彼の思惑は良く解るし有難いものの…それで、二人共空きっ腹で追い詰められるのでは本末転倒だ。
願わくば、あくまでも寺院、という事で。本殿中心、それ以上は差程拡がっていないと思いたい。
そんな構造物が遠目に視認出来始めた辺りでの…ちょっとしたトラブル(という事にしておけ)を差し挟み。
「っは、ぁ、は――っ……は、…ぃ?
っぁ゛ー……成る程。畏まりました。少々ぉ待ち下さぃま――――………せっ!!」
貴重な遺跡の、もしかすれば掘られた頃には繊細な彫刻等も施されていたかもしれない壁面に。ばしばしと八つ当たりめいた平手をかましていた少女だが。
多少の間を置き、漸く意識も呼吸も落ち着いてきた……らしい。
最後、大急ぎで見えない所の身支度をやり直した為か、呼ばれて其方へ向かう最初の数歩が、少々危うかったものの。
置かれた弁当の回収は彼と、早速箱の中身を覗かんとして制止された二匹に任せ…前に立つ。
残り数歩、それで天井の無い空中回廊へと出る事となる位置取りにて。鞄から伸ばすように引っ張り出した魔鎚を、更にもう一段階、両手で構え振り上げる長さへと。
鎚という武器らしからず、丁度刀でいう青眼のような形で構え、目を閉じたまま真っ直ぐに振り上げ――落とす。
途端生じるのは、搾取――或いは捕食。鎚の模る竜頭が貪るようにして、叩いた地面に宿った力が引き摺り出されるのだ。
それが元から在る自然の物であるなら、些か申し訳なくなるのだが……どうやら。此処に在るのはまた別物、彼の想像した…後付けの何か、であったらしい。
何も知らず回廊まで出ていたら。或いは、回廊から次の山中に入ろうとしていたら。果たして如何なる罠が発動していたのだろうか。
少なくとも、一つ解るのは。
そんな罠を設置出来るような何かが居た――もしくは、今も居るかもしれない、という事だ。
小鬼程度で出来る代物ではない、魔術的なトラップを。
■影時 > 「ははは、だよなぁ……――血族から見てもそうなら、同族でもまた同じかも、か。諸々凄ぇやな。
そもそも、あれだ。猫もそうだが犬とかとは違うからな。
俺が出掛ける時はいつからもどこにでも付いてくるが、自分たちでまったりしてぇ時はある、って感じかねぇ。
様付けまでは、しなくて良いとは思うがね。とはいえ、変な荒れ方してくれンのだけは助かる。
……んー、そうさなぁ。仮に行くなら、あれだ。俺がこさえたぼたもちとか抱えて持っていくか?
フィリとあいつの間の共通項として、丁度俺が居る。
どういう攻め方、突っ込み方にしても、紹介状代わりになりそうなものがあれば、きっかけにも丁度良いだろう」
竜種もつくづく色々だ。赤竜青竜という色から、火竜地竜という属性的な違いなど、識者的な区別は多様だ。
人間の肌色の違い、人種の違いよりもっと多様ではないだろうか?
南国の人種は肌色が濃く、頑健な躰を持つとかナンとか聞くが、親から子の種が違うのは瓢箪より駒めいて不可思議過ぎる。
当事者的な視線から語られる内容に思わず腕組み考えすれば、釣られるように二匹の子分が前足を組む。
猫に例えられれば、「あいつらと一緒されるのは勘弁願いたいでござる……」と云わんばかりの視線を、二匹が少女に向ける。
今でこそ経験を重ねたこともあり、魔法が使える齧歯類となったわけだが、猫と鴉は苦手意識がどうやら強いらしい。
一々頷いていれば、特にシマリスにある発情期的な凶暴化を起こさないことに、ふふーんと胸を張る。
そのかわり、プライベートに関わり過ぎないのは大事にしてほしい、ということか。そんな気配と姿を横目に有難く思ってるよ、と肩を竦める。
そうしながら、思考を巡らせる。何事にも最初はあるが、一番手っ取り早いのは土産だろうか。
鍛冶師に必要な燃料、鉱石類の差し入れは主に己がよく行っている。
それらとは別に商談は兎も角として、コミュニケーションの手がかりには手土産がある方が良いだろう。
自分が拵えた菓子を持っていくように仰せ付かった、とでも言うのは、その手立てとなるかどうか?
「一々諸々計算ずくというのも、非常に疲れる話とは思うがね。
その手を好む策士の手合いは見かけたが、はたして真にそうだったかどうかは、俺から見ても疑念が過ぎる。
流石にこういう場所で昼夜問わずに動け、とは云わねぇさ。
……お誂え向きに空も覗けそうなら、昼夜も分からぬ探索行にはならんだろう。それに――」
策士、または劇作家、演出家、ともいうのだろう。起承転結、序破急までお膳立てするダンジョンメイカーとやらは、在り得るのか否か。
居ない、とは言い難いが、偶々の展開、事象の運び方が願った通りであれば、それを我が意を得たり、と吹聴するだけかもしれない。
真にあり得るとするなら、己が到来も弟子の急襲も含めて想定できたのだろうか?
そう思いながら、眼前の遺構を遠く一望する。廃墟ではある。堅固な石組みが残っていれば、強風になぎ倒された石積みの名残も見える。
高所故の風の強さもきっとあったのだろうが、原形を保つものならば、まだまだ風よけの役にも立つだろう。
それに、と一旦言葉を切りつつ、少しいやらしい目線で少女の顔、胸元、足元までを撫でるように見る。
――同じ昼夜も分からぬまでのことに浸るなら、もっとお好み、お誂えなものがあるだろう?
それをお互いに知っている筈だろう。そう示しつつ、置かれた弁当箱を回収する。
まだ暖かいそれは、お互いの鞄の中に入れれば、保温機能もあるお陰で出来立てを楽しめること請け合いだ。
どのタイミングで食べるかは、一通り探索を終えたタイミングで判断しよう。そう思いつつ、腰裏の雑嚢に自分と二匹の分を納めれば。
「……っ、とぉ……、色々諸々聞こえてきたなぁ。もしかするとそう使えると踏んでいたが、どうやら正しかったらしい」
ばしばしばし、と。恥ずかしげな連打をする少女の姿を見遣って暫し、大急ぎで身支度を整えた姿を見遣る。
恃むのは件の魔槌。それは鞄の奥で出番を待っている短刀と同じく、否、それ以上の一つの性質を持つ。
魔力を奪い喰らう。精気を奪う呪わしい道具、魔物は幾つもあるが、それらと負けず劣らずな勢いは一つの応用を見込める。
魔法的なトラップを破壊出来るのだ。複雑な魔力回路を張り巡らせたものに繰り出せば、忽ち機能不全だって起こしうるだろう。
場所柄、機械的な仕掛け、物理的な仕掛けを置きづらいと思えば、あるかもしれないと思った何かが、連続して破裂し、解呪の気配を匂わせる。
良い仕事だ、と。槌を振り下ろした姿に歩み寄り、頭を撫でて労ってみようと片手を伸ばす。
槌を戻し、弁当を仕舞う等、用意が整えば先を目指す。そのついでに路の左右にある廃墟を確かめるべく歩き出そうか。
■フィリ > 「はぃ。本当に、個体のレベルで別物と、なりますので――…どぅぃった理由か、等。
仮に法則が存在し、それを解明出来るのでしたら……なかなかに。貴重な研究成果になるのでは、と。
ただまぁ…サンプルと、言ぃますか。強力的な方…は。どぅにも居られなさそぅ、ですが。
矢張り大事、ですね。プライベート。…それだけ、個性とぃぅか自我とぃぅか。しっかりしてぉられるとも、思われるの、です。
少なくともその…私からぃたしますと。ラファルちゃん様同様、師事に於ける先輩となります…ので。
其処の所の敬意は、忘れなぃよぅに。してぃけましたら――と。
っぁ。はぃそれは、是非…是非。初対面の方の、ぉ好みとぃぅのは計りかねますので。
知己の方から、そぅして手土産頂けますと。大変に助かります、かと――」
例えば。人が根付いた地によって、肌の色やら何やらに変化が出て来るのを、更に細かくしたような。
その地に宿る力や属性。竜――にちなんで例えられる地脈のあれこれ。そうした物が露骨に反映するのが、竜なのかと思えば。
同じ王都で産まれた姉妹達すら、てんでばらばらなので。如何なる法則か…そも、法則が在るのかもさっぱりだ。
誰ぞ調べさせてくれれば、等考えつつも。例えば属性面で特徴の強い叔母等は――先ず、捕まらない訳で。
そんな叔母と同じ、彼の忍の下に於ける先輩と言うべきだろう…既に何かしらの術すら修めている二匹については。
序でに言うと叔母と違って、トラブルメーカーの気質はないし、寧ろ何か在ればツッコミを入れる側である。
その点に於いても有難い、というのは大袈裟かもしれないが。ともあれ少女が彼等に対し、敬意を払わない…という事は無いだろう。
…同様敬意を以て今後出会うべき、立派な匠。
話のタネを探る所から、とは言ったものの。そも会話の切っ掛けが無くては、其処まで辿り着くのも至難の業だ。
共通項となる彼が後押しとして、一品持たせてくれるというのなら。それはもう是が非でも、というべきだろう。
…というか。甘い物好きに、悪い人間は居ないと思う。個人的な感想だが。
「余程趣味が高じて、その趣味に準じる、性格とぃぅか人格とぃぅかで…も、なければ。でしょぅか。
そぅぃった意味では本当に。考ぇ過ぎだと思われるので――す、が。
後は、ぇぇと。本当は予想してぃなかったのに。”これも予想通り”って…強がったり?
動けるか否かと。動くべきかどぅか、後は――動きたぃかどうかは。それぞれ別、だと。思われますので。
…願わくば。休む間もなぃ、動かずに居られな…ぃと、ぃぅのは。起きませんよぅ―― っご、ふ、こほん――っ!
そ、それこそ…っ。場所を選べず、有無を言わさず――で、ぁるべきではなぃと。思われまして…っ」
長い事生きる魔族やら何やらは。暇を持て余し過ぎて趣味に走る者も多いらしいが。
だからといって今回の件が一から、ランダムな冒険者様一行ご案内ツアーであるというのなら。流石に気が長すぎる。
それこそ、難だったら余所に何時でも入れるダンジョンを作った方が。余程娯楽になりそうというものだ。…無駄に長い事魔物を飼い殺す事も無いし。
或いは罠に関しては。昔々に準備されたものの、使われずにその侭だったのだろうか。
取り敢えず此処については判断しきれないので後回し…にするとして。
何時誰が来るかも判らない、気長すぎる趣味の産物という線は外しても良いだろう。
何者かの思惑が裏に在るとしても。それはきっと想定外の事に違いない――いいや想定通りだと、強がってみせるかは分からないが。
寧ろ想定外で咳き込んだのは少女の方だ。夜、という単語一つで。其方の方面へ話がすっ飛ぶとは思わなかったので、完全な不意打ち。
いや、思えば先程も撮影魔導具の小ネタやら、叔母の悪戯やらが有ったので。出るべくして出て来た話題なのかもしれないが。
…もしかすると叔母上、この辺を想定の上で先程の悪戯を仕掛けてきたのだろうか…恐るべし。
振り下ろした鎚を引き戻しつつ…無意識に片方の手がスカートの後辺りを押さえてしまう辺り。墓穴を掘っている気がする、のはさて置き。
「――少なくとも。設置系の罠とぃぅのは…長ぃ事、維持しなければぃけません。
その為に予め力を籠めてぉく、だけでは。少なくとも年単位で保ち続ける等も、難しぃでしょぅし――」
そんな時多用されるのが。場の力を少しずつ、維持費めいて搾取するという術式機能だ。
序でを言えばトラップ自体が発動しない限り。そうして保つ為だけの魔力は微々たる物…察知するのも難しい程の。
少女がたった今奪い不全化させたのは、その辺りの代物だったのだろう。
計らずしも、目に見えず気配も探れない代物であれ。やろうと思えばどうにか出来る、という先程の話にも則するか。
「……その上で。…ぅーん…?
こぅした建物にはそぐわなぃと、思われ――まして……ぁぁした魔術を、用ぃられるとぃぅのは…」
さて。魔術的には安全を確保した上で、回廊へと踏み出した。
左右に並ぶ遺構は…覗けば覗く程、その大半が。住居、商店、を思わせる物――言い換えると、一般的な範疇に収まる物だ。
少なくともそうした場で暮らしていた、当時の住人達が仕掛けた罠、とは思えない。
この先に見える寺院に、そのような法力を用いる者が居たのか。 ……それとも、何者かの後付けなのか。
■影時 > 「逆にそうそう“ぷらいべぇと”とやらを見せてやれる竜の御仁も、少なかろうよ。
……気づいていねえかもしれンが、フィリ。
それは云わばあれだ。どんな男と女の組み合わせとなりゃ、効率よく望み通りの仔を得られるか、という研究にも繋がる。
愛が無ぇのは、お嬢様的にも嫌いだろう?
……――先輩、だとよお前ら。おやつの時に餌くれたらそれだけで良いと思うんだがねぇ。
心得た。んじゃぁまァ、布津のトコに出向くなら予め教えてくれ。屋敷の厨房借りてこさえてやンよ」
摩訶不思議には理由がある。理屈がある。理路整然としたロジックがある――かもしれない。
謎を紐解く学究者はそう考えるし、未知を前にした際に持ち得る知識で解明しようとする心の働きも納得は行く。
納得は出来るが、その先にあるものは、どうだろう。果たして、弟子たる少女のお気に召すものがあるのか否か?
魔法含め、解き明かされた事柄が常に夢があるとは言わない。解き明かした先にアイはあるのか?
程々にしておくくらいが、きっと心の整理の意味でも丁度良い。
もそもそと足先を襟巻に入れつつ、尻尾と上体を乗り出して姿を現すシマリスとモモンガと一緒に考える。
難しい話は考えられるかどうかは、さておき。この二匹は他者の感情の機微や匂いに聡い。
敬意と聴くと二匹が顔を見合わせて、照れ臭げに耳を伏せながら、こしこしと顔を前足でこすってみせる。
女の子が泣いてる姿を見ると慰めたくなるし、お腹が空いた時に美味しいナッツや野菜などをくれるだけで、満足できる生き物だ。
空気を読めて寄り添える生き物にも、頭が上がらないものが居る。序列付けをされた風の子、一番弟子の竜はまさにそこ一人だ。
そんな弁当を運んでくれた風の子たる竜に向かい、手を振るように虚空を見る二匹を横目にして続く言葉に頷く。
多少は日持ちはするものを選ぶにしても、菓子は作るに手間がかかる。今のうちに材料を集めておこうと心に決めて。
「然り然り。――お、流石に分かるか。まさにそういう手合いだな。
とは言え、多少は布石を打ったり撒いていたりしても不思議じゃねェ以上、あまり笑ってもいられんが。
侵入者を生かさず殺さずとしたい魔窟、迷宮なら、休む間も与えんのかもしれん。
個人的な感想で云うなら、侵入者を捕らえて慰み者、笑いものとしたいようなのが多い気がするがねェ。
ッ、はは。こんなトコだと俺も弁えるさな。……お楽しみは、一番後にな?」
徹頭徹尾、演出家やら策士ムーブを貫き続けるものも大したものではある、とは言えるだろう。
現実の迷宮でそういう事例にお目にかかるのは相当稀なケースと言える。まだ冒険小説の中に求める方が夢がある。
現実はと思うと、夢がないことばかりだ。殺意マシマシから、悪辣さたっぷりまで多種多様。
壁面に埋もれた犠牲者を引き剥がしたら、壁面は岩壁に擬態化した内臓壁同然の触手の群れであった、という事例をふと思い出す。
お陰で、ダンジョンの管理人が顔を出してくるなら、つくづく顔を見たくなる衝動に駆られる。一発首を刎ねてみたいものだ。
そう思いつつ、自分の趣味、嗜好も忘れない。そういった話題はまだ記憶に新しい。
スカートをふと押さえてしまう仕草は、やはり年頃らしく可愛らしいものだ。
口元を押さえつつ笑みの衝動に肩を揺らせば、親分の趣味の悪さを咎めるような二匹の視線が嗚呼。生暖かい。
「確かに。あと、害を与えるための罠、とも限らンがね。
俺はこっちの魔法が絡むものは詳しかねェが、外を窺うための目、耳を伏せておいた可能性だってある。
……この辺りに来ると風が強い。物見を拵えるにしても、それなりじゃないと無駄になっちまいそうだ」
単純な罠、トラップであるとも限らない。見分する前に粗方破却、解呪させてしまったが、目と耳を置いていた可能性もある。
手持ちの忍術の中に、呪符を介して視点やら耳を設置するものがある。
或いは呪符を何らかの動物に変化させて使役させる式紙の術、というものも。
使い魔のように使うそれも、風が強いとそれを乗り切れる動物のチョイスを考えなければ、十分に活用できるとは言い難い。
「――逆にわざわざその手の術を仕掛けるとなると、あれだな。
奥には魔法使いでも居るのかね。と……おお、この建物は結構しっかりしてるな」
風が強い。ごうごうと唸り出す。強風にしがみついてろ、と肩上の二匹に告げつつ回廊を進む。
参道のような路の左右の遺構は住居や商店、大きいものだと宿屋のようにも見える程、形を残しているものが多い。
往時は何らかの風除けの加護でもかけていたのだろうか?
ふと、気になって大きな店先のような遺構の入口を覗き込み、奥行きがありそうな造りに首を傾げる。その陰にある箱を見かけると。
【中身判定(1d6)⇒1:武器 2:防具 3・4:工芸品 5:巻物 6:魔導書】 [1d6→4=4]
■影時 > 【品質判定(1d6)1:粗悪品 2・3:普通 4・5:マジックアイテム 6:呪われた】 [1d6→2=2]
■影時 > 「……罠は、いや。フィリ、ちょっと待っておいてくれ。少し見分する」
少し考え、慎重に宝箱然とした鍵付きのチェストに寄る。
何かしらの対策をされている場合、先程の槌で解呪が出来ない。宝箱ごと壊す勢いで叩いて魔力を奪う必要がある。
鍵穴を慎重に確かめ、接合部を改める。先程使った道具類を再び広げ、仕掛けの有無を明確にする。
蓋と箱の境目に差し込む薄手の刃を押し込み、留め具のような何かを落とし、外してしまえばぱか、と宝箱が開く。
「器と、なんだこりゃ。ご神体?」
――中身は真鍮色、あるいはくすんだ金色をしたゴブレット。それと掌に収まる様な黒い御影石を磨いた偶像。
ゴブレット自体は質素だが、質は悪くない。
磨けばそれだけで今も現役になりそうな質を保ち、装飾の彫り物もくっきりしている。
問題は偶像だ。両手で握って念じるに良さそうな石の偶像は、少女にとって身近な形をしている。
角を生やした頭部。
畳まれているとはいえ、蝙蝠のような翼。
蛇のように長い尾と蜥蜴のような手足。
つまりは、竜の形である。