2024/05/09 のログ
ご案内:「山窟寺院跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「山窟寺院跡」にフィリさんが現れました。
フィリ > 「……書…巻物……そぅぃった何か。はぃ――是非とも、見付けてみたぃのです、が――」

少しばかり。伏されがちな少女の視線に、力が入った…気がする。
読める物、記された物、そういった手合いは何でも欲しい――四分の一とはいえ竜である少女にとって。
執着すべき財とは即ち、書物文献碑文その他を意味するのであった。
勿論それ以外の発見であろうと、重要な意味を持つ事は。ちゃんと承知しているのだが。
自身にとっての実益が絡んで来るか否かで、モチベーションに変化が生じるのは。仕方がない事だろう。
…それこそ。苦労した甲斐というか、腰と尻に負担を掛けた甲斐も出て来るという物である。

さてさて。そうした、目に見えて過去を探る事の出来る品々は。本職の調査陣だって是非とも欲しがる事だろう。
場合と内容によっては武器だの装飾品だのよりも、高値が付く可能性だって有る。
逆を言えば、そんな貴重な発見の可能性より。身の安全を選ばざるを得なかったという訳で―― と。
何やらすっかり、屹度そういう品々が有るに違い無いと。捕らぬ狸の何とやらで、いよいよこれから潜らんとする洞窟に。思いを馳せる少女であり。

「…そんな方が潜んでぉられるのでしたら…どうも。相性は良くなさそぅで――はぃ。
初心者歓迎とか。初回割引サービスとか。設定して下さると、助かるの …ですが」

まぁ其処までエンタメに走るダンジョンの主というのも。居ないだろう……居ないと、思いたい。
少なくとも今、解るのは。――外側から見て判る事も、そろそろ尽きるという事だ。
彼が一杯飲み終えるのと、先輩二匹が干し果を囓り終えるのと。それ等を待ってから、水筒その他を鞄の空間に突っ込んで。

「ぉ粗末様…です。
ん、ん゛っ。……はぃ。…此方に引っ張ってきて、ぃただけるのでしたら。
――ぃぇ、引っ張って?目の前に? っぁー、ぁー…ぅ゛、ぅ …ーんっ………? ん゛ー――…

ど、どぅにか、っ。 ……どぅにかぃ、ぃたします、その――余程。  余程の見た目で、なぃのでしたら…」

戦術。彼の言うそれ自体は理解出来た。 …理解は出来たが、さて、実際それを行えるか否かは。
それこそやってみなければ分かりそうにない。
特に、敵対する某が現れたとして…それが。五体満足な人型であったなら、まぁ良いだろう。
脚が増えるのも、二対四足位までなら。充分許容範囲である。三対六足も…頑張ろう。頑張って、耐えよう。
但しそれ以上となってくると些か。一般的な人間の少女レベルのメンタルにとっては、大いなる障害となりそうだ。
大昔には人より大きな節足動物等もザラに存在したというが。そういう代物が今は魔物と化して、密かに地下で蠢いている…
どうか。そんな代物には出会しませんように。

逆説、生理的嫌悪感という問題さえなければ。どうにか振るえそうだというのだから。変な所だけ図太いのかもしれないが。

影時 > 「そうなると、例えば開いて読むだけで、直ぐに燃え尽きることが無ェような……力のある本、だよなぁ」

あると良いが、と。気合が籠ったような眼差しにふぅむと唸りながら考え込む。
迷宮から見つかる宝物は色々だが、特に書物の類はおおよそ二つに分類、大別できるように思う。
使い捨てであるか、そうでないか、だ。いわゆる“力ある魔導書”とは後者に分類される。
強弱こそあるが魔法を記し、開くだけで自動発動し、効力を発する巻物は魔導書とは云われない傾向にある。
特に強力な類であれば、呼吸するように魔力を生成し、単独で術を発動するばかりではなく、意思さえも持つ――とかなんとか。
縁がない品々だが、商売柄どうしても知識に入れざるを得ない。
親分が魔導書のことを思った匂い、気配を感じたのか、二匹の子分がもそもそと毛並みの中から小さな本を取り出す。
それを見て肩を竦めれば、仕舞っとけと声をかけて、更に思案を巡らす。

この場所ならば寧ろ、いかにもな装丁の品よりも、石板、石碑といった類の方が似合うだろう。
或いは厳重に秘匿されたマキモノ、もとい、巻物か。スクロールはスクロールでも、魔導書と呼べるほどの格を備えたような。

「ははは、そーゆーコトになったらまさに俺の領分だよァ。
 そういうのは無理、無理臭ぇな。その手の“さぁびす”の売り文句が似合うのは、訓練所やら講習会の類だわな」
 
ダンジョンマスターとやらに享楽の要素があることは否定できないが、見ものにされるのは正直好みではない。
在り得ないと言い切れないという実例は、考える以上に多いだろう。闘技場で剣闘士が死闘を演ずる光景を愛好する者たち、にも似て。
だが、それ以上に、本気と書いてガチ、と読むべきなのが迷宮、遺跡というべきものだ。
程度はどうあれ、挑む者の強弱に関係なく備えられた脅威が牙を剥く。殺す気になればどこまでも過剰になる死地である。
水分補給をしながら、地面の観察を続けていれば、見えてくるものや気づけるものもある。出入りするまだ新しい足跡の痕跡に。

――警邏の帰りか。それとも、もっと至極単純に塒としての出入りか。

振舞ってもらった紅茶を飲み干せば、干し果物の欠片に満足げに頬をこしこしする二匹の姿を一瞥する。
刀を引き出すに伴い、雑嚢の裏の鞘に仕舞った苦無の位置と重さも確かめよう。咄嗟に刀を抜けない場合など、苦無が役立つ場面は多い。

「諸々終わったら、また呑ませてくれ。
 ン、それは勿論だとも。ちゃんと誘引し、引っ張りつつも後衛に攻撃をさせんようにするのも盾役、囮役の勘所だ。
 
 ……――見た目ばかりまでは、流石に保証はできねェかねえ。少なくとも全力でヒくようなのはいないだろうが。んじゃぁ、行くか」
 
勿論、無理にとは言わない。いきなり忌避なく、惑いなく生きて動くものを殺せ、というのは思いのほか難しい。
意思で割り切る、割り切らないという判断よりも、生まれ持ち、培った価値観で躊躇してしまうという事例は平和な世、育ちであれば多いだろうか。
故に無理にそうさせるつもりはない。適宜、敵は自己判断で対処し、掃討するのも考慮したうえで振る舞おう。
そうと思えば、改めて二匹の毛玉を呼ぶ。二匹の名を呼ばわれば、呼ばれた二匹はとたたた、と走り寄り、親分の肩上に上がる。
しっかり捕まる姿を確かめれば、襟巻を引き上げて鼻から口元までを覆う。
改めて身支度が済んだことを確かめれば、先導するように洞窟の中へと入り込もう。

明かりの類は、ない。
進めば進む分だけ闇は深くなり、そのまま進むならば幾つかの音に気付くかもしれない。蠢く音。鳴き声めいた音。騒ぐような声に。

フィリ > 「……それが見つかって下さるのなら。……非常に、非じょー――…に、興味を惹かれるの、です。
勿論、品物として、利用価値の有る物でなくても。私としては…当時を、識る事の出来る何かとぃぅのも。気になります、はぃ」

取得物。冒険者にとって有益なアイテム。
確かに使い捨てで済む事なく、使用者の魔力次第や…ともすればそれとすら関係なく、何度でも使える魔本といった品物は。
今では再現不可能な代物等も存在し、大概貴重な扱いを受ける。
いっそ武器として常用されるより。然るべき所で徹底的に研究される可能性の方が高い…のではないか。
当然そういった代物であれば、目の飛び出るような価格も付く訳で。其方の意味で冒険者向け、になる事もあるだろう。

が、本当にそんな品物が有ったなら。命の危険を犯してでも、先に来た者達が手に入れようとしているのではないか。
――それすら叶わず諦めざるを得ない程、此処が危険だった、という事になりませんように。

少女としては、冒険者視点での価値が高いそれだけでなく。調査隊目線で有意義な発見、という物にも興味が尽きない。
同時代の遺構は周囲にもあれこれ存在しており、其方は大凡調査が済んでいるのだろうから。新たな歴史の事実は判明する、という可能性は低いにしろ。
此処で暮らしていた誰かによる、此処でしか記す事の出来無い記録、等は。それだけで活字マニアとして気になるではないか。
…いや、石版に彫られただの、革の巻物に記されただの、だろうから。活字ではなく文字と言うべきか。

「仮にそうでしたら、まぁその……それだけの拘りを籠められる、手慣れた手合ぃ、とぃぅ事でしょぅし…私では。とてもとても。
はぃ、初心者抜きの、ベテラン同士の出し抜き合ぃ等となりそうでしたら――大師匠の、笠木様に。一任です」

人間――いや、この場合人間ではないナニカだろうが。知的生物須く、自身の趣味と愉しみの為なら。全力を尽くせる物である。
それこそ享楽目的のダンジョンマスター等であったら。全力で罠だの魔物だの配置しまくり、に違いない。
相手にとっては本気と書いてマジの愉悦。此方にとっては同文異音でガチの冒険。命懸け。
流石に初心者が割って入る隙を見出すのは難しそうだ――見学、に徹する事が出来る程。エンターテイメントになるかは別として。

ふと。彼の目線を追って。気付いたらしい何かを、此方も視認する事が出来た。
足跡…まだ新しい内のその一つへ歩み寄り、ぺたんと隣に足を着けてみると。シンプルに大きさを比較して。次いで形を確かめるべく覗き込む。
靴履きの文明的なそれなのか。裸足だったり、何だったら鉤爪の痕でもないか。その辺だけで判断は大きく異なってくるだろうから。

「……はぃ。ぉやつも準備してぉりますので、その時間になりましたら――…とは。
確約出来なぃのが辛ぃ所です。…やっぱり、どの位の深さとか――見当つかなぃと思われる、訳で。

―― ……よっ、宜しくご指導ぉ願ぃ……ぃたし、ます――」

浅い階層だけで引き返したなら。調査隊にだって全容は分かっていないし、だからギルド、ひいては彼にも伝わっていまい。
寧ろそれを含めた調査であるという事は。マッピングの用意からも理解出来る。
おやつの時間どころか下手をしたら一日仕事か…それでも済むか否か。
序でに「終わったら○○しよう」等という、あまりにフラグめいた発言となりそうな気もしたので。その辺についてこれ以上は触れず。
荷物は魔鎚以外全て仕舞い込んだ事を確認し。彼と共にいよいよ、入口を潜る事となった。

―― ぅ、と。小さな声が出てしまったのは。
少しだけ進んだ段階で、もう。何かしら異様な自体を把握出来てしまったからだ。

皆引き返した、此処に残っている人間は存在しない――というのなら。
この気配は何だ。密やかに、だがざわめくような数は。…そして、獣の鳴き声と言い切れそうにない、意思疎通のやり取りにも似た声は。

影時 > 「良いねェ。売る売れないは抜きにしても、俺もそういう類は嫌いじゃない。
 動かしようもない石碑だったらきっついが……、あー、フィリ。拓本って知ってるか?」
 
審美眼を持ち合わせているとは言い難いが、如何にも曰くありげな代物は嫌いではない。見ていて楽しい。
金銀財宝の類は素直に換金してしまうに限る。歴史を感じさせる、侘び寂びが効いた品であれば、一番良い。手元に残すならそういう類が好ましい。
さて、書物の類で自分と弟子と好みと言える品が在るか否か。
贅を凝らした経典、法典の類は、換金も含めて素直にトゥルネソル商会に譲り、いくばくかの金銭を貰う程度できっと満ち足りよう。
未知、未探索の遺跡や迷宮の探索には、期待も含めて色々と妄想が捗ってしまう。
突入口の強化、補強を果たしたであろう先遣隊が深層まで潜らなかった理由とは、何なのか。僅かな憂いがあるが。

そんな思考を脳裏の片隅に過らせつつも、活字マニアのような少女にぽそっと言い足すべき事項がある。
持ち帰れないような巨大な石碑の銘文を写し取るテクニックとは、学術的な調査の時にも有用であるひとつだ。

「とはいえ、未だついぞ出遭ったコトのない手合いでもあるんだが。居たらどンだけ酔狂な奴なんだか。
 或いは、嗚呼。……宝物の匂いに釣られて、迷い込んだ奴の武具を宝として溜め込む、みてェな奴だったりして。
 
 まぁ、どーにもならねぇ時も含めてその辺りはお任せ、だ。命あっての物種というのはどんな仕事、冒険でも変わりは無ぇんだ」
 
変質的なこだわりで構築された迷宮、ダンジョン。――存在しえるのだろうか? ある意味哲学めいた疑問だ。
繰り返しになるが、在り得ないとは言い切れない。冒険者ギルド等の資料室に秘匿されている事例があるなら、該当する可能性はある。
例えば、大魔導士が作った地下迷宮、というテーマは幾度もなく小説、戯曲等で題材に上がるだろう。
その源流は果たしてどこにあるのか? それは実在しえたものであるなら、そういったこだわりの産物かもしれない。偏執もまたこだわりの極致だろう。
見立てこそ初心者向けと判断されたが、この洞窟の奥がそういった手合いではないことを祈りたい。
尖兵たろう足跡の痕跡を確かめる。形が整った靴の足跡、既に薄れ、風雨に洗われたものは、人間のそれだろう。
四つ足の足跡、鉤爪か尖爪を疑える二本足の足跡、いずれもそれらは新しい。だが、ひとつ、ふたつと、判を押したように浅くも形の整った足跡は?

「嗚呼、適宜休息は挟まンといけねぇやな。まだいけると思う時が存外に危ねぇんだ。
 ……先を進むぞ。夜目が効かないなら、言ってくれや。がんどう、いや、“らんたん”を引っ張り出す」

――浅い処までしか見なかったのは、見る必要がないように仕向けられたか。誘導されたか。
顎を摩りつつ思い、進む。如何にもフラグ的な言葉は、おおっと、と肩を竦めて覆面の下で笑い、注意を払いつつ進む。
ゆっくりと足取りは同行者に歩調を合わせるがため、ではない。革を重ねた柔らかい靴裏越しに地面の状態を確かめるためでもある。

進めばやがて見えてくるものに、物陰に隠れるように指示しつつ伺うのは――。

NPC > 「Gya! Gyuaa!」
   「Ah! Gyua!!」
   
――等と。汚らしくも甲高い叫びのやり取りが聞こえてくる。
進む先は天井が高く、まるで火口の内側のように丸く開けた所が明り取りとなって、日光が差し込む。
眩い昼の光を厭うように、日だまりの周りの影に半円状に、数体の怪異の影が見える。
俗に小鬼、ゴブリンと呼ばれる妖魔だ。足代わりの薄汚れた小型の狼らしい四足獣の陰も、暗がりの中に見える。

彼らはまだ、侵入者に気づいていない。

フィリ > 「笠木様には折々、異国の文献もお薦め頂けて。大変感謝してぉります、はぃ――

ぁ、ぁ、それは。勿論なので――す、が。やはり時間も掛かりますので、今回私…魔道具。撮影用に、持ってきてぉります」

忍びにして冒険者にして家庭教師にして。最近学院講師としての草鞋も重ね履きし始めた彼には。其方でもお世話になっている。
…気付くと何時の間にやら図書室の蔵書内に、知らない異国のあれそれが。追加されていたりするのである。
伝手の有無というより、興味を持つ生徒を知っている――興味を持たせる、となると。きっと彼の仕業なのだろうなと。考えている少女であった。
決して大いなる過去の遺産だけではない。物珍しい、というそれだけで。世の中には付加価値が発生するのだ。
従って人によっては興味を惹かれない物や、高級な品物などではなかろうと。世に好事家が存在する限り…買い手が居り商売が発生する限り。
トゥルネソル商会はいつでも持ち込み大歓迎である。彼にしろ、それ以外の誰かにしろ。
何ならこの侭、持ち込まれるあれこれを。過去の品を、魔導の品を、真っ先に触れる事の出来る鑑定士。そうなりたいとすら考えつつある今の少女。
…坐して店先で待つだけでなく。時にはこうして、直に現地に赴く異も在り得るのだろう。それこそ動かせない代物等も有るのなら。
だから、この冒険は。日々の鍛錬は。間違い無く有意義な物なのである。

さて。少女が口にした魔道具というのは、近年出回っている水晶球めいた…辺りの光景を映し記録する品物だ。
王都では得てして、いかがわしい行為の撮影やら、その映像を売り買いされたりする場合が多いのだが。
何が起きるか分からない場所で、黒炭等でざりざりと紙を擦るのに。時間を取られず済ませられる…こういった使い道も有効だろう。
ちなみに元々どういう理由で少女がソレを入手したのかは――目下、黙秘、の一言である。

「…でも、在り得るのかなぁ、とは――遊戯として。謎解き、脱出、そぅぃった物。ちょくちょく王都でも御座ぃます、し。
此処まで本格的とぃぅか、本物志向、とぃぅかは――ともぁれ。
後者でしたら、…ぅぅ。ぞっとしなぃと、思われます。長ぃ事待たされた所に、私達のよぅな――のは。目を付けられそぅで。

休憩中も要警戒。…けれど、休憩しなぃのは、もっと駄目。 …色々磨り減った所が、取り分け危険……はぃ。
本当に、もしもの時、は。きっとお任せしてしまぅ――と。思われまして」

息を吐く。吸う。もう一度吐く。肺の中身を根刮ぎ更新した所で、足跡から顔を上げ洞内へ。
確認出来たそれ等は複数種。最低でも脅威が一つでは済まないという事だ。
それだけで意識は緊張しがちになるのだから。適宜休憩し、身体も心も落ち着かせなければいけない…大事な事だと改めて。

これが、それこそ王都の脱出ゲームめいてエンタメ気分を組み込まれていたら。休むに適したポイント等も在り得るが。
流石に現実で其処まで期待する事は出来ないだろう。
ただ、元々は人が生活していた遺構である事を考えたなら。此処の主の思惑はどうあれ、利用出来そうな場所は見出せるかもしれない。
…取り敢えず。濡れずに座って休める場所など有れば良いなぁ、等という思考は――程無く。吹っ飛ぶ事となった。

「――――っ」

黙り込む。此方は覆面など無いので、掌で口元を押さえ息を殺す。
…示されて、見た。見てしまった。
噂では聞いている。物語で知っている。いっそ危険の一例として、授業で習った事も有る。

が、勿論――本物は初めてだ。生きて動いている驚異。ゴブリン、と呼ばれる生き物達。

成人男性に比べれば小柄だが、少女からすれば大差のない体格に。手脚の長さ等は些か、人間とバランスが違う様。
きっと会話なのだろうが、此方にはまるで理解出来ない声を交わし合っているそれが数体と。獣の影もうっすらと。
手に手に簡素な武器めいた物を持つ辺り。会話と同様一定以上の知性も感じられるのだが…それでいて。
意思の疎通は出来なさそうだ、と。直感的に理解出来てしまうのは。人という生物としての本能、なのかもしれない。

そうやって声と息とを殺すまま。小鬼達から再度、彼の方へと目を向ける。
…ぎゅぅ。鎚を握った手指の震えを殺すべく。肌が白くなる程に力を籠め握り締めながら。