2024/05/10 のログ
■影時 > 「礼には及ばねえよ。必要だから調べたこともあったが、その手の話を昔、色々聞かされた甲斐があったモンだ。
……あ、あれか。仕様も無ェ使い方ばかり聞くが、なるほど。本当はそういう風に使うんだろうなあ」
個人の自由を鑑みて非常勤講師を続けるか、好きな時に休暇を取る前提で常勤の教師となるか。偶に迷うことはある。
余所者であるとはいえ、忍びとして活動するために見聞きした事物は巡り巡って役に立つ。
大名から剣術のついでに仕込まれた数寄の趣味や陰陽師から教わった古書、古物の扱い、術符の作り方、等々。
これはこう、と明言するより、それとなく示唆して仕向ける。露骨すぎない人の動かし方だ。
さて、石碑の文言を写し取るやり方もまた、忍びの技よりは数寄の領分として知ったもの。
墨書を飾る場所は生憎今の住処にはないものの、古の事物に思いを馳せるものは芸術、学術問わずに何処にでも居る。
だが、手間がかかる。そういった手間に意義を見出すか、もっとインスタントにやるかは――時と場合による。
例の魔道具、で通じる水晶球めいた道具を聞けば、あぁ、と頷きつつぽんと手を叩く。
いかがわしい使い方をする印象が何かと強い印象だが、確かに記録道具としての面として有用なのは頷ける処もある。
どのようにして入手したかは、聞かないでおこう。蛇の道とも云うが、予備が幾つかあるなら、別の“愉しみ方”がまた出てくる。
「貴族の子女とかが偶にわーきゃーしてたな確か。アソビならまだ、可愛げはある。
……まだこンなトコで目ぇつけられたりはしねぇだろうよ、流石に
迷宮の中では、休むだけにも気を遣わなきゃならンからなぁ。虎穴に入っているから、それも当然なンだが。
変な仕掛けやら結界でも仕掛けられない限りは、逃げ去る算段は如何様にもある。
そうでなきゃ、雇い主から信任を受けて出掛けやしねぇよ。」
あぁ、そんな催しとかあったなぁ、と。食堂やラウンジで耳を傾けた女子たちの会話を思い出す。人が集まるところは情報の坩堝だ。
大きい貴族の家など、迷路を見事な庭園として造った所がある。それを活用した遊びやら何とか。
それを児戯、と嗤いはするまい。遊びは遊びであるから良い。本気として、殺意をむき出しにしてきた場合が怖いのだ。
大迷宮での探索は独りと二匹のコンビでも、野営や休憩の場所はしっかりと吟味しないといけない。
なんとなしに座り込んだ処が、実は落とし穴や槍衾の蓋であった――という死に様の例は、行方不明者の探索をしていたら、嫌でも見る。
この場所が死地にして虎穴、とは思わない。だが、万一もある。そう思いつつ、羽織の下の雑嚢をぽんと叩こう。こんな時のものだ。
「……ははぁ、寝床の取り合いかねぇ。
まず、俺から行こう。ちょいと騒がしくなるから、耳と目を押さえておいてくれ」
――そう。この程度がまだ、死地ではないのだ。小鬼たちのやり取り、会話の内容までは分からない。
が、どうやらこの場の彼らは夜行性なのだろうか?日光がお気に召さないらしい。程よく温かいが、日照が煩わしいのだろう。
粗雑な棍棒を振り回したり、何か粘液がついた錆びた短剣を突き付けたり、コレクションらしい骨で遊んだり、等々。
何らかの意思を感じる素振りはある。けれども、彼らが弱い獲物を見つけた時、どんな動きをするのか? 数多の前例が証明している。
そんな風景を密やかな声とともに眺め遣りつつ、初手として注意を少女にかけて動き出す。
否、指示は少女だけではない。肩上の二匹に対しても同様だ。耳を思いっきり押さえながら、襟巻の中にいそいそと潜っていくのだ。
何故か? その答えはすっと踏み出す男が、雑嚢に手を突っ込んで取り出す一握の物体にこそある。
黒い丸薬めいた小玉は端より、小さな糸が見える。それが男が気合を込めると、注がれる氣に反応してじゅ、と火が灯る。投じられたら、一瞬。太陽のような閃光と爆音が生じる。
巻き起こる光に紛れ、動く影が腰に手を遣る。左腰から走り出す刃金の光が二度、閃いて――二つ、悲鳴が生まれて死体が出来上がる。
■NPC > 「「「――GYA,oooaGAAAAAAAAA!!?」」」
ゴブリンたちにとっては、突然の出来事だろう。
何者かが投じてきた閃光弾。其れが作り出す強烈な閃光と爆音は闇に慣れた目を焼き、耳を劈くに余りある。
都合、6~8体ほどいるゴブリンたちは薄汚くとも、盗賊めいた装いをしている。
死んだ山賊から引きはがした装束と装備だろうが、実際にやっていることもそう大差はない。馬の代わりに狼に乗っているかどうか、という位か。
爆音と閃光に紛れ、動く忍者が先にやったのは、足ともいえる狼を斃すことだ。
狼は二体。気配を消し、残響に紛れて動く姿が血刀を下げたあとには、狼の死体が二つ出来上がっている。
それに怒りか、驚愕か。いずれともそうな叫びと共に、ゴブリンたちが男を囲み出す。丁度、少女から背を向けた状態で。
■フィリ > 「それをまた、私や――他の生徒に、伝ぇてぃただけて。それに感謝するのは当然だと思われる…の、です。教師と生徒、ですから。
ぇ、ぇと。ぇぇっと、は――ぃ。本当は、そのよぅに用ぃるのだと。思われます。…本当は、そぅ、本当は」
仮にもし、彼がより教師としての役割を重視してくれるなら。喜ぶ者は大勢居るだろう。
より常態的に出会えるという点を鑑みても。少女自身にだってメリットは多い。
――が。そうして安定職に腰を落ち着けた彼に、何かしら違和感を覚えそうな者も。また零ではなさそうだ…本来彼の弟子である伯母だとか。
其処ら辺は周囲がどう思うにしろ、最終的には彼が決定する事なので。人の去就については、此方に言える事は無いのだが。
……使い方。思い切り目を逸らした。誤魔化した。曰く仕様もない使い方、そればかり聴くという事は。
少女が何を聴いたのかも、別の、というのが何なのかも。お察しという奴である。
とはいえこういう使い道が有る、というのは間違いない。精々眼球程度のサイズ感であるそれを浮かせ、風景を映させる、というのは。
資料の映し撮りと閲覧にも使えるし、危険な場所なら偵察等にも用いられるのかもしれない。
…尤も、それで映せるのは何処までも。視覚情報だけである。
臭いや気配、魔力や土地の霊脈といった物は。何処までも直に誰かが訪れ、確かめなければ掴めない。
二匹の先輩方始め、自分達含め。調査の為には最終的に、実際赴くしかないのである。
「ぁれもぁれで、実は。勉強になったりする――のでしょぅか。少なくとも安全な環境下で。観察眼等は、育まれるのでしょぅし。
ん、ん…入った、その段階で。とっくに検知されている等…は。はぃ、確かに。無さそぅな気配。…です。
勿論私は素人ですし、ぇぇと、それこそ結界等で。探知を誤魔化されてぃましたら――さっぱりなのですが。
それでもなるたけ気をつけて。もし、感じる物が有りましたら。其処は私が、どぅにか…
物理的だったり。難しい罠でしたり。それはきっと、笠木様に頼るしかなぃと。思われますの、で」
男の子は取っ組み合いやはしゃぎ合いから。傷付け方と傷付けずに済ませる方法とを学ぶ。
鬼ごっこだとかかくれんぼだとか、そういった遊びだって。きっと学び取れる部分が有るだろう。
…迷宮ごっこも謎解きごっこも、きっと。予行演習や気構えを学ぶ機会だと考えたなら。思ったよりも有意義なのではないか。
流石に其処まで考えて、世間のお嬢様方が挑んでいるとは思えないものの。
さて一応。こうして石窟に入った段階だけでは未だ。何かしらの魔力が作用した――等の気配は感じなかったと伝えておこう。
それこそ探知自体阻害されていたらどうにもならないが。逆に、何も感じない、という違和感自体存在せず。天然自然の在るが侭といった感。
難ならいっそ、往時の僧やらその他宗教家やらが、何か遺している…という物すら感じなかった。
なのできっと。罠として警戒するのなら、文字通りの意味でのトラップだと思う。
他の姉妹達と比べ鈍臭い…普通の人間かそれ以下の運動技術しかない少女だと。落とし穴の一つでも有ったら、嵌って上がれなくなるに違いない。
どういう場所に罠が多いか。踏みそうな所、押してしまいそうな所、というのはどういった箇所か。
偏に大師匠の知識の経験が頼りである。
――そうして進んでいく内見出したのが。複数匹の小鬼達の姿であった。
始めは丸く見開いた瞳を、きゅ、と細めて眉を寄せつつ。本当にちょっとでも声を上げたら見つかってしまう――と。
そう考えてしまっているのかもしれない。足元鎚を立てて両掌が口を塞ぎ。難なら息まで止めている勢いで。こく、こく、と頷いてみせた。
直ぐに左右の掌が耳を塞ぐ為に移動すれば。その口元を今度は、嫌という程しっかり噛み締め。唇を結びきり。
…きゅぅと瞼もきつく閉じ合わせた所で―― それでも頭を揺さ振られる様な轟音が。瞼の裏を灼く閃光が走り抜けた。
「……………っ、っ…!!」
くらりと揺さ振られそうな頭を、逆に自分で振って意識を保ち。
光の収まった所で目を開けたなら――その時には、もう。群の中で二匹の狼が、今正に。血飛沫を上げている瞬間だった。
■フィリ > ――残る小鬼達だが、どうやら。片手の指では数えられない程度は居る様子。
金属の軋るような甲高い声を上げる者達が、群の中へと躍り出て足を奪った彼を。忌々しげな素振りで囲み始める。
…苛立ちを感じるそれはきっと。不意の襲撃と、それによって奪われた移動手段、のみならず。
眼も耳もまだ本調子ではない事が。大きな一因となっているのだろう。
だから実際。成人男性の大きな背丈へと意識を向けきった彼等は、皆。後方で岩陰に引っ込んでいた小さな人影…少女については。まるで気付いていないらしく……
あぁそうか。こういうのが、先程彼が言っていた戦術下の状況か。
そろり。そろり。足音を殺して、方位の一匹へと近付いていく。
…目でも耳でもなく。獣のような嗅覚が、異種の雌を気配で察し。その一匹が振り返ろうとした所へ――
ど ず ん !!
盛大に魔鎚が振り下ろされた。
少女だけは軽々と動かすそれは、だが――契約外の魔物にとっては。本来の鉱物塊として、その重量を存分に発揮する事だろう。
■影時 > 「本っ当に興味がありそうな奴にそれとなく示すか、あとは実物を示すか実話を垂れるってだけ、なンだがね?
とはいえ、舶来でしか手に入れようがないモンばかりはどうしても高くついちまう。
……はっはっは、そうそう、本当はな。そー使うのが一番らしいハズなんだがなぁ?」
だが、やはり、そうだ。便利屋のように扱われようとも今はまだ自由が欲しい。己が冒険欲は安定を求めない。
それに何より先約がある。仕事の契約、約束事を重んじるものとして、先に交わしている家庭教師の務めを疎かには出来ない。
時間は無限ではない。有限だ。分身が使えても其れを駆使する意思がひとつなら、万事を文字通りの手数が解決しない。
気が赴くままに冒険に興じるのも。そして偶に数寄に興じるのも。時間のやりくりを意識し出すと、大変難しい。
思いっきり目を反らす少女の顔を見遣れば、やはり意識してしまうのは仕様もない使い方だ。
記録できるということは、やり方次第では無数に記録可能な目を配置し、制御できる可能性がある。
会得した忍術の中に、呪符を鳥や小動物、蟲などにして使役し、感覚を借りる式紙の術というものがある。故に水晶玉を利用した感覚は想像できる。
が、決して同じ術ではないだろう。似ているかもしれない、というだけだ。式紙が模した動物が得意とする感知能力を扱えるだけに過ぎない。
扱う情報が匂いに依らないなら、魔力や気配を隠す技を極め、研ぎ澄ますことで水晶玉の視覚を掻い潜ることに気づいたのは、いつだったか。
似たような視覚能力の魔法生物には良く効くのだが、斯様な裏技を披露する機会は、多くない方が良い。説明が難しい。
「……どーだろうなぁ。同じ時分の頃は、遊びじゃなくて本気なコトしかやってねぇから、その、な。言葉に困る。
然様か。この土地の魔法云は俺は勘頼みになるが、探知の陣を敷いてるような風情じゃねぇなあ。
隠し方が上手いかどうかは分からんが、はっきり“ある”とすれば奥の方だろうかね。
あからさまにまずい罠は、まだないように思う。あるんだったら――先に居る奴らが、使ってそうだろう?」
子供目線で考えだすと、思わず苦笑せざるを得ない。青春ではなく凄春としか言いようがない少年時代を過ごした時期だ。
今はいわば、非常に遅い青春のよう。言葉を濁しつつ、魔法的や物理的の罠について考える。
呪術、陰陽術めいた忍術は幾つか覚えがあるが、感知や警戒を敷くような類にありがちな目線を感じる気配がない。
わざと気づかせ、示唆するのは分かるものを避けるためでもある。わざと毒々しい色や柄を纏う動物の生態と同じ考え方だ。
が、そうではないように思うのは、誘っているのか、そもそも必要がない場所なのだろうか?
物理的な罠もまた然り。敵を近づけさせず、立て籠るというよりは、人を迎えることを考えた場所なのだろう、と。
故に人が使うことを考えているから、この手の小鬼がすまうわけである。あるいは、わざとすまわせているのだろうか?
(お陰で立ち回り易くは、ある――か)
踏み締める場所を見れば、風化こそあれ、洞窟むき出しのごつごつ感は薄い。手が入り、さらに行き交いを経て慣らされた石床だ。
そんな石床に抜き放った刀から血糊が零れ、垂れる。一振りすれば払われるそれを一瞥もせず、残る敵を見る。
騎乗獣たる狼は今倒した。残るゴブリンは目視できるものを数えると、8体。
粗雑な槍を構えて突撃してきたのを見れば槍を躱し、柄をひっ捕まえて引き寄せる。バランスを崩したところに首を刎ねてこれで7体。
「――お見事。やればできるじゃねェか」
そして、打音。魔槌が本来の用途を発揮して、雌の匂いに惹かれた小鬼を文字通りに破砕せしめる。
その有様に満足げに笑い、跳ぶ。哀れな間抜けの屍を放置して、雌に近寄る1匹の背を切り落としながら残る群れの中に入る。
刃を揺らし、間合いを計りながらゴブリンたちと付かず離れずの距離を保つ。
■NPC > 「Gyu、Ggiaaaah!」
「Gi! Gi! AhuAhuFuuu!!」
ぎゃー、ばかばか、まぬけ、とも言うのか。云わないのか。
そんなゴブリンたちの鳴き声は同胞の死を悼むのではなく、同胞の死を嗤うような邪悪さ、低俗さに満ちている。
あっという間に移動の足の二匹、さらに二体のゴブリンが倒されながら、変な恰好の人間の男が半円上の包囲に再び入ってくる。
それを取り囲みながら、唸る。緩やかに振り回される片刃の剣の煌めきに、攻めあぐねる。
迂闊に近寄れば切り捨てられ、美味しそうな雌に背中を向ければ、殴り殺されてしまう。
その二律背反に、打撃を叩き込む隙が生まれる。
■フィリ > 【継続いたします】
ご案内:「山窟寺院跡」からフィリさんが去りました。
ご案内:「山窟寺院跡」から影時さんが去りました。